複雑・ファジー小説

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透明な花束
日時: 2017/01/02 12:33
名前: 亜咲 りん ◆1zvsspphqY (ID: r6RDhzSo)

 

 憎しみを束ねて、私たちは透明な花束を造り上げた。



■ flowers

*シリーズ

『傷』
【傷音】 >>06
【傷色】 >>09
【傷逢】 >>19

『セーラー少女』
【Nympho Sailor】*>>10-11
【Summer Sailor Girls】 >>21(挿絵:haru会長。様より)

『人魚のオルゴール』
【鳴らないオルゴール】 >>02 >>15 >>22

*短編

【星屑観覧車】 >>24(途中)(挿絵:haru会長。様より)
【ガラスの夜】*>>01(挿絵:とりけらとぷす様より)
【空色】>>03
【夕日の彼方】 >>04
【The girl of Ugly duck】 >>05
【零れる夢に】 >>12-13
【溺れたての子犬】 >>16(テーマ"溺れたての子犬"配布元:蒼様)
【うた】 >>17
【エメラルドグリーン】 >>18
【もしも、心臓が宝石でできていたのならば】 >>26
【Fallen Angel】 >>27
【葡萄】 *>>29
【女の子】 >>30
【雪降る喫茶店にて】 >>31


■ news

0410 執筆開始
0429 とりけらとぷす様より、挿絵をいただきました。
0717 題名変更(元は【ガラスの夜】)
0814 haru会長。様より挿絵をいただきました。
0905 haru会長。様より挿絵をいただきました。
 
  

Re: ガラスの夜 ( No.7 )
日時: 2016/07/01 11:36
名前: REN (ID: yWbGOp/y)

まってまって!!
素晴らしいよ!
素晴らしすぎるよ!!

私より若いのに、こんなに素晴らしい文才を持っているのね。
感動した!

自分の文の幼稚さに呆れたわ。

今後も仲良くしてねん(。・ω・。)

コメント返し ( No.8 )
日時: 2016/10/27 16:37
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: B4StDirx)

 
>>07

 コメントありがとう!
 文才は無いです。今頑張って手に入れようとしているところでして。その感動は、別の人のために置いといて笑
 文を書くのは難しいから、幼稚なんてことはないと思う。ええ、仲良くしましょう!
 私もレンさんの小説見に行ってきますね。
 

傷色 ( No.9 )
日時: 2016/07/03 20:58
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: こころの音がきこえる少年と、音が色で見える少女の淡い物語。

 
 私の世界は、いつも静かだった。広がる静寂、魚のようにただただぱくぱくと動く人の唇。
 そんな淋しい世界に、神様は色鮮やかな贈り物をくれた。



 ベッドを揺らす、微かな目覚まし時計の振動で、私は目覚めた。
 ふらふらと寝ぼけ眼で身を起こして目覚まし時計を見る。それは、ガタガタとその丸っこい体を揺らしながら、赤、黄色といった色をけたたましく辺りに飛び散らしていた。いや、普通の人にとっては、鳴り響いていた、と言うべきか。
 
 目覚まし時計の上に手を置くと、ぽん、とオレンジ色の煙のようなものを発して、その攻撃は止んだ。いや、音が止まった。ふわぁ、と欠伸をすると、白いもやのようなものが私の口からゆっくり飛び出し、すぐに消える。
 それを少し口の端を歪めながら見送ると、私は勢いをつけてベッドから降り、たたっと廊下に飛び出た。なんとも言えない色味のほこりのようなものが、私が廊下に足をつけたところから飛び散った。いや、きゅっと音を立てた、か。

「おはよう」

 階段を下りて、キッチンにいる母に挨拶する。おはよう、という空色の文字が私の口から出て、母にぶつかると分散した。いや、母まで届いた。
 すぐに、私と同じ淡い茶色の髪がふわりとなびき、こちらを向いた。

「おはよう。もうご飯ができるわ。座ってて」

 その言葉と共に、青色の綺麗な文字が、さらさらと母の口から私に飛んでくる。いや、落ち着きのある綺麗な声、か。
 母はそのままにっこりと私に笑いかけると、再び前を向いて料理をし始めた。

 茶色い音をたてて椅子に座る。いや、ただ座っただけだ。
 しばらくして、母がお待たせ、と青い声で出したお味噌汁とご飯をゆっくりと食べる。先ほど目覚まし時計で確認したとき、時刻は7時だった。8時に出れば学校に間に合うはずだから、まだまだ余裕はあるはずだ。
 かちゃかちゃと空色の音をたてるお箸で、喉を鳴らしながらふりかけのかかった白飯と目玉焼きを食べていると、ああ、そういえば、と母が切り出した。いや、ただ単にかちゃかちゃと私が鳴らしているだけだ。

「今、8時だけど、大丈夫?」

 ぽろっと、箸が黒い色をたてて床に落ちる。いや、絶望的な音をたてて落ちる、か。

「のーーーーん!!!!」

 空色の声が辺りに飛び散った。そのまま私は勢いよく立ち上がり、洗面所まで走る。
 あとには、水色のまっすぐな線だけが残った。


 そう、私が見ている世界は貴方たちとは違う。

 私が赤子の頃、どうも様子が変だということで、母が病院へ向かい、検査をしたところ、私は耳がきこえないらしかった。
 しかし、奇妙なことに、私が目を開けている間は、母が声を発したり、音をたてたりする度に、きゃっきゃっと嬉しそうに笑っていたらしい。母は当時の私の様子を、まるで音がきこえているようだった、と今でも話している。
 その理由は、次第に私が言葉を身につけていくにつれ、わかっていくことになる。
 
 私の世界には、確かに音は無かった。でも、その代わりに神様は私に色をくれた。
 この世にある全ての音は、私には色が付いて見える。それは赤だったり、青だったり、黄色だったりと、様々で。それに、同じ青でも、それぞれ少しずつ違っていた。

 母は私の口からはじめてそれを聞いたとき、驚きながらも、素敵な世界ね、と微笑んだ。
 確かに、幼い頃は、それは美しかった。家の庭で走り回ったり、家の中ではしゃぎ回っていると、たくさんの色が辺りを飛び回ると、すごくわくわくした。
 でもそれは、外の世界に出て一変することになる。


 案の定遅刻し、先生に睨まれながら授業を乗り切り、消沈しながら帰り道を歩いていると、私は眼前に広がる光景に、ぎゅっと手を握りしめた。

 音。音。音。音。

 音の波が、私を襲う。
 辺りに散らばる音はそれぞれ色が違って、私の視界はまるで絵の具でぐちゃぐちゃに塗られたようだった。
 前が見えない。そして、その音たちはどこか濁っていて。
 私は思わず走り出すと、あの場所へ向かった。


 河原に着くと、私ははあはあ、と荒い息を吐いて、呼吸を整えた。
 土手のようなこの場所は、私の秘密基地。
 そこらじゅうに生えている草たちは、緑だけでなく、オレンジや黄色、茶色といったカラフルな色をたてて揺れている。時折吹く風は優しい水色で、清らかに流れる川は、澄んだ青色をしていた。
 ここは家と同じで、色に惑わされることなく、落ち着いて過ごすことのできる場所だった。

 そうして、息が整うと、私はさらにふぅ、と息を吐き出した。
 音のきこえない私にだって、できることがある。
 会話も色の形で把握することができるし(後ろから呼びかけられると気づけないけど)、言葉を発することもできる。
 だから。
 私はすっ、と息を吸って、口を大きく開いた。
 
 草原に響き渡る、空色。オレンジ色に染まった空に、それはよく映えた。
 そう。私は歌も歌うことができる。貴方たちとは音程の把握の仕方が随分違うけど、コツを掴んでしまえば簡単だ。見たままの色、そして形を口から出せばいいのだ。
 私にとって音は色。もしかしたら、昔の人は、音に色があると知っていたのかもしれない。そうじゃないと、なぜ美しい旋律を、音色と呼ぶのかわからないから。

 少し余韻を残して歌い切ると、私はまたふぅ、と息を吐いた。白いもやのようはものが霧散する。
 私の声は空色。歌声も空色。でも、そう見えるだけだ。貴方たちにはどのようにきこえるのか、私にはわからないのだ。だから、私はいつも、ここでしか歌わない。いつも、1人、空色を見ている。

 いや、今日は1人じゃなかった。
 なぜなら、おろしていた鞄を持ち上げて、くるりと後ろを向くと、そこにいたから。

 __涼しげな目を見開いた、綺麗な黒髪の少年が。
 

 



         …to be continued…
 
 

Nympho Sailor[ Ⅰ ] ( No.10 )
日時: 2016/07/04 21:15
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: セーラー少女シリーズ。

 
 零れる吐息。小さな喘ぎ声。
 甘い時間が、私の脳内を甘く痺れさせていく。



 朝、私はいつも違うベッドの上で目覚める。
 今日は白。清潔感のある、綺麗なシーツの白。
 でも、その白は既に汚されてしまった。
 隣でぐっすりと眠る若い男をちらりと見てから、私はベッドからのそりと抜け出した。

 音を立てないようにゆっくりと下着を身につけていく。
 滑らかな肌に、少し硬い膨らみ。この発達途上の身体は、私がまだ少女である証。
 でも、その身体はとっくに汚されてしまった。
 私の、こころの弱さのせいで。
 ふぅ、と昨晩とはまた違った吐息を吐き、床に無造作に置かれたセーラー服を手に取る。
 黒く、そして赤いセーラー服。

 これを着ている間は私はただの少女。
 ええ、きっとそうなの。



 素早く袖を通したため、セーラー服は少し乱れてしまった。
 少し気になったので、近くにあった男の所有物である、全身鏡をそっと窺い見る。そこにはただの淫乱な女がいた。
 開かれた胸元、白い肌、陶酔した表情。
 とてもただの少女には見えなかった。
 なら、私はやっぱりただの化物か。


 リュックに荷物を詰め込んで、家を出る。
 いつも、違う男の家を朝早くにセーラー服を着て出ると、私は希望に向かって歩いているような気がした。夢じゃなくて、このつまらなさから抜け出すことのできるような希望を。

 随分と前に、ちょっとした私のこころの弱さで肌を重ね合わせて、私は悦びを覚えた。
 混じる2人の汗と吐息。2人だけの世界。
 こころの無い1度きりの関係は、私のこころの穴を一瞬でも埋めてくれるような気がした。


 淋しがりやで強がり。私の性格は、そんなものだ。いつも表情をつくらず、誰に対しても笑顔を見せないので、友人はできなかった。
 だって疲れるじゃない。
 周りに合わせて良い顔したり、相手の表情から雰囲気を読み取ったり。
 それに適応できない人間だっているのよ。

 高校に入って、私の少しばかり整った外見にケチをつけていじめてくる子も出てきた。
 下駄箱を開ければ靴がない。お弁当がお昼時に無くなっている。教科書がずたずたに切り裂かれている。体操服はいつもトイレの水に。
 典型的で、つまらないいじめ。本当に滑稽だ。
 私のこころはそんなくらいじゃあ傷つかないわ。

 
 だけれども、学校へと歩く足は、ふらふらと覚束無い。
 そして、きつく抱きしめられたせいか、まだ身体のあちこちが痛い。
 でも、名前も知らない人だったけれど、彼は私に、一瞬だけ救いをもたらした。

 孤独。誰にも交われず、誰とも違う、私。
 人間はいつだって本当は1人で、自分勝手だ。
 そうやって自分勝手に生きてきた私の胸には、ぽっかりと大きな穴があいている。
 それはきっと、病院に行ってもどこに行っても埋まらない。けれど。


 喘いで喘いで。
 私はやっと、自由になれる。

 触れた肌が。重ね合わせた唇が。私のこの孤独を焦がす。

 けれど。すべてが終わったあとに、それはすぐに戻ってくる。

 だからいつまでも、いつまでも、私は続けるの。

 
 



        …to be continued…
 
 

Nympho Sailor[ Ⅱ ] ( No.11 )
日時: 2016/07/08 21:07
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: まだ未熟なセーラー少女たちは、大人と子供の間をさ迷い続けて

 
 __冷たさは。
 いくら強く抱きしめられたって、接吻を交わしたって、深い夜に堕ちていったって。

 私は所詮、ただの少女。
 淫乱な女にも、化物にもなりきれない、哀れなセーラー少女。




 学校帰りのある日、私は道端で黒猫の死骸を見つけた。
 黒猫は、まるでただ眠っているだけのように見えた。しかし、ゆっくりその身体をつついてみると、反応は無く、その身体は冷たかった。

 ああ、そうか。私は1人、空を仰ぐ。
 死んだら、みんな冷たい化物になるのか。
 ただの少年も、ただの男も、ただの女も、そしてただの少女も。
 だとしたら、死んだら私のこの淋しさも、身体とともに冷えて凍ってしまうのだろうか。



 その日は、思考がよく回らなかった。どこかネジが外れたかのように、私はどこか夢見心地で夜の街に出た。
 そうして、いつものように欲求不満な男どもを誘惑する。いや、商売のようなものだから、勧誘する、と言った方がいいかもしれない。
 しばらくそれを続けると、ようやく1人のサラリーマン風の男を捕まえることに成功した。そして、そのまま男の家までついていった。

 そう。いつものように、シャワーを浴びて、彼と1夜を過ごす。それは彼のためでもあり、私のためでもある。そう、そのはずだった。


 私は、男の希望でセーラー服を着直した。
 荒々しくベッドに押し倒され、男の顔が近づいていく。私はぎゅっと目を閉じた。
 押し付けられた唇は、ひどく熱くて。
 私はなぜか、抵抗してしまった。それでも男は私を求めてくる。
 なんだろう。とても、不快だった。


 気づけば私は渾身の力で、男を突き飛ばしていた。男は頭を打ったのか、後頭部を抑えて呻いた。
 滴り落ちる汗が目に入り、染みる。
 しかし次の瞬間、私は部屋を飛び出し、身一つで男の家を出た。

 近くにあった池の近くで、私はやっと立ち止まった。
 はあはあ、と荒い息が、藍色の空に溶け、昼よりも冷えた夜の空気が、私の熱を奪っていく。
 しかし、男が触れた部分は、まだ熱を帯びたままだった。
 熱が気持ち悪い。肌を重ね合わせた部分が熱い。嫌だ。どうして……

 まとまらない思考に、思わずふらふらと後ずさりをすると、右足にかさり、と何かが当たった。
 はた、と立ち止まって足元を見ると、そこには烏の死骸があった。
 どくん、と心臓が音をたてる。
 触れた部分は、ひんやりとしていて、私から熱を奪っていく。

 死んだら……私も冷たくなる?
 濁った思考が、頭を埋め尽くした。

 熱を求めれば求めるほど、後からやってくる冷たさに、孤独な私は怯えなければならない。
 学校でも1人、家でも1人、この世界にも1人。
 そして今は、熱が怖い。

 それならいっそ、ずっと冷たい方がいいんじゃないか。
 そうすれば、こんな淋しさに苦しまなくても……


 気づけば、私は池へと走り出していた。
 たどり着いた先で、ごつごつとした岩に掴まって、勢いをつけて飛び込む。
 濡れるセーラー服。奪われる熱。
 ああ、冷たい。




 私の孤独はしだいに冷たくなり、氷のようにかたく凍って、次の瞬間、粉々になって水色の彼方へと消え去っていった。




 
 





          …end…


※今回のは特にわかりにくくてすいません汗 また解説させてもらいます。
 
 


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