複雑・ファジー小説

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透明な花束
日時: 2017/01/02 12:33
名前: 亜咲 りん ◆1zvsspphqY (ID: r6RDhzSo)

 

 憎しみを束ねて、私たちは透明な花束を造り上げた。



■ flowers

*シリーズ

『傷』
【傷音】 >>06
【傷色】 >>09
【傷逢】 >>19

『セーラー少女』
【Nympho Sailor】*>>10-11
【Summer Sailor Girls】 >>21(挿絵:haru会長。様より)

『人魚のオルゴール』
【鳴らないオルゴール】 >>02 >>15 >>22

*短編

【星屑観覧車】 >>24(途中)(挿絵:haru会長。様より)
【ガラスの夜】*>>01(挿絵:とりけらとぷす様より)
【空色】>>03
【夕日の彼方】 >>04
【The girl of Ugly duck】 >>05
【零れる夢に】 >>12-13
【溺れたての子犬】 >>16(テーマ"溺れたての子犬"配布元:蒼様)
【うた】 >>17
【エメラルドグリーン】 >>18
【もしも、心臓が宝石でできていたのならば】 >>26
【Fallen Angel】 >>27
【葡萄】 *>>29
【女の子】 >>30
【雪降る喫茶店にて】 >>31


■ news

0410 執筆開始
0429 とりけらとぷす様より、挿絵をいただきました。
0717 題名変更(元は【ガラスの夜】)
0814 haru会長。様より挿絵をいただきました。
0905 haru会長。様より挿絵をいただきました。
 
  

鳴らないオルゴール ( No.2 )
日時: 2016/07/23 10:37
名前: 亜咲 りん ◆1zvsspphqY (ID: Q19F44xv)
参照: 修正しました。

   
「ルアンさん。人魚って、本当にいると思いますか?」

 ふと、目の前にある背中に向けて、私はそんな質問をしてみる。
 大きくて、ぴんと伸びた背筋の、綺麗な背中。
 しばらくの間をおいて、彼が私を振り返った。

「どうしてそんな質問をするの?」

 目を優しく細めて笑う彼の顔はその背中よりも輝いていて、私をドキドキさせた。


 ここは、森の奥のオルゴール屋さん。
 滅多に人の寄りつかない、寂しい森だ。というか、森というよりジャングル、無人島のよう。
 人が生きることが困難な森。彼はそんな場所で暮らしていた。

 私が彼と出会ったのは、半年前のこと。
 私は友達とかくれんぼをしていて、森に隠れ、見つからなかったは良いものの、そのまま迷い込んでしまったのだ。
 まだ8歳だった私は、人一倍弱虫だった。 
 すぐに顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになって、母の名を呼びながら森を歩き回っていたときに、オルゴール屋さんを見つけたのだ。

 森に溶け込んでしまいそうなほど、寂れた建物。でも看板はしっかりと掲げられていて、幼い私には読めない字だったので、初めは何のお店かわからなかった。
 それでも、不安で一杯だった私の目には、それはとても神聖なものとして映った。
 『Open』という板が立てかけられた小さなドアの前に立って、コンコン、とノックをする。しん、とした森の中で、それはよく響き渡った。そしてその瞬間、優しい音色が扉の奥から流れ出した。

 ふわっ、と、私の世界が広がる。
 私を襲いかかるように囲んでいた木々は風に揺られて爽やかに光り、私の足下を邪魔していた植物たちは風邪に靡いて歌を歌いはじめた。
 この優しい音は__オルゴール?
 まるで、私の来店を歓迎するかのように、森は柔らかな色味を帯び始めた。
 すっ、とオルゴールは終わりを告げ、空に溶けていった。
 はっ、と周りを見渡すと、優しいオレンジ色の光が私を包み込んでいることに気づいた。

 森はもう光っているわけでもなく、植物も歌っていなかったけれど、私はもう森が怖いと感じなくなっていた。
   
 



続き→>>15

 

空色 ( No.3 )
日時: 2016/07/10 00:04
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: 友人から、眼鏡、病院、ひまわりをテーマにした話を書けと言われて笑

 
 ぱさ、と乾いた音がして、思わず目が醒めた。
 まだぼやけている視界に、開かれた窓と、揺れるカーテンが目に入る。どうやら窓を閉め忘れたまま寝ていたらしい、と反省し、私は簡素な椅子から重い身体を持ち上げた。

 カラカラ、と音を立てて閉まる小さな窓。
 この病室で彼女の様子を見るたびに、この閉塞感溢れる病室には、窓が必要なことがひしひしと伝わってくる。外の世界の様子がわかるのは、この窓の外の景色だけ。それはなんと寂しいことだろうか。

 ふぅ、とため息をつき、ベッドで死んだように眠る彼女を見る。青白い肌、痩せた頬、色素の抜けた髪。私よりも年老いた、たった1人の娘。あの頃の、ひまわりのように明るかった彼女はどこへ行ってしまったのだろう__

 胸が締め付けられるような思いとともにふと彼女の痩せた手元を見ると、なにかがきらり、と輝いた。
 思わず近寄って持ち上げてみると、それは淡い青色の眼鏡だった。
 誰だろう。今日は私しか彼女に会いに来ていないはず……
 はっ、としたときにはもう遅く、私はこの眼鏡をここに置いた人物の記憶が次々と浮かんでは消えていく。

 明るい茶色の髪をしたあの子。きっと、彼女の好きだった人だろう。



 高1の春。彼女はやっと、遅い初恋を私に告げた。
 相手は、同じクラスの爽やかな人気者。1度授業参観のときに彼と一緒にいる彼女を見たけど、2人の周りだけ雰囲気が柔らかく、ああ、これはきっと両想いなんだろうな、と思った。
 しかしある日雨の中、彼女は涙を流しながら家に帰ってきた。
 どうしたの、と聞くと、彼女は震える声でこう答えた。

「彼女がいたの」

 再び泣き始めた彼女を見ていたら、私の感情もお腹の中でぐるぐるとまわり、気付いたら雨が止むまでずっと二人で泣いていた。

「私、諦める。次の恋を探す」

 次の日、大分吹っ切れた様子の彼女は、いつも通りのひまわりのように明るい笑顔で家を出て行った。まだ泣いた跡は残っていたが、その姿には妙に清々しさを感じ、私も笑顔で手を振ることができた。
 大丈夫。あの子なら乗り越えて行ける。
 すっかり安心し、私も仕事に出かけた。
 その日彼女は、家に帰らなかった。いや、帰れなかった。

 連絡を受けて近くの病院に行くと、彼女は緊急手術を受けた後だった。
 交通事故だった。信号無視で交差点に突っ込んできた車にはねられたらしい。幸いにして、死に至る怪我は負わなかったが、彼女は脳の一部が損傷して後遺症が少し残り、さらに、くまなく撮ったレントゲン写真からは、闇が見つかってしまった。医者は私に、治すことは難しい、と静かに言った。

 私は彼女をそのまま入院させ、高校には休学届を出した。そして、彼女は外に出ることができなくなった。
 恋は人に、良くも悪くも活力を与えるという。そのチャンスさえも奪われた彼女は、毎日、まるで抜け殻のようだった。与えられた食事を淡々と食べ、消化していく、色の無い日々。

 彼はあれから1度もここに来ていない。そのはずだった。


「……お母さん」

 彼女の声に、私は現実世界に引き戻される。
 慌てて背中に手をそえると、頼りない身体が一生懸命震え、彼女はゆっくりとおきあがった。

「おはよう。今日はお寝坊さんね……」
「うん。……それ」
「眼鏡よ。……かけてみる?」
「……うん」

 弱々しく微笑み、どこか不思議そうに、彼女は眼鏡を受け取ってつけた。
 淡い青の眼鏡は、彼女の小さな顔にぴったりとはまっていて、まるで……

「……誰かと、約束をしてた気がする」

 ぽつり、と彼女がつぶやく。
 遠い遠い日の記憶を探るように、澄んだ瞳を窓の外に向けて、微笑む。

「お前に似合う眼鏡を買ってやるって、言われた気がするんだ」

 私はぴくり、と震えた。彼女は元々目が悪く、前まで使っていた眼鏡は事故で壊れ、今は常に裸眼だ。
 彼は、きっと、覚悟を決めて、約束を果たしにやってきたのだろう。自分が彼女を裏切った次の日に彼女が事故にあったから、罪の意識もあったのかもしれない。でも、この、ただの、でも大切な眼鏡を彼女に渡すために、ひっそりと彼は訪れたのだろう。

「そう言ったの、誰だったかなぁ」

 彼女はそう明るくつぶやいて、私の方を向いた。空虚な笑みが鈍く光っていた。
 残念なことに、彼女の記憶からは、彼の記憶は消えている。それが後遺症だった。でも、他に抜けている記憶は見当たらない。
 もしかしたら彼女は、自分からあの車に飛び込んだのかもしれない。
 辛い記憶を忘れて、美しい記憶だけで生きていくために。

「……誰でも良いじゃない」
「うん、そうだね」

 開く唇が、悲しみで震える。彼の想いはもう、彼女には届かないのか。
 すると、彼女は眼鏡を少し顔から浮かせ、首を傾げながら呟いた。

「そういえばなんでこれ、こんな色なんだろうね?」
「それは、あなたの名前だからじゃない?」

 ぽとっ、と彼女の手から眼鏡が滑り落ちた。
 どうしたんだろう、と思って彼女の顔を見ると、彼女の頬がまるで林檎のようになっていた。

「……おんなじこと、言わないで」

 誰か、というのは、やっぱりわからないのだろう。恥ずかしそうに呟きながらも、彼女の瞳は揺れていた。
 
 思わず視界が揺らぎ、熱いものが流れる。

 これで、最後ではないのだと、誰かが語りかけてきた気がした。
 


         ……end.
 

夕日の彼方 ( No.4 )
日時: 2016/04/25 18:58
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: visZl1mw)
参照: テーマ『海』『夕日』『梅干し』ww

 
「綺麗ね……」

 静かな海風に乗せて、静かに言葉を呟く。
 ざぁぁぁぁん、と波打つ海。その全てがオレンジ色に染まり、海辺には、私たち2人しかいなかった。

 今日で、私たちは付き合いはじめて1年。
 彼に一目惚れし、彼の靴に私の髪を入れたり、重要な書類を失くした、と言った彼に、その直前にとっておいたその書類を爽やかな笑顔で渡したり、お弁当を作ってきて渡したり、彼の靴箱に入っていたラブレターを切り裂いたりした。そして、彼も私を好きになり、付き合いはじめた。
 それからはもう、毎日が幸せで、幸せで、仕方なかった。彼女になったから、彼の髪だって簡単に採取できるし、書類だって苦労せずに見つけられるし、お弁当に私の髪の毛を少し入れたって全然不自然じゃないし、ラブレターなんかも無くなった。
 彼が笑えば私も笑い、彼が悲しめば私も泣く。彼は痛いくらい、素直な人だから。

「夕日をこんなにゆっくり眺めているの、久しぶりだわ」

 目を細め、今度は夕日に照らされた彼の顔を見る。
 色白の肌は彼の繊細でロマンチストな心を際立てている。ドライブで彼をここに連れてきたのは、きっと彼ならば夕日の美しさにため息をつくだろうと思ったからだ。

「夕日が海に反射してキラキラと輝いているわ。まるで__ダイヤモンドのようね」

 ゆっくりと口元をほころばせて、呟く。
 私はこの言葉からわかるように、この美しい黄昏の世界にうっとりとしていた。
 そしてまた彼も、だんだんと地平線の彼方へゆらゆらとゆれながら沈んでいく夕日を見て美しいと思__

「は? 梅干しじゃないか」
「……え?」

 ぱりん、と、世界が崩れた。ざぁぁぁぁん、と波打つ海。夕日が急速に沈んでいく。

「だから、夕日のどこがダイヤモンドに見えるの? 僕にはどう見てもばあちゃんがつけていた梅干しにしか見えないよ」

 いつもと変わらぬ表情で、淡々と呟く彼。

「さ、夕飯でも食べに行こうよ。いつも奢ってもらってばかりで助かるよ」

 そう言って彼は、すたすたと車へと戻っていく。
 私はそれを呆然と見ているばかりだった。



 次の日、私たちは別れた。
 今度はちゃんと、夕日の美しさと私の愛情をわかってくれる人を見つけようと思う。
 
             end.
 

The girl of Ugly duck ( No.5 )
日時: 2016/06/24 20:53
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: visZl1mw)
参照: お久しぶりです

 
 毎晩、私は1人、鏡を見る。
 そこにうつるのは、醜いアヒルの子。
 私は、私の顔が大っ嫌いだ。


 腫れぼったい一重まぶた、大きくて丸い鼻、歪んた唇、大きくて浮腫んだ顔。誰だって整ったパーツが1つくらいあってもいいものだと思うけれど、私はすべてが醜い。総合的にも、部分部分でも不細工だ。

 教室でふと辺りを見渡せば、可愛い女の子たちばかり。彼女たちは美しく空を飛ぶ白鳥。その美しいかんばせに麗しい笑みを浮かべて、男共を誘惑する。教室の隅で1人ひっそりと本を読む私と比べて、彼女たちはいつもきらきらと輝いていた。

 童話では、醜いアヒルの子は最後に美しい白鳥に変身して幸せになるけれど、現実は厳しい。ブスと美人は違いすぎる。ブスが美人になんかなれるわけがないのだ。

 毎晩、私は1人、鏡を見る。
 そこにうつるのは、安物の化粧品で醜い顔を覆った私。
 ファンデーションをして、口紅を塗ってみたけれど、やっぱり同じだ。
 どうして、どうして。神様は私という存在を造り間違えたのだろうか。
 鏡の前で、顔を掻き毟る。伸びて尖った爪でファンデーションが崩れ、私の膝の上に雫が落ちた。

 しかし卒業後、私は整形という魔法に出会ってしまった。
 顔を切られるのは少し抵抗があったけれど、1度してしまうと、もう抜け出せなかった。
 もっと目を大きく、鼻を高く、唇を綺麗に、顔を小さく!!!!!
 もう私は失敗作なんかじゃない。そう思いたかった。


 毎晩、私は1人、鏡を見る。
 そこにうつるのは、美しい顔。
 大きな二重まぶたの目、通った高い鼻筋、形のよい唇、シャープな顎。まるで人形のように整った私の顔。
 でも、あの子たちみたいな輝きはどこにも、どこにも、どこにも見つからない。

 いくらメスをいれても、私は私。何一つ変わらない。暗くて地味な、私のまま。
 なぜだろう。
 ……どうして?



 どれだけ容姿を変えても中身が同じなら変わらないということを知ったのは、私がもう手遅れになったときのことだった__





 

           ………end?
 

傷音 ( No.6 )
日時: 2016/07/30 14:31
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: 続き物。

 
 ずき、となにかが傷つく音がした。
 重く、鋭く、人のこころを削る音。俺は立ち止まって辺りを見渡す。誰かが、こころを痛めている。俺ではない、誰かが。
 ずきり、ずきり、とこころを蝕む音は消えず、俺は思わず頭をおさえた。
 突き刺さるように鳴り響く、傷を抉る音。それはいつもいつも、俺を苦しめる。


 幼い頃から、俺は不気味な音に悩まされていた。それは決まって、誰かが泣いているとき、怒っているときにばかりきこえた。
 鋭利な刃物で、なにかをぐりぐりと抉りとるような音。それ以外にも明るい音や、静かに響く音もきこえたが、よくきくのはその音ばかりだった。
 音の発生源は掴めても、その人自身にはなんの肉体的な損傷は見当たらない。
 ただ、俺は幼いながらも、なんとなく勘づいていた。
 これは、こころの音なんだ、と。

 周りの人にはこの変な能力のせいで、随分と気味悪がられた。
 誰かが悲しい気持ちでいると、俺はいつも元気が無くなる。音が不快だからだ。
 そのせいでぼぉっとすることも多く、母親にはよく怒られた。また、たまに喜びの音(ファンファーレのように聞こえる)もきこえるため、俺の精神は常に不安定だった。
 音から感情を先読みして、人のこころを読んだかのような発言もよくしていたので、俺は変な目で見られていた。
 結局、その不快な音は高校へ入学しても度々俺を悩ませ続けた。しかし、ここに来てやっと、俺のそんなところを認めてくれるクラスメイトに出会うことができた。もちろん、この力については話していないが。


 中学から着続けている半袖のカッターシャツを着て、放課後は街をぶらぶらと歩く。こんな人の多いところにいくと、感情の音に呑まれて精神が辛いのだが、それも訓練の一環だ。
 もうだいぶ慣れたが、未だに少し、吐き気はする。おまけに、この夏の暑さが、俺の気を滅入らせていた。
 それでも、どうせ、これからもきちんとこの力と向き合っていかなくてはならないのだから。

 道行く人たちは、笑っていたり、無表情だったり、様々だ。人の感情の音は、とても種類が多い。ただ、傷ついたときの音はなぜかだいたい一緒で。
 音をきくかぎり、人はいつもなにかしら傷ついているらしい。
 喜んでいても、次の瞬間に悲しみだしたり、怒りだしたりする。そういうとき、その音は凄まじい。人間は、悲しみや怒り、憎しみといった負の感情の方が多いのだろうか。
 今日もあちこちからきこえる、こころを突き刺すような、酷い音。耳にぎゅっと手を当てて、それをやり過ごす。

 ふと、立ち止まってショーウィンドーに映る俺の姿を見ると、耳を必死におさえている姿が、とても滑稽にみえた。
 まるで、雷を怖がる小さな子供みたいじゃないか。
 ふっ、と少し自嘲ぎみに笑うと、ぐるぐるした思考のまま、俺はオレンジ色から紫色に染まってきた空を見て、足を家の方向へと向けた。

 賑やかな街を出て少し歩くと、小さい頃よく遊んだ河原に出る。
 田舎ならではの澄んだ川の水の流れは、人の感情なんかよりも綺麗な音を響かせる。俺はこの場所を通る度、訓練で疲れきったこころが癒されていく心地がしていた。
 そうして、口元に無意識に笑みを浮かべながらその河原を通り抜けようとしたとき。
 音が、きこえてきた。

「……っ」

 思わずいつもとは違う理由で立ち止まってしまう。

「……la〜」

 透き通るような音。これは……歌声?
 響き渡る音は俺が今まできいたことのないほど美しい声で、なぜか色鮮やかだった。
 そう、たとえるなら、空色。青く、透き通った、美しい色。
 音に色は無い。そのはずなのに。

 気づくと俺は河原へと駆け下りていた。
 雑草の生い茂った堀のような坂をおり、音の発生源に近づくと。

 そこには、半袖のセーラー服を着た、ショートカットの少女の後ろ姿があった。








       ……to be continued……
 


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