複雑・ファジー小説
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- 先月の君に
- 日時: 2017/01/09 21:38
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
はい皆さんこんにちは!ひのりと言います!
今日からは、雑談掲示板の中で主に私の妄想力によってできちゃったお話を書きたいと思います
恋愛&ミステリーって感じで
どんな話になるのかは読んでからのおたのしみ!
ってことで、どうか暖かい目で見てやってください。
それではよろしくお願いします。
- Re: 先月の君に ( No.7 )
- 日時: 2017/01/14 16:11
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
「それで?話ってのは、彩とか、それ関係だろ?」
多目的教室に入るなり、大樹は早速口を開く。
それに、波人は「あぁ」と言う。
「さっきの授業の間に考えたんだけど、彩を救うのに、一ヶ月なんて期間は長すぎると思うんだ」
「確かに……。事故があった当日に動けば、その日は救えるだろうし」
「あぁ……それで、色々考えたんだけどさ」
波人は、大樹の方を見ると、少しだけ言いづらそうに目を逸らしてから、ゆっくりと言った。
「彩は……他殺だったんじゃないか、って」
その言葉に、大樹の目は大きく見開かれる。
「……他殺……?」
「そう、他殺。だって、事故なら、その事故さえ防げばいいのだから、こんなに期間を置く必要はない。でも、他殺なら話は別だ。犯人が、純粋に殺しを楽しむような人間だった場合はまだ裏山に行かないという方法もあるが、彩個人に恨みはある場合は違う。犯人を特定しない限り、また、彩が殺される可能性が高い」
大樹は、しばらくその話を聞いた後で、ゴクッと生唾を飲み込んだ。
その様子を見た波人は、顎に手を当て、しばらく考える。
「……とにかく、今日の放課後に、裏山に行ってみよう。そこで、何か分かるかもしれないし」
「そう、だな……分かった」
それから、二人は教室に戻り、残りの授業を受けた。
6限目の授業が終わると、すぐに二人は身支度をして、教室を飛び出した。
制服のまま裏山に行くと、階段状に整えられた地面を上がっていく。
しばらく上がると、古びた遊具やベンチが置かれた、小さな公園のような場所に出る。
広場になっていたため、遊具などを置いて、簡素な児童公園にしたものだ。
「彩が流星群を見たのは……多分、ここか?」
「そうだな……それで、落ちた池っていうのは……」
波人はしばらく辺りを見渡すと、公園から少し離れた場所に、大きな池があるのを見つけた。
近づいてみると、そこは、岩で囲まれた、綺麗な池だった。
「波人!」
大樹は、慌てて波人の後を追いかけて池の元に駆け寄る。
しかし、その時に池を囲む岩に足を引っかけ、そのまま彼は池の中に落下し、びしょ濡れになった。
「ブハッ!ゲホッ……」
池は、立ち上がった大樹の腹くらいまでの深さがあった。
それを見た波人は、微かに目を見開く。
「大樹。お前、身長ってどれくらいだっけ?」
「んぁ?173……だけど?」
「お前で、身長は173……確か、彩は155だから、お前の肩より少し高い程度……」
ブツブツと言いながら悩む波人を無視して、大樹は水から上がる。
近くには波人しかいないし、そこまで人目に付かない場所なので、大樹は濡れた制服を脱ぎ、鞄から体操服を出す。
ズボンを履き替えようと思ったところで、大樹は、下着までビショビショになってしまったことに気付いた。
「おい波人〜。パンツの予備とか持ってねぇか〜?」
冗談半分で大樹はそう聞くが、波人は聞く耳を持たない。
外でパンツ一丁になっている幼馴染がいるにも関わらず、それを咎める様子もなく、考え込んでいる。
その様子に、大樹は少しムッとしつつ、仕方なく濡れた下着の上に半パンを履いてから、その上に長ズボンのジャージを履いて、上半身には、体操服とジャージを着る。
大樹が着替え終わるのと同時に、波人は「やっぱり……」と呟く。
「なんだ?やっぱりパンツの予備持ってたのか?だったら貸してくれよ。俺のパンツ濡れてて……」
「そうじゃなくて。この池……」
波人の言葉に、大樹は池に目を向ける。
相変わらず、大きくて、綺麗な池。
「この池が……どうした?」
「お前で、腹までの深さだろ?彩は、あくまでお前の肩くらいの身長。夜だからって、彩だって、池で立てないわけがないんだよ」
「……ってことは!」
大樹の声に、波人は静かに頷いた。
「彩は……あの日、誰かに殺されたってことだ……」
- Re: 先月の君に ( No.8 )
- 日時: 2017/01/14 21:13
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
翌日、学校に行く街を歩きながら大樹は、昨日の波人の言葉を思い出していた。
『彩は……あの日、誰かに殺されたってことだ……』
「なんで、彩が……」
「呼んだ?」
一人呟いた時、突如、顔を覗き込んできた彩に、大樹は「うおわッ!」と声をあげた。
それがあまりにも大きな声だったため、彩も驚いて、「何よ!?」と抗議する。
「大樹がなんか落ち込んだ様子で歩いてたから、どうしたのかなーと思ってしばらく様子見てたら、彩って……私の名前呼ぶんだもん。てっきり気付いてると思ったのに」
「呼んでねぇよ!あー……あれだ。あやとりの話だよ」
「あやとりで何するつもりなのよ?」
「何もしねぇよ!ただあやとりしてぇなーくらいの考えだよ」
大樹の言葉に、彩はしばらくジト目で見た。
「大樹。嘘ついてるでしょ」
「はぁ!?なんでそうなるんだよ!」
「大樹の考えてることなんて、ちゃーんと分かるんだからね!それに、嘘ついてるかどうかなんて、視線とか、体の動きとかで分かるって、前に波人に教えてもらったし」
「あの野郎〜」
今目の前にいない幼馴染に怒りを抱きながら、大樹と彩は登校した。
すると、玄関では、意外な人物が会話をしているのが見えた。
「博子さん……ッ!?と、波人……?」
そこでは、波人と博子が、何やら話しているのが見えた。
博子は、どこか楽しそうに笑っているが、波人の方は愛想笑いをしているのが目に見えて分かった。
大樹達は邪魔しないようにと配慮しようとしたが、それより先に、波人が「おっ」と言って、二人を見つけた。
「彩、大樹っ」
「あ、はは……ばれてらぁ」
名前を呼ばれ、大樹は苦笑しながら歩いて行く。
「おぉ、おはよう、波人。……と、博子、さん……」
「フフッ。ごきげんよう、霧島君」
そう言って微笑む博子に、大樹は顔を赤くして、口をパクパクさせる。
彩はそれにムッとして、大樹の脇を肘で突き、「おはよう。栗原さん」と挨拶する。
「ごきげんよう、斉藤さん。お二人は、仲が良いのですね」
同級生にも関わらず、敬語を使う博子。幼いころからの英才教育の賜物である。
そんな彼女に、大樹はさらに緊張してしまい、耳まで顔を真っ赤にしながら、なんとか何か言おうとしているが、それは言葉にならない。
代わりに、彩が「うん」と答える。
「私と大樹、それから、波人は幼馴染で、ずっと友達なんだ」
「あらまぁ。フフッ。毎日仲が良さそうで、羨ましいわ。それじゃあ、私はお先に失礼しますね。ごきげんよう」
そう言って、去って行く博子。
しばらくして、大樹は「おいおいおい!」と波人に詰め寄る。
「なんでお前が博子さんと話してんだよ!?お前と!博子さんが!なんで!?」
「俺に聞かれても困るって……ただ、朝の挨拶と、ちょっとした社交辞令で会話してただけ」
「にしても、波人と博子さん。お似合いだと思うなぁ。美男美女って感じで」
確かに、波人の顔は整っていて、俗にいうイケメンだ。
クラスのマドンナである博子と並べば、それはもうお似合いのカップルになるだろう。
しかし、そう言われた波人は、どこか悲しそうな顔で、「……そうか?」と言う。
「うん!絶対そうだって!」
「でも、俺ああいうタイプ興味ないからなぁ……悪いけど」
「えぇ〜!?じゃあどういうのがタイプなんだよ?」
「貧乳」
「即答かよ!?」
大樹はそうツッコミながら、なんとなく、隣にいる彩の胸に目をやった。
それから、博子の姿を頭に思い浮かべてみた。
「……なるほどねぇ」
「何にやけてんだよ。気持ち悪いぞ」
そう言って、波人は大樹の頭を軽く小突いた。
すると、近くにいた、以前、霧波がどうとか言って騒いでいた女子から、黄色の悲鳴があがった。
「そういえば、この間、アイツ等が……霧波、とかなんとか言ってたんだけど」
大樹の言葉に、波人はしばらく上を向いて考えた後で、「あー……」と言った。
「分かるか?」
「……いや、サッパリ分からないよ。でもまぁ、大樹は気にする必要ないから」
「なんでそう言い切れるんだよ〜。本当は分かってんだろ〜?彩は分かるか?」
「霧波かぁ。大樹は知らない方が良いよ……うん」
彩は、そう言ってフイッと目を逸らした。
それに、大樹はますます不満になって、「教えろよ〜」と言った。
「あははっ。まっ、いずれ分かるだろ。それより大樹……」
波人は、話題を逸らすように大樹の名前を呼び、彼の耳に口を寄せた。
「今日の昼休憩。飯食い終わったら多目的教室集合な」
「……おう」
「ちょっと〜。二人で何内緒話してるの〜?私にも教えて〜!」
「霧波について教えてくれないから、や〜だね〜!」
「何を〜!」
彩は、そう言うと大樹に掴みかかった。
大樹はそれをかわして、逆に彩に絞め技を放つ。
それを波人が止めて、三人で笑い合う。
そんな、どこにでもあるような平穏な日常の裏で、彼らは人知れず、少女を救うために動いてく。
- Re: 先月の君に ( No.9 )
- 日時: 2017/01/15 17:51
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
「それで……昨日は確か、彩が他殺だってことが分かったんだっけ?」
多目的教室に着くなり、大樹は波人にそう聞く。
波人は頷き、スマートフォンを取り出した。
「夜なら暗いし、昨日の大樹みたいに、落ちることまでは分かる。でも、死ぬほどでも無いだろう」
「じゃあ、頭を打った場合はどうだ?下砂利だし、それだったら、事故で済むんじゃ?」
大樹の言葉に、波人は首を横に振る。
「水の浮力もあるし、咄嗟に手とかも出るだろうから、可能性は低いよ」
「そうか……でも、じゃあ誰がそんなことすんだよ?彩に恨みがある人間なんて……」
「分からないって。とにかく、情報をもっと集めないといけない……」
波人の苦しげな言葉に、大樹はそれ以上言及することもできず、結局、その日はお開きとなった。
教室に入ると、彩は、二人が入ってきたことを目敏く見つけ、すぐに駆け寄った。
「おかえり!大樹、波人!何してたの?」
「別になんでもない。それより彩。最近、誰かの恨みを買うようなことしたか?」
波人の問いに、彩は「急にどうしたの?」と聞く。
「人から恨みって……何?私を呪う現場でも目撃しちゃった?」
「いや、えっと……そ、そうなんだ!さっき校舎裏を二人で腹ごなしに散歩してたら、布の小さな人型のぬいぐるみに、赤い文字で、彩って書かれて、釘刺されたり、色々されてるのがあってさぁ」
「何それこわーい」
咄嗟に出た嘘は信じて貰えたようで、彩は自分の体を抱きしめるようにして肩を震わせた。
とはいえ、呪いなどを信じる人間でもないので、そこまで重く考えるつもりはないらしく、あくまで面白がるような様子ではあった。
それに、呪いというのも嘘ではない。結局、ここで犯人が特定できなければ、彩は殺されるのだから。
「それで、そこまでされるような覚えとか、ないのか?」
「そんなこと言われても……誰かの悪口言ったことも、友達と喧嘩もしたこともないもん。分かんないよ」
「無意識なんじゃねぇの?殺されるくらい恨みを買ったことがあるかどうか、とか」
「そんなの、分かるわけないじゃん」
彩は、眉をハの字にして言った。どうやら、少し不機嫌になっているらしい。
そりゃそうだ。自分を呪ってまで殺そうとする人間がいるなんて、普通考えたくもない。
波人も、それをなんとなく感じたのか、「そうか……だったら良いんだけど」と言って、その話題は終わらせた。
しかし、この後どうすればいいか……。
「ていうか、その呪いの人形見せてよ。筆跡とかで分かるかもしれないし」
ゆっくり考えようとした矢先、彩から、そんな爆弾発言をされた。
唐突なその言葉に、二人は困惑する。
「い、いや、彩は見ない方が良いって……そうだ!呪いの現場を呪われた本人が見ると、その呪いが直接相手に行くって聞いたことあるぞ!」
「えぇー……本当?」
訝しむ彩に、大樹は「本当、本当」と言って、ガクガクと頷く。
それに、しばらく眉間に皺を寄せていた彩も、「そっか……」と言って俯いた。
「じゃあ、波人も大樹も、早く犯人見つけてね?私、ソイツ見つけたら、直接ぶん殴ってやるんだから!」
彩が言った時、教室の扉がガララッと音を立てて開いた。
開けたのは博子で、相変わらず長い黒髪を揺らしながら、歩いてくる。
すると、近くにいた三人に気付き、「あら?」と口を開いた。
「どうしたの?三人揃って、何か盛り上がってるみたいですわね?」
「あ、えぇっと……」
相変わらず緊張する大樹に変わって、波人が、「栗原さんには関係ないよ」と言った。
その言葉に、博子は目を見開き、しばらく呆然とした後で、「……そう」と言う。
「ごめんなさいね。お邪魔しちゃったみたいで。それじゃあ、私はこの辺で……」
博子は、そう言うと少しだけ瞳に悲しみの色を浮かべ、顔を背けた。
そして、スタスタと歩いて自分の席に向かう。
しばらくしてから、大樹はぶはぁっと息を吐く。
「緊張したぁ……まさか、博子さんが来るなんて……」
その言葉に、彩はしばらく間を置いた後で、「大樹はさ」と口を開く。
「ああいうタイプが好きなの?あんな、お嬢様みたいな、上品なタイプが」
「なんだよ。お前には関係ないだろ」
自分の好きな人に文句をつけるように感じたのか、大樹は、少しムッとした言い方で言う。
その反応に、彩は、しばらく悲しそうな顔をした後で、「……そう」と言った。
その時、チャイムが鳴ったので、三人はそれぞれ自分の席につき、残りの授業を受けた。
- Re: 先月の君に ( No.10 )
- 日時: 2017/01/15 22:42
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
「はぁ……自業自得とはいえ、面倒だな……」
極薄の金属の板を眺めながら、ひのりは呟いた。
この世界は、大樹達の世界から千年以上未来の、3×××年。
以前説明した無性別化の他に、技術の発展、地球温暖化の解消、戦争の鎮静化など、全ての問題が取り除かれた、いわば理想郷。
そんな世界でできた職業の一つ、時の調査人。通称、タイムトラベラー。
その職業になるための学科に通うひのりは、先日、過去の人間と関わった挙句、無断で過去に送ったりなどをしたため、罰として、反省文を書かされていた。
本当なら、留年などにもなりかねない問題ではあるが、普段の成績と真面目な生活態度と、それが正しい歴史への修正活動だったために、反省文だけで済んだのだ。
「それにしても、やるじゃん?歴史の修正なんて、中々できることじゃないぜ」
ひのりが書き終えた反省文を見返していた時、隣で、実習のレポートを書いていた、友人のゆきが、そう言って笑った。
「うるさい。後で釘バットで殴るよ」
「こえーなおい。つか持ってねぇだろ」
ひのりの謎の脅しに、ゆきはあくまで笑っていた。
それに、ひのりは呆れた様子でため息をつき、端末を脇に抱えた。
「それじゃあ、僕提出してくるから」
「はいはい。あ、そういえばさ……」
提出に行こうとしたひのりを、ゆきは呼び止める。
まぁ、締め切りはその日の放課後までなので、ひのりは立ち止まり、「何?」と聞き返す。
「少し気になったんだけど、未来人である俺達が関わることで正しくなる歴史なんて、今まであったか?」
ゆきの言葉に、一瞬、ひのりが端末を握る力が強くなった。
彼は、しばらく黙った後で、続けた。
「もしかして、お前が修正した、その……殺人事件って……犯人は俺達の時代の人間なんじゃ……」
それを聞いた瞬間、ひのりは、教室を飛び出した。
廊下を走り、コンピュータ室に入る。
ひのり達生徒に配布された端末は、ノートの代用が主な目的で、教科書のデータと、自由に記入ができるノートのテキスト機能しかない。
だから、インターネットを利用するには、コンピュータ室にあるものを使うしかない。
ひのりは、すぐに手近なPC端末を起動し、薄いガラスのような板に、キーボードの文字が光になって浮き出たものを使って、自分のユーザー名と、パスワードを打ち込む。
そして、ユーザーページに入れるや否や、インターネットに接続し、現在、歴史調査中のタイムトラベラーを調べる。
やがて、大樹達のいる時代を調査中のタイムトラベラーのページに辿り着き、ひのりは、とある文字を見て固まった。
「そんな……嘘だろ……」
とある一文。それを見て、ひのりの体は動きを止めた。
黒目の部分が震え、段々、顔面蒼白になっていく。
———なぜ気付かなかった?気付くチャンスは、いくらでもあったハズだろ!
頭の中で自分を攻め、ひのりは机の上で頭を抱えた。
———しかし、時間が無い。とにかく彼に伝えなければ。
その思いで、彼はすぐに立ち上がり、PC端末のシャットダウンも、自分用の極薄の端末を持つのも忘れ、走って、タイムマシンがある部屋に向かう。
やがて、金属の極厚の扉の前に立ち、扉をバンバンと叩く。
「開けてください!大変なんです!開けてください!」
やがて、中から出てきた先生や生徒をも押しのけ、大樹達のいる時代をタイムマシンに打ち込む。
そして、実習生用の腕時計型のタイムマシンを腕に巻き、ひのりはその中に飛び込んだ。
タイムマシンに打ち込まれた日付が、彩の死んだ当日であることにも気付かずに。
- Re: 先月の君に ( No.11 )
- 日時: 2017/01/16 18:16
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
結局、彩の死が他殺であることに気づいてから、特に収穫もないまま、一ヶ月という期間はあっという間に過ぎていった。
そして、ついに、彩の死ぬ日になってしまう。
「どうすりゃ良いんだ……このままじゃ、彩が死んじまう……」
多目的教室にて、大樹は重々しく呟いた。
それに、波人は大樹に背を向けたまま応える。
「……とにかく、大樹は今日、彩と一緒に流星群を見に行け。俺は、その間に犯人を捜しておくから」
波人の言葉に、大樹は曖昧に頷いた。
その反応に、波人は大樹から離れ、多目的教室を出た。
しかし、彼がいなくなってからも、大樹は不安で、動くことができなかった。
「今、一人?」
その時、教室の扉の所から、誰かが声をかけてきた。
大樹は顔を上げ、その姿に目を見開く。
「ひのり……ッ!」
「お久しぶり、霧島君。金坂君は、一緒じゃないんだ?」
「あ、あぁ……」
わざわざ過去まで戻してもらったのに、犯人を特定できなかった。
そのことから、ひのりへの罪悪感が腹の奥で膨れ上がり、大樹は俯いた。
「なぁ、ひのり……あの……」
「……犯人なら、分かったよ」
唐突に告げられた言葉に、大樹は顔を上げる。
ひのりは「本当なら、金坂君もいた方が良かったんだけど……」と言い、大樹の耳元に口を寄せた。
「犯人は……———」
−−−
夜。暗い裏山を、二人の男女が階段を上っていく。
「ホラ!やっぱり私が言った通り、ここなら他に光もないし、星空が綺麗に見えるでしょ?」
無い胸を張りながら、彩は少し威張って見せた。
それに、大樹は「はいはい」と苦笑して、地面に作られた階段を上っていく。
やがて、二人は小さな公園に着き、ベンチに座った。
大樹は無意識に、ベンチの後ろを見た。
———この近くに、犯人がいる……。でも、きっと彼が守ってくれるハズだ。いざとなったら、俺が彩を……。
「でも、大樹が来てくれるとは思わなかったよ。こういうの興味なさそうだし」
「ま、まぁな!お前鈍くさいし、俺がついてやらねぇと心配だから!」
「ひっどーい!」
彩の不満げな声に、大樹はフッと微笑む。
———確かに、俺は博子さんが好き。でも、本当に大切なのは……———。
「ねぇ、大樹」
「なんだ?」
「実は、今日……伝えたいことがあって……」
彩の言葉に、大樹は姿勢を正す。
しばらく静寂が流れた後で、彩は、口を開く。
「あのね、私……———」
その時、二人は気付かなかった。
ゆっくりと、後ろから近づく陰に。
草や、枝を踏んで音を出さないように、細心の注意を払いながら、忍び寄る影。
やがて、それは踏み込……———
「やっぱり……貴方だったんですね」
———……もうとしたところで、背後から聴こえた声に、その影は止まる。
見ると、そこには、中性的な顔立ちの少年……ひのりが、立っていた。
彼は悲しそうな顔で、ゆっくりと近づいた。
「なんで……」
「僕の説明は後。それより、なんでこんなことをしたんですか……?」
ひのりは、一度深呼吸をして、目の前にいる彼の名を呼ぶ。
「……金坂君」