複雑・ファジー小説
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- 紫陽花手帖
- 日時: 2017/09/25 21:38
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: cFBA8MLZ)
- 参照: https://www.fastpic.jp/images.php?file=3528318263.png
大切なら、できるだけぶっきらぼうに、不器用に、無愛想に、壊してゆこう。
*かたちないものに、幸福を >>01
*或るところに、花と夕陽が御座いました >>02
*毒林檎と彼女 >>03
*やがて蝶になる >>04
*咎人 >>05
*イミテーション >>06
*優しいひと >>07
*過ぎ去りし日の >>08
*大切で大切な大切 >>09
*迷いそうなあなたの道しるべとなれるように >>11
*曖昧な >>12
*抱きしめて今夜 >>13
*不確かで、けれど、愛おしい世界 >>15
『小夜日記』 >>10 >>14
- Re: 紫陽花手帖 ( No.11 )
- 日時: 2017/09/02 17:05
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
- 参照: 迷いそうなあなたの道しるべとなれるように
迷いそうなあなたの道しるべとなれるように。私はいつも、赤い傘を差している。
水たまりに飛び込む無邪気なあなたを泥から守れるように。私はいつも、青いレインブーツを履いている。
雨の中に飛び出す奔放なあなたの身体が冷えきってしまわぬように。私はいつも、黄色いレインコートを羽織っている。
突然に降り出した雨は大地を濡らし、柔らかくしていく。人の心も、天の神様の心も、川の心も。
アスファルトの隙間に溜まったちっぽけな雨水は、踏みつければどこかへ消えてゆく。
黒猫は雨に打たれて、もう動かない。
街に雨が、降り注ぐ。いつまでも、いつまでも。
この雨が止むまで、私はあなたと共にいよう。いつかこの罪が、赦される日まで。
迷いそうな私の道しるべとなれるように。どうかいつまでも、赤い傘を差していて。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.12 )
- 日時: 2017/09/10 18:59
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
- 参照: 曖昧な
彼女の描く世界はひどく曖昧で、天邪鬼だ。
デッサンをしろ、と言われて描いたものはひどく正確なのに、自由に描け、と言われると、途端にひどく曖昧になる。彼女がペガサスだ、と言うものはユニコーンだし、笑ってる女の子だよ、と言うものは泣いている男の子だった。
人間を描けば、それは死んでいる、と言う。私の描く人間はみんな死者で、生きているものはいないのだ、と彼女は言った。
この前、クラスでペアになってお互いを描こうという授業があった。僕と彼女がペアになって、僕は彼女を描いた。僕は美術部なので、多分よく描けていたのだと思う。先生も褒めてくれた。
天邪鬼な彼女の方も珍しく、写真みたいに僕のことを描いていて、先生も驚いていた(先生は美術部の顧問だ)。目が一重になっていたり、鼻の穴が3つになっている、なんてことは無かった。普通に、上手な絵だった。
けれど、そこに色がついた瞬間、世界は一気に曖昧になった。彼女は、肌を紫のような、そうでないような不思議な色で塗り、僕の茶色の髪は黒く染めた。
流石にこれはいたずらが過ぎると思ったので、『いい加減にしろよ』と言うと、彼女はぽつり、と呟いた。
『私は死者しか描けないんだよ』
その絵が完成して、もう1週間が経つ。
僕は、曖昧なものになった。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.13 )
- 日時: 2017/09/17 23:14
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: IYJ40KJQ)
- 参照: 抱きしめて今夜
「なんか……時々抱きしめられたくなる」
もう10年来のつき合いとなる、ぶてぶてしい親友はそう言った。
「彼氏にでも抱きしめてもらえば?」
彼氏いない歴=年齢の私は、苦々しげにそう返す。
「違う。女の子に抱きしめられたいの。女の子は柔らかいし、あったかいし、いい匂いするし、さ」
結局、何だかんだ言って一番包容力があるのはこたつじゃね??って感じで、その話は終わったと思う。
私は、抱きしめたい側だ、と彼女の呟きを聞きながら思った。
女の子はかわいい。柔らかいし、あったかいし、いい匂いがする。私と違って、私以外の女の子は、みんなそんな感じがする。
かわいい人、綺麗な人、美しい人を見ると、触れたくなる。そのかわいさ、綺麗さ、美しさを吸い上げて、自分のものにする。醜い自分は、もう嫌なんだ。
女の子を抱きしめて、触れて、自分とは違うその体温を噛み締める。
私は、小柄な女の子より、長い髪が口許にふわりと触れる、背の高い女の子を抱きしめたいです。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.14 )
- 日時: 2017/09/18 22:12
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: v7ZN/YIy)
- 参照: 小夜日記②
最近涼しくなってきましたね。俳句でも詠みたい気分です……文芸部の方で詠んできます(笑)
本を読みました。久しぶりに。あ、今までも読んでいましたよ。でも、最近は読んでなかったんです。
大好きな読書に苦痛を感じ始めたのは、確かこの春くらいから。
読み始めると、つっかえるようになりました。なんか、英文を読んでいるみたいに、1度脳内で復唱して、日本語に訳す感じ。違う言語のものを読んでいるような、ほんの少し苦痛を感じる状態です。英語大っ嫌いなので。
色々理由を考えてみたのですが、多分、自分、という存在が固まってきたからかな、と。自分とは何か、自分とはどういった人間か。それがわかってきて、読書という、ある意味他人の思考、信念、人格を受け入れる行為を拒否してしまうんじゃないか。
私、読書は子供の頃にしておくべきだと思います。高校生とかになってから読むのは遅いです。ずっと読書をしてこなかった友人は、本を読もうとすると目眩がするそうです。小さい頃から習慣をつけないと、読書を受け入れるのは難しそうです。
そして、子供というのは、まだまだ自我が定まりきっていないのではないかな、と思います。人は生まれて自分で息をして、泣いたり笑ったりして、自分とは何かを探してゆくのでしょう。赤ちゃんの頃から自我があるのか、というのは専門家ではないので詳しく語らないでおきます。わからないし(笑)
反抗期を終える頃が、自我が定まる頃かも。親から離れ、自立する。その瞬間から、自分が「親から生まれた人間」ではなく、「自分という人間」になる。そして、本が読めなくなる、という訳ですね。
私は昔っから、人の話を聞かない子供でした。今でも、人のアドバイスとか聞き入れないことの方が多いです。いや、聞き入れられない、か。
だからこそ、本が読めなくなったのかもしれませんね。他の本好きさんは、特にそんなこともなく過ごしてらっしゃるようですし。
でも、また読書が好きになる日が来ると思います。完全に大人になって(そもそもいつ大人になるの? どうなったら大人?)、社会の荒波に揉まれたとき、「自分って何だろうな」と、子供みたいに自我が曖昧になる。そしたら、本を読めばいい。他人を受け入れて、自分のものにする。読書は、学ぶこと、なんて苦痛めいたものなんかじゃない。ただ、そこにいて、私と貴方を待っています。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.15 )
- 日時: 2017/10/07 00:40
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: jbrtekHj)
- 参照: 不確かで、けれど、愛おしい世界
この世は不確かなものこそが美しい。
行けたら行く、という約束も、忙しいと言う彼とのデートの約束も、ケーキ屋さんの旬のフルーツケーキも。
確実なものほど、つまらないものはない。
ショートケーキの上に乗っかる苺だとか、チョコレートケーキのチョコレートだとか、学校の友達だとか。
幼馴染は、確実で不確かなもの。見えない糸で繋がれている。時々離れたり、近づいたりしながら、ずっと繋がっている。
毎日会えない日々も、毎日会える日々も、すべてが愛おしい。
切りすぎた前髪も、剃りすぎた眉毛も、抜け落ちた眉毛も、跳ねた毛先も、角度の小さなショートケーキでさえも。
世界は不確かで、確実に愛おしいものだらけだ。