複雑・ファジー小説
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- 紫陽花手帖
- 日時: 2017/09/25 21:38
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: cFBA8MLZ)
- 参照: https://www.fastpic.jp/images.php?file=3528318263.png
大切なら、できるだけぶっきらぼうに、不器用に、無愛想に、壊してゆこう。
*かたちないものに、幸福を >>01
*或るところに、花と夕陽が御座いました >>02
*毒林檎と彼女 >>03
*やがて蝶になる >>04
*咎人 >>05
*イミテーション >>06
*優しいひと >>07
*過ぎ去りし日の >>08
*大切で大切な大切 >>09
*迷いそうなあなたの道しるべとなれるように >>11
*曖昧な >>12
*抱きしめて今夜 >>13
*不確かで、けれど、愛おしい世界 >>15
『小夜日記』 >>10 >>14
- Re: 紫陽花手帖 ( No.6 )
- 日時: 2017/08/04 19:17
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
- 参照: イミテーション
そこに映っている貴女は、本物ですか。
鏡に映っている、白いワンピースを着た女の子。それが自分だって言い切れる、証拠はありますか。
ショーウィンドウも鏡も透き通った湖も、自分を映す道具だって、私たちは知っている。それはそう教えられたからで、実際にどうなのかは知らない。私たちは、何故人間は死ぬのかも知らない。物事の本当の理由は、何も知らないのだ。
無知とは愚かだ。
「知らなかった。これをやってはいけないなんて、知らなかった教えてもらえなかっただから許してください」
私は、悪くない。
私たちは、人間が人間である理由なんて知らない。何故地球が生まれたのかも知らない。何故生きているのかも知らない。私の本当の気持ちなんて、誰にもわかりゃしない。
鏡の割れる、音がした。赤い液体が、私の手から流れている。
ねえ、教えてよ。
そこに映っている私は、本物ですか。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.7 )
- 日時: 2017/08/07 07:37
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
- 参照: 優しいひと
優しさ、という言葉の意味を履き違えているような気がした。
幼馴染みである彼女は、今現在付き合っている彼のことを「優しい人」と言った。それはただの惚気のように聞こえるけれど、真実を知っている私は、とてもそうは思えなかった。
「私、この間彼のスマホを壊してしまったんやけど、彼は怒らへんかってん。丁度買い換えようと思ってたとこやし大丈夫、って。ほんま優しい人やわぁ」
お酒に半分呑まれかけている彼女は、頬を赤く染めて嬉しそうに笑っていた。
私は1度、彼女のスマホを壊してしまったことがある。学生の頃、彼女の家で。毎年、夏休みはどちらかの家に1度は泊まるのが、私たちの当たり前だった。
そのときの怒り様はすごかった。私に喚き散らし、最後にはため息をついた。画面が割れたくらいならまだマシだったかもしれないけれど、運の悪いことに、彼女のスマホの電源がつかなくなってしまったのだ。しかも、彼女は最近そのスマホを買ったばかりで。怒るのも当たり前だった。
「スマホを壊したって、画面割れだけ?」
少し気になって、聞いてみる。
「ううん、電源もつかへんくなってた。申し訳ないことしたなぁ」
でも笑って許してくれたし、と彼女はまた笑う。それはおかしい、と私は思った。
人は大切なものを壊されたとき、怒り狂い、それを壊した張本人をひたすら憎む。スマホは現代において、人間にとってとても大切なものだ。無かったら、多分生活できないくらいに。
そんなものを壊されて尚、笑って許したということは、彼にとってそのスマホはそんなに大切ではなかったことになる。もしかして、それは偽物だったんじゃあないだろうか。彼女みたいに。
気づけば彼女は隣ですうすう、と寝息を立てていた。きっと、仕事で疲れていたのだろう。お酒が回って、寝てしまったらしい。酔っ払いは色々なタイプがいる。
1人になってしまった。けれど、私は少し安心してしていた。だって、私は彼女の言う彼と、付き合っていたのだから。
彼がスマホを2台持っているのは知っていた。1度何故、と聞いたところ、仕事の都合、と言っていたけれど、今思えば、そういうことをするためだとはっきりとわかる。なんて奴だ。
彼女用のスマホと、私用のスマホ。最後に彼に会ったとき、スマホは壊れていなかった。ということは多分、彼にとって、彼女は大切なものではなかったのだろう。少なくとも、私よりかは。
まったく。ため息が出る。そんな男に騙されてしまった私と彼女が馬鹿みたい。彼はもちろん、私たちが幼馴染みであるということを知らない。なんて偶然だろう、と思った。
彼が彼女とも付き合っている、と知ったのは1週間ほど前のことだった。彼女が恥ずかしそうに、「実は彼氏ができたん」と、実名を明かしてくれたのがきっかけだ。
私は彼女を傷つけたくなかった。初心な彼女は、彼氏ができたのはそれが初めてで。そんな彼女の初めての恋を、奪いたくなかった。
だから、私は彼を懲らしめようと思う。彼とは1週間ほど前、つまりは彼女とも付き合っていると気づいたときに別れている。とても一方的で、理由も明かさずに別れを切り出したので、彼は必死に私を引き留めようとしていたけれど、私は止まらなかった。
彼はそれなりの地位にいる人間だったので、まずは彼の浮気癖を周囲に露呈させようかと私は思っている。彼女が気づかないように。どうやって、かはまだ考えていない。けれど、きっとできるはず。
隣で幸せそうに寝息を立てている彼女の髪を、そっと撫でる。お酒の力を借りてもなお、暴言に近い会話を交わすことしかできない私たちは、きっと、お互いを大切に思っている。だからこそ、優しさ、なんて見せない。優しさとはそういうものだと私は思っている。
「……愛してんで、バーカ」
な。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.8 )
- 日時: 2017/08/15 19:14
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: vVtocYXo)
- 参照: 過ぎ去りし日の
過ぎ去ったものに名前をつけるのは好きじゃない。
誰々が傷ついたから、誰々が苦しんだから、誰々が死んだから、誰々が生まれたから、誰々が喜んだから、誰々が悲しんだから。
人間は忙しい。生まれたときから、心臓が止まることはないのだから。
誕生日を執拗に伝えたがる友人は、きっと自分が生きていることに執着している。プレゼントがほしい、お金が欲しい。私という人間は、生き続けている。
恋人と付き合った日をカレンダーに赤丸で示している友人は、きっと愛を探している。もし別れてしまいそうになったとき、そこに愛があったことを思い出せるように。
人間は、過去に縋って、生きている。
黙祷。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.9 )
- 日時: 2017/08/21 19:04
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
- 参照: 大切で大切な大切
君は簡単に大切って言うんだね。すぐに壊れてしまうのに。
君は簡単に大切になるんだね。すぐに壊れてしまうのに。
君は簡単に大切を壊すんだね。すぐに壊れてしまうから。
君は簡単に大切を作るんだね。すぐに壊れてしまうから。
君は簡単に大切を扱うんだね。すぐに壊れてしまうから。
だから君は大切に大切を壊すんだね。すぐに治るから、さ。
- Re: 紫陽花手帖 ( No.10 )
- 日時: 2017/09/01 19:23
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
- 参照: 小夜日記①
こんばんは。少し嬉しいことがあったので、たまには作者の言葉でも書き込んでみようかな、と思い立って、じゃあどこに書こうか、と思い、この手帖に記しておくことにしました。
私にとってこの紫陽花手帖は、超SS置き場(格好悪いので、短編置き場)であり、私の日記帳でもあるので。
ちなみに何故、「手帳」ではなく「手帖」なのかというと、現在放送中のドラマ(2017年夏時点)の題名で、「お洒落や」と思ったから、という単純な理由です。ごめんなさい。
さてはて。
この度、2017年夏の小説大会にて、この手帖は次点、長編の「失われたオレンジ」は副管理人賞をいただきました。前回の大会で、亜咲 りんの名前で銅賞をいただいたので、2回目となります。
大会期間中、ほぼ執筆をしていなかった感じがするので何故、という感じは致しましたが、とても光栄に思います。読んでくださっている方がいるのだなぁ、と思うと、やっぱり筆が進みますね。
私は本当に、指の赴くままに(?)文字をだだっと打ち込んでいる感じです。なので、所々小説のルールを守れていないところはあると思いますが(そもそもあまりルールを知らない)、まあそれが私です。鑑定してもらう、とかそういう発想はないし、見た感じ何となく小説に見えるし、まあいーやーという。
複ファは他の掲示板と少し違い、文章や世界観がかなりしっかりしている作品が多いイメージがあります。そう考えると私はシリダク板向きかな?と思いますが、大人向けの表現ができないので、複ファに棲んでいる魔女です。え、意味不。
この手帖は、日頃から短文をつらつら書き連ねたものを気分でぽーんと投稿しています。時々読み返してみると、自分の精神状態がわかるような気が致しました。というか創作って、自分のそのときの心の状態がばっちり浮き上がってきますもんね。
こういう短文(?)のテーマは、普通に日々を過ごしていると、ぽっ、と突然現れます。
>>06なんか、いつもよりお洒落をして買い物に出掛けたところ、ショーウィンドウに映る自分が「お前誰だ?」状態になっていたところから思いついたものです。そう考えると、随分とくだらないですよね。あは。
いい小説を読むと、創作欲がむくむくと湧いてきます。大体は図書館や本屋で出会いますが、もちろんカキコにも、そういった作者さんはいらっしゃいます。
折角なので、私の創作の一部を作り上げるきっかけとなった作品たちを、少し記しておきたいと思います。
『ただ、それだけでよかったんです』松村涼哉 著
『"文学少女"シリーズ』野村美月 著
『クレマチカ靴店』酒井まゆ 著*漫画作品
『Nのために』『告白』湊かなえ 著
他にもありますが、全て言ってしまっては何だか損した気分なので、ここまでにしておきます(笑)
どれも素晴らしい作品なので、是非読んでみてください。
こういうの、雑談スレに書き込むべきですよね。次からはちゃんと短文なので、見逃してくださいっ。時々こんな風に喋り出すと思いますが(笑)
何はともあれ、投票してくださった皆さん、ありがとうございました。
皆さん、今後とも、の〜んびり優雅に、創作活動を楽しんでいきましょう!