複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

死血誤惨
日時: 2017/10/14 00:14
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

あらすじ

毎年10月11月と開かれる神社へのお詣り、そう「七五三」。我が子の幸福と無病息災を願って行われる行事でもある。今年も全国でいつもの七五三で賑わうはずだった。そう、あの時までは…鈴美、琴也、美弥は今年7歳5歳3歳になる三兄弟。電気工事士の父と主婦である母は、共に「真倉の光」教会の信者。二人はある恐ろしい、10年に一度行う儀式の真実を知る。「今年は黄泉の年。7歳5歳3歳の三兄弟を生け贄に捧げるだけではない。我等真倉の光信者が台風が来る十の月一五に自害いたし、真倉神の復活に魂を捧げるのじゃ。」二人はある男に助けを求めるものの、当日拉致されてしまう。そのある男の天宮竜也は途中、8人の男女の助っ人を得て、台風の中、警察も呼べない事態で一路親子の救出に向かう。「空手VSゾンビ」の飽くなき対決が今始まった。

Re: 死血誤惨 ( No.2 )
日時: 2017/10/26 15:44
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「嵐の悲劇」

…天和元年(1681年)、11月15日館林城主により始められた行事が「七五三」と言う。氏神様に収穫の感謝を兼ねて、子供の成長を祝って神社に詣でる。旧暦の15日は二十八宿の、鬼が出歩かない日「鬼宿日」に行うのが習わしである。そう、今日この日も「鬼」が出歩くはずはないのだが…

「北ちゃん、明日台風来るってよ。また忙しくなるから残業してもここ終わらしとかないと、俺たちの仕事がまた増えるぜ。」工具を腰回りにジャラジャラ掛けて安全帯にヘルメットした天宮が下で電線送りしている北川祐介に叫ぶ。「だな。交通量多くなるから大変だぞここ。警備員さんに残業通告しとくよ。」「ああ、そうしてくれ。」電信柱に登って作業しながら天宮は答える。「おーい、3時だ。休憩にするぞ。」「はーい。」工事主任の掛け声に二人同時に答える。「おい、缶コーヒーだ。交通警備にも配ってこい。」主任は気前よく天宮達に託す。やがてトラック内で休憩を取る天宮。助手席の北川から相談を受ける。「なぁ、天宮。折り入って相談があるんだが。」「何だよ改まって。また入信の介入ならお断りだぜ。いくら小中高の幼なじみだからって願い下げだ。ま、信教の自由には干渉しないがな。」「いや、違うんだ。実はな、迷ってるんだ。このまま真倉の光に居続けるべきかって。」「何だ逆か。辞めるのか。」「いや、そこまでは…でも、思い切って竜也だからこそ打ち明けるよ。うちの子、今度七五三だろ。」「おう、美鈴ちゃんに、琴也に美弥ちゃんだろ。七五三だから丁度いいって喜んでたじゃないか。」「それがいけないんだっ。」突然の大声にコーヒーを吹き出しそうになる。「ブッ、何だよいきなり、どうした。何か今日のお前様子がおかしいぞ。何があった。」「聞いてしまったんだ。10年ごとに真倉の光では、七五三の15日に神への生け贄として7歳5歳3歳になる兄弟を差し出す儀式があると。それにうちの子供が選ばれてると。…」「マジか…いや、でもまさか…単なる行事じゃねぇか。地方のお祭りにも似た儀式聞いたことあるし、まさか本当に殺すなんてありえ…」言いかけてはいたが、北川の今にも泣きそうな目に言えなくなる天宮。「ま、マジなのか…」無言で頷く北川。「まずいな。まさかそこまで狂ってるなんて。今日仕事大丈夫なのか。」「うん。」「わかった。後で警察行こう。」「でも、教祖様はどうなるのかな。教団の皆は…」「バカ、今それどころかっ。」…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.3 )
日時: 2017/10/31 17:42
名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)  

…天宮が怒鳴りつけて我に帰る北川。「そうだな。そうなんだよな。」そこへ工事主任の声がした。「おーい。もう休憩時間終わったぞ。」「はーい、すんませんっ。…ほら、仕事だ。」「おお…」力無くトラックから降りる北川。19時にようやく工事が終わった。片付け掃除の後に本社に戻り、終令で解散となった。「じゃあ北ちゃん。行こうか。」「うん。…」二人は最寄りの警察署に急ぎ、当直の担当に事情を話した。が、しかし。「ああ、その手のお祭りなら届け出がありますね。10年前にも真倉の光が7歳5歳3歳のお子さんを神々に捧げる儀式としてのお祭りを催すとして届け出ています。まぁ普通のお祭りですよ。何かの聞き間違いではありませんかね。真倉の光さんはボランティアや街の防犯に美化活動にと、非常に真面目に取り組んでおられる珍しい宗教団体ですよ。そんな大それたこと考えるはずは…」言いかけたところで北川は語気を強める。「そんな、私はこの耳でちゃんと聞いたんです。生け贄にするって。」「そう言われましてもね、事件でもないのにそうそう嫌疑をかけるわけには…」天宮がこれには食ってかかった。「あんた、今のは問題発言だぞ。まるで幼気な子供に死ねと言ってるようなものだ。それとも何か、お宅ら警察は死んで事件になるのを楽しみにしているのかっ。」「いやいや、それは言い過ぎでしょ。…あ、待てよ。北川さん、あなた一度精神錯乱状態で街で暴れて逮捕されたことあるでしょ。」「えっ…」これには北川も閉口する。何故なら電気メーカーの営業社員だった頃、新しい上司のパワハラとノルマに悩まされ、精神に異常をきたした苦い過去があったからだ。精神病院を退院した時、真倉の光の勧誘員に誘われて家族全員が信者として入信した。それが全ての始まりだった。「あー、北川さん。あなたもしかして錯覚したんじゃないですか。過去の調書によればあなた、幻聴や幻覚症状もあったと記録されてますよ。」「そうなのか北川。」勢い余っていた天宮も減速しはじめた。「 お前は自衛隊にいた頃だもんな。知らないはずだ。確かに俺はあの頃どうかしてた。だから今の仕事に就けて、幼なじみのお前も入社してきて、昔とは違う充実した日々を過ごせてたんだ。…でも、信じてください。今は違うんです。確かに聞いたんです。」「はいはい、わかりました。台風でうちの署もてんやわんやなんですよ。明後日また来てください。」「明後日じゃ遅いんです。」…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.4 )
日時: 2017/11/05 20:15
名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)  

…声を荒げる北川に担当の警察官は不機嫌そうにする。「そうは言われましてもね。明日は台風上陸ですし、祭り自体延期になるわけですから、明後日でもいいんじゃないですか。」「あんたな、人事だと思っていい加減な。」警察官の胸倉を掴んだため、天宮は北川を引き剥がす。「北ちゃん、やめろって。」「うるさいっ、お前どっちの味方だよ。」制服を直しながら警察官はこう切り出した。「わかりましたよ。一応あなたの自宅周辺にパトカーの巡回を強化しますから。それでいいでしょ。」これに北川は渋々納得して天宮と共に自宅へ向かった。「北ちゃん、本当に聞いたのか。聞き間違いとかじゃないのか。」互いに車を降りて玄関前で立ち話していた。「お前までそんな。もういい、帰ってくれ。」「北ちゃん…」言ったところで二人の前に、ドアを開けて出迎えた北川の妻である雅美が姿を現わした。「お帰りなさい。あ、天宮さん。」「あ、こりゃ奥さん。今さっき警察署行ってきたところなんですよ。」「それで何と言ったましたか。」「はい、一応パトロールを強化すると言ってましたから大丈夫ですよ。それに… 」言いかけてあの警察官の話が浮かんだ。「天宮、ハッキリ言えよ。どうせ元精神異常者の戯言だと言いたいんだろ。」「いや、北ちゃん。そんな言い方ないだろ。」雅美は天宮に哀願する。「お願いです天宮さん。家で一晩だけ泊まってくれませんか。あの子達を守ってほしいんです。」そこへ彼女の後ろから三人兄弟が揃って玄関に走ってきた。「あ、おじちゃんだ。守ってくれるの。」長女の鈴美が叫ぶ。しかし。「鈴美、黙ってなさい。天宮、帰れ。どうせ信じないんだろ。」「いや、北ちゃんそれは…」「いいから帰れっ。」あまりに怒鳴ったため、次男の琴也や次女の美弥が泣き出した。しかし 早々とドアは閉められる。「ちっ、わかったよ。全く、昔はあんなじゃなかったのに。…」鈴美達に後ろ髪引かれる思いだったが、やむなく車に乗って自宅マンションに帰る。しかしこれが後に後悔することになろうとは、まだ知るよしもない天宮だった。翌日早朝、工事主任からの電話に目が覚める天宮。「天宮か。やっぱり台風上陸だ。早朝予定してた工事は中止になったからゆっくり休め。ところで北川を知らんか。あいつの所に電話したら繋がらないんだよ。いつもなら早く起きてるはずだし、卓上電話にも誰も出ないんだ。お前何か知ってるか…」それを聞いた途端ベッドから飛び起きる。「何ですって。」…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.5 )
日時: 2017/11/08 16:39
名前: 梶原明生 (ID: UvBorD81)  

…「おい、どうした天宮。…何だ、切りやがった。」着替えるのもそこそこに非常持ち出し背嚢一つ持って車で北川の家に向かった。風は強まり、街中は静まり返っていて轟音だけが不気味にフロントガラスに響き渡る。風に抗いながらも運転席を飛び出した彼は、開いているドアを開け放って北川の自宅に入った。「北ちゃん、鈴美ちゃん、…」土足で何人かあがったような後があり、争った形跡もある。明らかに誰かが5人を連れ去ったに違いなかった。「真倉の光か。」天宮はスマホを取り出し、昨日の警察署に電話する。「只今台風の影響と、付近で起こった殺人事件のためにパトカーを回せない状況なんですよ。恐らく近所の公民館か体育館にでも非難したんじゃないですか。そこ当たってください。」 「もういい、あんたら警察はあてにならん。」大声で怒鳴りつけた後、急いで真倉の光教団のある森林地帯に車を走らせた。「待ってろ、鈴美、琴也、美弥。おじさんが助けだしてやるからな。」風の上に雨まで降り出した中、天宮はアクセル全開にして走った。と、そこへ同じくアクセル全開に走る車が真倉の光教団本部に向かう一本道を進んでいた。 およそ3台。進むにつれて雨風は酷くなるばかりだ。しかし。「何だこれは…」幅1メートルの大木が数本、道路を寸断していた。「くそ、これじゃ通れないよ。」ポンチョを着た車の主達が口々に叫ぶ。「よっしゃ、俺が。」徐に大木に挑む体格のいい大男。「ふーんっ、オリャアッ。ダメだ、持ち上がるが横に動かん。」「ちょっと待て、あんたら何者だ。何で真倉の光教団に向かってんだ。」天宮は大声で叫んだ。「そういうあんたは。」「俺は親友の家族や子供が真倉の光教団に攫われたから助けに行くとこだ。もしかしてあんたらそこのもんか。」「とんでもない。あんたと同じく真倉の光教団に家族が捉えられてて取り戻しに行くもんだ。申し遅れた、俺は山崎政斗。空道本部内弟子で、仕事はパソコン講師。」彼を筆頭にそれぞれの自己紹介が始まる。「俺は具志上鉄とちゅうもんだ。プロボクサーでよ。」「俺は上村和貴。新空手ジムを経営してる。妹を救いにきた。」「俺は藤堂春馬。プロレスラーだ。」天宮が気がつく。「あんたもしかして、最近テレビでよく見る芸人怪力レスラーでしょ。」「ま、まぁそうだけど。」「どうりで大木が持ち上がるわけだ。」緊張漂う中で、ほぐすかのように笑いが起こる。「笑ってる場合。急がないと大変だよ。」「あんたは…」…続く。

Re: 死血誤惨 ( No.6 )
日時: 2017/11/13 01:25
名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)  

…天宮の前に現れたのは、長い黒髪をまるでゲゲゲの鬼太郎みたいに顔半分隠すように前髪を垂らした女だ。ポンチョを着ている。「私は長瀬みごな。19歳だけどわけあってさ。真倉の光に個人的に恨みあるんだよね。てか、何自己紹介させてんの。笑う暇あったら何とかする方法でも考えたらどうなんだよ。」「わかってる。だが、これを車のワイヤーで運ぶ作業ができないわけじゃないが、少なくとも早くて2時間かかる。ましてや雨風はそうしてる間に強くなる一方だ。二次災害に巻き込まれる危険性がある。道は二つに一つだ。台風で断念し、引き返すか、森を抜けて徒歩で行くかだ。」それを聞いていた二人の女性は叫ぶ。「引き返すなんてできません。…あ、申し遅れました。私、大学三年の新堂翼と申します。妹を取り戻しにきました。薙刀部所属。」「私は高校二年の岬由真17歳です。父を救い出しにきました。こう見えて、芦原空手初段です。」山崎が割って入る。「二人は俺が連れて来たんだ。Twitterで真倉の光被害者として交流があり、同行したいとのことで連れてきた。天宮さん、私も行きますよ。」藤堂と具志上も願い出る。「俺も行く。」「俺も行くさー。なごみちゃんはヒッチハイクで俺が連れてきたのさ。な、なごみちゃん。」肩に腕をかけようとした具志上をさらりとかわす。「触んなっ、馴れ馴れしい。」「んなこた言わんでくれな。冷たいな。」そのやりとりに目もくれず天宮はこの場を仕切る。「よし皆、聞いてくれ。ありったけの荷物と食糧を持て。大木を避けて左側から森に入る。かなりの強行軍になるぞ、ついてきてくれ。」天宮は颯爽と森の中に入った。その後に山崎はじめ数名が一列になって、車を放棄して歩きはじめる。その頃真倉の光教祖の坂本学忍は、清潔なタオル千枚を前に悦に入っていた。「うん清潔、清潔、ん、何これ。私は不潔が嫌いとあれほど言ったではないか。このタオル、汚れがついてるぞ。」配下の者が受け取る。「も、申し訳ありません。すぐに。」「はーーーっ、手に汚れが付いたっ、アルコールティッシュっ。はーーーっもう、私はキレイ好き。不潔が嫌い嫌い嫌いっ。 」異常なまでの潔癖症を現にする坂本。「ところで儀式の方は大丈夫なのか。」「は、それはもう滞りなく。例の親子を捕らえております。」「なら早速とりかかりなさい。」「は、畏まりました。」…続く。


Page:1 2 3 4 5



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。