複雑・ファジー小説
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- 撲滅のアサシン
- 日時: 2018/09/30 15:31
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
運が良かった、と語る者もいれば運が悪かった、と語る者もいる。当事者である私自身はもちろん後者に該当する。といっても、自身で当時のことを語る機会なんてほとんどないのだが。
「アラ、いらっしゃい」
でも、この日は違った。
心を捨てたつもりだった。人として生きる道を捨て、残りの人生の全てを復讐にささげるつもりだった。いや、「つもりだった」なんて言い方は語弊を生むだろう。
今でもその目的に変わりはない。
「アナタ、悲しそうね」
でも、それまでの道のりに少しだけ、光が差し込んだ。
「いいのよ。ここでは」
彼、いや、彼女は続けた。
「全部さらけ出しなさい」
その日、私は初めて自分の口で、あの日の事を語りだした。
- Re: 撲滅のアサシン ( No.7 )
- 日時: 2018/10/03 15:42
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
「今日は、雨が強いわね」
普通の人間であればまず見つけることができないであろうそのBARに、私は足しげく通っている。そのBARの雰囲気も、BARのママも大好きなのだ。
しかし、ただの客として通っているわけではない。
カランコロン...。
入店を告げる風鈴が、控えめな音をたてる。そこに立ち尽くす冷たい目をした彼女、その名を新染紅といった。彼女は、殺し屋だ。
「アンタ、また傷...」
「・・・平気」
彼女はいつも多く語らない。私の隣に座ると、すぐに茶封筒の中に入った報酬を渡し、次の情報を求める。
「まさか、たまたま出会っただけのアンタと」
私はそこまで言って、口をつぐんだ。代わりに、次のターゲットとなる人間の情報を渡すのだ。
まさか、たまたま出会っただけのこの子とここまで長い関係になるなんてね。
彼女の境遇、その全てをBARのママから聞いている。だからこそ、最後は・・・。彼女はママのことをいたく気に入っている。それくらいのことは私でも分かる。
「アンタも、報われないわね・・・」
彼女に聞こえないくらいの声で、囁きとも言えないくらいの声で呟く。
「アンタ、一人でいいのかい?」
「・・・?」
彼女はずっと一人で戦っている。それは彼女がそうするべきだと考えているからだ。でも、それだけじゃいつかガタが来る。
「このままじゃ、目的果たす前にアンタ、死ぬよ。ハッキリ言うけど、私、仕事柄裏の人間には詳しい、つもりだけどさ」
「つまり?」
「私は、これでもアンタに死んでほしくないって思ってる。ビジネスパートナー、紹介しよっか?」
絶対に断られると思っていた。むしろ、この場で殺されるかもしれないとさえ思っていた。でも、彼女は思ってもない回答をした。
「そっか・・・。それは困る。目的を果たすまで、死ねない・・・」
彼女はおもむろに立ち上がり、出口へと向かった。去り際、彼女はこう言った。
「なるべく、腕の立つ人を頼む。あと・・・」
・・・なるほどね。
彼女の要望に沿う腕の立つ人、か・・・。
「そんな人、いるの?アテ、あるの?」
ママの問いに私は自信満々に答える。
「私を誰だと思ってるの・・・?」
そして、この提案が、彼女の物語を思いもよらぬ方向へと導くなどとは、
この頃誰も予想できずにいた。
- Re: 撲滅のアサシン ( No.8 )
- 日時: 2018/10/04 10:31
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
一ノ瀬さんから紹介された彼、名は大堂ツルギと言い私の要望通り・・・。
「俺は馴れ合うつもりはねえ。ただ単に利害が一致した、それだけの話だ」
「・・・助かる」
殺し屋に深い恨みを持つ人物。私のパートナーを務めるうえでは腕っぷしよりも重要な部分だ。彼、大堂ツルギは続けた。
「最後はお前の脳天もぶち抜いてやる。首を洗って待ってるんだな」
「・・・」
もとよりそのつもりだが・・・、それより・・・。
「一つ、聞いていいか?」
「あ?」
「お前、拳銃使いなんだな。ツルギって名前なのに」
「やかましいわっ!」
こうしてより一層目的に近づくわけだ。一ノ瀬さんには感謝しなくちゃな。
「一ノ瀬さん」
「ん?なんだ?」
「・・・ありがとう。感謝する」
「仕事だからな」、とだけ言って一ノ瀬さんは席をたった。そしておもむろに私を両腕で包み込んだ。私があっけにとられていると、一ノ瀬さんは私の顔を真剣なまなざしでとらえ、
「絶対、無理だけはするんじゃないよ」
そう言って笑顔をみせた。
「ママ、今のは何だったんだ?」
「う〜〜〜ん」
私の問いに、ママはイタズラにとぼけて見せる。少し噴き出したような笑いをしてからママは閃いたかのように言った。
「アナタ、随分好かれちゃったみたいね!」
「別に好かれるような事をした覚えはないのだが・・・」
「ま、アナタ放っておけない所があるし、母性本能ってやつじゃないかしら。私もアナタの事大切だって思ってるのよ?これも母性本能かしらね・・・」
「でもあんた、オカマだろ?」
横から入ったツルギがママの心に深いツルギをさしてみせたところで私も店を後にすることにした。
「ちょ、まっ!お、おい逃げんな!」
「おほほ・・・アラ、紅ちゃん、もう行くの?」
「あぁ」
「またね〜。この子は私がたんまりとしばいておくわ!」
「一応パートナーなんだ。死なない程度にな」
- Re: 撲滅のアサシン ( No.9 )
- 日時: 2018/10/04 18:07
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
キャラクター紹介
主人公
新染 紅(あらそめ べに) 17歳
幼い頃に両親と弟を殺し屋に殺された経験を持つ。当時、偶然家を離れていたため生き延びたが、彼女自身は家族と一緒に死にたかったと思っている。
この世に存在する殺し屋全てを殺すために人生をささげることを決意した。これまでに三人の殺し屋を殺している。
一ノ瀬 (いちのせ) 27歳
情報屋として日々あちらこちらを歩き回っている。その中で出会った主人公にはほかの客とは違った特別な感情を抱いている。彼女の家族を直接殺めた人間を知る数少ない人物であり、そのことを主人公にはギリギリまで隠し通すと決意を固めている。
ママ
とある街の路地裏、そのさらに地下に店を持つ。店に訪れた主人公の境遇を聞き、いずれかは主人公に全てを話しその手で殺されることを望んでいる。元暗殺者であり、主人公の家族を殺めた張本人。
大堂ツルギ
一ノ瀬の紹介で主人公とタッグを組むことになった。彼もまた家族を殺し屋に暗殺された過去を持ち、必ず全ての殺し屋を殺すと誓っている。その名とは裏腹に銃撃戦を得意とする。
殺し屋一覧
ツクヨミ
殺し屋の中でも大人しく、あまり戦闘を好まない。成り行きで父親の後を継ぎ殺し屋になったが、人を殺すことを楽しいとも悲しいとも感じていない。
カゲヌイ
とにかくお金が好き。手っ取り早く稼ぐ方法を探求するうちに殺し屋になった。ツクヨミとはまぁまぁの仲だと思い込んでいるが本当は嫌われている。
クロナ
罪の意識に耐え切れず精神崩壊してしまった。
タタリメ
炎を扱う凄腕の殺し屋。主人公との対決に敗れ死亡している殺し屋の内の一人。
サガラ
人間の中でも数少ない、魔力を宿した人間。人間の生命力が魔力のもとになっている。彼のそばにいるだけで常人であれば倦怠感を覚える。(インフルエンザにかかったときみたいな感じ)
ホルス
古代から続く殺し屋一族の一員であり、代々その技術を受け継いできた。一族の中でもずば抜けたセンスを有しており過去に何度か主人公と衝突しているが生き延びている。殺し屋殺し=主人公であるという事を知りつつも何故か黙っている。
トコヤミ
黒塗りと呼ばれる相手の視力を奪う技を有している。それゆえ、彼の姿を見た者はいない。
死蘭(シラン)
殺し屋の中で最強と呼ばれている人間。殺し屋でありながら国家の軍隊に所属している。主に剣術で戦っているが、生まれてから一度も彼は3割以上の力で戦ったことがない。
サイガー
毒を使った暗殺を得意とする。百人切りまであと一人というところで主人公に敗れ死亡。
ブキミ
死んだ人間の魂を自身の魂と一時的に連結させることができる。連結させた魂の生前の経験や記憶を引き出すことができる。筋トレはしていないのでファイター系統の魂と連結した後はとてつもない筋肉痛におそわれる。ちなみにドMなので本人的にはメリットしか感じていない。
カグヤ
満月の光を浴びることで飛躍的に身体能力が上昇するカグヤ一族。一族は代々カグヤと名乗っている。満月以外の日は一般人程度の身体能力しか有していない為、常に武器を持ち歩いている。
メビウス
戦いに対して正々堂々と紳士的な対応を心掛けている。主人公の対殺し屋専用の技に手も足も出ず自害。
コロナシ
ナイフを操る戦法に長けており、ナイフだけの戦闘であれば死蘭と互角の実力を持つ。科学的な知識にも精通しておりクイズが大好き。
サバキ
本業は某教団の教祖であり、救いという名目に従い殺しを行っている。本人曰く神様の声が聞こえるらしいが、周りの信者はあまり信じていないようだ。
- Re: 撲滅のアサシン ( No.10 )
- 日時: 2018/10/05 09:33
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
アサシン殺し、通称「レイン」
雨の日にのみ出現し、殺し屋の命を奪い去っていくもの。
「困りものだな」
国王、アルドロク・アドラメレク101世は最近世間を騒がせているアサシン殺し「レイン」の一件で頭を悩ませていた。
「えー、で、あるからして・・・、おそらく私怨でしょーね」
「殺し屋に恨みをもつ。気持ちは分らんでもないがの」
国王は資料を眺めていた手を止め、ワインを口に含んだ。
「ふう。アサシンと言えども国民。殺していい理由もなければ、裁きを与えていい理由もない。後者は私たち国の仕事だ」
「ですね」
大臣、レオンハルトは肯定の意を示しつつ
「ですが、分っているのは雨の日に現れるっていう事だけですしねぇ」
どうしようもないという現実を国王に意識させる。
「どうすれば・・・」
「この際、手段など選んでいる場合じゃないんじゃないですか?えーと、どれどれ?あー。ありました!ほらほら、国王様、こちらをご覧ください」
—インターネット掲示板—
最近殺し屋が殺されてるらしいぞ。
雨の日だけに現れるらしいね。
なんか格好良くね?w
殺し屋とか人間の屑だろ。もっとやれwww
つーか殺し屋殺せるとか強すぎワロタw
いやいやどんな理由があってもやってること一緒だろ。
それな
国王はなにやってんの?
あー、あのアンドロメダみたいな名前の無能かww
「・・・」
「・・・」
「ぐむむむむ、ええーい!どうなっておるんじゃ!」
賛同するもの、あこがれるもの、諭すもの、何故かワシを星雲にしたてあげる者。
「うぐぐ、よかろう。大臣、おぬしなにか策があるのだろう?」
「はい」
「・・・この一件、お前に任せるぞ。なんとしてもレインを捕らえるんじゃ!」
「はっ、身命を賭して・・・」
- Re: 撲滅のアサシン ( No.11 )
- 日時: 2018/10/09 12:07
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
と王様に言ったのは良い物の・・・、やはり情報が少ないな。
「おや、大臣殿。どうやらお悩みのご様子ですが、どうかなさいましたか?」
「うむ、死蘭か・・・。いやはや、中々厄介な問題に直面してね・・・」
「なるほど。ひょっとしてアサシン殺し”レイン”の件ですか?」
「困ったものだよ」
どいつもこいつも馬鹿ばかり。大臣も、国王様も・・・。
殺し屋というのは陰にひっそりと息をひそめているのが常。騒げば騒ぐほど見つけることなど困難になるに決まっている。
「私にお任せください、大臣」
「な、なにか手があるのか?」
「まぁ、色々、です」
この国には・・・(この国というよりは国王様だが)借りがあるし、久しぶりにアレをやってみるか。
「失敗は許されない。イザとなったら私を使ってでも”レイン”を捕まえるんだ」
「かしこまりました」
かくして、王国軍兼殺し屋の死蘭は殺し屋殺し”レイン”こと、主人公新染紅の所在を探ることになったのだ。