複雑・ファジー小説

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何回目かの初めまして。
日時: 2019/09/07 12:17
名前: 白刃 さとり (ID: R58dZSmU)

 私には、前世の記憶があった。

 それは、全て貴方の記憶。
 その、嘘つく時の癖も、照れ隠しの憎まれ口も。ありがとうって言った時の反応も、怒った時の素っ気なさも。好きなものも、嫌いなものも。どんな所で怒るのかも、喜ぶのかも、つい甘やかしてしまう所も……。

 その全てが。

 貴方に染まっている。





 始まりは些細なこと。

 戦国時代。織田信長さまがお亡くなりになられて、豊臣秀吉さまがお国を納めになるころ。

 蔵にあった"石"を子供であった私たちが開けてしまったことである。私たちは、その"石"の珍しい色にそれで簡易的なネックレスを作った。

 それが、呪いの石とは知らず。




 何度目かの……

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  >>16 >>17 >>18


 [何度目かのサヨウナラ。]も良ければ見てください。




Re: 何回目かの初めまして。 ( No.9 )
日時: 2019/05/28 04:58
名前: 白刃 さとり (ID: 3nlxUYGs)


 [前世:朔目線(youという歌の歌詞を使わせてもらいます)]


 ああ、もう朝だ。

 悠長な鳥のさえずりが聴こえてくる。昨日は一睡も出来なかった。そのせいか、やけに頭が冴えている。

 眠れない日は、いつも君の腕の中で寝た。今はもう、その温もりすら見当たらないのだ。昨日、最愛の君がいなくなったのだから。分かっていても、頭では分かっていても、まだ何処かに生きていると信じてしまう自分がいる。



 貴女は今、何処で何をしていますか?。

 この空の続く場所にいますか?。

 いつものように笑って過ごせていますか?。



 それとも、今も俺の傍にいますか?。

 もしそうなら、俺は君の為ならば心臓だって捧げよう。君の為ならばなんだってするから。もう、失わせないでくれ。俺から最愛の人を奪わないでくれ。

 なのに何故、君は死んでもいいなんて言うんだ。何で逃げられないなんて言うんだ。たった十八年の命なんて、悲しいだろう?。

 何で俺ばかり辛い想いをするんだ。










 「朔。」

 ふわりと頬を撫でられる感覚。それと共に漂う甘い香り。楓だ。俺は目を開けた。今は、楓はここにいる。
 「どうしたの?。ニヤニヤしちゃって。」
 憎まれ口がかえってくると思ったのか、スタンバイをする楓。
 「俺、スッゲー幸せだなって。」
 楓の頭を撫でると、楓は頬を赤らめてポカンとした。

 そんな貴女が大好きです。

 言えない言葉を心の中で囁いた。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.10 )
日時: 2019/06/11 23:25
名前: Nahonn (ID: bb2N.JWt)


 「朔。」

 机に顔を突っ伏していた俺は顔を上げた。俺を呼んだ本人である楓は、じっと此方を見つめる。
 「あんだよ。俺の顔に何か付いてんのか?。」
 それでも、楓は答えなかった。また、この前みたいに不安にさせたんじゃないか、やっと前世を思い出したのか、何て色んな考えが頭をよぎった。
 「おい?。楓?。」
 「ねぇ、朔。朔ってカッコいいの?。」
 俺の心配する言葉を遮りながら、予想外な言葉を吐いた楓。安堵と呆れの混じった溜め息が知らず知らず俺の口から零れ出た。何故かそこに楓が反応する。
 「はぁ、じゃ無いわよ!。真面目にかんがえてるんだかんね!!。」
 「へいへい。怒った顔も可愛いですよー。楓チャン。」
 本心混じりの憎まれ口を叩く。楓はいつものように頬を膨らませた。本当に可愛い。

 「楓は、十八年しか生きられないって嫌か?。」

 さりげなく、不自然じゃないようにそう言った。楓は首を傾げる。

 「んー。死にかたにもよるかな?。でも、それが誰かの為になるならそれでいいかも。」

 変わらないな。そうゆうとこ。
 もういっそ、このまま俺だけの檻に閉じ込めて自分だけのモノにしたい。
 十八歳を迎えた日に一緒に死のう。そしてまた生まれ変わったら、次の世界で愛し合おう。


 でも、それでも君との未来を諦められない。

 だから、またこうやってもがいている。

 「私、朔の為なら死んでもいいよ。」



 こうして、天国のような地獄の日々が始まった。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.11 )
日時: 2019/06/16 08:57
名前: 白刃 さとり (ID: bb2N.JWt)


 [10話の楓目線]


 その日は、目覚めの悪い朝だった。
 寝ている時にかいた汗が肌を伝う感覚や、張り付けた服のベトベト感が気持ち悪い。


 「悪夢………。」

 気付けばそう呟いていた。
 見ていた夢…いや悪夢は、最近はなかった予知夢だ。いつものように、所々しか覚えてはいなかったが、いつもよりとても長く、気の遠い悪夢のように感じた。

 夢の内容は、朔が殺されるものだった。
 一直線に私に飛びいるナイフ。私を庇ってナイフの餌食となった朔が死んだ。……通り魔だった。 

 笑顔を崩さずに登校をした。





 もう、教室の前。私は、平常心を保とうと、深呼吸をした。三回ほど。それでも涙がこぼれでそうで……。
 「大丈夫。私が守ればいいのよ。」

 呟いた言葉は、自分に言い聞かせたものだった。
 もう一度深呼吸をし、思いきって戸を開けた。おはよう、とクラスメイトに声を掛けながら朔の隣の席に近づく。当の本人は呑気なことに小さな寝息を発てて眠っていた。そんな姿に安心しながらも、いつ起こるか分からない朔の死に対しての不安は消えてなどいなかった。

 「朔。」

 さっきまで吐息の数しか動かなかった朔が顔を上げた。朔が生きている。また、涙が溢れそうになった。それを堪えて朔に向き合う。おはようの言葉さえも出なかった。
 「あんだよ。俺の顔に何か付いてんのか?。」
 応えない私に朔は心配したのか、もう一度私に問いかけた。
 「おい?。楓?。」
 朔が死に付いて何も言いたくなかった。
 もう、適当にいってしまおう。そう思い、何かを言った。内容は覚えていないが。
 朔は、盛大に溜め息を吐いた。
 「はぁ、じゃ無いわよ!。真面目にかんがえてるんだかんね!!。」
 つい、むきになってそう言ってしまった。
 「へいへい。怒った顔も可愛いですよー。楓チャン。」
 いつものように、憎まれ口を叩いてしまったが、心底いつものようすでいてくれて救われた。


 「楓は、十八年しか生きられないって嫌か?。」

 なんの話だろう。朔の友達が病気なのだろうか。
 いずれにせよ返さない理由はないので、自分だったら、と考えた。

 「んー。死にかたにもよるかな?。でも、誰かのためになるならそれでいいかも。」

 そう。誰かのためなら。



 「私、朔の為なら死んでもいいよ。」

 そう。君の為なら。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.12 )
日時: 2019/06/25 23:46
名前: 白刃 さとり (ID: bb2N.JWt)


 学校の昇降口。朔の部活(剣道部)のマネージャー(といっても顧問の轆轤と部員全員に頼まれて仕方なく大会までの短期間)で遅くまで活動していたせいか、下校時刻ギリギリとなってしまった。
 幸い、夏の日の長い時期だからか暗くはない。夕暮れ時だ。最近、空を見上げる事が多いせいか今日の夕焼けはきれいに見える。頑張った後だからか分からないが、何かのご褒美のようにも感じた。
 それで私は今、朔に送ってもらう(半強制敵にそうなった)為、職員室に鍵を返しに行った朔を待っている。
 ふみゃあ、と可愛らしい鳴き声が聞こえた。それと共に、これまた可愛らしい茶トラの子猫が草むらから顔を出した。

 「あ。ねこ。」

 私はそっと手を伸ばした。子猫はぴくん、と震えた。しかし、逃げようとする様子はない。子猫は私に何かを訴えているみたいだった。その頬に触れそうになったとき、上から声が降ってきた。

 「おい。楓?。帰るぞ。」

 その朔の声で子猫は草むらに大急ぎで戻ってしまった。あーあ、と心の中で小さなため息を吐く。

 「朔のせいで逃げられちゃったじゃない。」
 私はそう言って立ち上がる。朔が呆れた笑みを浮かべた。子供扱いされている気分だ。
 「ったく。心は子供なのな。情けねえ。」
 んべ、と乱暴に出した舌は、彼も子供であると告げていた。
 「そうゆうの嫌。」
 上目遣いに睨み付けた。こうゆうのに朔は弱い。嫌ではないが、本当に子供扱いは慣れない。今まで、こんなことをしてくれた友達がいなかったから、だろうか。ついつい甘えてしまう自分もいた。
 「わ、悪かった。」
 苦笑いでそう対処した朔は大健闘だったとおもう。もしここで謝らなかったら、一週間は叶にいびられると分かっていたからだ。まあ、私が叶に言わなければいい話なのだが。
 私たちは、二人して笑ってしまった。二人の笑い声が空へ響く。



 そして、今日が朔の命日で、この物語の本当の始まりだ。

Re: 何回目かの初めまして。 ( No.13 )
日時: 2019/06/30 22:00
名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)




 私が、幾つもの時代で生きたように

 そして、君もまたその世界で生きるのだろう。






 「朔が………死んだ……?。」

 朝のホームルーム。先生にそう告げられた。
 音が、止まった。景色が、止まった。それほどに朔の死は私の中で大きかった。

 止まっていた音が、景色が、漸く動き出した頃には、もう私は家の前にいた。
 振り返るとそこは昨日と同じような夕暮れ時。遠くまで広がっている空と、山並み。日が、山の端に沈みかけている。流れていく雲が、この世界がとてつもなく広いことを示していた。この世界のどこかに朔はまだ生きているんじゃないか。そんな愚かな考えさえも頭を過ってしまう。
 私は、逃げるように眠りについた。


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