複雑・ファジー小説

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「救出命令」オペレーションサザンクロス
日時: 2019/06/28 02:32
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「懲役20年を取りますか。それとも、子供達の命を見捨てますか。…」この二者択一を迫られたとしたら、あなたはどうするだろう。この物語は主人公、保江しのぶがこの二者択一に翻弄される姿を描いたものである。この話の結末を知った時。…あなたは涙せずにはいられない。………………………………あらすじ。PKO活動の一環としてコンガディア共和国に派遣されていた陸上自衛隊。ある情報筋から、日本でテロ計画を進めてる過激派組織がこの国で暗躍しているという情報をつかんだ。PKOの増援に見せかけて密かに特殊作戦群が派遣されていたのだ。しかし、女性オペレーター主任がテンカンの持病で発作が起き、急遽普通科部隊の敏腕オペレーター保江しのぶが主任代理に抜擢された。上官からただ一つだけ出してはいけない命令を言い渡された。それは「救出命令」。この命令に背いたら懲役20年を覚悟しなければならない。かくしてオペレーター主任に就くのだが。…特殊部隊の無線一つで全ては狂わされていく。「借金の形に子供達が売り飛ばされるっ。今なら間に合う。監視命令から変更。救出命令を出してくれ。」彼女が出した決断とは。…

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.6 )
日時: 2019/07/23 20:11
名前: 梶原明生 (ID: 0Q45BTb3)  

…その先輩に淡い恋心を抱いていた保江。しかしそれは協力隊に入ってコンガディア共和国に来た時点で打ち破られた。先輩には現地人の恋人がいたのだ。本来それはあってはならない関係だったが、二人の出会いはそれを越えて愛し合っていた。彼女にはそれが苦痛で仕方なかったが、先輩の真摯な情熱に次第に惹かれて、仕事がやりがいとなっていった。とは言え、それも長続きはしなかった。海外青年協力隊とは言え、やはり組織なら温度差の高低はあからさまだった。一流企業の社員がみな一流とは限らないのと同じだ。情熱に燃えて参加する幹部や隊員もいれば、出世や見栄張りで仕事するふりの者や、ましてや犯罪に手を染める者まで…その現実もさることながら、この協力隊の存在意義にすら保江は疑問を呈していた。「口先と行動が伴っていない。」そう思えたからだ。日本に帰国していた時、ふと嫌いだった先輩に大学で出会う。陸自迷彩服に半長靴を纏っていた。その姿が妙に眩しく見えた彼女は、彼からPKO派遣と国土防衛について聞かされた時、「これだっ…」とまるで悟りを得たかのような叫びを上げた。「先輩、大学卒業したら自衛隊に入れますかっ。」口先と行動が伴っている組織。それが「自衛隊」だとわかった彼女に迷いはなかった。かくしてそうこうしてる間に「三曹」に昇任。通信オペレーターとして勤務することとなったのだ。それから晴れてPKO派遣隊員に抜擢され、二度目のコンガディア共和国来訪。施設隊による道路、橋、飲料水設備の建築に的確に指示と下達ができるこの環境に、「これぞ平和維持活動。」と言える清々しさを感じていた。それから数週間後。宮内曹長達の岩場での先のやりとりが行われていた。しかし収穫は0。何度か交代で見張るものの、現れるのは高利貸しゲリラのニャックだけだった。プマラ村は寒村で男手も少なく、作物の出来も悪い。みかじめ料が払えないなら強制的に借金させられ、雁字搦めにさせる。この数週間でそんなドラマを見せつけられたのだ。「嫌なやつですね。いっそニャックを拘束しますか。」「駄目だ。グジョンのATMがテロ計画を知っているとは思えん。それにグジョンは二度とここへは来なくなる。」「糞ですね。」善光寺二曹が望遠鏡片手に悪態をつく。岡沢稔三曹が特殊無線機のマイクを差し出す。「宮内曹長、本部からです。」「何…はい、一人上官が参加ですか。それはありがたい。…通信終了。」「何だったんです。」高倉浩二曹長が尋ねる…続く。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.7 )
日時: 2019/07/24 21:36
名前: 梶原明生 (ID: u7d.QD9m)  

…「実におめでたいことさ。なぁ皆聞いてくれ。いいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい。」岡沢が笑いながら聞いた。「ハリウッド映画じゃないんですから。ハハハッ。そうですね、じゃあ悪いニュースから。」皆も同じ意見だった。「悪いニュースは27歳防大卒の生え抜きエリート尉官であらせられる溝口淳平一尉がもうすぐ到着して俺たちの指揮官になられる。」「けっ…」今にも唾を吐きそうな顔付きになる岡沢三曹。「で、いいニュースの方はなんです?」高倉曹長が怪訝そうに聞く。「いいニュースはエリートの糞上官が俺の代わりに指揮官になられることだ。」更に笑う岡沢三曹。「プハハハッ、それ変わらないじゃないですか。」「そうか。違うと思うぞ 。」にやけながら嘯く宮内曹長。伊原剛志一曹が何かを思い出したように呟く。「溝口淳平…どっかで聞いたような名前ですね。そうだっ…たしか陸幕長が溝口。」「そうだ伊原。溝口陸幕長の御曹司だよ。たしか次男らしいな。」「けっ、そんなやつに仕切られたくないっすよ。このままこの7人でやりたいですし、上官なら宮内曹長がいいっす。」岡沢三曹が不機嫌そうにする。「まぁそう言うな。いくら次男坊の御曹司とは言え、特殊作戦群に入隊したのなら選抜試験は俺達同様潜り抜けてきてる。実力はあるさ。」「そりゃそうですが。…」またもや不機嫌そうに望遠鏡を覗いた。かくして翌日、P3−C輸送機に乗って、新任の上官が御到着した。「お待ちしておりました溝口一尉。」「うむ、宮内曹長だね。噂は聞いているよ。特殊作戦群一の腕利きとね。」「いえ、恐縮です。」「早速だが、私が指揮を取ることになった。しかし私はまだ現場に不慣れだ。上は私にやらせたがっているが、ここに先任したのは君だ。私に遠慮なく指揮してくれ。皆も私にとやかくされたくないだろうからな。」「重ね重ね恐縮です。では用意はよろしいですかな。」「うむ、すぐに出られるよう、準備は万端だ。」さすがはエリート。全て把握していた。早速偵察任務に着く宮内班。先の岩場で8人が張り付いていたが、とうとうその甲斐が出てきた。「ん、あれは…隊長。グジョンらしき車両が接近。」「何…」宮内と溝口が同時に反応した。岡沢はM24レミントンのスコープを覗きながらしまったと感じた。本来溝口に報告しなければならないのに、まだ宮内に報告している気分だったからだ。「ニャックが今日は護衛を沢山連れてるはずだ。グジョンと会うため。」…続く。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.8 )
日時: 2019/07/29 01:34
名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)  

…双眼鏡を覗きながら宮内曹長が呟く。「会話は聞き取れるか。」溝口一尉が集音機係の善光寺二曹に聞く。「はい、感度良好です。」「よし。OP、こちらキャット。料金所で(現場のコンガディア語を)両替してくれ。(通訳してくれ)」「こちらOP、了解。」敏腕オペレーターの川原茜二尉が答える。久々なのか、グジョンとニャックは互いにハグしていた。「久しぶりだな我が同士ニャックよ。元気にしてたか。」「勿論してたとも。幼い頃を思い出すよ。革命の前はよく東プマラ村で遊んだよな。」「そうとも。懐かしいな。で、本題だが、こいつらが聖戦にて日本に向かう戦士だ。入国させるためにはニャック、お前の伝手でマラーラ、フイマチュファレ…」この言葉に川原二尉は困惑した。全くの誤算だった。彼女がオペレーターに選ばれたのはコンガデァア語が堪能の語学研究者だったためだが…「どうした、カワウソ(川原二尉)。何故黙る、翻訳は…」「む、無理です。これはコンガディア語じゃありません。」「何だと…」宮内曹長が入る。「もしかして方言かカワウソ。」「た、多分。所々コンガデァア語ですが、 聞き取れません。もしかしたら…」「何だ。 」「プマラ村の革命前の死滅した方言かも知れません。」宮内曹長は愕然とした。それではここに張り付いた意味がないと。しかし気を持ち直して川原二尉に告げた。「カワウソ。もういい。日本に行くテロリストがわかっただけでも。コンガディアの民族衣装にオレンジのラインが入った服を着たやつらが日本向けのテロリストに間違いない。どの道ニャックを通さないと日本へ密入国できない。今度グジョンがここに来る時がその日に間違いない。」「分かりました。引き続き監視を。」「了解カワウソ。キャット終わり。」その様子を見ていた溝口一尉が関心する。「さすがだな宮内曹長。」「いえ、恐縮です。」「ではコンガディア軍側に知らせて空爆してもらおう。」「いえ、それは…」宮内曹長の脳裏にあの幼い兄弟が浮かぶ。「この村は東プマラ村と違って廃村にはなっていません。まだ貧困ながら毎日を一生懸命生きている村人が住んでいます。巻き込む危険性が。」「そうだったな後々日本側の要請だったなんて配信されては日本政府も困るだろう。…わかった。その時が来たらコンガディア軍特殊作戦コマンドに通達しよう。彼等に一掃してもらう。」「はい、ありがとうございます。」再び宮内曹長は監視を続けた。それから二日間偵察するが…続く。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.9 )
日時: 2019/07/29 01:40
名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)  

お詫びと訂正…今回査証が足りず、勢いだけで書いておりましたら、一部間違いがあることを発見しましたので訂正いたします。→輸送機は正しくはP3−Cではなく、C−2輸送機でした。P3−Cは哨戒機でした。申し訳ありません。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.10 )
日時: 2019/07/29 14:00
名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)  

…梨のつぶて。溝口一尉がふと宮内曹長に尋ねる。「なぁ、宮内曹長。何故ヤニンを使って極秘裏にこの場所まで移動して監視活動するんだ。コンガディア軍に協力要請すればいいのに。我々自衛隊とは懇意の仲だろ。」「懇意と本音は別物でしょう。」「と言うと…」「もしコンガディア軍内部にゲリラのスパイが紛れ込んでいたらどうします。」それだけで全てを悟った。こうした戦場ではよくある話だと。「なるほどな。もういい、宮内曹長交代だ。高倉曹長と引き継ぐ。君達4人は基地に戻りたまえ。休息も仕事だろ。」「ええ、しかしもう少しここに。嫌な予感がするもんで。」「まぁ構わんが。ヤニンには無線で伝えておく。」岩場に座りながら無線機を弄る溝口一尉。鈴本直也一曹が高倉曹長の様子にニヤリとする。「また趣味ですか高倉曹長。そんなにいい香りでもするんですか。」「ああ、そうとも。ラムドールと言ってな、この地域特産の自生花さ。黄色いのが特徴の美しい花。さっき藪に咲いてたからついな。」「高倉曹長らしい。その厳つい顔で花が好きなんてね。」「厳ついは余計だろ鈴本。」「ハハハッ…でも医学的にも花は人を和ませてくれる効果があると言えます。」そんな会話中、無線連絡が入る。「キャット、こちらOP。」「こちらキャット、どうぞ。」「無人機の映像ではニャックが数人の武装した部下を連れてSUV二台とトラック一台でそちらに、そちらに…そ…そ、ううっ」「どうした、OP。送れ。OP。」騒然とした音声の中、佐藤三佐がOPを勤める。「キャット、こちらハゲタカだ。OPはゾンビとなった(てんかんの急病人)。繰り返すゾンビとなった。」「キャット了解。」中即連の隊員が医務室に川原二尉を担架で運ぶ。「困ったな。コンガディア語に堪能なのは彼女なのに。三原と青木、君達はどこまで分かる。 」「はい、基本会話なら。」「基本会話か。ああ最悪だな。よりによってこんな時にてんかんとは。三原曹長、中即連、並びに普通科隊員、施設科隊員の語学力をリストアップしてくれ。」「了解しました。」三原曹長は素早いタイピングで各隊員のプロフィールを表示して見せた。「待て、ストップ。もう3ページ戻れ。」「はい。」「保江しのぶ…海外青年協力隊に二年。南プマラ村勤務…か。すぐにこの隊員を呼び出せ。」「し、しかし彼女は一般隊員ですよ。機密事項が…」「構わん。全責任は私が取る。これから私はここの機密より大事な人物に会わねばならん。二時間だ。」…続く


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