複雑・ファジー小説

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「救出命令」オペレーションサザンクロス
日時: 2019/06/28 02:32
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「懲役20年を取りますか。それとも、子供達の命を見捨てますか。…」この二者択一を迫られたとしたら、あなたはどうするだろう。この物語は主人公、保江しのぶがこの二者択一に翻弄される姿を描いたものである。この話の結末を知った時。…あなたは涙せずにはいられない。………………………………あらすじ。PKO活動の一環としてコンガディア共和国に派遣されていた陸上自衛隊。ある情報筋から、日本でテロ計画を進めてる過激派組織がこの国で暗躍しているという情報をつかんだ。PKOの増援に見せかけて密かに特殊作戦群が派遣されていたのだ。しかし、女性オペレーター主任がテンカンの持病で発作が起き、急遽普通科部隊の敏腕オペレーター保江しのぶが主任代理に抜擢された。上官からただ一つだけ出してはいけない命令を言い渡された。それは「救出命令」。この命令に背いたら懲役20年を覚悟しなければならない。かくしてオペレーター主任に就くのだが。…特殊部隊の無線一つで全ては狂わされていく。「借金の形に子供達が売り飛ばされるっ。今なら間に合う。監視命令から変更。救出命令を出してくれ。」彼女が出した決断とは。…

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.1 )
日時: 2019/06/29 01:30
名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)  

登場人物紹介……………………保江しのぶ。普通科部隊通信オペレーター。階級は三曹。現地語を最も知る女性。… 宮内正孝曹長。特殊作戦群創設時からの古参兵。子沢山の良き父。42才…溝口淳平一尉。防大出の経験浅き指揮官。27才。宮内に頼る。…善光寺道真二曹。理想主義タイプ。25才…石倉守一曹。敏腕のスナイパー、27才。…伊原剛志一曹。格闘技教官も兼ねる筋肉派。30才。…岡沢稔三曹。今風の青年だがしっかり者の22才。…高倉浩二曹長。寡黙だが花を愛する男35才。…鈴本直也一曹。衛生兵としては一流のドクター。27才。…佐藤幸一三佐。テロ計画を探り出した情報官。保江をスカウト。52才。…三原ほのか。オペレーター23才…青木里香。オペレーター21才…………コンガディア側…サヤ。次女、5才。…チュア。長女、6才。…レン。チュア達の弟、4才。…スレイ。チュア達の母親。…ピセス。チュアの友達、6才の女の子。…プカイ…ピセスの兄、8才。…ニェット…ピセス、プカイの母親。………グジョン。テロ計画の親玉。ゲリラリーダー。…ニャック。人身売買斡旋業者にしてゲリラ。高利貸し。他。


Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.2 )
日時: 2019/06/29 23:54
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

序章「台風の目」………………水が渇いてる。丸い穴を覗き込む兄弟。「お姉ちゃん、水あるかな。」「サヤ、諦めないで。汲もうよ。」「お姉ちゃんえらいえらい。」弟のレンが飛んではしゃぐ。太陽が照りつける中、三人は協力して水を汲んだ。「わぁ、水だ。井戸水だ。」長女のチュアは感激した。「お母さんに飲ませよう。」「えー、喉乾いた。」「 レン。お母さん病気なんだよ。この水飲ませてあげよ。」「そうだよレン。」サヤの一言でようやく腰を上げたレン。小さめの金盥に僅かな水を入れてトボトボ歩く兄弟。「こちらα2。β1どうぞ。」「α2聞こえてる。ついでにお前の心の声もだ。俺も同じだよ。お前のその集音機の感度良すぎるからな。…俺達の国じゃ蛇口開けば水が出るって言うのに。ここじゃ井戸水もロクに飲めない。ゲリラが暗躍してるせいだな。だがなα2、ペットボトルを渡そうなんてバカな考えするなよ。我々の任務はこの岩場で監視と盗聴だ。忘れるな、どうぞ。」「わかってますって。でも健気じゃないですか。見たところまだ5〜6歳ですよ。母親のために水をなんて…」「そうだな。だがしてやれることはない。 」「よく言えますね隊長。一週間前に6人目産まれたんでしょ。おめでとさんございます。どうぞ。」「唐突にそれか。」ニヤケながらα2がいる岩場に目をやる隊長。宮内正孝曹長である。全身迷彩服にプレートキャリアを着て、無線機を付けている。手にはHK416小銃に各種アクセサリーを搭載。他三人の部下も似たような装備で後方の岩場に座っていた。コンガディア共和国のゲリラ戦線のすぐ近く。ここに頻繁にゲリラと接触している人物がいた。ニャックだ。アメリカでビジネス専攻学を学び、ビジネスマンとして帰国。裏では人身売買、売春、麻薬、臓器売買にいたるまで手広く行い、ゲリラやテロ組織に資金を供給している。言わば便利なATMだ。その雇い主がテロ組織の親玉グジョンだ。…続く。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.3 )
日時: 2019/07/09 18:55
名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)  

…「帝国アメリカに屈する国は皆粛清されねばならない。」を合い言葉に、各国でテロ活動に従事している。そしてコンガディア政府軍にPKO派遣を決定した日本に対し酷く激怒したグジョンは、日本をテロ攻撃すると名指しして発表した。これを受けて首相官邸で合議した結果、中央即応連隊隷下の特殊作戦群の隊員を、増援部隊に混ぜて派遣。話はその頃に遡る。…「竹内一佐。P3輸送機到着しました。」現地時間の朝07:17時に執務室に入った一尉が報告に来た。「わかった。しかしここは朝から蒸し暑いな。うだるようだ。」「クーラー強めに…」「構わんでいいよ。他の隊員を考えたら贅沢なくらいだ。」「は、はぁ…」「それよりSが来るんだって。」「はい、そのことも兼ねてご報告をと思いまして。」「うむ、しかし上の判断とはいえ厄介なお客さんが来たものだ。」「お客さん…ですか。」「これは失言だったな。わかっているよ。彼らもまた我々と同じ自衛官だ。しかし異質な連中であることには変わりない。面倒事は御免被りたいね。」窓外を見ながらコーヒーを飲み干す竹内一佐。やがて増援部隊と名を借りた特殊作戦群がP3−C輸送機後部ハッチからゾロゾロと重い装備と共に降り立つ。「ようこそ南のバカンスへ。」出迎えたのはサングラスに新品の陸自迷彩服に身を包んだ実年男性だ。名前は佐藤幸一三佐。外務省武官を勤めていたが、今ではすっかり現地の情報官だ。「私は宮内曹長です。彼らは…」「ああ、知ってるよ。ファイルは見た。」「なら早速動きたいんですが。隠れ家(オペレーター室)を設けたいんです。」「うむ、それならいい 場所を確保してるよ。まぁ慌てなさんな。先ずは旅の疲れを…」「してる間に奴らは着々とテロ計画を進めます。失礼ですが佐藤三佐。」「ああわかってるよ。君も律儀だね。」にやけながら基地を案内する佐藤三佐。早速輸送機から降ろされた天幕と機材を組み立て始める宮内班。それをよそ目にPKO隊員の運転するLAV高機動車で出かける佐藤三佐。「行き先はわかっているな。市場だ。伝説の男と会う。」言いながら葉巻に火をつけた。…続く。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.4 )
日時: 2019/07/12 19:46
名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)  

…「君もいるかね。」89式小銃を携えて座っている若い隊員に勧めた。「いえ、自分は吸いません。それに任務中ですので。」「そうだったな、悪かったよ。しかし最近はどこも禁煙禁煙でね。若い奴らも吸うやつは少なくなった。時代かね。」独り言のように喋り、窓外を見ながら煙を漂わせる佐藤三佐。やがて車両は市街地に入り、謳歌を極めたコンガディア政府軍側の都市を眩しく見つめた。それに比べてゲリラ地区が近づくにつれ、時代から取り残された貧困地区が続く。市場はその中間にある。「ここでいい。」武器も携帯せず、勝手知ったる我が家のように歩き去る。中即連の隊員は着いて行くのがやっとだった。やがて質素な土壁で仕切った住宅街を歩き抜き、土壁の門をくぐって小汚い民家に入る。「パヤウィーヤ。」「パヤウィーヤ。ようこそ佐藤。ジャーさんがお待ちかねだ。」鼻下に髭をはやした褐色肌な中年男が出てきた。「そりゃ助かる。」「ところで冷蔵庫と葉巻はいつ来る。」「ああ大丈夫。明日中には届くさ。」「嬉しいね。日本産の電器は大歓迎だ。便利で長持ちする。色んな機能までついてる。」「葉巻はキューバ。家電なら日本産。てね。」話してる間に「伝説の男」の前に来ていた。「こりゃ驚いた。パヤウィーヤ。失礼、あまりにも気配を消してるもんで気づかなかった。私は」「聞いてる。日本軍のサトー。」「いえ、正確には自衛隊…」「ワケがわからぬな。自衛隊だと。貴様らは戦士ではないのか。銃を持ち、戦う力を持つ集団だ。軍隊でなく何だと言うのだ。」論争しても無駄とわかっている佐藤。単刀直入に本題に入った。「あーっ、ジャーさん。早速あの話しに入りたいんですが。」「わかっている。座りたまえ。」伝説の男はキレイな絨毯の上に座るよう促した。この伝説の男と呼ばれるジャーは初老くらいに見える。褐色肌に髭を蓄え、鼻は鷲のよう。眼光鋭い目つきに加え、幾多の戦場を戦い抜いた風貌がある。民族衣装とは似つかわしくないAK−47小銃を手に持っていた。「ジャーさん。あなたはかつてゲリラ側の戦士だった。なのに何故、今更になって我々に味方を…」「バッフクは変わった。」「ば、バッフクとは…」佐藤が隣のチョビ髭男に耳打ちする。「ゲリラ軍のことを昔そう呼んでた。」「あー、なるほど。」話しは続いた。「かつて傲慢なコンガディア政府を打倒すべく、我々は立ち上がった。しかしグジョンが帰ってきてから一変した。やつは元々私の指揮官の息子だった。」…続く

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.5 )
日時: 2019/07/18 01:26
名前: 梶原明生 (ID: JnkKI7QF)  

…AK−47の銃床を床にたたきつけた。「コンガディア政府軍との内戦が始まる時、指揮官は妻子を外国に逃がした。それから数十年。その息子はいつしかその外国のテロ組織に入り、傾倒した。父である指揮官は彼を歓迎して迎え入れたが、結局仲違い。指揮官は息子に殺された。」佐藤は少し不思議がった。「実の父を…ですか。しかしそれでは回りの側近が黙っていないでしょう。」「君ほどの軍人が分からないかね。気がついた時にはその側近全て、いや、兵士皆グジョンに懐柔されていた。我々極少数の指揮官派は逃走を余儀なくされ、抵抗活動を続けたが、今やその数も私一人となった。政府軍側に手を貸すのは癪だが、あんたら日本人ならと…」「手を貸す気になった…ですか。」「そうだ。既にやつが境界線を越えて協力者と会っている場所は一つだけになった。コンガディア政府軍の特殊部隊によって三ヶ所中、二ヶ所は潰されたからな。その場所を知っている。」この情報から隠れ家は色めき立った。グジョンが唯一現れる場所は基地から30キロ先にある「プマラ村」だ。作戦会議が開かれ、佐藤と外務省武官時代からの馴染みのトラック運転手ヤニンに協力してもらうことになった。プマラ村近くの山岳地帯から徒歩で迂回して所定の岩場から偵察任務に着く。翌日からそれは実行された。ヤニンはニヤニヤしながら宮内達に挨拶する。「コンガディアまでようこそ。おめでとさんございます。」「何…」善光寺二曹が怪訝そうにたどたどしい日本語を聞いた。トラックに乗り込むとやたらこの「おめでとさんございます」を聞かされ、いつしか「おめでとさん」という暗号名にすらなった。「ここ、いいか隊長さん。」ヤニンがトラックを停める。「ああ、ありがとう。チップは弾むよ。」紙幣を手渡すと素早く7人が飛び出して森林地帯に姿を消す。「ふへー、さすが、日本兵隊さんだ…」褐色肌にヤニ臭い息を吐きながらヤニンは感心した。その頃中即連普通科部隊の食堂では数人の女性自衛官が歓談していた。「保江さん、昨日施設隊が道路建設終わったみたいですよ。」「本当に。予定通り進んで良かった。」喫食しながら保江しのぶ三曹は喜んだ。「そう言えば保江さんって海外青年協力隊で一度この国に来たことあったんですよね。」「うん。自衛官になる前に、大学生だった頃。…」彼女はつい昔の思い出に耽った。平和のために尽くす行動はいいことだ。まだそう信じていた頃に先輩から誘われて協力隊に入った。…続く。


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