複雑・ファジー小説
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- 白線お流れ〜迷想奮闘記〜
- 日時: 2019/08/18 00:04
- 名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)
清純な田舎の女子高生の物語。優秀な開業医を父に持ち、何不自由なく一人っ子の箱入り娘として生まれた。長野県松本市内の優等校に通い、将来に迷っている三年生。…じゃなくて……………………同市内の底辺校に通い、ドラッグストア薬剤師兼レジ係りの父を持ち、精肉工場のパート勤めの母を持つ高校三年生、八倉園美のお話し。7人兄弟の三番目、次女として生まれて毎日醜い兄弟ゲンカを繰り返し、外面は一人っ子の清楚な女子高生を演じて回りを辟易させる。そんな彼女がある日、父が借りてきた「白線流し」というTVドラマDVDをたまたま視てしまってからが大変。回りを巻き込んで主人公、七倉園子になりきろうとドタバタ騒ぎを展開する。しかし意外な結末が待ち受けていた。ハートフル?青春コメディが幕を開ける。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.16 )
- 日時: 2019/09/27 20:00
- 名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)
…「文化祭の寄付金集め係。」意気揚々と手を挙げる園美。「よ、よくわかったわね。じゃあ八倉さんと磯山君に頼むわね。」「やったよっしゃっ、設定通り。」「設定って何よ八倉さん。」「いえ、何でもありません。小澤先生の名前が一字違いなの以外は…」「はぁ…」時が止まる小澤。かくして園美と慎二はスポンサー企業回りを午後に始めた。「七倉園子だまさに。クーッ。」「どうしたんだよ八倉。」「ううん、何でもない。あれ、次は…お、お、小河電子。」思わず見落としていた名前に感激した。叶の家ではないか。「知らなかった。お母様がうちの卒業生だったなんて。」「嘘だろ、あいつんちかよ。」園美はスキップ、慎二は意気消沈で叶の家に向かった。「あら、あの時の可愛いお嬢さん。そうか、私あなたと同じ西山高校出身だったはね。すっかり忘れてたわ。待ってて…佳乃ちゃん、お金包んで。」「はい」黒髪のロングヘアーに丸みを帯びた可愛い顔付き。事務手伝いらしい女の子を見た瞬間、言うまでもなく妄想が始まった。「ゆ、遊井亮子だ。」「は…」キョトンとする佳乃。「いえ、何でもありません。」そこへ工場長らしい白髪混じりにメガネの男性が事務室に入ってくる。「社長、こ、この図面宜しいでしょうか。」「いいんじゃない。相島さんありがとうね。死んだ主人に代わって私のサポートまでしてくれて。相島さんあっての小河電子よ。」「い、いえ、社長の努力あってのことです。そ、それでは工場に戻ります。」そそくさと事務室を出る相島工場長。「あれ、あの人の叶さんのお母さんを見る目…恋心。」園美は何となくこの相島という男が気になった。やがて各スポンサーを全て回った園美達。「3時だね、歩き回ってお腹もすいたし、家でカレー食べない。」「お、お前んちで…行く行く。」慎二の目的と園美の目的は違っていた。ドラマのシナリオ通りだからだ。「只今。」「あらお帰り。あら〜、いよいよ家に彼氏連れてきた。」出迎えたのはお婆ちゃん。「違うってば。西山高校文化祭の資金集め。お腹減ったから何か食べようと思って。」「な〜んだ。…ならカレーがあるからお上がり。」「やったーっ、設定通り。」そそくさと家に入って、二人はカレーライスを堪能した。「園美。」「何、お婆ちゃん。」「あなたはあなたでいいのよ。」「え、どういう意味。」「まんまよ。さぁ、残りをたべなさい。」「は〜い。」何もわからずお婆ちゃんのカレーを頬張る。翌日は小河将七回忌法要が…続く。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.17 )
- 日時: 2019/10/01 01:25
- 名前: 梶原明生 (ID: 0Q45BTb3)
…執り行われていた。菩提寺に親戚一同が寄り集まり、叶の父将を偲んでいた。実は園美も体調不良を理由に学校を早退してきてた。母幸子から今日のことを聞き出していたからだ。スパイのように忍び込む園美。「あれ、あなた昨日の…」トイレから帰りの佳乃とバッタリ。「あ、いや、あの、…」「叶に会いたいの。なら呼んでこようか。」「え、…何で叶さんをそんな呼び方で…」「やだ、知らなかったの。てっきり叶の彼女かと思ってたのに。叔母ちゃん気に入ってたから。」「へ…叔母ちゃん…」「そうよ。あたし叶の母方の従兄弟だもん。」「ヒョエーッ。」驚いた。まさか遊井亮子をイメージした不良が、ただの親戚だったとは…「設定が崩れ〜る〜。」「ど、どうしたの。具合でも悪いの。」心配した佳乃を掴む園美。「お姉さん、お願いが。親戚のオッサンを殴って。」「はぁ…」言うまでもなくそんな願いは聞かずに宴席に戻る彼女。しかし…「売女だな。ええ、幸子さんよ。あんた、将を裏切って工場長とよろしくやってるって噂じゃないか。」妻の制止を振り切り、酔った勢いで話す伯父さん。「いえ決してそんな。」「将の過労死も怪しいもんだな。ハハハハ。」すると佳乃がビールをぶっかけた。「何する。」「叔母ちゃんに謝れ。」「なんだと、この東京のグータラ彼氏作った阿婆擦れが。」殴りかかった伯父さんの拳を見事受けて正拳突きを叩きつける。「ちょっと佳乃ちゃん何てこと。」「おお、ドラマ以上だ。」幸子が宥める後ろで一人悦に入る園美。幸子によって連れ出される佳乃を見て、急いで隠れる。「あれ、君何でここへ。」うまく隠れたつもりが見つかってしまった。「いや、叶さん。その、うちの先祖のお墓参りに〜何て…ハハハハ。」笑って誤魔化す園美。翌日、土曜日の朝食に我が家の茶の間に入る。「あれ、園美。珍しいわね。休みは香子や乙美とこんがらがって10時まで寝てるあんたが。」美和子は目を丸くしていた。「オハヨー。今日は、聞いてもらいたいことがあって。…来週の土日、なっちゃんちで、まっちゃんとお泊まり会しようかなって。」「あら懐かしい。まきちゃんとは昔よくやったわね園美。」「うん、だから…」「なら飯塚さんちのお母さんに電話入れないと…」「ああ、だ、大丈夫。もう挨拶は済ませたし…」誤魔化しつつもドラマと同じ展開に内心ほくそ笑んでいた。月曜から雅春相手に裏工作を仕掛けた。「なっちゃんは寒さに強い男が好きだよ。」と囁き、天文台ツアー時に…続く
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.18 )
- 日時: 2019/10/03 02:19
- 名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)
…何としても風邪をひかせようとやっきになった。その頃、お昼休みにまきの家に電話を入れる美和子。「ああ、さとちゃん。美和子だけど。」「みっちゃん久しぶり。どうしたの。」「うん、うちの姫がね、お宅にお泊まり会するって言い出したもんだから挨拶しとこうと思って。」「やだ、みっちゃん。それはほら、金持ちの、たてじまクリニックのお嬢さんんちでするのよ。」「へ…そうなの。てっきりあんたんとこかと。」かくして勘違いがわかってかけ直すのだが…「ええーっ、天文台ツアーですって。しかも男子も連れて。」瞬間湯沸かし器の如く頭から煙が出そうなくらいカンカンになった。「園美のやつ。」ルンルン気分で噂の園美が帰ってきた。「只今。」「あんた、ちょっと来なさい。」「何よ。」言うまでもなく、嘘が発覚したことを怒ったのだ。「いい、門限は4時。」「はぁ、それツアー終わってからのセリフじゃない。また設定崩れる〜。」「何わけわかんないことグダグダ言ってんの。嫁入り前の娘がそんなお泊まりなんて。」「お母さん、いつの時代の話よそれ。もう私は子供じゃない。」「尚更よ。男はね、頭ん中エロしか考えてないの。」そこへ女性誌を読むふりで静観していた、お婆ちゃんの香が立ち上がる。「まぁまぁ美和子さん。せっかくの青春時代なんだから行かせたら。」「何言い出すんですか。過ちが起きてからでは遅いんですよ。」「なら過ちの起きないようにすればいいじゃない。」ウィンクを園美に向ける香。「まさかお婆ちゃん私と…」そのまさかよ。お目付役にこのバアバが行けば解決。」「やめてよお婆ちゃん。」頭を抱える園美。「こう見えて美和子さん、私は合気道二段の腕前。」「お、お婆ちゃんが…わかりました。それなら…」「交渉成立ってね。」またもやウィンクする香。「単に自分が行きたいだけじゃん…」園美はふてくされて呟いた。時は過ぎて土曜日の朝。バスは園美とお婆ちゃん御一行連れて天文台ツアーに出掛けた。雅春は風邪引いてないは、余計なババアは付くはで意気消沈。かと思いきや、巧みな話術と優しさで園美以外はすっかり手なづけられる4人。だからこそ逆にムカつく園美であった。到着してあちこち見学すると、お婆ちゃんの方が博識なのが更に受けた。やがて夜を迎えた。天文台宿泊施設で意外な奇跡に出会う。叶と母幸子が展示場に来ていたのだ。しかもたまたま飲み物を買いに自販機に来たところ。「あれ、君は…八倉さんだったよね。」…続く。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.19 )
- 日時: 2019/10/05 01:04
- 名前: 梶原明生 (ID: q6woXfHh)
…「もう、何で叶さんすぐ声かけるのよ。お母さんとしばらく話してからでしょ。」「え、そっか。そうだよね。」互いの頭に描いてる受け取り方は違えど、母幸子は容赦なくたたみかける。「あら〜園美ちゃんじゃない。奇遇ねこんなところで会うなんて。きっとこの日叶のお父さんが引き合わせてくれたんだわ。」捕まったら最後。園美のペースなんか何のその、語り始める。「実を言うとね、この子のお父さんは私が東京で勤めてた材料会社のお得意さんだったの。西山高校出た後短大卒して受付嬢してたら、お父さんがベタボレしてね。ことあるごとに言い訳作って会いに来てたのよ。ある日告白されて…で、叶が出来て松本に帰って嫁入りしたのよ小河家に。年が離れてたから最初は不安だったけど、私がTOKIOが好きってわかったら急に長瀬君の髪型にしだして。笑えるでしょ。本当は国分君が好きだったのに。…そんなお父さんが多忙の中初めてデートに選んだのがこの天文台だった。だから毎年時間作って、ここで追悼してるのよ。」「へー、そんなことがあったんですか。」設定とは違うが、思わずジーンとくる園美。「あなたも星見る。天文台行きましょう。」「はい。」歩きながら夏のスマホにメールを送る。「園美は預かった。今すぐ天文台に来い。」意味不明ながら夏は呼び出しに応じた。「私は叶さんから見たら太陽ですよね。」「いや、どちらかと言うと木星かな。」鳩尾にパンチが飛ぶ。「太陽ですよね…」「痛たた、君何てこと…」悶絶する叶。「そのちゃん何。」夏がまともに天文台内に入り込む。「そこは様子見でしょなっちゃん。もう設定が…」半分嫌気が差す園美。「どうかした。」望遠鏡に夢中な幸子が振り返る。「あら、お友達。ほら、二人とも見てごらん。カシオペア座が見えるわよ。」「え、」園美はしばし秋の夜空を満喫するのだった。…次回「ふられたラブレター」に続く。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.20 )
- 日時: 2019/10/08 01:57
- 名前: 梶原明生 (ID: 99wOCoyc)
「ふられたラブレター」……………………………………楽しかった天文台ツアーも一夜明けてバスに乗り込むと、松本市に向けて園美達は帰路についた。「お帰りなさい。」家で美和子が出迎えた。「あれ、何で怒らないの。」「はぁ…」「そっか、門限5時は先に言われたっけ。」一人呟くと遅れてお婆ちゃんも玄関に入った。「あら〜美和子さん。お出迎えありがとう。」「いえ、どういたしまして。」「なかなか好青年揃いだったわよ美和子さん。取り越し苦労だったわ。久々楽しかった。女学生時代を思い出して…」「女学生って…」呆れつつリビングのソファーに座り込む園美であった。数日後、中間テストの結果発表がなされた。小澤が熱弁を振るう中、慎二が頭を抱える。「うわ最悪。俺127位かよ。」「当然の結果だな。」雅春が意地悪な横槍を入れる。「うっせ。学年トップ組は黙ってろ。」そんな中、歓声が湧く。まっちゃんである。「やったーっ、努力の賜物。学年68位っ。」辺りに見せびらかす。「嘘っ、まっちゃんが…真逆じゃん…そうだ、まっちゃん。悪いことは言わない。磯山君と名前書き換えて127位になりなさい。さもなくば貴様の命をもらう。」「また始まった。」お通夜みたいな顔で睨む園美。「無茶言わないでよそのちゃん。できるわけないでしょ。」「いや、127位になって磯山君とケンカになり、早退するんだ。」「八倉さん。」「ヒェッ」小澤がすぐ真後ろに立っていた。「脅迫してるって本当。」慎二が小澤の真後ろからアカンベーをして舌を出す。「いえ、…磯山め。」しばしムカつく園美であった。運良く今日は音楽が午後手前にあった。「しめしめ、設定通り。」園美がまた裏工作を仕掛ける。「ねぇ、まっちゃん。早退する気分じゃない。」「はぁ、何それ。できるわけないでしょ。」「そう言わずここは早退しよう。」「できない」「できる」「できない」「できる」「そこ、何してる。」音楽の先生がたしなめる。「いえ、あの、八倉さんが気分悪くて早退したいらしいので、付き添いします。」「そうか。飯塚、頼んだぞ。」「はい〜」かくして二人は教室を出た。「そんなに早退させたかったら、カラオケ奢ってくれたらしたげる。ただし一緒だよ。」「えーっ、設定崩れる。」「また設定設定って。最近多いよその言葉。何よ設定って。」「教えない。」「教えなさいよ。」「カラオケにピザとたこ焼き付けようかな〜。」「失礼いたしました。教えなくて結構ですご主人様。」…続く。
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