複雑・ファジー小説
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- 白線お流れ〜迷想奮闘記〜
- 日時: 2019/08/18 00:04
- 名前: 梶原明生 (ID: VlfYshYD)
清純な田舎の女子高生の物語。優秀な開業医を父に持ち、何不自由なく一人っ子の箱入り娘として生まれた。長野県松本市内の優等校に通い、将来に迷っている三年生。…じゃなくて……………………同市内の底辺校に通い、ドラッグストア薬剤師兼レジ係りの父を持ち、精肉工場のパート勤めの母を持つ高校三年生、八倉園美のお話し。7人兄弟の三番目、次女として生まれて毎日醜い兄弟ゲンカを繰り返し、外面は一人っ子の清楚な女子高生を演じて回りを辟易させる。そんな彼女がある日、父が借りてきた「白線流し」というTVドラマDVDをたまたま視てしまってからが大変。回りを巻き込んで主人公、七倉園子になりきろうとドタバタ騒ぎを展開する。しかし意外な結末が待ち受けていた。ハートフル?青春コメディが幕を開ける。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.26 )
- 日時: 2019/10/23 20:35
- 名前: 梶原明生 (ID: 99wOCoyc)
…「お婆ちゃんじゃないわよ。昨日は昨日で階段で電話してて、今日は今日でいきなり早く帰ったかと思ったらお弁当作りでしょ。一体どうしたの。」「今日はテストだったから早く終わったの。」「それで…禄に料理もしないあんたが料理かい。どれどれ。…ウヘヘッ何これちょっと変な味。」「えーっ出汁巻き卵なんだけど。」「これが。ふーっ、花嫁修行ね。よし、私が教えたげる。」「え、お婆ちゃんが。」さすがは老練。テキパキと出汁巻き卵、タコウインナーなどの味も見目も麗しいお弁当が出来た。「うわーっやっぱりお婆ちゃんすごかったんだ。」「当たり前よ。昔は毎日武史にお弁当作って持たせてたんだもの。亡くなったお爺ちゃんだって、刑務官仲間に自慢してたくらいなんだから。」仏壇の方を見る香。「へーっ…いっけないもうこんな時間。お婆ちゃん行ってくるね。」「慌ててどこ行くんだい。」「えーと、図書館。」「図書館なら慌てなくても…あっそうか。叶さんとこか。」玄関で思いっきり転ぶ園美。急いで小河電子工業に向かった。「あの〜。」「あら、あなたいつぞやの。叶の彼女さん。」「いや、そんな彼女だなんて…て何で喜ぶんですか。」「え…」ワケがわからない佳乃。誘われるままに近くの河川敷に話し合いに出た。「で、話って何。勤務中だから早めにお願いしたいんだけど。…お弁当。何で直接渡さないの。別に私を介して渡さなくても。」「いえ、お姉さんに吟味して頂こうと思って。」「わ、私が。…」そうだ、そうやって弁当箱を開けて川に捨てるんだと、内心念じながら固唾を飲んだ。「わーっ、素敵なお弁当じゃない。あなた料理上手なのね。」弁当箱を開けた佳乃は開口一番に感嘆した。「でしょうーっ。私も自慢したくなるくらいで…じゃねーよ。何で捨ててくれないんですか。」「はぁ…」益々困惑する佳乃。「じゃあいいです。私の手で…」「ちょっとやめなさいよ。ちょっとちょっと。」お弁当の取り合いとなったが、佳乃が勝った。「ど、どういうつもりか知らないけど。勿体無いわよ。とにかくこれは私が責任を持って叶に渡すから。…それから叶は従兄弟で同い年だから、お姉さんじゃないの。まぁ、去年高校を私は卒業したからあなたよりは一つ年上だけど…」終始ふてくされる園美だった。その後家路についた彼女だったが…「そしてバイクの男が叶さんのいるスナック仮面へ誘うのだ。」言っていると何という奇跡。本当にカワサキバイクに乗った青年が園美に声をかける。…続く。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.27 )
- 日時: 2019/10/23 21:27
- 名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)
…「やぁ、君。八倉さんだろ。俺の弟の彼女さん。」「え、そうですが。あなたが。」「うん、て言うより彼女の従兄弟だからなぁ。佳乃と付き合ってる駒沢って言うんだ、よろしく。」「こちらこそ。」次の言葉にワクワクする園美。「叶がさ、君に会いたいってさ。6時にスナック…」「仮面っ。」「え、どうしてわかったの。」ガッツポーズを小さく取る。「いえ、なんとなく。」「スナック仮面ライダーだけど。」ドカンと転ける園美。「大丈夫。…」「いえ、何でもありません。わ、わかりました。」「じゃあ伝えたよ。」走り去る駒沢。「何で仮面ライダーなんじゃいっ。」一人憤慨する。かくして時間通りスナック仮面ライダーを訪ねた。「あ、八倉君。こっちこっち。」「なんじゃコリャーっ。」本来いないはずの叶がいるばかりか、ドラマとは似ても似つかないオタクぶりのスナック。所狭しと仮面ライダーグッズの山、山、山。「お弁当ありがとう。ほら、あまりにおいしいから平らげちゃった。」叶はわざわざ中を開いて見せた。「設定崩れる〜っ。」お決まりのセリフが口を突いて出る。「まぁ座って。お礼にと思って、僕と佳乃と快斗兄ちゃん行き着けのお店に招待しようと思ったんだ。」駒沢も来ていた。「何食べたい。」「お酒は…」「うちは未成年に酒は出さない主義でね。」マスターがいきなり現れた。「うわ〜っ、そ、そうですか。すみません。」「あ、マスター。自慢のオムライスで。…ここはね、兄ちゃんの行き着けでさ。で、佳乃と付き合い始めにお互い仮面ライダー好きってわかって意気投合してね。それで通うようになったんだ。」「そ、そうだったんですか…ハァ。」溜め息突く園美。しかしそれも束の間。和気藹々とし始め、いつしか時の経つのを忘れていた。やがて店を出て、陽がすっかり落ちた街を4人で歩いた。「あれ、八倉じゃないかあれ。」雅治、なっちゃん、まっちゃんと共にカラオケに行っていた慎二が気がつく。「どれどれ、あ、本当だ。」まっちゃんも目撃する。「あいつあの小河って言う定時制のやつと…」「あ、磯山君。」慎二は園美達を追いかけはじめた。「この向こうに美味しいケーキカフェあるのよ。」「ケーキっ行く行くっ。」佳乃のお誘いに乗ってく園美。しかし…「何だ…人が殴られてる。」駒沢が暗い公園側に複数の人影を見る。「見られたら仕方ないな。」車に待機していた男達が4人を挟み撃ちにする。「な、何だよあんたら。」…次回「妄想に消えたカシオペア」に続く。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.28 )
- 日時: 2019/10/25 23:36
- 名前: 梶原明生 (ID: 0Q45BTb3)
「妄想に消えたカシオペア」…………………………………駒沢が突っかかるも風体の悪い男達に殴られて倒される。「何すんだよっ。」怒った佳乃が蹴り技で男を倒す。「気をつけろ、このガキただもんじゃない。」一人が叫ぶと一斉に飛びかかるが、さすがは空手県大会優勝者。男達は手を焼く…「手こずらせやがって。」車にいた風体の悪い女がスタンガンを押し当てる。取り押さえられる佳乃。「待ちな。110番しようったってそうはいかないよ。」震える叶と園美がスマホをかけようとしたが、女に取り上げられた。公園に殴られてリンチされていたカップルと同じ場所に集められる園美達。「どうしますお嬢さん。このカップルを焼身自殺に見せかけて車に火を放つはずが、これじゃ死体の数が多すぎます。」「仕方ないさ。ネットで集団自殺とか、何とでも体裁を取り繕うしかないよ。」「ええーっ。」園美は縛られながら悲嘆する。「待てっ、お前ら何なんだよ。…八倉っ。よくも。」慎二が開口一番に駆けつけた。「八倉っ。」「そのちゃんっ。」雅春に夏、まきの三人も駆けつける。「ちっ、飛んだ邪魔が増えたね。仕方ない、こいつらもまとめて始末しな。」お嬢と呼ばれる風体の悪い女が叫ぶ。慎二達も必死に抵抗するが相手が悪すぎた。しかし慎二は怯まない。「クソっ、俺の愛しい人を返せ。」「え、…」園美が驚いていたその時、特殊警棒が円を描いて回転し、男の腕を直撃した。「おやおや、楽しいパーティーに俺達は置いてきぼりかい。寂しいね西山高校生と若干関わりありな諸君。楽しいケーキは分かち合おうじゃないか。」「いっ五島さん。」叶が安堵の笑顔になる。「俺達四男一女でお助けに参上したぜ。」「ふざけんなっ。」男が殴りかかるものの、五島は拳を掴み取り、捻り返して投げ飛ばした。五島達は男達と大乱闘となる。「ギフト(カップル)二人に死なれては困るんでね。お嬢さん。」五島はラスボスらしき女のスタンガンを取り上げて打撃した。「何事だ。」パトカーのランプが公園に入ってくる。…一時間後、病院に呼び出された園美の両親は警察と話していた五島に説明を受ける。「ああ、八倉さんのご両親ですね。ご安心ください。娘さんは掠り傷程度で別状はありません。」「あ、あなたは…」「私はある事件を捜査していた本庁の刑事です。東京の愚連隊の痴話喧嘩に巻き込まれたみたいで。」「え…」叶は少し違和感を感じた。「五島さん、いつから刑事になったんだ。」…続く。
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.29 )
- 日時: 2019/10/29 02:20
- 名前: 梶原明生 (ID: 70vEHkeO)
…呟くも園美の両親のお礼言葉にかき消されていく。「ありがとうございます。助かりました。」そこへ治療室から出てくる園美。「園美っ、無事だったか。」この光景にようやく「設定」を思い出す。「そうか。ショックでぶっ飛んでたけど、よくよく考えたら不良に絡まれたあのシーンだ。く〜っ。」「どうしたの園美。頭どっか打ったんじゃないの。」母美和子がいつものセリフを投げかける。「んなわけないでしょ〜。」叶が挨拶をしてくる。「あ、あの。この度はこんなことに…」「君が園美を誘った小河君だね。君とはしばらく距離を置かせて…」「お父さんそれまだ後のセリフ。」「何、せ、セリフだと…」調子狂う武史。「八倉、無事で良かった。」そこへ治療を終えた慎二が現れる。「やぁ君かね、勇敢にもうちの園美を助けるために飛び込んだクラスメートと言うのは。」「まぁ、なかなかイケメンだこと。ありがとう磯山君。末永く園美をよろしくね。」「んもう、お母さんもお父さんも、なんで磯山君褒めるのよ。これじゃ叶さんと立場が逆。」またふてくされる。「何をバカ言ってるんだ。さぁ、帰るぞ。」仕方なく武史に従う。「やれやれ。あんな娘抱えて。八倉家も大変だね。」五島は他人事のように言うのだが…「おい、五島とやら。本庁のダチに問い合わせたが、お前みたいな捜査官はいないと言ってたぞ。」皆がそれぞれ保護者と帰った矢先、聞きたくない巡査部長の声が聞こえてきた。「ああいや、そんなことはないはずだ。向こうに書類が…」と指差してあっち向いた巡査部長目掛けて腹部に正拳底突きを食らわす五島。「おい、大丈夫か。緊急配備。本庁の刑事を装った五島と言う男が逃走。他4名の男女も行方不明。…」駆けつけた警察官が慌ただしい中、ワイン輸送のバンに乗って逃走する五島の姿があった。「裕子ちゃん、詰め甘いよ。何で長野県警に本庁のダチがいるやつ把握しなかった。」「すみません。こちらも手一杯で。即席の身分証作るのが精一杯だったんです。」「何だよ。まぁこの通りギフトは無事だからいいんだけどさ。」ノートパソコンに向かってキーを打ち続けてる裕子に呟いた。「次はギフトを国外に逃がすパスポートだ。頼んだよ。」「了解しました。五島三尉。」バンは街中を潜り抜けていく。一方何も知らない園美は、何としても叶を家に泊めるべく、試行錯誤していた。「叶さん、こっちこっち。ここが私んち。」わざわざ夜遅く門扉の前までメールで呼んでいたのだ。しかし何故、…続く
- Re: 白線お流れ〜迷想奮闘記〜 ( No.30 )
- 日時: 2019/10/31 19:50
- 名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)
…叶はわざわざこんな深夜にリスクを犯してまで八倉家にやって来たのか。それは吊り橋効果と、「わ、私の初めてをあげたいんです。両親とは離れた部屋にいるんで大丈夫。」と園美が色気に訴えたことに由来する。やはり叶も男である。淡い期待と妄想が彼を盲目にしていた。かくして、忍び足で玄関を越えていざ二階へ。「いらっしゃいませ。」「イケメンさんだ。」「絵本読む人なの。」貞治、香子、乙美の三人は起きていた。「や、八倉君。一人っ子って言ってなかったっけ。しかも結構ご両親の寝室の真上だよ。」「あら、やだどうしよう。もう、何で起きてんのよお前ら。」「だって姉貴がコソコソ電話してたら眠れないったらありゃーしない。」「こいつーっ。」「八倉君やめなさいって。静かに。」兄弟喧嘩を止めようとする叶。「あーあっ、勝手にしろ。」次男義郎だけ冷めた目で寝たふりする。暫くすると乙美の子守役になる叶。「龍を退治したブリキさんホウキさん猫さんは、ふるさとに帰りました。…あれ、寝ちゃったか。」いつの間にか寝落ちする兄弟。その後ろの園美も布団でスヤスヤ眠りについた。「ふふ、やましいこと考えるより、こうして寝顔見てるほうが可愛いな。」ほっぺに指を当てると、彼も就寝してしまった。…翌朝一番に美和子の悲鳴が響き渡る。「キャー。」「どうした。こ、これは一体。」武史も階段を駆け上がった。「ち、違うんです、こ、これにはワケが…」飛び起きた叶が慌てて弁明する。「き、君は人んちに何勝手に…通報してやる。」武史がスマホを取り出したその時だった。「私が招き入れたの。」「お、お婆ちゃんっ。」香が上がってきていた。「大事なお嬢さんを危険な目に合わせたからと叱られて家を追い出されたのよね。ねぇ小河君。」ウィンクする香。「え、ええ…」渡しに船で乗るしかなかった。「武史、彼を悪く言うのは筋違いよ。お弁当のお礼に食事を奢ってくれたそうじゃない。」「お母さん…」母親に頭が上がらない武史。いつの間にか朝食を八倉家一同、叶を交えて取っていた。「くーっ、ドラマ通り。」またもや設定が叶って悦に浸る園美。二人は一緒に学路を歩く。「叶さん、多分今から家に帰ったら佳乃さんから封筒を信集銀行に届けるよう頼まれます。そして行ってみたら幸子おばちゃんが銀行頭取に土下座してます。」「はぁ、一体どういう意味だよ。」「ああ…予知夢を見たんですよ。ハハハッ。」誤魔化す園美。しかし偶然の一致の恐ろしいこと。…続く。
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