複雑・ファジー小説

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戯構築世界ノ終末戦線
日時: 2023/03/18 07:52
名前: htk (ID: 7gGQw8LV)

作者にはほぼオンラインゲームの知識がありませんが、VRものです

ダークの方でもう一作品掲載させて頂いておりますが、今の所向こうの世界観とは特に繋がりはありません←たぶん?

内容は主に、NPC側の視点を主題とした物語にしようとは考えていますが、プレイヤー視点の話もよく挿話で挟まれたりして、読み手を選ぶ構成かもしれません

作者の稚拙さもあって、まだまだ作中内のゲームの設定が煮詰まっていないので、場合によってはいつの間にか大幅改訂される場合があります
なるべく読み返さなくても良いような修正に留めようとは考えていますが、そのあたりは先々の展開によって左右されてくると思いますので、予めご了承して下さると助かります

尚、当作にはプレイヤー視点の掲示板回がありますので、アンカー(>>)が含まれるレスが時折見られますが間違って押しても見当違いのページに飛ばされるか、まだ何の投稿もされてないページへ送られる場合がありますので、読者様はお気を付け下さい

※10、11話目の補足ですが、たぶん何かの伏線だとは思うんですが、実は作者にもよく分かっていません
なので、先の展開の都合で後で書き直す可能性があります

※17話目から20話目ーー4話一気に投稿しました
以降、書き置きの修正等で暫く更新止まります



以下、目次


1話目=>>1
2話目=>>2
3話目=>>3
4話目=>>4
5話目=>>5
6話目=>>6
7話目=>>7
8話目=>>8
9話目=>>9
10話目=>>10
11話目=>>11
12話目=>>12
13話目=>>13
14話目=>>14
15話目=>>15
16話目=>>16
17話目=>>17
18話目=>>18
19話目=>>19
20話目=>>20

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.6 )
日時: 2023/03/09 18:22
名前: htk (ID: 5USzi7FD)

1章〜〜第1幕、4話ーー副題(未定)



 何で、君がーー。
ーーそう言ったつもりになったが、言葉が出てこなかった。
 自分が唖だった事も忘れて、呻きを零す。
「……ウ゛ゥ゛エ゛……?」
 俺の背を抱くようにして、使用人の彼女が覆い被さっていた。
 火槍に貫かれた胴から、肉の焼け焦げた匂いが漂ってくる。
 同時に俺の肩の付け根あたりもじわりと痛んだから、先程放たれた攻撃術が人一人分を貫通したに違いなかった。
 見開かれた双眸と、目が合うーー。
ーーその先に映る俺の顔は、きっと情けなかったに違いない。
 既に痺れの消えた足で、彼女の方を向いた。
 足元へそっと寝かしつけるが、衣服にぽっかりと空いた穴が傷の深さを物語っている。
「……ウ゛ハ゛ウ゛イ゛……」
 済まないーー。
ーーと言ったつもりだ。
 勿論、そんな言葉が俺の口から出てくる事は無い。
 苦悶を浮かべた使用人の彼女は、苦痛の声を上げる。
 その様子を見、事態に気付いた小間使いの少女が駆け寄ってきたがーー。
「嘘、、
、、先輩?」
 まるでこれから先に起こる事が分かったかのように、遠巻きにしていた。
 たった一歩の距離を、果てしなく長いものに感じたのだろう。
 暗い予測を打ち払い、俺は息も絶え絶えな彼女の手を握る。
「ク、、フぅ、ふゥ
、、副団、長様、、」
 上手く呼吸が出来ていないらしかった。
 身体に風穴が空いていては無理も無い。
 彼女は何かを言いたげに、苦しげな口を動かす。
「フぅ、ふゥ、、ク、、?
そん、な顔、、しないで下さ、、」
 俺はこの瞬間、余程情けない顔をしているらしかった。
 彼女は自身の苦痛を捨て置き、続ける。
「、、ふゥ、ど、、どうか
無事、落ち延、、
、、この国、を、、」
「……ウ゛ヘ゛ウ゛ア゛……」
 もう喋るなーー。
ーーそう言いたかった。
 それで結果が変わるとは思えないが、この時の俺は僅かな希望に縋りたかっただけだ。
 長い吐息が彼女の口から漏らされ、情けない顔を映したその瞳はーー光を喪った。
 もう何も映し出さないーー虚無の表情だ。
 その瞼をそっと閉じてやるが、そこから先ーー何を考えれば良いのか分からなかった。
 人死には初めてじゃないし、戦場や魔物の掃討で何人もの兵士を看取った事も当然ある。
 それなのに、このーー渇きにも似た空虚な感覚は何なのだろうかーー?
ーー俺はこの感情を、知っているようで何も知らない。
 呆然と思考が混濁しそうな頭上から、誰かが叫んでいるのが聞こえてくる。
「ちイ!?暗くてよく見えねえが、、
、、生きてやがんな!?
追え!」
 聞き覚えのある声が指示を飛ばした。
 ドタドタと駆ける足音ーー。
ーーそれらに紛れて、また今度は別の聞き覚えのある声が話しかけてくる。
「副団長さん、、行きましょう?
、、ちゃんと付いて来て下さい」
 言われるがまま、今日初めて会った少女に手を引かれた。
 まるでお荷物だ。
 生きようとするその華奢な手とは違い、俺の心はどうしようもなくーー。
ーー取り遺された彼女に惹かれていた。



 途中、見覚えのある顔とすれ違った。
 恰幅の良い身体はお世辞にも整っているとは言い難い。
 その男が、何やら口喧しく言い立ててくる。
「この忙しいのに何だね?
、、見れば唖の元何団長君だかが居るじゃないか?え?
小火騒ぎもせっかく収まりそうだというに、君はそのへんで王城務めも忘れて女遊びかね?
これは大問題だよ!?まったく、、」
 ブツブツと言う肥満体の話は正直ーーどうでも良い。
 だが、俺の手を引く少女はそうは思わなかったらしい。
「あのですね?
今がどんな状況か分かって言ってますか?
この国、マルトワでしたっけ?
襲われてるんですよ!プレイヤーに!」
「勿論分かっているとも!
だから私がこうして、大臣の身に与りながらも走り回ってると分からないのかね?え?
これだから平民上がりの小間使いなんぞ、雇うべきでは無いと常々陛下には申し上げていたのだよ!」
「平民とかそんなのはどうでも良いんです!
あそこ、見て下さい!
今お城の城壁らへんで火の手が上がってますよね?
聞いてます?人の話!?
とにかくあっち向いて下さい!?何なんですか!あなたは、、!?」
 少女は催促するが、無駄だろう。
 お大臣の彼は自分の話に夢中で人の話なんか聞かないし、仮に目の前で雷が落ちても気付かない程度には面の皮が厚いと言われている。
 少女が懸命にその指で示すが、一向にそちらを向く気配は無い。
「やれやれ、こんな騒ぎの中で冗談がお上手なお嬢さんだね?え?
いっそそれだけ元気があるなら少しは消化活動に役立って欲しいものだよ、まったく、、
ああ、私は忙しいというのに平民はこれだから、、」
「何なんですか!?
もう知りません、知りませんから!
副団長さん、早く行きましょう!
こんな豚放って囮にでも役立って貰えば良いんです!
さよなら!」
 言った彼女は断固とした雰囲気で俺の手を引いた。
 案の定ーー此処で足止めを喰らったばかりに、後にしてきた方角から足音が聞こえてくる。
 別に豚ーーじゃなくて大臣がどうなろうと知った事では無いが、それにしても少女の言った悪口は的を射ているように思えた。
 そんな事を考えている内に、賊の追っ手の声が喧騒に包まれた城下町に響き渡る。
「居たぞ、あそこだ!
ボス初討伐は俺が貰うぜ」
「待てよ、一人で突っ走るな!
、、あいつは強え!
よし、一人は援軍呼んで来い!
俺らで時間を稼ぐぞ!いいな!?」
 そう言った一人の指示を皮切りにこちらに向かってきた。
 既に少女に手を取られた俺は急かされるが、あの大臣は事態の概要をまったく把握していない。
「何だね?次から次々と
そこの君達ぃ、、ちょっと手が空いてるなら手伝っては貰えんかね?え?
こんな夜分に走り回る気力があるなら、如何に素行の悪い平民風情でもたまには役立つというものだよ!わっはっはっは」
「煩え、豚野郎!?
、、俺の新スキルのサビ落としにしてくれるぜ!
喰らえ、スラッシュアッパー!」
「ぶひィイッ?!
、、き、貴様らぁ!?
まさか小火騒ぎの犯人の一味かね?え?
このマルトワの重鎮たる私に刃向かおうとは、平民以下の分際の癖に笑止千万!
先祖伝来の爆烈術で葬り去ってくれようぞ!?
、、彼の敵をこの地より灰燼と帰せ!エクスプロ、、」
「ブヒブヒ煩え!
スラッシュアッパーからの、、
、、ターンチョップだあッ!」
「ぶひヒィイッ!?
まさか、この私が平民以下の賊めらに、、
、、ぶファア?!」
 後にしてきた路地から断末魔が聞こえた気がしたが、空耳かもしれない。
 騒ぎの収まらない城下町を抜け、先を急ごうとしたーーその時だ。
 奇妙な鳴き声を耳にした気がした俺は、頭上を見上げる。
 真夜中の空に浮かぶ月ーー。
ーー雲間の少ない暗がりを背景に、月光を遮る〝何か〟が浮かんでいた。
 いや、羽ばたいていると言った方が正しいかーー。
ーーその生き物はこちらを見降ろしたかと思うと、喧騒の鎮まらない城下町にゆっくりと降り立った。



次話=>>7

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.7 )
日時: 2023/03/09 18:25
名前: htk (ID: 5USzi7FD)

1章〜〜第1幕、掲示板その2



《早くもイベ!?山林のマルトワ王国スレ》





48:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
みんな戻ってこね

開拓者って基本昼活動中心だから夜暇なんだよな
夜は夜で魔物強いし


49:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
しっかし誰も書き込まんね
そんなに名前晒したくないんか?
レッドネームじゃなきゃ堂々としてりゃ良いのに


50:エルフの風術士ヌク弥(女性)
>>49がスレを私物化してると聞いて
暇なら生産職覚えたら?


51:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
生産職ってどうやってなれるんだ?
ダ〇マ神殿?


52:エルフの風術士ヌク弥(女性)
違う、てかそれド〇〇エ

町の道具屋で何回か買い物したら薬売りの婆ちゃん紹介して貰えたわよ
そしたら、ほら


53:エルフの薬売り見習いヌク弥(女性)
どう?


54:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
お、資格変わってんし?
なるほどな

でも、こっちほとんど更地だから未だに店の一つも見当たらないんだよ
何処の僻地だっての!?

スタート地点ミスったな、はあ


55:人間の小間使いトトリー(女性)
えーと、報告です

ゲヘナッドさんと相談に乗って頂いたスレの皆様のお陰で無事救出されました!
ありがとうございます

それで、ですね?


56:インプの鳥使いゲヘナッド(男性)
報告だ

城下町がヤベエ
PKつか、NPK共が暴れ回って人数多過ぎ
現地民が何人もキルされてる

トトリーの身柄確保したんだが、そん時一緒にNPCが居てな?
エドゲルって歴戦の騎士風のヤツ
確か、公式ページのご当地キャラ紹介に載ってたな?


57:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
お、やっとか!
張ってた甲斐があったな


58:人間の小間使いトトリー(女性)
あ、私が言おうと思ったのに
ゲヘナッドさん酷いです!?


59:インプの鳥使いゲヘナッド(男性)
オウ、悪い悪い
つか、殴らないでくれ!?
HP減るだろう!?


60:エルフの薬売り見習いヌク弥(女性)
横からだけど

二人は一緒に居るの?
なんか気になるわ


61:人間の小間使いトトリー(女性)
はい、一緒に居ます
ゲヘナさんには引っ込んで貰いました

それでですね?
私、最初のサクセスチュートリアルでお城に仕える事になったんですけど、先輩の使用人さんがですね
殺されちゃいました……


62:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
うんうんそれで?


63:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
あれ、続きは?

チュートリアルってことは最初のナビ役の人だよな?
殺されるんか、あの人ら


64:インプの鳥使いゲヘナッド(男性)
やっぱオレ書く事になった
トトリーがまだ色々あり過ぎて落ち着かないらしい

ちっとだけ長いから待っててくれ


65:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
よろ


66:インプの鳥使いゲヘナッド
ざっくり聞いたが、マルトワ王国が多人数のPKプレイヤーに襲撃され、今現在も戦闘中

ヤツらはまず、真夜中の城下町で小火騒ぎを起こして、城に詰めてた兵達を誘き出したみてえだ
その後PK側のヤツらが警備の薄くなった城に夜襲を仕掛け、色々と悲惨だったらしい

で、捕まった使用人とトトリーも城の中庭まで連行されたんだが、そこで件の騎士様登場
公式NPCキャラのエドゲルとNPKプレイヤー総勢100人ばかりの戦闘で、何とかエドゲルはトトリーとそのナビ役務めた使用人を連れ、城壁の外へ脱出するまでは上手くいったみてえなんだが
そこでナビ役の使用人が殺されちゃったらしい

で、トトリーは絶望した騎士様を連れてどうにか追っ手を振り切り逃走
途中、変な大臣に話しかけられ
ああ、これは別に書かなくて良いのか?

で、囮になった大臣がNPKプレイヤーに殺された直後にオレ登場
無事にトトリーを回収したんだが、気付いたら騎士様が居なくなってたんだ←今ココ


67:エルフの薬売り見習いヌク弥(女性)
フツーに主役感出してくるわね
いっそマルトワ解放して王になっちゃえば?
なれるか知らないけど


68:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
いやいや、公式NPCキャラ強くね?
PK100人も居たのに倒せんとか笑うわ
何で居なくなったかは気になるが、エドゲル
お前はよくやった!

トトリーさんもゲヘナッドさんもな!


69:ノームの錬金術士o(`ω´ )oぬぬぬ(無性)
我も横からだぬが……

そん時の動画がアップされてるんだぬ
町の掲載板でその日あった出来事チェックするんだぬ
するとメニュー画面の新着から見れるんだぬ
そいじゃ


70:エルフの薬売り見習いヌク弥(女性)
>>69
誰?
てかツッコミどころ多いわね

無性って何?


71:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
え、それマジか?
ちょっと見てくる


72:インプの鳥使いゲヘナッド(男性)
映像って
アレ映すのヤベエだろ?
いや、モザイク処理掛かるのか?

つか、せっかく書いた甲斐がねえ!


73:ホビットの弓使い春樹(男性)
お疲れっす!ゲヘナパイセン

>>69>>70
前作ゲーで最大ギルド率いたリーダー
やっぱり《地祇神殿》の面子もプレイしてるんすね
ぬぬぬさん、お久っす!


74:エルフの薬売り見習いヌク弥(女性)
あ、そう
有名な人なのね



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



《表示無し・山林国マルトワ襲撃事件》





30:名無しの山林民
スレ二つ要るか?
あっちはネーム表示だけど情報バラけるだろ?


31:名無しの山林民
ま、良いんじゃねえの?

浅く緩い繋がりが良いならこっち
他プレイヤーと連携したいならあっちで


32:名無しの山林民
それより早くさー?
話進めようぜ?

動画見たけど容赦無いよなー、あいつら


33:名無しの山林民
トトリーちゃん無事で良かったな
ゲーム内とはいえ、《滅びのカタストロイ》の連中は許せん


34:名無しの山林民
カタストロイの奴らがやったとはまだ決まってないかと
そもそもあいつらゲームに居るの?


35:名無しの山林民
エドゲルさん強すぎ
ゲーム開始後の初心者じゃまるで歯が立たないわ!
結果として負け確イベだったよな


36:名無しの山林民
トトリーちゃんのファンスレは此処で合ってますか?
早くも頭角現したゲーム内アイドルがただの小間使いっていうのがもうね!
キテますよこれ!


37:名無しの山林民
PKのリーダー格の一人、あれ前作のレッドネーム
木馬のジャミだろ?
話し方同じだし、よくよく見たらネームも同じの使うとか意味分かんねえ

神経疑うレベル


38:名無しの山林民
某国民的RPGから取った名前ですよね
薄い本で知られた……


39:名無しの山林民
>>36
ファンスレじゃないし偶像化したいなら個別スレ立てれば?


40:名無しの山林民
にしてもアレだよな

【不動壁】は絶対防御技っぽいし、【追従身】から【追従身・分け身】が強者感


41:名無しの山林民
でも、フレイムランスでダメ入るならちょっと頑張れば倒せんじゃね?


42:名無しの山林民
あれは痺れエフィクト出てただろ?
麻痺状態
着地の衝撃でそうなったんだろうけど、普通に戦ったら無理ゲー


43:名無しの山林民
使用人のポロリが見れそうで見れない
他はばっちし見えてんのに
これ偶然?


44:名無しの山林民
PK共が動画の後ろの方でえっちらおっちらハッスルしてるっぽいけど、俺R15版

ところでPKが町襲ってたりアレしたり出来るのって限定コマンドだよね?
どうやったんだろう……


45:名無しの山林民
つか、>>41の名前欄
レッドネームなのによく書き込めるな?
襲撃犯の一味だろうが!


46:名無しの山林民
あ、ホントだ
コテ欄が赤い


47:名無しの山林民
横からだけど>>41は死んでいったNPCに詫びろ!
謝ったって許さないけどな


48:名無しの山林民
まあまあ落ち着いて落ち着いて
せっかく書き込んできたんだから、詳しく話を聞こうじゃない?

最初からそういう如何わしいコマンドは基本選べないと思うんだけど、どうしてそうなったの?


49:名無しの山林民
言うわけねえだろ?アホか


50:名無しの山林民
チーターで確定
早く運営対応してくんないかな……


51:名無しの山林民
荒れてんな

これならあっちで書き込んだ方が良くない?
名前出ちゃうけど


52:名無しの山林民
メニューのマップでマルトワ拡大してみろ
《戦時中》ってなってんだが、都市の状態で限定コマンドが解禁されるっぽいな
おそらく

主幹コマンドや派生コマンドと違って条件が満たされなければ、そもそも限定コマンドは選べない仕様だと思うぞ?

治安の回復が喫緊の課題だな


53:名無しの山林民
あ、ホントだ
戦時中ってなってるよ


54:名無しの山林民
それでか!
なら、さっさと戦時中外してこようぜ


55:名無しの山林民
>>41逃げたな

とゆか、それなら拠点への襲撃からどうやって戦時中判定になったの?
プレイヤーによる同時襲撃?


56:名無しの山林民
たぶんな

PKプレイヤーの示し合わせた同時襲撃で治安の維持判定が一定値を下回ったとか、そんなだろうな

動画見たが、誰か現地に到着出来た奴は居ないのか?
ゲヘナッドさんとトトリーさんだけじゃ戦力足りないだろう?


57:名無しの山林民
さあ?私、遠いし
行きたいのは山々なんだけど


58:名無しの山林民
俺も遠いし

そのゲヘナッドは鳥の魔物使ってるっぽいから行けたんだろうけど
既に移動手段で差出そうじゃん?このゲーム


59:名無しの山林民
転移ゲートとか無いのな……
それともまだ最初だから見付かってないだけ?


60:名無しの山林民
臍を噛んで見守る事しか出来ないって……はぁ
誰か現地到着したって報告はまだなの?


61:名無しの山林民
移動手段の確立が必要だな

一応、馬車とかあるの見掛けたが隣町まで5000ゴルポンだったぞ?


62:名無しの山林民
無理っす

だから徒歩で向かおうとしたら魔物が強くて強くて


63:名無しの山林民
>>62
あれ、弓使いの人かな?
今どこ?


64:名無しの山林民
あれ、なんか>>62>>63に既視感あるのって俺だけか?


65:名無しの山林民
>>63
マルトワの西端の町ブナブエナっすけど
もしかして勇者ちゃん?


66:名無しの山林民
は、勇者?
まさかね


67:名無しの山林民
>>65
門で待ってて
少し時間掛かるかも?


68:名無しの山林民
あれ……ホントに御本人さん達ですか?



次話=>>8

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.8 )
日時: 2023/03/09 18:39
名前: htk (ID: 5USzi7FD)

1章〜〜第1幕、5話ーー副題(未定)



 一人だ。
 あの小間使いの少女ーー。
ーー結局名前を聞く機会は無かったが、知り合いらしい魔族と合流したのを機に、ひっそりとその場を去った。
 冷たい、と思われるかもしれないが狙われているのは追っ手の様子を見てきた限り、俺だ。
 新人の小間使いをあのまま連れ回してしまってはいずれーー何かが起きないとも限らない。
 不甲斐無いが、今の俺には少女一人すら護り切るだけの自信が無かった。
 それに、あの少女には特別な何かがあるようだし、おそらく問題無いだろう。
 連れの魔族の男もあれだけの眷魔を従えているのだから、無事切り抜けられる筈だ。
 俺は町外れを抜け、人里から離れた地を歩く。
 もし、誰かに目撃でもされたらその歩く姿から、情けなさが滲み出ていると映ったかもしれないーー。
 そんな誰かに名乗る機会も呼ばれる機会も唖の身の上ではそうそう無い俺の名は、敗残兵エドゲルーー。
ーーいや、逃亡兵といった方が正しいだろう。
 城下町での戦闘はまだ収まってなかったし、王城の中庭を襲撃した人数はざっと100人程度だったがーー。
ーー町中で暴れる賊共も含めれば、どれだけ人数を揃えていたかは分からなかった。
 そして、幾度か追っ手と斬り結ぶ内にーーこの剣だ。
 剣身が根元からへし折れ、今ーー俺の手に握られているものは鍔から下だけとなってしまっている。
 もう戦う必要は無いーーと言われているみたいだった。
 剣が折れた際、まだ幾らかは残っていた無けなしの闘志も砕けてしまったのだろうーー。
ーー柄を握る掌に、力が入らない。
 消耗した足のまま山中へと分け入っていった俺は、片耳に物音を聴く。
 落ち葉を踏み締めるような音は、こちらを窺うように足を止めた。
 暗くてよく見えないが、ここで出る大抵の魔物は知っている。
 ずんぐりとした豚ーー。
ーーいや、あの豚大臣とは別の本来の意味での豚だが、それが意味する本来の豚とは家畜化されてるから大人しいのであって、たとえ見た目が似ていてもまったくの別物だった。
 体高が人の高さ程の魔物ーーピグルミートンはこちらを見付けると、後ろ脚を盛んに踏み鳴らす。
 来るーー。
ーーそれがいつものピグルミートンの十八番で、出会い頭早々の突進は戦列を構えた盾の訓練にも利用される。
 だが、俺にとっては慣れたものだ。
 迫り来る巨豚の突進を難なく躱し、躱した際にその後ろ脚を爪先で引っ掛ける。
 制御を失ったピグルミートンがそのまま何処かへぶち当たればーーこの場合は周囲に乱立する木々だが、その大きな物音を合図に攻め立てるのが定石だった。
 兵達の野外訓練では、いつもそうしている。
 だが、俺はふらつくピグルミートンの追走を躱し、まだ暗い森の中を駆けた。
 仕留めても良かったが、折れた剣だけでは時間がかかるだろう。
 ここで無駄に体力を消耗しても仕方無いし、僅かに差し込む月明かりを頼りに先へと進む。
 目的があるわけでは無いーー。
ーー城住まいの身分ながら唖となったせいで、大した付き合いも無くなっていた俺にとって、帰る場所というのは望めなかった。
 あの襲撃の様子では、おそらく近日中に王都は制圧され、マルトワ国民にとって苦難の時代が始まるかもしれない。
 そこに怒りや義憤を感じないわけでは無かったが、何故かーー。
ーー王城を脱出した時から、浮かび上がった激情は数瞬もしない内に沈んでいってしまう。
 原因はーー自分でも分かっているとは言い難いが、彼女だろう。
 俺が相方と夜番をしていると、いつも決まって飲み物を持ってきてくれたーー。
ーーそれだけの関係だ。
 唖になって名乗る機会も喪ったせいか、人の名前を訊ねる事も出来無くなったし、誰かから名前を呼ばれる事もめっきりと減っていった。
 だから、使用人の彼女の名前を俺は知らないし、その事がーー酷く悔しい。
 何故、俺は彼女の名前を知らなかったのだろうかーー?
ーーその理由は自分が唖だからだと説明は付くが、それでも後味が悪い。
 どうしようもない居心地の悪さから俺はーー逃げていた。
 その事は多少なりとも自覚しているし、結局の所ーー彼女と深く関わろうとしなかったのが原因だろう。
 名前を知らないーー。
 そんな彼女が最後に言おうとしたのは、果たして何だったのだろうかーー?
ーーこちらの身を案じながらも、苦しげに言いかけた最期の言葉を考える。
『、、ふゥ、ど、、どうか
無事、落ち延、、
、、この国、を、、』
 この国をーー?
 どうしろと言うのだろうーー?
ーー多少の剣の腕があっても、相手は何処の所属とも分からない得体の知れない集団だ。
 あの小間使いの少女は、ぷれいやーーーと彼らや自らを称したが、何度倒しても甦るのが本当ならどうしようもない。
 実際、火の手が上がった城下町ではあの中庭で見たような顔を見掛けたし、これまで逃げてくる際にも同じような顔と何度か戦った。
 何度倒してもあの賊共が攻めてくるなら、実質手の施しようが無いーー。
ーー俺は彼らのような不死身では無いし、嬉々と襲撃してくるぷれいやーとやらのしつこさには正直、疲れていた。
 使用人の彼女は、国をーーと最期に消え入りそうな声で呟いたが、俺にどうしろと言うのだろうかーー?
ーー護って欲しい?
 それとも救って下さいーーとでも言おうとしたのかもしれない。
 だが、俺は喧騒に包まれた城下町を落ち延び、こんな所に居る。
 森を抜けた先のブナブエナの町に向かったとしても、大した戦力は期待出来ないだろう。
 それに唖の身の上ではまず怪しまれるだけだし、肝心の俺が話せないとあってはーー打つ手が無い。
「……ウ゛ッ゛ク゛ァ゛!?」
 臓腑でも吐き出しそうな気分で、俺は唸った。
 もどかしさを抑え、先を進む。
 足は王都から西ーーブナブエナ方面へと何となく向かってはいるが、辺りは暗がりの森だ。
 実際、何処を歩いてるかはよく分からないし、まったく見当違いの方向へ向かってる可能性もあるだろう。
 そういえば、この森は確かーー妖精の森と呼ばれていたのを思い出した。
 迷い込んだ旅人を欺き、人の魂を奪うとも妖精の国で一生の間囲われるともいわれているが、それは噂に過ぎない。
 実際はマルトワ国民が他国の他所者を揶揄うのに流布したとーーそう理解されるのが一般的だ。
 勿論ーー妖精と呼ばれる、人種なのかそれとも魔物なのかよく分からない存在は居る事は居るらしいが、幸いにしてか俺はそういった不可思議な存在を確認した事が無い。
 そんな事を考えていると今度はーー野犬の群れだ。
 魔物だろう。
 通常、魔物かどうかを見極めるのには、その足元を見れば良いーーといわれている。
 何故なら、魔物からは物体にある筈の影が生じる事は無く、明るい場所なら簡単に見極められるからだ。
 しかし、今の時間帯は未明頃だろうかーー?
ーー暗さで野犬の足元は確認出来ないがどちらにしても十中八九、魔物と見て良いだろう。
 先の豚と違って匂いを辿られたらキリが無いし、逃げるのはあまりお薦め出来なそうだ。
 俺は仕方無く、鞘の留め具を外してそれを握った。



次話=>>9

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.9 )
日時: 2023/03/10 16:05
名前: htk (ID: PZX6sAnA)

1章〜〜第1幕、6話ーー副題(未定)



〈大剣術〉や〈不動の心得〉系のスキルは生憎と、剣が折れているせいで使えない。
 先の賊との戦闘で使った【不動壁】以外にも守りや、対集団戦闘に長けた技が多くあるのが特徴だがーー野犬程度なら鞘だけでも十分だろう。
 握った鞘を逆手に、囲い込もうとしてきた数頭を牽制する。
 背後に向け、一振りーー。
ーーすると見せ掛け、翻りざまにこちらの隙を窺っていた鼻面を一蹴した。
 吹き飛んだ野犬へと猛追し、更に蹴飛ばす。
 後ろに回り込んだ数頭に対応すると見せ掛けた、引っ掛けだ。
 予想外の俺の動きに動じたのか、警戒したように攻めて来ない。
 寝転がった一頭は当たりどころが悪かったらしく、プラーナを散らして掻き消えた。
 油断しなければ、どうという事も無い相手だろう。
 俺は無造作に間合いを詰め、齧り付こうと牙を剥いたその顎に鞘をめり込ませる。
 そうした背後を狙って、また一頭ーー。
 鞘に喰らい付いてきた一頭を後ろの一頭にぶつけ、二頭が縺れ合うがーー。
ーー空いたこちらの脇腹目掛け、今度は別の顎が喰らい付いてきた。
 だが、目論見が甘いーー。
ーー開かれた上顎と下顎の間に挟まれたのは、折れた鍔元だ。
 俺はその隙だらけの野犬の頭を抱き込み、グキリーーと寒々しい音を鳴らした。
 首を捻られた一頭はプラーナの光となって消え、それを傍目にまた仕掛ける。
 鼻面の頭蓋を打ち据え、もう一頭ーー。
ーー続けて俺の側面を狙ってきたもう一頭を剣の柄尻で殴り付けると、残すところは二頭だ。
 俺が追撃する素振りを見せると、その生き残った野犬は情けない嘶きを発して尻尾を巻いた。
 勝てないと分かって、逃げるつもりだろう。
 別に追う必要は無い。
 こちらが強者と分かれば、敢えて跡を付け回してきたりもしないだろう。
 木々の向こうへと逃げた二頭を見送り、俺は山中を進んだ。



 未明を過ぎたのか、朝焼けが差してくる。
 梢の間から覗いてくる光で、暗がりの森に慣れた目が眩みそうになった。
 野犬を撃退した後は魔物の出現も無く、明るくなってきた森中を進んできたがーー進行方向に若干の修正を加える必要があるらしい。
 俺は今まで、西へと進んでいるつもりだった。
 つまり、東から昇ってきた朝焼けが前方に見えるのはーーそういう事だろう。
 野犬との戦いでいつの間にか、方向感覚を狂わされていたらしい。
 別に方向音痴というつもりは無かったが、誰だって真夜中の山中へ入れば似たようなものだろうーー?
ーー若干言い訳じみた思いを心の内で反芻した俺は、方向転換した。
 来た道を戻る羽目になったが、朝日が昇ればもう迷う事も無い。
 この山中には年に何度か軍の演習で定期的に来てるし、いずれ見知った道に出られるだろう。
 そう思って朝焼けを背後に進んだが、どうにもおかしいーー。
ーー普段なら既に魔物との戦闘の一つや二つぐらいはあっても良さそうだったが、一向に襲われる気配が無かった。
 たまにはこういう日もあるーー。
ーーそう自分に言い聞かせ、果たしてこの道で合ってるのかと疑問を浮かべながらも、先へと進む。
 迷っているーーと、もし言われたらその通りだが、方角的には合っている筈だ。
 そう思って進み続け、俺はあのーー開けた木々の広間へと出た。



 そしてーー毒キノコを食した俺は苦悶の末、奇妙な声を耳にする。

〈ーー/
システムメッセージを受け取りました。
これより、当該NPCのアップデートを開始します。
NPC制限の一部解除ーー。
ーー暫くの間、お待ち下さい。
/ーー〉

 非人的な声だ。
 それは誰かが喋っているというよりも、声に似た音が鳴っているといった方が近い。
 朦朧とした頭に、また音声が響く。

〈ーー/
特殊コマンドスキル、〈世界の申し子〉が解禁されました。
当該NPC No.E-09085403 個体名エドゲルのNPC制限はlevel10からlevel9へと解放されます。
それに伴い、level9相当の各種ウィンドウ及び、各種プレートの閲覧が可能となりました。
また、メモリアル・クリスタルの視認が可能となりました。
これにて、当該NPCのアップデートを終了致します。
それでは、良き終末ライフをーー。
/ーー〉

 言った声の主は訳の分からない事を捲し立てたかと思うとーーその後、沈黙した。
 えぬぴーしーーー?
ーーそういえば、あの城の中庭で誰かが言っていたような気がする。
 俺は気怠さをどうにか堪え、霞む目蓋を開けた。
 そこには何か、半透明の薄膜のようなものが浮かんでいる。

〈ーー/
名前=エドゲル
種族=ヒューマン
年齢=27歳
資格=《熟練探索者》《護国騎士》
称号=〈不幸な星の元〉〈勝手知ったるは迷い子の元〉〈静黙の元副団長〉〈不動要塞〉
〈世界の申し子〉 new!
職業=【山林国近衛騎士】

生命値(LP)=622/1880
通力値(TP)=141/543
在命値(PP)=????/????

膂力値=714
頑強値=808
知性値=423
精神値=351
敏捷値=618
技量値=693
運命値=504

主幹コマンドスキル=
《熟練探索者道》┳〈探索術〉
ーーーーーーーー┣〈荷袋整理・中級〉
ーーーーーーーー┣〈偶然の導き〉
ーーーーーーーー┣希少〈絶望的方向感覚〉
ーーーーーーーー┗希少〈災禍の依り代〉
《護国騎士道》┳〈護衛術〉
ーーーーーーー┣〈大剣術〉
ーーーーーーー┣〈武術〉
ーーーーーーー┣〈馬術〉
ーーーーーーー┣〈野営術〉
ーーーーーーー┣〈忠魂義胆〉
ーーーーーーー┣希少〈静黙の心得〉
ーーーーーーー┗固有〈不動の心得〉

派生コマンドスキル=
〈探索術〉━表示 off
〈護衛術〉━表示 off
〈大剣術〉━表示 off
〈武術〉━表示 off
〈馬術〉━表示 off
〈野営術〉━表示 off
〈静黙の心得〉━表示 off
〈不動の心得〉━表示 off
〈世界の申し子〉━表示 off new!
/ーー〉

 毒キノコの作用だろうかーー?
ーー不可思議な声に続いて、次は幻覚まで見え始めたらしい。
 明らかにおかしな症状を前にして、身を起こそうとした俺はふらりと転倒する。
 立ち眩みと頭痛が、また襲ってきた。
 この症状だ。
 最期にわけの分からないものが見えたり聞こえたりするんだから、俺もーー死期が近いらしい。
 この世に特に未練らしいものは無いが、強いていえばーー。
ーー使用人の、彼女の事だろう。
 そうだ。
 あの世でもし会えたら、今度こそ名前を訊ねてみよう。
 彼女の名前を呼んで、そしてーー。
ーー朦朧とした意識によって、そこから先の俺の思考はゆっくりと閉ざされた。



次話=>>10

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.10 )
日時: 2023/03/11 17:11
名前: htk (ID: Mr.8bf9J)

1章〜〜第1幕、7話ーー副題(未定)



 黙々と人列が続くーー。
ーーゆらゆらと生気の無い者達は、誰一人として喋らない。
 そこにはヒューマンも居れば、特定の国家が魔族と呼ぶ様々な人種も居た。
 色褪せた原野だ。
 皆、一様に何処かへ向かっているらしく、萎びた色合いの草花に脇目を振る事も無い。
 人列には子供も大人も、老人も混じっていた。
 ざっくりと一望すると年老いた者が大きな割合を占めていそうだが、それがいったい何を示すのかは憶測の域を出ない。
 いや、何となく分かってはいるーー。
ーー毒キノコを食した俺は死に、生身の身体を持たない者達の世界へ向かっているのだと、漠然とだがそう感じる。
 しかし、どういうわけかーーそれが分かったからといって、何を為そうとか、あれこれしようとまでは思えない。
 この色褪せた世界がそういう場所なのだと感覚的に理解した俺は、ゆらゆらと進む人列の中に溶け込んでいた。
 人は死して、地上とは別の冥陸大地へ誘われると聞いた事がある。
 生前の俺にとって死後とは確かめようも無い眉唾話だと思えていたが、実際に目にしてみると、特にどうという事も無い世界だ。
 色素を失ったような草木が見える他に、これといったものは無い。
 黙々と続く人列達はそれらに興味を持たず、多少の起伏に富んだ丘陵地帯を進んでいた。
 俺も流れに任せ、ゆらゆらと続くーー。
ーー暫くそうしていると、対岸の向こうが霞んで見える川が遠目に出来た。
 濛々と立ち込める霧で、向こう岸に何があるのかは分からない。
 人列は船着場へと続き、渡し守らしい男へ何かを手渡している。
 そのまま舟に乗る者も居れば、その渡し守に首を振られーー途方に暮れたように佇んでいる者達も居た。
 次々と振り分けられていく彼らに続いて、今度は俺の番だ。
 渡し守は手を差し出し、何かを催促しているらしい。
「……何だ?」
 ここで俺は初めて、自分が喋れる事に気付いた。
 そうだーー。
ーー俺は既に死んでいるんだから、言葉を口に出来たとしても不思議では無い。
 渡し守の男ーー怪訝そうに眉を上げたのは、老人だろう。
 フードを被った奥から、嗄れた声を漏らす。
「何かね?
、、現視世の駄賃を持たねば、向こう岸へは渡せんよ?
持ち忘れたのかね?」
「……駄賃?
そんなもの、冥陸大地で必要なのか?」
「当然じゃろう?
、、何処の世界にタダで飲み食いさせてくれるお人好しが居るのかね?
持ち金が無いのなら向こう、、さあ、行った行った!」
 言われ、俺は川岸で集まる者達の元へ向かった。
 向こう岸に渡れなかった彼らも、手持ちの金が無かったのだろうかーー?
ーー疑問に思い、訊ねてみる。
「……なあ、君達もお金が無かったのか?
俺もなんだ」
 そう言って一人に声を掛けてみたが、反応は無い。
 ゆらゆらと焦点の合わない視線で、こちらの言葉に何ら反応を示さなかった。
 不気味だーー。
ーーこれ以上此処に踏み留まっていても良いのか、判断に迷う。
 そう思って船着場の方へ視線を送ると、あの渡し守が舟を漕ぎ出す所だった。
 それから暫くして、今度はまたーー別の渡し守らしい人が空の舟を漕いでくる。
 舟が満員になる度、向こう岸に渡れる人達は深い霧の向こうへと消えていった。
 ただこうして佇んでいても始まらないから、もう一度並んで訊いてみよう。
 俺はまた、長い人列の最後尾に付き、丘陵の向こうから此処に戻ってきた。



「はあ!?
、、駄賃が無いなら邪魔!
とっとと行け!この文無しが、、!」
 今度は若い娘の渡し守だ。
 邪険に扱われて良い気はしないが、此処で引き下がっては何も得られないだろう。
「……生憎と手持ちが無くてな、済まん
駄賃が無い人はどうしたら良いんだ?
彼処で突っ立ってる以外で……」
「そんなの、死喰い鴉に啄まれるまでぼーっとしてりゃあ良いじゃない!?
、、あたしに訊かないでくれる!?
さあ、とっとと行け!死人風情が、、!」
 言われ、押し出されるようにまた生気の無い者達の元へ戻った。
 死喰い鴉ーー?
ーー怪訝に思って空を見上げるが、濛々と立ち込めた霧のせいでよく分からない。
 だが、川岸の周辺をよく見てみるとーー不気味な人骨が散乱しているのが分かった。
 生気の無い者達はそれにすら関心が無さそうで、ただ無心のままに啄まれる末路を辿るのだろうかーー?
ーー俺はそそくさとその場を離れ、また人列の最後尾へ戻る。
 実際、列に割り込んでみてもーーとは思ったが、不用意な行動は慎んだ方が良い気がした。
 そして、今度は3人目の渡し守だ。
「あら困ったわ?
、、駄賃が無い死人は向こう岸へ渡さない決まりなのよ?」
「……いや、それは良いんだ
どうやったら此処以外の場所に行けるんだ?
、、死喰い鴉とやらに襲われたくは無いし、何か無いのか?」
「見た所、あなたは他の死人達と少し違うみたいね
、、魂が残ってるのかしら?」
「……魂?」
 先に話した渡し守達よりは話がしやすそうだから、俺は訊いた。
 魂ーーとは、人の胸の辺りにあると聞いた事があるが、よく分からない。
 訊き返すと、渡し守の彼女が応じる。
「魂っていうのはね?記憶を保持する為の構成体の一つよ
、、もしあなたが魂を残してるなら、向こう岸へ渡る必要は無いわね
何か思い出せない、、?例えばそう、、
、、生前の恋人とか?」
 言われ、俺は考える。
 生前の恋人と言われると皆無だが、頭に浮かんだのはーー使用人の彼女だ。
「……恋人は居ないが、気になる相手なら……」
「まあ!素敵ね!
その人とはどんな関係だったの?
、、ちゃんと想いを伝えたのかしら?」
「……いや、彼女は、、
、、実は名前も知らないんだ……」
「そう、片想いなのね、、」
 哀れんだ瞳で、渡し守の女性はこちらを見た。
 誤解があるようだが、俺は別にーー使用人の彼女に懸想をしていたわけでは無い。
 だが、渡し守は根掘り葉掘りこちらの事情を訊ねてきて、俺は訊かれるがままに答える。
「……だから、彼女の名前を知りたいんだ
別に今更どうなるとも思えないが、会って話がしたい!」
「うんうん分かるわよ、その気持ち
いいわ!
、、上手くいくか分からないけど、あなたのその想いがあれば、、きっと成功すると思うわ!
じゃ、目を瞑って?」
「……は?
何をするんだ?」
「良いから良いから!
言う通りにするのよ?」
 言われ、俺は怪訝に思いながらも目を閉じた。
 顔に何かーー柔らかい感触が伝わり、目を開けそうになるが止められる。
「開けちゃ駄目よ?
、、そのままそのまま、彼女の姿を思い浮かべなさい
大丈夫!
、、全てを私に委ねなさい?」
 言われるがまま、頭が朦朧としてきた。
 柔らかな感触で良い匂いがするーー。
ーー何となく懐かしいような恋しいような気がする心地良さが、やがて俺の全身を包んでいった。



次話=>>11


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