複雑・ファジー小説

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戯構築世界ノ終末戦線
日時: 2023/03/18 07:52
名前: htk (ID: 7gGQw8LV)

作者にはほぼオンラインゲームの知識がありませんが、VRものです

ダークの方でもう一作品掲載させて頂いておりますが、今の所向こうの世界観とは特に繋がりはありません←たぶん?

内容は主に、NPC側の視点を主題とした物語にしようとは考えていますが、プレイヤー視点の話もよく挿話で挟まれたりして、読み手を選ぶ構成かもしれません

作者の稚拙さもあって、まだまだ作中内のゲームの設定が煮詰まっていないので、場合によってはいつの間にか大幅改訂される場合があります
なるべく読み返さなくても良いような修正に留めようとは考えていますが、そのあたりは先々の展開によって左右されてくると思いますので、予めご了承して下さると助かります

尚、当作にはプレイヤー視点の掲示板回がありますので、アンカー(>>)が含まれるレスが時折見られますが間違って押しても見当違いのページに飛ばされるか、まだ何の投稿もされてないページへ送られる場合がありますので、読者様はお気を付け下さい

※10、11話目の補足ですが、たぶん何かの伏線だとは思うんですが、実は作者にもよく分かっていません
なので、先の展開の都合で後で書き直す可能性があります

※17話目から20話目ーー4話一気に投稿しました
以降、書き置きの修正等で暫く更新止まります



以下、目次


1話目=>>1
2話目=>>2
3話目=>>3
4話目=>>4
5話目=>>5
6話目=>>6
7話目=>>7
8話目=>>8
9話目=>>9
10話目=>>10
11話目=>>11
12話目=>>12
13話目=>>13
14話目=>>14
15話目=>>15
16話目=>>16
17話目=>>17
18話目=>>18
19話目=>>19
20話目=>>20

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.1 )
日時: 2023/03/09 18:07
名前: htk (ID: 5USzi7FD)

プロローグ〜〜序話ーー副題(未定)



 山の中だ。
 疲れた足でふらふらと辿り着いたのは、大きな樹の根元ーー。
ーーそこで何かが陽光を照り返し、視線を奪われたのが最初だった。
 辺りは此処だけ手入れでもされているかのようで、とても山中とは思えない。
 まるで大きな樹を避けるかのように疎らで広々とした、木々の広間ーー。
ーーそこへ足を踏み入れ、暫く佇んでいた。
 静かだ。
 くたびれた両足で膝立ちとなったのは、力無く俯いた俺ーー。
ーー冴えない顔をした、見るも無残な男だった。
 身に付けた鎧はひび割れ、砕けた破片は何処へ落っこどしてきたかーーもう確認のしようも無い。
 戦闘の最中に手入れも忘れた頭はボサボサで、気付くと前髪が目に掛かって鬱陶しい。
 仮にこの姿で平民の前に出れば、次の瞬間には悲鳴を上げられるだろう。
 ここまでいえば分かりそうだが、そうーー俺は敗残兵だ。
 敵勢の攻勢に命からがら落ち延び、どうにか隠れ潜んだ山中で途方に暮れている。
「……ア゛ァ゛」
 ひとまずの安堵から口を開け、それまでの疲れとも溜め息とも付かないような声が漏れた。
 詰まったような響きだ。
 久しぶりに聞いた自身の声を聴くと決まって、喉元を抑える癖がある。
 硬くなった皮膚の上をなぞる無骨な手ーー。
ーーちょうど喉仏の下あたりにあるのは、縫い傷の跡だった。
 既に痛みを感じる事は無くなったが、何かの拍子に声を出す度、自分が〝唖〟ーー喋れない事を思い出す。
 国軍で順調に出世しながらも思わぬ傷を負い、指揮能力無しと見做されたのはーー既に過去の話だ。
 今では俺を降格させた上役も戦死していて、護るべき対象だった国もーーもう以前の姿には戻れないだろう。
 暗い予測を振り払うように俺は首を振り、前方に何かを見付けたのがーーつい先程だった。
 大きな樹の根元でキラキラと輝いたように見えたのは、近付くと分かったがーーキノコだ。
 そういえばお腹が空っぽだったのを思い出し、空腹感に襲われる。
 真夜中をずっと戦い続け、朝日が差した今の今まで何も食べていない。
 突如として現れた敵勢の夜襲で国軍は輜重隊の準備すらままならず、腹一杯まで食べた記憶が随分と昔の事のように思えた。
 よたよたとふらつきながらも樹の根元まで足を運び、そこで跪くーー。
ーーどう見ても、食用のキノコだとは思えない。
 キラキラと輝いて見えたのは周りに散った胞子だろうがーー肝心のそのキノコの見た目は如何にも毒々しい。
 紫と緑のまだらな傘はどうしたって食欲をそそらないし、柄の所々に浮かんだ突起からは泡にも似た粉が吹いているようにも見える。
 どう見ても、毒キノコだろう。
 食べればどんな症状が出るかは、此処に鑑定士でも居なければ分かりようが無いし、素人目で見ても見た事の無い品種だ。
 それでも俺は、幾つか生えたその大きなキノコの一つをーー手に取った。
 あっさりと抜けた柄を握り、考え込む。
 どうせ今から山を出ても敗残兵を狩るべく、追っ手が動員されているだろう。
 疲労困憊の俺が生き延びられる可能性はーーはっきりいって乏しい。
 連戦に次ぐ連戦で、もう手足から力が抜けきっているのがはっきりと自覚出来てしまう。
 それなら潔く自決をーーと考えたところで、根元からすっぱりと折れた剣ではどうしようも無い。
 捕まって処刑されるか、僅かな可能性を求めて逃げ続けるかーー。
 その二つの選択肢に加え、今ーー俺の手の中には第三の選択肢があるーー。
ーー自ら死を望んでいるわけでは無いし、死という現象に恐怖感が無いわけでも無い。
 しかし、生き延びる望みを絶たれた現状でどうやって生き延びれば良いのかーー俺には分からなかった。
 運良く何処かの町へ逃れても、〝唖〟の身だ。
 商家の奴隷として雇われれば良い方で、他者との遣り取りが出来ない男の先行きを誰が慮ってくれるだろうーー?
 こちらが喋れなくなったのを良い事に自分の失敗を押し付けてくる輩は軍にも居たし、それは町であっても変わらないように思える。
 絶望感に打ち沈んだが、同時にーー淡い期待が胸の内に広がった。
 この毒キノコを食せば、楽になれるーー。
ーーそうした確信じみた希望が膨らむばかりで、他の選択肢はこの時、既に切り捨てていた。
 よしーー。
ーー暫しの黙考の末に意を決し、手にした毒キノコを口元へ運んだ。



 味は悪くない。
 逃亡で喪われた水分が吸収され、全身へと拡がるのを感じた。
 程良く弾き返してくる弾力も、しっかりと味付けすればそう悪いものでは無いだろう。
 だがーーそう思ったのは最初だけで、突然の頭痛と吐き気、手足の痺れと意識の混濁に襲われる。
「……ア゛ァ゛ク゛ッ゛ン゛ナ゛イ゛!?」
 自分でも、何を言っているのか分からない。
 ある程度の苦痛は予期していたし、相応の苦しみも覚悟の上だ。
 俺は樹の根元で這い蹲り、何度目かの失神と覚醒を繰り返した。
 吐き気はあるのに、そもそも何も食べてこなかったせいで吐くものすら出てこない。
 手足の痺れは全身に広がり、ジリジリと身体を覆われるような気持ち悪さが酷かった。
 そして、極め付けはーー頭がいったい何分割されたのかと思う程の頭痛だ。
 練兵場で装具も付けずに訓練していた時でさえ、これ程の痛みを味わった事は無い。
 自分が今俯せなのか仰向けなのかも分からない時間が、それが永遠であるかのように続いた。
 苦しく、辛いーー。
ーーいったいいつ終わるのかと何度考えたのかも記憶に無く、もし此処に誰かが居ればどんな魔物が出たのかと思う程の呻きを上げる。
「……ウ゛ク゛ゥ゛ッ゛ア゛カ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!?」
 まるで猛獣のようだ。
 俺はこれから山中の人喰いにでも生まれ変わるのかと思う程、身体をのた打たせていた。
 いっそ、獣になっても構わないーー。
 早くこの苦痛を終わらせてくれーー。
ーーそう何度願ったか、既に軽く100回は越していただろう。
 これなら敵勢の手で拷問の末、処刑された方が幾らかはマシだったかもしれないーーとも思えてくる。
「……ウ゛ア゛ク゛ァ゛ッ゛ル゛ク゛ゥ゛ゥ゛ウ゛!!!
フ゛テ゛ィ゛タ゛ウ゛……」
 助けてーーとでも、この時の俺は叫んだのだろうかーー?
 正直、あまり覚えていない。
 助けてくれるような誰かが側に居るわけも無く、俺の目の前にはとうとうーー幻覚らしきものが見えてきた。
 そして、耳には何処となく非人的なーー人らしさを感じさせない幻聴が響く。

〈ーー/
システムメッセージを受け取りました。
これより、当該NPCのアップデートを開始します。
NPC制限の一部解除ーー。
ーー暫くの間、お待ち下さい。
/ーー〉

 謎の声を聞いたような気がした末、俺はまた意識を手放した。



次話>>2

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.2 )
日時: 2023/03/11 15:04
名前: htk (ID: ikU9JQfk)

プロローグ〜〜掲示板、その1



《終末戦線オンライン・公式スレ》





1:運営
《終末戦線オンライン》の公式スレッドです
ユーザーの皆様は清く正しく、品位、礼節をもって書き込みましょう
当ゲームは究極的自由をコンセプトに製作されましたが、他ユーザーとの関係による軋轢や諸問題については保証しかねます
詳しくは利用規約、若しくは公式ホームページをご覧下さい
それでは、皆様に楽しい終末ライフを


2:名無しの終末民
2


3:名無しの終末民
2ゲット


4:名無しの終末民
2ゲット、かな?


5:名無しの終末民
打ち込んだ文字数で決まったな


6:名無しの終末民
遅れた
じゃ、5ゲット


7:名無しの終末民
始まったね〜
因みに僕は終末の魔術師だよ?
種族は……ただのヒューマンじゃないことは保証済み


8:名無しの終末民
>>6
また遅れてんじゃん

で、魔術師って何だよ?
魔術士だろ、士


9:名無しの終末民
みんな早いな
もう書き込んでるし
出足で遅れた自分はハーフリングの弓使いっす
よろしく


10:名無しの終末民
>>9
ハーフリングって矮人種だったよな?
チビッ子はすっこんでろ


11:名無しの終末民改め、>>7
まあまあ抑えて抑えて

確認したけど魔術師だったよん?


12:名無しの終末民
いきなり荒れてるん?

因みにウチも弓

種族は、ひ・み・ちゅ☆


13:名無しの終末民
下位互換資格が荒れてると聞いて飛んできました

次いでに私は初期職で兵士取ったんだけど資格に魔剣使い付いてた
何でだろ?


14:名無しの終末民
は?
揃いも揃ってチーターかよ
このゲーム終わったな


15:名無しの終末民
絡むな絡むな
なんでいきなしキレてんの?

リアルでの潜在能力とか遺伝子が反映されるってのがこの終戦オンラインの醍醐味
ただしキャラメイク最適作成の場合に限る、ってな
事前情報ぐらい調べとけ

それで
>>14はどんなだったんだよ?
早くも負け組か?


16:名無しの終末民
煩えな

魔術・士だよ!士!
どうせゲームでも負け組だよチクショー


17:名無しの終末民
おいおいちょっと待て
もうイベント始まったのか?
サービス開始初日だろ、これ


18:名無しの終末民改め、>>7
魔術士さんドンマイ

今度一緒に魔術の研鑽深めよう!ね?


19:名無しの終末民
え?もうイベ?


20:名無しの終末民
本当っぽいな
スタート地点の一つが攻め込まれてる
マップで戦時中になってるぞ?


21:名無しの終末民
え〜、嘘
あたし、最初ソコ選ぼうと思ったのに
何故か選べないんですけど


22:名無しの終末民
本当だ
レア種族狙いで自動作成繰り返してたが選べん

サービス開始の当日イベとかやるかフツー
ここの運営、やっぱ頭おかしくね?


23:現地中継
現地に居ます
何故か色々モザイクかかり過ぎなんですけど
何も見えません


24:名無しの終末民
同じく現地からだけど、本当だ
なんも見えない

モザイク表示?
バグかな?


25:名無しの終末民
いや、おそらく年齢フィルター
って事は誰かが既にはっちゃけてんな
オレ、R18版だから見れっけど、これヤバくねえか?

とりあえず現地着いた


26:名無しの終末民
R15の俺が負け組な件について
NPCの可愛い彼女とイチャイチャしたかったのに


27:名無しの終末民
>>25
つか、もう拠点移動出来んの?
早くね?


28:名無しの終末民
>>26よ、気にすんな
あと3年我慢すればR18版にアップデート出来るやん
それまでズリ〇ンでも扱いとけ


29:名無しの終末民
下ネタはちょっと……


30:名無しの終末民
現地、マルトワ王国で合ってるよね?
マップ確認したら割と近そうだし、スレ立ててきたよ

現地の話はそっちで


31:名無しの終末民
分かった

で、みんなは何の種族だった?
俺は最適作成でキャラメしたらヒューマン……
リアルと変わらんとかあり得ないっしょ!?どうして?何で?


32:名無しの終末民改め、>>7
まあまあ元気出して

え、種族?
ハイエルフですが何か?


33:魔術士のリベンジャー
てめえ、会ったら〇す!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



《早くもイベ!?山林のマルトワ王国スレ》





1:ヒューマンの勇者コノミ(女性)
立てたよ


2:ハーフリングの弓使い春樹(男性)
乙っす!


3:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)

てか、名前
勇者?


4:ヒューマンの勇者コノミ(女性)
あれ?
アバター名表示されちゃってる?
何で?


5:付喪神の技師メッソ(男性)
スレ立て時にオンオフ機能付いてるっぽいな
アバター情報オフにしなかっただろう?

他にもプレイヤーのネームカラー表示
性別の表示もオンオフ出来るっぽいな
というか、勇者ってのは何だ?


6:ヒューマンの勇者コノミ(女性)
ネームカラー?

勇者はよく分かんない
強いの?


7:付喪神の技師メッソ(男性)
善良なプレイヤーなら青、悪質なプレイヤーなら赤で表示される
NPCとかは黄色だったな
前作と同じシステムならだが

勇者は公式情報だと、各種族のプレイヤーの中でそれぞれたった一人にのみ割り振られる占有資格らしいからな
強いと思うぞ?


8:ヒューマンの勇者コノミ(女性)
そうなんだ、えへへ
わたしで良かったのかな


9:ハーフリングの弓使い春樹(男性)
勇者さんパネエっす
いいなあ、占有資格


10:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
占有って確か、無くなる場合もあるとかヴァミ通で載ってたような
てか、別に良いけどスレチじゃね?
誰か現地情報よろ


11:インプの鳥使いゲヘナッド(男性)
公式スレの>>25の続きで現地に着いたんだが、ヤベエ
マルトワ王国まさに阿鼻叫喚

年齢フィルター付けといた方が良いだろうな
マジで


12:ヒューマンの小間使いトトリー(女性)
同じく公式スレの>>23です
現地中継

職業選んだから、サクセスチュートリアルで最初からお城に仕える事になったんです
意地悪大臣さんに嫌味とか言われましたけどその話は割愛して良いですよね?

ついさっきその大臣さんが殺されたりその前も色々あって
それでなんですが、ネームの赤表示ってプレイヤーでしたよね?PKかも?
今、そいつらに追っかけられてます
誰か助けて


13:ヒューマンの勇者コノミ(女性)
行けない、ごめん
わたしは最初の地点ランダム選んだら森の中で、暫く出れないと思う

>>12の人はどうやって現地行けたの?


14:インプの鳥使いゲヘナッド(男性)
燃えてるし城下町だろ?
今そっち行く

>>コノミ
最初ランダムで眷魔が付いてきたんだ、乗って移動デキるヤツ
じゃ、また後で報告する


15:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
PK?
プレイヤーキラーか
そっちどうなってんだ?

いきなし国とか落とせんの?
ゲームバランスメチャクチャじゃね?


16:付喪神の技師メッソ(男性)
というか書き込み少ないな
アバター名表示だからか?

>>15
ここの運営は前も別ゲーでめちゃくちゃだったしな
今回もそういう意味では期待してる


17:ホビットの弓使い春樹(男性)
俺、ファンなんすよね
初期作のランデスからの古株っす、一応


18:ヒューマンの勇者コノミ(女性)
ランデス?
みんな詳しいんだね
わたしはこういうゲーム初めてだけど

とりあえず現地行けないか試してくる


19:付喪神の技師メッソ(男性)
おお、勇者だな
ランデスはランドデストロイの略だが、別にこの《終末戦線オンライン》とは繋がりないだろうから覚えなくて良いと思うぞ?
……にしてもプレイヤーか

まさか前作のPK集団、《滅びのカタストロイ》が関わってたりしないよな?
ギリシャ神話のトロイの木馬と掛け合わせてるらしいんだが


20:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
いや、ありえる
前作の《崩壊都市オンライン》をサービス終了に追い込んだ連中だって兄ちゃんが言ってた


21:ホビットの弓使い春樹(男性)
え?このゲームでも奴ら居るんすか?
それは許せないな

自分もちょっと行ってド突いてくるっす


22:サテュロスの開拓者デポポフ(男性)
行ってら
ちな、俺は初期地点遠過ぎて無理だわ


23:付喪神の技師メッソ(男性)
同じく
央陸大地のちょうど反対側だから無理そうだな

さて、他のスレでも覗いてみるか



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



《終末戦線オンライン・公式スレ》





80:名無しの終末民
オーマイガっソフトの新作だから試しに買ったけど良いね、コマンダーシステム

主幹コマンドスキルの〈槍技〉から派生コマンド【一本突き】【旋風槍】が出たよ
門の外でイモムシ倒した


81:名無しの終末民
選択によって増えるコマンド
それによって幅が広がるプレイヤーの行動が今作の醍醐味らしいからな
主幹コマンドから派生する派生コマンドによって取れる選択肢は無限に増加するってのがコンセプトらしい
あと、一部条件を満たすと限定コマンドなんてのも使用出来るらしいぞ?

ところで【一本突き】って最初の技か?
俺のパーティ組んでる奴は【連続突き】だったんだが……


82:名無しの終末民
最初の技だったよ
連続突き?
スキルカウント上げれば覚えられるのかな?


83:名無しの終末民
俺も槍だけど連続突き
プレイヤーによって違うっぽい


84:名無しの終末民
槍使い多いな

オレもアソコの槍で絶賛稼ぎ中だぜ!
NPCの女も悪かねえな


85:名無しの終末民
は?
そりゃ、究極的自由を謳うゲームなんだから女キャラと致せるは致せるんだろうけど

だからっていきなりヤレるわけ無いだろ!
な?そうだよな?


86:名無しの終末民
>>84のそいつ、よく見たら一人だけ色赤いしレッドネームじゃねえか!?
マルトワ襲った奴らだろ?
失せろ!


87:名無しの終末民
え?NPCの女の子とその……デキるの?このゲーム


88:名無しの終末民
脳波が感知するらしいからな
因みに痛覚設定off出来ても快楽は設定off出来ないらしい
あと、別にNPC相手じゃなくてもデキるらしいぞ?
女性アバのプレイヤーは気を付けた方が良いな


89:名無しの終末民
てか、マルトワの話なら専スレ立ってるでしょ?
そっちで話したら?
それと下世話な話は止めぃ!


90:名無しの終末民
まあそうなんだけど
あっちアバター名出るし

サービス開始から名前晒すのはちょっと……


91:名無しの終末民
俺もどちらかと言うとNPCオニャノコとイチャラブ派だけど
さすがに名前バレは避けたいよな


92:名無しの終末民
言ってる事は分かるけど

誰でもいいから>>84の犯罪者捕まえない?
ゲームだからって許せないわ!


93:名無しの終末民
確かに
でもそのへん、向こうのスレに書き込んでる人達は勇者だよな
勇者ちゃん本人も含めて

で、さっき鳥使いさんが救出成功したみたいだったよ


94:名無しの終末民
お、ちょっとROMってくるわ



次話=>>3

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.3 )
日時: 2023/03/09 18:13
名前: htk (ID: 5USzi7FD)

1章〜〜第1幕、1話ーー副題(未定)



 時を遡ること、1日と少し前ーー。
 突如現れた所属不明の暴徒に、マルトワ国が誇る優美な城が襲われていた。
 後背にしたマルタ山脈越しの日の出が後光を差すようーーと称される央陸大地有数の美城だが、まだその時間帯にはなっていない。
 深夜だ。
 いったい何処の国の意図が裏で働いているのかいないのかーー正直、今は何も分からない。
 真夜中の侵攻は密かに進められたらしく、敵の人数も出処も不明ーー。
ーー平時だからといって警備を緩めたつもりは無かっただろうが、城下で火の手が上がったのを機に気付けば攻め込まれていた。
 おそらく、それが陽動だったのだろう。
 事態が兵達に伝わる前に攻め上ってきた敵勢は、既に城内へ押し入っていたらしい。
 城下の消化へ向かった衛兵達の手薄もあって、奥の扉に危機が迫っていた。
 陛下の後宮だ。
 王城の中庭に湧き出てきたのは1人、2人、3人4人ーー数えるのも馬鹿らしくなってくる人数だった。
 夜番の相方が、若干の剣吞さを帯びながら聞いてくる。
「おい、元副団長さん
どうするよ?」
 目配せで指示を仰いできたのは、以前からの習慣だろう。
 彼とはよく知った仲で、今ーーこういう状況下で相方が彼だったのが、せめてもの救いだった。
 元副団長さんーーと呼ばれた俺は顎で後宮を示し、扉の前で仁王立ちする。
 よく知らない相手だと意思の疎通で苦労するが、彼にはそれだけで十分だったらしい。
 相方が扉を開き、半目で振り返る。
「そんなに時間は取らせねえつもりだから、適当なとこで切り上げろよ?
、、じゃな」
 若干の悲壮感を帯びながら言ってきた。
 特に親しいという程では無いが、幾度か戦を共にした事もあるし、戦友ーーといった感がある。
 後宮の扉を静かに開いた相方を背で見送って、向かってくる賊を睥睨した。
 10、20、30ーーと人数を数えたが、まだまだ居る。
 どうやら、俺と同じ人種ーーヒューマンだけでは無い様子だ。
 矮小な小人に獣面の獣人ーー長い耳を持つ者も居れば、頭に角を生やす者も居る。
 一見すると、何処の国の所属かも分からないぐらいには雑多な人種の集まりだった。
 賊徒ーーで、十分だろう。
 練兵に使われる事もある中庭にはその出処不明の賊達がーー少なめに見積もっても100人は集まっているように思えた。
 その中の先頭の男が、下卑た笑みで話し掛けてくる。
「よおよお!オメエが此処のボスか?へっ!
なんか拍子抜けだなあ」
「へへ、そりゃサービス開始からこんな人数集まるとは運営もまさか思っちゃいないでしょうぜ!」
 ニタニタと追従する一人も先の男と同様に品が無い。
 賊がーー。
ーーとでも言いたいところだったが、唖の身とあっては大した返答も出来ないのが忸怩たる思いだ。
 もどかしい事この上無いが、王宮を荒らした罪は刃の元に償って貰うしか無いだろう。
 そう思い、剣を構えた時だ。
 向こうから、女性の声が響いてくる。
「副団長様!
賊です、敵襲です!
早く迎撃体勢を、、
、、きゃッ!?」
「ウルセエ!雌ブタが!?
テメエは黙って便女でもやってるんだな!グッヘッヘッヘ」
 大男が使用人の腕を引っ掴み、気持ち悪い笑みでこれ見よがしに彼女を押し出した。
 既に衣服が乱れ、半裸だ。
 副団長様ーーと、唖の身になって以降もそう呼んでくれる人達は少なからず居る。
 気丈にも表情を変えずに堪える彼女も、そうした一人だろう。
 哀れにも賊の汚い手で嬲られたのを察し、血の巡りが速くなるのを感じた。
 許してはおけないーー。
ーーだが、今の段階ではあの大男の元まで、何人も斬り伏せなければ辿り着けそうにない。
 引っ立てられた使用人の傍らに、あまり見覚えのない少女も居るがーー。
 確か新規採用者を募集していたから、城の小間使いだろうかーー?
 人質ーーというつもりがあるのかはよく分からなかったが、安易に今この場を離れて後宮の陛下を危険に晒すわけにもいかない。
 俺の苦渋を察してか、使用人の彼女が叫ぶ。
「どうぞお見捨て下さい、副団長様!
私がどうなっても、どうか陛下の御身だけは、、」
「え?!え?これイベントなんですか!?
どうしよう、、
資格も小間使いだし、私戦えないんですけど、、」
 傍らの少女は混乱を来しているらしく、落ち着かない様子だった。
 使用人の彼女の覚悟をーー不承々々だが、受け容れる他無い。
 一瞬だけ目を合わせた俺は悲しげに視線を伏せ、彼女が小さく頷いたのを確認した。
 ならば、俺が此処で出来る事は一つーー時間稼ぎだ。
 相方が陛下及び、王室の方々を城外へ逃すのが先かーー。
 それとも、城下の小火騒ぎを収めた兵達が戻ってくるのが先かーー。
ーーそれまでの間、後ろの扉を抜かれなければ敵勢の夜襲は失敗に終わるだろう。
 俺は剣を構え、先頭の男を見る。
「へっ、そう来なくっちゃなあ!
行くぜ!初のボス戦は俺らのもんだ!」
「おう!
他のプレイヤーの度肝抜いてやんぜ!
目にモノ見せてやらぁ!」
 その声を皮切りに、賊達が押し寄せてきた。
 圧倒的に不利な状況だ。
 だが、彼らの動きはどうにも稚拙でーーこの夜襲を仕掛けてきた割には、それ程統率が執れているようには見えない。
 格好は皆平民が着る衣類に毛が生えた程度だし、おそらく城下に溶け込ませる為の偽装兵だろう。
 あの中に手練れが居ないとも限らないが、やってやれない事は無い筈だ。
「……ウ゛ン゛」
 呼吸を落とし、腰溜めに剣を構えた。
〈武技〉からの派生技、【追従身】ーー。
ーー俺の動作に追従する、もう一つの身体というべきものを感じ取る。
 賊共の目には、今ーーこちらの姿が二重に映った事だろう。
 彼らの一人が驚き、口を開きかけた次の瞬間ーー。
ーー足を大きく踏み込み、手にした両手剣を薙ぎ払う。
 彼らの足元を掬う一撃は更に、二重に重なる斬撃を翻る背で響かせる。
「うへグゥ?!」
「ぅあガ?!
何が起き、、」
 言いかけた男の顔面を裏拳気味に掴み、逆方向へと流した。
 俺の側面を取ろうとした足音はそこで止まり、味方との思わぬ衝突でたたらを踏んだ。
 そこを見逃す程、甘くはない。
 後方から突き入れてくる剣尖を躱すべく身を屈め、屈んだ勢いのままに一回転ーー。
ーー旋回した両手剣の大振りな刃が、猛威を振るう。
 すっ転んだ賊の方面を無視し、立ち上がりざまに剣を振り上げた。
 ザシューーとでも空気を裂きそうな一撃は、その一撃だけでは終わらない。
【追従身】によって遅れて放たれる斬撃が、賊の後続を続けて斬り上げる。
 その逆方向では先にすっ転んだ数人が足を取られ、驚愕の表情を浮かべた。
 もたついた彼らのその一人が口を開き、驚きを隠せずに言う。
「つ、強えぞ!?
やっぱいきなしボス戦とか無理なんじゃないすか!?」
「へっ!ちったあ頭使いやがれってんだよお!?
よし、、」
 そう言うと先程は先頭に居た男が、後方から軽く手を挙げた。
 こいつがおそらく、賊のリーダー格だろう。
 彼は一旦他の賊共を退かせると、ニンマリと下卑た笑みを浮かべた。



次話=>>4

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.4 )
日時: 2023/03/09 18:18
名前: htk (ID: 5USzi7FD)

1章〜〜第1幕、2話ーー副題(未定)



「接近戦は分が悪イ
術士系と遠隔持ち、前に出な!」
「おっし、出番だな」
 リーダーの合図で口々に意気揚々と出てきたのは術士と弓使いーー他に、投擲槍や投げナイフを手にした者も居る。
 形勢が悪いーー。
ーー今、俺が背にした扉を離れればすぐさま後宮に雪崩れ込まれ、阿鼻叫喚の地獄絵図と化すだろう。
 唖の身になっても尚、この俺を罷免しなかった陛下には特別な恩義がある。
 だから、不利だからといって此処で退くわけにはいかない。
 一歩も引かない構えを見せると、リーダーはそれが望みであるかのように笑った。
「へっ、死にたいらしいなあ?
やれイッ!」
 号令を合図に、術による火球や水弾ーー。
ーーそれにも加え、投擲槍や矢の先端が切り揉んでくる。
 直撃を受ければ、多少は鍛えている俺でも無傷では済まないだろう。
 だがーー。
ーーこの世にはスキルというものがある。
 先に使った【追従身】もそうだし、今この瞬間使用せざるを得なくなった防護の技もそうだ。
〈不動の心得〉からの派生スキル、【不動壁】ーー。
ーー突き立てた剣を境とし、自身の左右及び上方に全身が拡がったかのような錯覚を受けた。
 勿論、それはあくまで比喩表現だ。
 現実に俺の身体が大きくなるわけでも無ければ、今迫る攻撃を全て打ち払えるわけでも無い。
 だがーー。
「……ウ゛ン゛!」
ーー足元に突き立てた両手剣の切っ先を起点に、防護の光膜が展開された。
 しかし直後、手応えを感じたらしい賊が叫ぶ。
「やったか!?」
「おい、それ言っちゃダメなやつ、、
、、そら見ろ!?」
 火球や水弾により発生した霧が晴れ、彼らは驚愕した。
 泰然自若と映るこちらの姿は、ほぼ無傷に近い。
 もしこのスキルが無ければ、俺は無事では済まされず、ほんのまぐれ当たりの致命傷を負わないとも限らなかった。
 しかし、まったく微動だにしない姿を見たリーダーが舌打ちする。
「ちイッ!?無傷だとお!?」
 俺の不退転の意思が伝わったのか、賊共が後退る。
「やっぱ無理でしょう!?
勝てませんって、これ、、」
「ちイ、役立たず共が!?」
 手下を押し退け、リーダーが前に出た。
 焦りを浮かべる顔は、正直ーー見ものだったが、こちらの間合いには入って来ない。
 それを見て、使用人と小間使いの少女を拘束していた大男が頭目に続く。
「俺がやりまっせ!グッヘッヘッヘ
オラ!?
こいつが目に入らねえのか!?アアン?」
 小賢しくも、彼女達を最大限に利用するつもりらしい。
 人質を盾に恥じる様子も無く、前へ進み出てきた。
 若干距離は離れているが、今ーー大男との間に身を置くのは使用人と小間使いだけだ。
 やるなら好機かーー。
ーーそう考えたが、大男が機先を制してくる。
「おおっと!動くなよ!
そこを動けば、この女の柔肌に一生消えない傷跡が付いちゃうかもしれねえぜ!?グッヘッヘッヘ」
 下衆がーー。
ーーとでも、もし俺が喋れたなら罵倒していただろう。
 リーダーはこちらが動けないのを見取ってか、無遠慮に近付いてくる。
「へっ、良い子ちゃんはツレエなあ?
善人ヅラしてるテメエみてえの見るとムシャクシャしてよお?
おらよ!?」
 手にした短槍を、俺の喉に突き掛けてきた。
 だが、その手は中途で止まる。
「おんやあ?よく見たら善良な騎士チャマの喉にはもう傷が付いてるじゃねえか!?へっ
、、んなら、カッコよくその喉に十字傷でも付けてやるぜえ!
おらあ!」
 先端で抉るように、じわじわと甚振るつもりだったのだろう。
 だが、その間も防護のスキルが働いていた。
 俺はさしたる手傷を負わず、リーダーの持つ短槍に僅かな血が滲んだに過ぎない。
「ちイッ、硬えな!こりゃスキルか!?てめえ、、
、、ぺっ!」
 苛立ち、唾を吐きかけてきた。
 頬に掛かる前にスキルの光膜で弾かれたそれを無視し、俺はリーダーから視線を逸らさずにいた。
 その態度がカンに触ったらしい。
「へっ、でもまあよ?おチャベリ出来ない騎士チャマなんか虐めても可哀想だしなあ?
そう思うだろ?お前ら!?」
「へいっ、そら悪人っすわ!」
 下卑た笑みを浮かべ、手下の一人が応じた。
 リーダーは何が愉快なのか、口の端を釣り上げーー使用人の彼女の方へと向かう。
「だからよお?
てめえが負えねえ分の痛みは、誰かが代わってやんねえとなあ?」
 探るような目付きだ。
 この賊の頭目は下卑た表情の裏で、それなりの狡猾さを備えている。
 これまでの振る舞いでそう確信した俺は、後宮との間を阻んでいた【不動壁】を解いた。
 それを見た使用人が、諌めの声を上げる。
「いけません、副団長様、、
、、私共の身柄なんて、捨て置いて下さればよろしいのです
どうして、、」
 悲嘆に暮れたように、彼女は言った。
 その傍らで何処となくーー何故か超然と事態を見守っていた少女が口を開く。
「あなた達もしかして、、
PKなんですか?」
「はあ?てめ、、
、、よく見たらプレイヤーじゃねえかあ?
こんなトコで何してやがる?」
 よく分からない言葉だ。
 ぴーけーーー?
 ぷれいやーーー?
ーー聞き慣れない言葉を口にした少女が、憤ったように言う。
「ナニもアレも無いですよ!?
せっかくサービス開始で先行出来ると思ったら、資格は戦闘力皆無の小間使いですし、いきなりスタート地点のお城は攻められてますし、これどうしてくれるんです!?
運営に言い付けますよ!?」
「へっ、運営チャマと来たか!?
ここの運営チャマはプレイヤー間の諍いにはほとんどノータッチなんだよなあ?
、、そんかわし、時々とんでもねえ制裁が飛んでくる事もあるけどよお?」
 運営ーー?
ーー何処かの商家か組合の話だろうか?
 会話の流れが掴めない俺を無視し、少女は尚も食い下がる。
「は、良い気味ですね
あなた達、もしかして前作でもプレイしてた悪質プレイヤーの人達ですか?
そういうの聞いた事がありますよ?」
「へっ、だからどうしたってんだあ?
、、あんたもプレイヤーなら、ここの運営会社のコンセプトはよく知ってる筈だ
まさに俺らの為に存在するようなゲームなんだぜ?」
「それは絶対に違います!
ゲームはみんなで楽しくやるものですし、あなた達だけのものにして良いわけがありませーっんだ!
頭の中スッカスカのバッカじゃないですか?
よく居るんですよね、そうゆう人達、、
、、リアルでどんだけストレス溜めてるのか知らないですけど、鬱憤晴らしならソロゲーで解消したら良いんじゃないですか?
一人じゃ何も出来ないんですね、プふっ、、!」
 軽蔑したように小間使いの少女は言い切った。
 会話の内容はよく分からないが、この少女の発言が賊共に刺さったのは分かる。
 言葉に詰まったリーダーは、どうやら実力行使に出るつもりらしい。
「、、へっ
俺らの言う事聞くなら仲間にしてやっても良かったんだがよお?
そこの便所女と同じ目に遭いてえらしいな?」
「、、勝手にしたらどうですか?
どうせ、この事態に気付いた他のプレイヤーが遠からず此処に向かってきます!
あなた達の栄華が長続きするとは間違っても思わないで下さいね?
、、とっとと死んで下さい!?クソヤロー共!」
 勝ち誇ったように言った少女の衣服に、リーダーの手が掛かった。
 歳頃の少女が穢されるのを黙って見ている事は、俺には出来ないーー。
ーー一瞬だ。
 賊共の注意が小間使いの少女に向いた今、意識の空白がそこにあった。
 俺は両手剣を握る手を振り絞り、同時にもう一方の動きを確認する。
 考えは同じだったらしい。
 使用人の彼女は後ろから拘束する大男に後頭部をぶち当て、更に肘鉄を決める。
「グヘッエ!?」
 その大柄な手から逃れ、すれ違ったのはーー【追従身】から解き放った〝もう一人の俺〟だ。
 目配せで少女を示したこちらの意図を察してくれたのか、使用人は驚愕に染まるリーダーの顔面を蹴り上げた。
 そして彼女は、自身より小さな彼女に覆い被さる。
 今この瞬間ーー俺を縛るものは何も存在しない。
〝もう一人の俺〟と互いを背に振り払われる、二つの剣筋ーー。
ーー賊共の攻囲は今この瞬間、二振りの斬撃により決壊した。



次話=>>5

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.5 )
日時: 2023/03/11 15:15
名前: htk (ID: ikU9JQfk)

1章〜〜第1幕、3話ーー副題(未定)



【追従身・分け身】ーー。
ーーそれがこのスキルの応用技の一つだった。
 鏡写しのように背中合わせに位置取る二人の俺が、瞬く間に賊共へと斬り掛かる。
 咄嗟に得物で防ごうと身構える者も居たが、遅い。
 両手剣の肉厚な剣身に耐え切れず、迎撃体勢もままらない彼らを払い飛ばす。
「ぅぐア?!
なんちゅう力だ、、」
「おふゲェ?!
き、斬られ、、」
 横一文字の斬線を胸に浴びた一人が、血流を零して跪いた。
 下衆の末路だ。
 両手に伝わった感触に手応えを感じた俺は、使用人の彼女と少女を庇う位置に身を置く。
 この一瞬の反撃で彼らは怖じ気付いたのか、すぐには斬り掛かって来ない。
 喋れないが、それでも余裕の笑みを浮かべてやればーーこちらの実力がはっきりと伝わるだろう。
 俺の表情を見て、動じた一人が口を開く。
「や、ヤバイですぜ?
あいつ、そこらへんの魔物よかずっと強え、、」
「そんな事いちいち言うんじゃねえ!?シバくぞ!てめえ!?
へっ、、不味イだろうがよお」
 先程蹴り上げられた顔を腫らしたリーダーが、頽れた仲間に視線を落とした。
 手加減はしなかったから、何名かは間も無く事切れるだろう。
 そう思っていた矢先ーー。
ーー頽れた賊共が文字通り、命を散らす。
 まるで無数の光が蜘蛛の子を散らすが如く、跡形も無く霧散したーー。
ーーそれを見た使用人の彼女が怪訝そうに口を開く。
「あれは、命の最後の輝き、、プラーナでしょうか?
でもどうして、、?
死に際にプラーナを散らすのは、魔物だけの筈、、」
 俺が浮かべた疑問を代弁してくれた。
 そう、プラーナと呼ばれる生き物が内包する命の源泉は当然、ありとあらゆる人類ーー〝ヒト〟にも備わっている。
 だが、通常ーー〝ヒト〟の範疇にあるとされる人種は全て、先に見えたようなプラーナを散らす事は無い。
 死に際しては物言わぬ屍となるのが本来の〝ヒト〟の死である筈だ。
 だが、彼らーー今死んでいった賊共は魔物と同じように、大気に搔き消えるようにして散っていった。
 不可思議な現象に俺が戸惑っていると、小間使いの少女が口を開く。
「死に戻りですね
副団長さん、、私達プレイヤーはあのように一度死んでもまた時を置いて復活します」
 何でも無い事のように言ってきた。
 死に戻りーー?
ーー一聞すると眉唾にしか聞こえないが、魔物と同じように死んでいったのを見れば、頭ごなしに否定は出来ない。
 喋れない俺の代わりに、使用人の彼女が応じる。
「それでは、あの不届き者共はまた此処に戻ってくるというのですか、、?
そんな、、」
「いいえ違います、先輩
私達プレイヤーが死に戻りする場所は最後に触れたメモリアル・クリスタル、、だと分からないですよね?うう〜ん、、
、、とにかく、すぐこの場には戻ってきませんからさっさと逃げましょう!早く」
 何らかの確信でもあるらしく、逃亡を勧めてきた。
 使用人の彼女も場を読んでか、後輩の言葉を引き継ぐ。
「この騒ぎです、副団長様
陛下達も既にお気付きでしょうから、時間はもう十分に稼げたと思います」
 その言に頷き、俺は同意を示した。
 そういえば先に夜番の相方を向かわせてあったから、きっと上手くやってくれたに違いない。
 そう信じて俺は、【追従身・分け身】の俺に小間使いの少女を抱えさせる。
「うわっ!?ちょ、ちょっと、、
いきなり過ぎます!」
「あ、副団長様、、
お、畏れながら私も失礼を、、」
 少し慌てた様子の彼女を本来の俺が肩に抱え、未だに動きを見せない賊共を見遣った。
 下卑た笑みを収めたリーダーはまだ戦意を衰えさせてはいなそうだが、手下の奴らは及び腰だ。
 この機を逃す手は無い。
 拡がった攻囲の隙間に突きかかるようにして、空いた他方の腕を振るう。
「ひ、ひィ、、?!」
「ちイッ、逃がすんじゃねえ!
せっかくのボス初討伐を台無しにする気かあ!?」
 リーダーが檄を飛ばすが、怖じ気付いた手下達の得物は精彩を欠いた。
 適当に受け流しては突き飛ばし、後ろに回り込んだ賊を足裏で掬い上げ、瞬く間に道が開かれる。
 弱いーー。
ーー始めの夜襲こそ上手くいったらしいが、彼らの実力は新兵と大差無いか、それよりも若干劣るだろう。
 使用人の彼女と小間使いの少女で片手が塞がっていて尚、賊共の実力は二人の俺に遠く及ばない。
 両手剣を片手で振るいながら、互いにもう一人の俺で隙を補い合いながらの逃亡劇は、思っていたよりも簡単だった。
 中庭を抜け、階段を駆け上がればーーそこは城壁の上だ。
 この城は二層立てだから、都合三階分の高さがある。
「うわわっ?高いですよ!?
まさか、飛び降りるんですか!?
落下ダメージで死んじゃいます、、!」
 少女がわけの分からない事を言って騒ぐが、別に死にはしない。
 着地の際に少しだけーー足が痺れるだけだ。
 だがここで、尚もしつこく追ってくるリーダーと取り巻きが追撃を仕掛けてくる。
「ちイ、逃がすな!
何でも良いから撃ちまくれ!」
「へいっ、これでも喰らえ!
、、ファイアボール!」
 賊の一人が手を掲げ、燃え盛る火球が向かってきた。
 一つじゃないーー。
ーー中には水弾や氷針の術式も混じり、複数人から放たれた攻撃術が俺の半身に直撃する。
「副団長様っ、、?!」
 彼女を庇ったのが、当の庇われた本人にも分かったのだろう。
 だがここで女子供を危険に晒しては、元副団長としての無けなしの誇りが廃るというものだった。
 咄嗟に剣で払ったが、熱せられた頬が炙られたようにひりつくーー。
ーー続けざまに攻撃術を発動されては敵わない。
 二人の俺は彼女達を抱え、都合三階分の高さから飛び降りる。
 一瞬の浮遊感ーー。
ーー頭上を複数の術弾や矢が通り過ぎ、宙の居た堪れないような気持ち悪さはすぐに終わった。
 代わりに両足を伝ってきたのは、着地の衝撃による痺れだ。
 城壁の上から、リーダーの檄が飛ぶ。
「今だ、やれイッ、、!」
「へいっ、こいつでトドメだ!
、、貫けっ、フレイムランス!」
 術士らしい手下の声が叫んだ。
 不味いーー。
ーー身を起こそうとするが、着地で屈み込んだ足が言う事を聞いてくれない。
 火槍による一撃は避けられそうに無いから、身を固める他無いだろう。
 その瞬間ーー。
ーーそれまで抱えていた彼女の重みが、ふわりと消えた。



次話=>>6


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