二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- とんがりボウシ 陽光と月光の魔法学校
- 日時: 2013/04/07 13:29
- 名前: 輪廻 ◆LRy3QOb4sU (ID: iZt7ppNj)
これはとんがりボウシのゲームの二次創作
の、つもりです。
実際のゲームとはかなり違うところがあります。
オリジナル設定などがあったりやりたいほうだいですが、
できる限り原作に似せるよう努めたいと思います。
読んでいて違和感を感じたり、
不満な所などがありましたら、
裏で文句をいわれても分からないので正直にお申し付けください。
更新はかなり遅くなると思いますが、
それでも許せるような心の広い方のみどうぞ。
- Re: 陽光と月光の魔法学校 ( No.2 )
- 日時: 2012/11/11 20:18
- 名前: 輪廻 ◆LRy3QOb4sU (ID: iZt7ppNj)
第二話〜新たな生活〜
「本来であればこの寮の中を案内するべきだろうが
俺は用事があるから案内はできない。
というわけで俺が戻ってくる間自分で寮の中を見て回ってくれ。
ちなみにお前の部屋は3号室。緑の扉が目印だからな」
と、テツさんは私に告げ、どこかへ行ってしまった。
さて、これからどうしようか…。
やはり自分の部屋を探すべきだろうか。
しかし、ここは学生寮というにはあまりにも広すぎる。
軽い方向音痴である私にとっては迷路のようにさえ感じた。
本当にここは学生寮なのだろうか。
私はテツさんのことを信用していいのだろうか。
そもそも、どうしてこんな所へきてしまったのだろうか。
考えていても謎は深まるばかりだった。
もう考えるのは止めよう。
頭が疲れるだけだ。
そう考え、私は気持ちを落ち着かせるため、深呼吸をした。
「なんだと!?お前なんか脳みそまで筋肉なくせに!」
とたんに、誰かさんの吐いた悪態が
寮全体に響き渡った。
何事かと思い、私は声のした方へ向かっていった。
声を荒げていたことから、
きっと口喧嘩か何かをしていたのであろう。
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ!
このバカイト!!」
喧嘩の相手であろう人物の声が、
先程の悪態に負けない程の音量で寮に響き渡る。
様子を覗いてみると、そこには13〜15ほどの男女が緑色の扉の前で睨み合っていた。
たぶん、ここの寮に住んでいる人たちだろう。
私にとって関わりたくないタイプの人たちだった。
「早く自分の部屋に入って引き篭もりたいな」
そう思ったが、私はここであることに気がついた。
テツさんの言っていた私の部屋、3号室は緑色の扉が目印だと言っていた。
そして、あの二人が立っている場所はちょうど緑色の扉の前。
二人の喧嘩が終わらない限り、私はあの部屋に入れない。
喧嘩が終わるのを待つのも何だし、
喧嘩に第三者が割って入ってくるのも
なんだか自分が空気が読めない人間であるようで気が進まない。
いや、それどころじゃないかもしれない。
私は今まで全く気がつかなかったのだが、なぜこの寮に私の部屋があるのだろうか。
まず、私は先程この世界に来たばかりだ。
その上、ここはただの寮ではなく学生寮。
「たまたま部屋が開いてたから貸してやるよ」などのことはまず無いだろう。
学生寮というからにはこの寮は学生しか利用できないはずだ。
ということは、私は知らない内にこの世界の学校に入学することになっていたというのだろうか。
しかし、私には思い当たる節が無かった。
そのとき、テツさんが私を呼んだ。
何の用かと聞くと、テツさんは私に
学生証、制服、鞄、教科書などを渡してきた。
これはきっと学校にいけということだろう。
そのあと、テツさんは痴話喧嘩をしていた二人を見事に取り押さえた。
名前を呼ばれるだけで大人しくなったことを考えると、
普段から二人は喧嘩をしていて、そのたびにテツさんに怒鳴られる姿が目に浮かんだ。
「あれ、あんただれ?もしかして転校生?」
先程喧嘩をしていた片割れが、ようやく私の存在に気がついたようだ。
私は、変な人だと思われないか内心怯えながら答えた。
「いえ、私は編入生です。
信じられないかもしれませんが私、こことは違う世界からきたんです」
そういうと、驚いたことに彼女らも私と同じで
魔法のない世界からあの不思議な扉を使ってこの世界にきたらしい。
女の方がのえるで、男の方がカイトというそうだ。
二人共案外優しい人で、おかげで肩の重みがとれて少し気が楽になった。
なんだかんだで学校まで案内してくれるらしい。
この人達と同じクラスになれたらどんなにいいだろう。
そう思いながら、私は二人と一緒に寮を出た。
そのときは、二人の優しさでおなかが一杯になり、
始めての授業のことなど、頭の中に入っていなかった…。
- Re: 陽光と月光の魔法学校 ( No.3 )
- 日時: 2012/11/11 20:22
- 名前: 輪廻 ◆LRy3QOb4sU (ID: iZt7ppNj)
第三話〜魔法と学校〜
寮で知り合ったノエルさん、カイトさんという心優しい人に導かれ、
私は校門までやってきた。
しかしこの学校は、普通の学校とは思えない程に広く、大きかった。
私はあまりにも大きい校舎を目の前に呆気にとられていた。
二人に連れられて中へ入ってみると、
中も学校とは思えないほど豪華絢爛だった。
上を向けば天井に設置されているローゼットに取り付けられた
装飾的で複雑な形をしたシャンデリアが光を散乱させて眩しく輝いていた。
シャンデリアの語源はラテン語の「Candere」で、輝く、白く光るという意味らしいが、これを見て納得した。
あまりに眩しかったため私は視線を下にずらしたが、
床は塵ひとつなく鏡のようにキレイに磨き上げられ、シャンデリアの光が写り込んで余計に目が痛くなった。
「ここは本当に学校なのだろうか」
私には、ここが学校だとは思えなかった。
しかし、私は地図をもっていないため、
二人を信用してここが学校だと思い込むしかなかった。
そのことについて考えていただけで、どれほどの時間がたったのだろうか。
気がついたら、ホームルームが始まっていた。
目の前には、大人しく席について
教師と思われる人物の話を聞いている大勢の生徒たち。
落ち着いて教師と思われる人の話を聞いていると、
編入生である私の紹介をしていたらしい。
「あなたの席は窓側の一番後ろに空いている席です」
そう言われて、私は大人しく自分の席に座った。
しかし、編入先でも窓側の席に座れるとは思わなかった。
自分はなんて運が良いのだろうと、神に感謝した。
「これでホームルームを終わります」
教師と思われる人が教室を出ていくのと同時に、
「キンコンカンコン」と、いかにも普通の学校らしいチャイムが響き渡った。
そしてそれが鳴り終わった直後、私の机の周りは人でいっぱいになった。
様々な質問を投げかけてくるクラスメイトに、私は落ち着いて返事を返すことができた。
この学校の生徒は、見た目を除けば普通の学校の生徒と
大して変わらないことが分かった。
しかし、私が落ち着いていられたのもここまでが限界だったようだ。
私は途中からこの学校に入ってきたわけだから、
魔法学校の授業内容がわかるはずもなく、
授業中はずっと教師の話を聞いているふりをしながら
一人、教科書を読んで1ページ目から勉強をしなければならなかった。
そして、授業終了後。
教師に当てられなかったのは幸いだったが、
覚えることが多すぎて私の頭の中はこんがらがって
わけがわからない状態になっていた。
そんな私を見かねたのか、ノエルさんは遊ぼうと誘ってくれた。
私は、素直にそのご好意を受け取って遊びに行くことにした。
寮とは真逆の方向にある橋を渡り、
塔の前を通り過ぎると、目の前にはカイトさんがいた。
カイトさんもこちらに気がついたようで、
「お前ら何しに行くんだ?」
と、声をかけてきた。
「何って…私たちこれから遊びに行くのよ」
と、ノエルさんが答えると、カイトさんは哀れむような目で私を見た後、
心配だという理由で同行することになった。
無論、二人が口喧嘩をしながら目的地まで向かったことは言うまでもない。
二人が口喧嘩をしているのをよそに、私は一人、考えていた。
ノエルさんは一体どのような遊びをされるのだろうか…。
正直、私は先行きが不安になってきた。
ノエルさんは森を抜け、洞窟の中へ入るとこう言った。
「とりあえず宝探しでもしてみない?」
とりあえず私は頷いた。
せっかく誘ってくれたのに断るわけにはいかないと思ったからだ。
すると、ノエルさんとカイトさんは時計回りに一回転して、魔法使いに変身した。
私もワンテンポ遅れて見よう見まねで変身した。
「まほう ひみつ さがす」
私たちは三人同時に宝探しの魔法の呪文を唱えた。
授業中に教科書を読んでおいたかいがあったというものだ。
しかし、二人が杖を振って魔法を使っている中、
私だけ、魔法が上手く使えないでいた…。
- Re: 陽光と月光の魔法学校 ( No.4 )
- 日時: 2013/04/07 13:39
- 名前: 輪廻 ◆LRy3QOb4sU (ID: iZt7ppNj)
第四話〜魔法の使い方〜
呪文は合ってるし、ちゃんと魔法使いに変身している。
使い方も合っている…。
なのに、なぜできないのだろう。
私はもう一度杖を振り、宝探しの魔法を使おうとした…
が、煙が出ただけで、魔法を使うことはできなかった。
杖から煙が出るということは、失敗ということを指す
と、今日授業中に読んだ教科書には書いてあった。
魔法が使えない主な理由としては、
一つ目は、魔法を使うための力…すなわち、魔力がないということ、
二つ目は、魔法使いに変身していないということ、
そして三つ目は、呪文が間違っているということなどが上げられるが、
魔力がないなら魔法使いにも変身できないし、煙が出ることもない。
呪文も、ちゃんと教科書を読んだし、
三人同時に唱えたときには間違ってはいなかった。
…では、一体何が問題なのだろう。
魔法を使うには、変身し、呪文を唱え、杖をふるだけではないということだろうか。
いや、もっと根本的な問題…変身する魔力はあるが、
魔法を使えるほどの魔力がないということだろうか。
どうすればいいのか悩んでいたとき、
ちょうどいいタイミングでノエルさんが口を開いた。
「あ、そうだ。ゴメン、チアキ。魔法の使い方教えるの忘れてた」
本当にいいタイミングだった。
しかし、カイトさんが「オマエ、まだ教えてなかったのか…」などと、
余計な事を言わなければ、私は5時間49分も待たなくて済んだのかもしれない。
…いや、待つ必要がなかったはずだ。
しかし、こういうことは二人共癖でついやってしまうことらしく、
しかたがないことなんだと思った。
ノエルさん曰く、「魔法を使うには、イメージ力が大事」
らしく、一般人が魔法を使うのはとても難しいことらしい。
また、魔法とは人によって認識が違うものらしく、
魔法とは何か、と聞くと、
使い方次第で凶器にもなるナイフのような危険なものだと答える人もいれば、
無限の創造物であり、芸術のようなものであると答える人もいるらしい。
自分なりにその答えを見つければ、
大きな手助けになるかもしれない…とも言っていた。
しかし、魔法を信じない人には魔法が使えないらしく、
魔法を使えるようになるには、信じる心が大事、ということらしい。
私にとっての魔法は、空想上のものでしかなく、私の手には決して届かない、
別の次元にあるもの…なのかもしれない。
人間以外の動物や食べ物、植物などが擬人化し、
服を着て、人間の言葉を話し、二足歩行をして、
さらには魔法使いで、それ専門の学校に通っているこの世界…
私にとっては、まだ夢のなかにいるみたいだ。
しかし、このままではこの魔界では、落ちこぼれとなってしまう。
避けるためにも、この世界に慣れて、ここの空気に溶け込むしかない。
そのためにも、明日はいろいろなところを回ってみよう。
そして、今日は学生寮でたっぷりと睡眠をとるのだ!
そう、思って元気よく自室のドアを開け、
目に入ってきたのは
家具の一つもない真っ更で何も無い受け入れがたい現実だけだった。
私は、思わず現実逃避をしたくなってしまった。
しかし、数時間後。
私は制服に着替える前に着ていた服…そう、パジャマがあったのを思い出した。
これを着こめば、少しはマシになるだろう。
そして、私は鞄を枕代わりにして冷たい床の上で眠りについた。
しかし、私の体は丈夫だったため、風邪はひかなかったが、
次の日には鼻水が止まらないほど沢山でて、辛い思いをすることになった。
まずは町巡りよりも買い物に行ったほうが良さそうだ。
- Re: 陽光と月光の魔法学校 ( No.5 )
- 日時: 2013/04/06 20:00
- 名前: 輪廻 ◆LRy3QOb4sU (ID: iZt7ppNj)
第五話〜生活環境をととノエル〜
私が魔界に来て二日目の朝がきた。
寝心地が悪かったせいか、あまり良く眠れなかった。
体の至る部分が痛くてしかたがない。
まぁ、今日は運良く休日のため学校が無い。
あまり困るようなことはないだろう。
私は今日の予定を簡単に立てた。
起床→身支度→朝食→買い物→昼食→家具の配置→風呂→夕食→睡眠
と、いうところだが、身支度を終えるまではいいとして、
朝食と昼食をどこでとればいいのかが問題だ。
なんだかんだでこの街は食料を取り扱っている店が少なすぎる。
平日では森や商店街などに行っていれば、遅刻する可能性が非常に高い。
いや本音をぶちまけると、森は町の端にあるから論外だし、
商店街自体は学校のすぐ近くなのだが、その手の店は少し遠くにある為
しばし面倒くさい、といったところだろうか。
昨日は結局夕食を食べずに寝てしまったので、
せめて朝食だけでもとっておきたいところだが…。
「おはよーッ。ご飯一緒に食べよー」
ノエルさんが何の合図もなく部屋に入りこみ、開口一番にそう言った。
本当にタイミングのいい時に現れる人だと思った。
どうやら、この寮にはラウンジがあるらしく、
朝食はそこでとることとなった。
「…ノエルさん、朝からカレーうどんなんて食べるんですか…」
「だってさぁ、朝の内にガッツリ食べておかないと
お腹すいて動けなくなっちゃうんだもん。
…一度本当に動けなくなったことあるし」
普段それほど激しく運動をしているからなのか、
それとも大食いだからなのか…。
いや、もしかすると両方なのかもしれない。
とにかく、ノエルさんはボリュームのあるような食べ物を
好むということが分かった。
朝食を終えた後、私が日用品を買いに行くと言うと、
ノエルさんも商店街に用事があるということで、
一緒に買物に行くことになった。
しかし、寮を出て数分後、私は大変なことに気がついた。
私の財布の中には魔界の通貨、リッチという単位のお金は無く、
入っていたのは日本の円という単位のお金だけだった。
私は頭の中が真っ白になった。
そして数秒後。
気がついたら銀行に向かって全力疾走していた。
自動ドアの前で足踏みしながらモタモタしている自動ドアが開くのを待っていた。
そして、ぎりぎり私が入れるくらいにドアが開いたとたん、
私は中に駆け込んで思いっきり叫んだ。
「両替してください!!」
自分でも、何でこんなことを口走っているのか分からなかった。
両替だなんてどうせできないのに…!
「いいですよ」
…できたのか。
まぁそれはそれで好都合なのだが、少し拍子抜けしてしまった。
とりあえず、かは分からなかったので、
所持金の五分の一くらい両替をした。
このくらいあればしばらくなんとかなるだろう。
日本円と魔界の通貨を両替できるようにしてくれた人に感謝。
商店街に入ると、服屋、床屋、花屋、バーなどいろいろあったが、
私は真っ先にデパートの方へ向かった。
ベッドはもちろん、時計、ランプ、机、椅子…
必要そうな日用品はだいたいは買い揃えた。
ホウキもあったので、ついでに買っておいた。
テツさんから渡されたカバンはとても便利だった。
四次元カバンらしく、ベッドも机も楽々と入ってしまった。
デパートから出た後、
私はノエルさんに連れられて、かめやというところへ来た。
なんでも、魔法やまじないを使うのに必要な道具を揃えているらしい。
ノエルさんはお使いで頼まれた品を持ってきたらしい。
「それじゃあ、いつもより少し高い値段で買い取ってあげるからねぇ」
そう言うと、そこの店主はノエルさんに何らかの薬とお金を渡した。
「そこのお嬢ちゃんも、お金に困ったときはお使いを頼まれてくれれば、
いつもより少し高い値段で買い取ってあげるからねぇ」
「あ、はい。ありがとうございます」
ここの店主は、とてもいい人そうだ。
…自室に戻ってきたあと、私は家具を配置した。
どれほどこの時を待っていたことだろうか。
これで今日のような体の所々が痛くなるようなことは無くなるだろう。
そうして私は、またもや夕食を食べるのを忘れて、
深い眠りについたのだった…。
- Re: 陽光と月光の魔法学校 ( No.6 )
- 日時: 2013/04/06 19:52
- 名前: 輪廻 ◆LRy3QOb4sU (ID: iZt7ppNj)
第六話 〜初めて魔法が使えた日〜
私が魔界に来て一週間程経っただろうか。
ここの生活にもだいぶ慣れてきたような気がする。
さて、この辺で一度おさらいをしてみよう。
私はつい最近まで普通の生活をしていた。
しかし、ある本に書いてあった「ゆめまくらのまじない」を行った日の夜、
よくわからない夢をみて、朝起きると手に鍵があった。
そして、見慣れない扉もあって鍵を使って開けてみると、そこは魔界の学生寮だった。
同じ境遇の人間、ノエルさんとカイトさんに出会った。
そして、魔法学校に通うことになった。
学校では、魔法やまじないだけでなく、地理なども教えてもらった。
魔界には2つの大国があり、一つが私の今いるところ、ムーンライトという国。
もう一つはサンシャインという国。2つの国は対立していた。
そして、その両国の首都にある魔法学校の校長はムーンライトでは月、
サンシャインでは太陽のような顔をしているらしい。
ノエルさんたちからは、この世界の基礎知識などを中心に教わった。
例を上げると、寮にある「始まりと終わりの扉」というところで特別な鍵を使えば元の世界に戻れることなどだ。
私たちが魔界にいるとき、向こうの世界の時は止まっているらしい。
正確に言えば時間は少しは動いているのだが、あまりにも遅いので止まっているのとあまり変わらないらしい。
私は別に元の暮らしに戻りたいとも思えなかった。
しかし、この暮らしを続けたいとも思えなかった。
自分はどちらの世界が好きかと問われても、どちらかを選ぶことはできないだろう。
どちらも嫌いというわけでもなく、どちらも好きというわけでもない。
今の私からすれば、どちらの暮らしもあまり変わらないような気もする。
余談だが、私はここに来て一週間は経つのに
未だに魔法を使えていなかった。
さて、少し私語も入ってしまったが、だいたいこんな感じだろう。
さて、ここからが本題だ。
私は学校にもだいぶ溶けこんできた。友達も少しできた。
私は他人に話しかけるようなことが少なかったため、友達も少なかった。
今まで友達は2、3人程度だったが、今では7人ほどに増えた。
これは私にとって、とても喜ばしいことだった。
しかし、そんな私の前に誰もが目を背け、現実逃避をしたくなるような
ある衝撃的な事実に直面してしまうことになった。
それは、人間は顔さえ良ければ基本的には優遇されるということだ。
確かに人間誰でも薄汚いものより美しいものの方がいいでしょうね。
まぁそこは少しは認めるとしても、
「容姿より性格の方が大事だよ」とかいっていた人が
性格のいいブサイクと性格があまりよろしくない美形とどっちがいいか聞いてみたら性格があまりよろしくないくらいの美形選ぶってどうよ。おかしいだろ。
もし私の顔立ちが整っていれば、人に話しかけなくても向こうから人が寄ってきたのではないだろうか。
友達も多くなったのではないだろうか。
ネットで時々「※ただしイケメンに限る」などという言葉を見かけるが、まさにその通りなのでは無いかと思う。
あぁ、憎い。本人に悪気はなくとも憎い。この怒りをどこにぶつけようか。
それはやっぱり本人にぶつけるのが一番だろう。
そもそもこんな思いをするハメになったのは、彼が原因なのだから。
きっかけとなったのはトイレで盗み聞きした恋話だった。
内容は説明しなくてもわかるだろう。
それをきっかけに、私は彼を観察し続けたが、
彼は誰かに話しかけることは基本的には無く、向こうから寄ってくる方が多かった。
そして、女子の恋話を積極的に盗み聞きした。
どの人も似たようなことばかり話していた。
多くの人が好んでいたのはある特定の人物だった。
ということで、今から私はその多くの人が好んでいた男を殺りにいってきます。
さようなら、普通の人間だった自分…!
などと、早まるようなことは今回はしないでおこうと思う。
やはり、人間というものはじわじわと傷めつけるのが一番だ。
そして、希望が絶望に変わる瞬間というのもまたおもしろい。
まぁ今回はそういうことはとりあえず置いといて、
大金盥の魔法から始めてみよう。
そう思い、私は魔法使いに変身し、物陰に隠れて奴が来るのを待った。
40分くらいはかかることも覚悟しておいたが、奴は20分程度でのこのことこちらにやってきた。
いまこそこの怒りをぶつけるとき!
「魔法 大きい 大きい 悪戯」
私は小声で呪文を唱え、奴に向けて杖を振った。
すると、空から金盥が降ってきて、とてつもなく大きく痛々しい音をたて、見事に奴の頭に直撃した。
様子を見てみると、奴の頭からは血が流れていた。
少しやりすぎてしまったが、死ぬことは無いだろう。
私はなるべく人に見つからないように気を使いながら寮へ戻った。
私は今、嫌いな人を痛めつけた快感と、初めて魔法が成功した喜びでお腹がいっぱいになっていた。
帰った後、確認のためにいろいろな魔法を使ってみたが、どれも使えるようになっていた。
何で使えるようになったのかはわからないが、
とりあえず抑え切れない感情が力に変わった…ということできれいにまとめておこうと思う。
その日食べたご飯はまるでこの世のものと思えない程に美味しかった。
それからしばらく経ったある日の、ホームルームのこと。
いつものように校長先生が入ってきた。
…カイトと一緒に。
教室からざわざわと声が聞こえる。
「えー、皆さん、お静かに」
話し声が収まった後、校長先生は咳払いをしてこう告げた。
「皆さん、落ち着いてよく聞いてください。
…カイトくんが記憶喪失になりました」
「あ、これ私のせいかも」と思ったが、
まぁ別に記憶喪失でも私にとってデメリットはないわけだし…
…どうでもいいや。
なかったことにしよう。
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