二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ドラクエ8 記憶をなくした少女の旅路
日時: 2013/09/18 00:23
名前: のあ (ID: 49hs5bxt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=23542

トロデーン城に呪いをかけ、去っていった道化師・ドルマゲスを追うために旅を続けるエイトたちは、道に倒れていた不思議な少女、レーナと出会う。しかし彼女は記憶を失っていて…ー!?  旅を続けるうち、明らかになる事実。そして、レーナの正体とは?  これは、エイトたちと記憶を探す少女・レーナの物語。 ※ドラゴンクエスト8の二次小説です。他サイトでも表示していました。

☆ただいまフレアさんとのコラボ中!!☆
都合により、コラボはしばらく更新できなくなりました。楽しみにしていた方、すみません…。
 ※『光と闇の軌跡』へは↑上のトコからジャンプできます。

第1章 トラペッタ編 >>2 >>08 >>11-13 >>15-18 >>20 >>23-33 
 登場人物紹介 >>01 
 第1話 ここはどこ?私は誰? >>02 
 第2話 気になるアイツ >>08
 第3話 未知との遭遇 >>11 >>12 >>13
 第4話 滝壷にて >>15 >>16 >>17 >>18
 第5話 レーナ暴走、エイトは悩む >>20 >>23 >>24
 第6話 私と記憶と親子の絆 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30
 次回予告!! >>31
 番外編 丘の上のチーズおじさん >>32 >>33

第2章 リーザス編 >>37 >>41 >>85-89 >>95-100 >>104 >>116-121 >>124
 第1話 魔法にショタにお屋敷に…なんでもあるな!! >>37 >>41 >>85 >>86
 第2話 初めまして、魔法。それから… >>87 >>88 >>89
 第3話 お嬢様は家出がお好きなようで >>95 >>96 >>97 >>98
 第4話 塔での珍道中 >>99 >>100 >>104
 第5話 真実 >>116 >>117 >>118 >>119
 第6話 お嬢様の旅立ち >>120 >>121 >>124

第3章 ポルトリンク編
 第1話 閑話休題〜記憶の狭間にて〜 >>149

コラボ企画!
〜空も海も大地もないただのダンジョン攻略〜
前書き >>46
第1話 吸い込まれました☆ >>48
第2話 リーダーはどこに行ったのでしょう? >>51
第3話 私、こいつとは合わない!! >>52
第4話 囚われしエイト >>55
第5話 sideエイト >>62
第6話 助っ人…?? >>64
第7話 テリー、本領発揮 >>65
第8話 最強はこの人です >>67
第9話 真打、登場 >>69
第10話 決着 >>70
第11話 最強のタッグ >>75 >>76
第12話 それぞれの『軌跡』へと >>81
後書き >>82

〜コラボだよ!!全員集合!!〜
プロローグがわりのつぶやき >>129
第1話 これって私のせいですか? >>130
第2話 食い盛りって、恐ろしい。 >>131
第3話 誰か俺に食いものをくれ! >>135

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第5話 真実 part1 ( No.116 )
日時: 2013/01/27 23:09
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)

「う、わぁぁぁ…。綺麗……」

 リーザスの塔の最上階は、まさに『聖域』といった感じだった。
 弱々しく差し込む星明り、滝のように流れる澄んだ水…教会の重々しいぐらいの神聖さとは全く違う、何と言うか…優しくて暖かいような。
 中央には優しげな表情の女神像があって、その目は紅く輝いていた。

「あれが、クラン・スピネル…?」
「きっとそうだろうね。ってことは、やっぱりサーベルトさんは……」

 カツン。

「「「!!!」」」

 軽い靴音に一斉に振り返る。
 そこにいたのは赤い髪をツーテールにまとめた気の強そうな少女だった。手には花束を抱えていて、ひと目でサーベルとさんの供養に来たのだと分かった。
 ……もしかして、この人が——

「やっと…姿を現したわね、賊!!」

 綺麗な顔を一瞬にして歪め、両手を横に伸ばす。すると彼女の周囲に小さな火の玉がいくつもできた。

「!?メラを…」
「スペルも詠唱も無しで!?」

 この人…相当な魔法の使い手だ!!
 驚く私たちをよそに、火の玉——メラはどんどんその数を増やしていく。

「行きなさい!!」

 その言葉を皮切りに、次々とメラが私たちの方へと向かって来た。大きさが小さいからなんとか守れるけど…結構キツイ、かも。

「盗賊だけあってさすがにすばしっこいわね!!だけど今度は逃さないわよ」
「ま、待ってください!!僕たちはただの旅人で——」
「黙りなさいっ」

 エイトの説得にも耳を貸さず、少女—おそらくゼシカさん—は両手を上に上げ、何かつぶやきはじめた。
 …まさか、正式詠唱?
 私の考えを裏付けるように、火の玉は先ほどとは比べものにならないほど大きくなっていく。っておいぃぃぃ!!もうこれ、メラミレベルだよね!?

「あわわわやばいよエイトっ!?」
「くっ…レーナ!!ヒャドを正式詠唱で!!」
「は!?なんでっ」
「いいから黙ってやって!!」
「こ、氷の精霊・『フラウ』!!我の願いを聞き届けたまえ!!」

 エイトにいわれるがまま、ヒャドの正式詠唱を唱え始める。そうしている間にもゼシカさんのメラは信じられないスピードで大きくなっていき、やがて——スペルが途切れた。
 …ダメだ、モロに喰らうっ!!

「…これで終わりよ。覚悟しなさい、サーベルト兄さんのカタ」


  ——ま、待て……

「っ!?」

 当然響いた声に、ゼシカさんが怯む。声の出所は……あの像?

  ——私だ、ゼシカ…。私の声が分からないか…?

「嘘…まさかそんな……。
 …サーベルト……兄さん…なの……?」

  ——あぁ。
    呪文を止めろ、ゼシカ。
    私を殺したのは、この方たちではない。

「と、止めろって言ったって……無理よっ!!止まらない…きゃあっ!?」

 気が緩んだせいか、ゼシカさんの呪文が暴走した。
 それを見たエイトが叫ぶ。

「今だ、レーナ!!」

「…我が身に纏いし氷の眷属、氷結せよ!!ヒャド!!」

 カキィィィィン!!

 私の全力の魔法がゼシカさんのメラに当たり、炎が凍る小気味良い音がした。それに全身全霊をかけたからなのか、とても疲れた。ゼシカさんも同じようで、手を突き肩で息をしていた。
 しかしそんな弱気の顔を一瞬見せた後、きっと上を向き、像に向かってエイトを付き飛ばして走っていった。…スゴイ勢いだ。

「サーベルト兄さん!?本当にそうなの!?」

  ——あぁ、本当だとも。
    聞いてくれ、ゼシカ。そしてそこにいる旅の方よ……
    死の間際、女神像は私の魂の欠片を預かってくださった。
    この声も…その魂の力で放っている……
    だからもう、時間が…無い。
    像の眼を…クラン・スピネルを見つめてくれ…
    そこに真実が刻まれている……
    さぁ……急ぐんだ……!!

 ゼシカさんはこくりとうなずくと、美しい赤い目を見つめた。私たちもそれにならう。
 それを見届けてか、再び女神像—サーベルトさんは口を開いた。

  ——あの日…塔の扉が開いていたことを不振に思った私は……
    一人で、様子を見にきた。
    そして……


 突然、視界が反転しセピア色に染まった。

第5話 真実 part2 ( No.117 )
日時: 2013/02/03 23:32
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)

  ——暗い、暗い闇の中を、一人の若者…サーベルトさんが歩いている。違和感を感じているせいか、しきりに首をかしげているのはきっと……あまりに塔が静か過ぎるからなんだろう。
 やがて最上階へとたどり着いた彼は…人影を見る。
 派手な装飾が付いた衣装、夜目にもはっきりとわかるメイク、後へなでつけた長髪…それは道化師の格好をしていた。

——『だ、誰だ貴様ッ!!』

 そういって剣を抜くサーベルトさん。それを見て道化師はポツリとつぶやく。

——『悲しいなぁ……』

——『なんだとっ…!?質問に答えろ、貴様は誰だ。ここで何をしている!!』

——『…くっくっく……。
   我が名は《ドルマゲス》ここで人生の儚さについて考えていた』

——『ふざけるなっ!』

 サーベルトさんは道化師に飛びかかろうとする。しかし、何かに縫いつけられたように体が動かない。
 道化師はニタリと口を歪めて笑うと、ゆっくりと…ゆっくりとサーベルトさんの方へと歩み寄った。

——『おのれ…ドルマゲスと言ったな。
   その名前、決して忘れんぞ!!』

——『ほぅ?私の名前を覚えていてくれるというのか。
   なんと喜ばしいことだろう。
   私こそ忘れはしない。君の名前は永遠に私の魂に焼きつくことになる』

——『き、さまぁぁぁぁぁ!!』

——『さぁ、もうこれ以上私を悲しませないでおくれ……』

 どこかふざけたように言うと、道化師は持っていた杖を振りかざし…

 サーベルトさんを、一気に貫いた。

——『…ぁ…』

 そのまま杖を引き抜くと、サーベルトさんは力無く倒れ、動かなくなった。道化師—ドルマゲスは彼が死にゆく様を見届け…やがて狂ったように笑いだした。

——『……クハッ。ヒャーハッハッハ!』

 その耳障りな笑い声は、ドルマゲスの姿が透け、消えてなくなっても搭の中に響きわたった……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 サーベルトさんの最期の記憶が終わると、視界が元通りになり、水が流れる音も耳に飛び込んできた。いつの間にか私たちはゼシカさんの隣にいた。きっと、サーベルトさん…もしくはリーザス像がここまで移動させてくれたんだろう。
 惚けていると、再びサーベルトさんの声が頭のなかに直接響き渡った。

  ——旅の方よ
    リーザス像の記憶……見届けてくれたか……
  
  ——私にも…なぜかはわからぬが……
    リーザス像はそなたらが来ることを待っていたようだ。
    
  ——願わくば…このリーザス像の記憶が…そなたの助けになれば…
    私も……報われる………


 話を聴いていると、どうやらリーザス像は私たちがドルマゲスを追っていることを知っていたらしい。…短い時間しか映像が見れなかったから良くは分からないけど、これだけはハッキリと言える。

 ドルマゲスを、このまま野放しにしちゃダメだ。

 あいつは『悲しいなぁ』と言いながらどこか人を殺す事を楽しんでいたように見えた。…多分、このまま放っておくと再び人殺しをする。その目的は、何故かは分からないけど……。
 おそらく、リーザス像も私たちに『ドルマゲスを倒してほしい』って意味でサーベルトさんの魂を預かり、私たちに彼の最期の映像を見せたんだろう。

「ありがとうございます。奴は、ドルマゲスは、絶対に私たちが倒してみせます。
 あなたの死は……無駄にはしません。」

 私がそういうと、女神像——もしかしたらサーベルトさんかもしれない——はにっこりと笑ったように見えた。


  ——ゼシカよ……これで我が魂も役目を終えた。
    お別れだ………。


 サーベルトさんがそういうと、ゼシカさんははっとした顔になり、勢い良く首を横に振った。
 そのままキッと女神像の瞳…クラン・スピネルを見つめる。その意思の強そうな瞳は少し潤んでいて、今にも泣きだしそうなのを必死でこらえているようでもあった。

「嫌ぁっ!!…どうすばいいの!?
 お願い…行かないでよ、兄さん……」

  ——ゼシカ……最後に、これだけは伝えたかった…。
    この先も母さんはお前に手を焼くことだろう…だが、それでいい…。

「…?どういう…こと……?」

  ——お前は自分の信じた道を進め……
    さよならだ……ゼシカ……。

 その言葉を最後にし、石像の全身がが淡く輝き始める。
 ゼシカさんが駆け寄って手を伸ばしたけれど、その手は光をつかむことなく空を切り……やがて何事も無かったように石像は輝きを失った。

「サーベルト……兄さぁん!!」

 そのまま、彼女は泣き崩れた……。

第5話 真実 part3 ( No.118 )
日時: 2013/02/09 22:57
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)


「うーむ、何と言うことじゃ。
 サーベルトという若者を殺したのが、ドルマゲスだったとはのぅ…」

 そんなことを呟いたのは、なんと下で待っているはずのトロデさんだった。

「おっさん、いつの間に!?」

 ヤンガスが全員の気持ち(多分)を代表して変なポーズと共に叫ぶ。…ヤンガス、やっぱりあんたはKYだよ……。
 トロデさんはそれをまるっきり無視して、続けた。

「なぜかはわからぬが、サーベルトとやらもわしらにドルマゲスを倒せと言っているようじゃ。
 ふむ……彼の想い、決して無駄にはできんな。これでまたひとつ、ドルマゲスを追う理由が増えたというわけか。」

 トロデさんはしたり顔で言ってるけど、それさっき私が言ったことと同じだよね!?何で改めて二回言っちゃってるんですか!?
 ……なーんてツッコミもできないくらい、ここの雰囲気は沈んでいる。…ううん。私の気持ちも、暗くなってるんだ。

「それじゃわしは馬車で待ってるぞ。じゃ」

 そういうとトロデさんは忍者走りで階段を降りていった。何だったんだろう、あの人……。

「って言うかトロデさん、魔物もいるのにどうやってこの塔を登ってきたん……」

 言いかけて、私は口をつぐんだ。
 だって、エイトのいつも優しげな光が宿っている真っ黒な瞳には…激しい憎しみと、考えられないくらいの哀しさが混ざり合っていたから。…ゼシカさんと同じ様に、何かを必死で抑えているような…そんな表情をしていたから。

——あぁ。やっぱりあなたも、私に本当のことを打ち明けてくれないんだね……——

 その表情を見てると、突然感情が湧き出してきた。なんだかとても…とても切ない、そんな感じが。

「ドルマゲス……絶対に許さない……!」

 ポツリと、エイトがつぶやいた。
 けれどすぐに顔を上げ、階段の方へと向かって歩き出した。

「…レーナ、ヤンガス。行くよ。」
「え、ちょ、ちょっと待って!!」

 私たちも慌ててエイトの後を追う。

「あ…ねぇ……」

 後ろから声をかけられたので振り向くと、真っ赤な目をしたゼシカさんが私たちの方をしっかりと向いていた。

「なんですか?」
「名前も分からないけど…誤解しちゃってゴメン。今度ゆっくり謝るから…。だから、もうしばらくひとりでここにいさせて。ごめん、少ししたら村に戻るから……。」
「……分かりました。村でお待ちしています」

 短く淡々というと、エイトはくるりと踵を返して階段を降りていった。私たちもぺこりと頭を下げると、急いでエイトの後を追いかけた……。



 無論、帰り道で出会ったメタルスライムたちが皆エイトに斬り捨てられたことは
言うまでもない。

第5話 真実 part4 ( No.119 )
日時: 2013/03/10 23:44
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)


エイトside

「ピ、ピギャアア!!」

 目についたをメタルスライムを、片っ端から、片手に構えた剣で一突きにしていく。まっぷたつに裂かれたメタルスライムは断末魔の叫び声を上げると青い光となって消えた。
 僕はそれを見届けながら、新たな獲物を探して、斬る。

「ピイィィッ!?」

 高く耳障りな声と共に、レベルが上がった音楽が聞こえてきた。恐らく今は15ぐらいにはなっているだろう。

「…ごめんね。」

 そうつぶやきながら、新しく見つけたメタルスライムを切り裂いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 いつからだろう。
 いつから僕は強さを求めることに執着したんだろう。
 小さいときにパンを盗んで、店の店主に殴られたとき?
 8歳のときにミーティアと出会って…守るべきものに気がついたとき?
 ……城のみんなが茨に変えられて、生きたまま半永久的に眠ってしまったとき?

 いや、違う。

 もっと昔から…物心ついたときから、僕は何かを『守る』ために戦っていた。最初は自分自身のために、それからミーティアのために…そして今は、城のみんなと大切な仲間のために。
 だから僕は強くならなくちゃいけない。今度こそ何も奪わせない。

 そのためだったら、僕は自分を捨ててやる。
 弱い自分を捨てて…みんなを守れる、強い自分になってやる。 

「強く…ならなくちゃ」

 何回も、何回もつぶやいたそれを戒めのように繰り返す。だってそれだけが今の僕の存在意義なのだから。


 塔から出るまで、ずっとそんなことを考えながら魔物を切り刻み続けた。

第6話 お嬢様の旅立ち part1 ( No.120 )
日時: 2013/03/24 21:11
名前: のあ (ID: DYDcOtQz)

 私たちがへとへとになってリーザス村に帰ってくると、ポルクが一目散に走ってきて、開口一番に言った。

「ゼシカ姉ちゃんは!?」
「…大丈夫。ちょっと考え事があったみたいだから、まだ塔の中にいるけど。すぐ帰って来るって言ってたよ」

 私がそういうと、ポルクはにかっと笑った。

「そっか。まだちょっと心配だけど、ゼシカ姉ちゃんがそう言ったんならきっと大丈夫だな。
 そうだ、さっき宿屋の女将に言って一晩泊めてもらえるようにしたんだ。マルクと二人で小遣いはたいたんだからな、感謝しろよ!!」
「!!いいの!?」
「あぁ、ちょっとしたお礼だ」

 親指を立てて自慢げに笑うポルク。…くそう。可愛いなポルマルコンビ。
 お言葉に甘えさせてもらって、今日一晩泊まっていくことになった。





 ……夜中に何か打つような音が聞こえたけど、あれは何だったんだろう?






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「レーナー。朝だよ、起きt」
「させるかぁぁぁっ!!」

 翌日、エイトの気配がして起きてみると、案の定目の前にスライムクッションがあった。さすがに3回目になると慣れてきて、顔に押し付けられる前に跳ね起きる。…これはこれで体力使うんだけどね。
 チラリと横を見ると、微笑んでいるエイトと目があった。

「おはよう。スライムクッション、もう慣れたみたいだね?」
「…あなたのおかげでね。さすがに毎回喰らってたら心臓が持たないし。」
「それもそうか。…じゃあ、早く準備して。今日はゼシカさんのところに行って、そのままポルトリンクまで行くから。」
「ほーい」

 バタン、と戸を閉めていくエイトを見送りながら、私はほっとため息をついた。
 よかった、いつものエイトだ。昨日はあんなのを見ちゃったせいか、とても不機嫌で——少し、怖かったから。たとえ嘘の気持ちでも、エイトが笑ってくれてるんだったら…それでいい。

『本当にそれでいいの?』

 …そんな声が頭のなかに響いたけれど、無視しよう。だって私がどうこうできる問題じゃないもの。
 自分の気持ちにフタをして、急いで身支度を整えると、エイトたちがいる外まで飛び出して行った。




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