二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ〜プロローグ(3)〜
- 日時: 2013/03/09 23:19
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
こんにちは〜〜!
もうひとつの二次板で、他の作品進行中ですが、ちょっと魔が差し、もう一本書いてみようかなぁ、と。。。
少し、というかだいぶ古いゲームです。1999年発売 by スクエア(スクエアとエニクスが合併する前!超重要)
たぶんこのサイトで知っている人殆どいないでしょうねぇ。
タイトルはそのまま、サブタイトルはありません。
オリキャラは、、、、いません。
誰のストーリー書くのかといえば、『聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ』のゲーム中の物語そのままです。
ゲームの進行にできる限り忠実に、物語を書いていく予定です。
つまりゲームのノベライズという感じです。
しかし、やはり原作がゲームなので、真っ正直にそのまま文章に落とし込むと、恐るべき短編になってしまうので、原作中でマナの愛が不十分と思われる部分は、拙者が盛大に妄想し、物語を補っていこうと思います。
物語の時代考証に誤りがありましたら、気兼ねなく指摘してやってください。できる限り忠実に進めたいので。。。
ってことで、最初にアップするのは、主人公選択直後に流れるオープニングムービーの部分です(そこからかよ、とツッ込んでいただけると有り難し)
ここは、台詞もないし、抽象的な場面ばかりなので、さっそく大いに妄想力が噴出しています。
なので、LOMに特段の想いがある方は、世界観の相違について相当覚悟してお読みになるか、拙作を避けられたほうがよいかと思います。。。。
じゃっ!!
〜〜目次〜〜
プロローグ:(1)>>1-5
(2)>>9-10
(3)>>12-16
修正告知用SS その1:>>8
- 聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ ( No.8 )
- 日時: 2013/01/26 20:52
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
ファディールは今日もマナに満ち、大気はマナのクリスタルのように濁り一つなく澄みきっていた。ガトの神殿のテラスからは、ファディール随一と言われる絶景を眺めることができた。だが、この眺望は気慰みのために用意されたものではない。聖剣の守護を担い、信仰の無二の象徴であるこの神殿が、いつ押し寄せるともしれぬ異教徒の動きをいち早く察知するためのものであるのだ。そのため、頻繁にこのテラスには神殿の要人が訪れるのであった。
今日のテラスはは珍しく閑散としており、テラスの柵にもたれかかるようにして、白い僧衣に身をつつむ尼僧の姿が一人あるだけであった。
「なんだ、この忙しい時に俺に用ってのは誰だ」テラスの入り口の奥から、苛立ちを隠そうともせず、階段を叩くようにしてあがってくる男がいた。
「来たわね、エスカデ」
尼僧が、つと顔を少し右に向けると、純白のローブの奥で険しさに双眸を釣り上げた獣人の顔が見えた。
「だ、ダナエ。お前なのか?どうしたんだ、その格好は」
大股で尼僧に近付いていた男の足が止まっていた。尼僧に扮したダナエが舌を鳴らす。
「どうしたもこうしたもないわ。これを見て」
ダナエが視線を落したまま、右手で一枚の古びた紙を脇に持ち上げて見せた。テラスを通り抜ける冷涼な風に紙があおられ、バタバタと音を立てる。紙面はびっしりと細かな文字で埋められていた。エスカデが急いでダナエのそばにいき、紙を手にとり目を通す。
「ある男がマナの名を勝手に使い、でたらめな物語を書こうとしているのよ。その紙にはさきの物語の冒頭部分が書いてあるわ」
エスカデの目線が左から右に素早く流れる。途中で何度か男の目線が止まった。尼僧のダナエが体をエスカデの正面に向ける。
「その文章、なにかおかしくない?」
「ああ、確かに史実とは大きくかけ離れたことが書かれているな。こんなものが出回ったら大問題だ」エスカデが亢進する感情にまかせ、紙を乱暴に握りしめた。
「ちがう!そこじゃない!」
ダナエが犬歯をむき出しにして声を荒げる。男が思わず眉を眉間に寄せた。
「わたしのことよ!」刹那エスカデが唖然としたのち、すぐさま紙面を開いて読み直した。そして、さらに呆然とし、目を開いたまま立ち尽くした。冷たい風に顔をなでられ、はっとして彼女の顔を見つめ、改めてそれを覆う白いベールと帽子に目をやった。
「そういうことか」
「そうよ。何てことなの。<尼僧>と<僧兵>を間違えるなんて。あたしは四六時中寺院に籠ってお祈りをするために神に身をささげたんじゃないわ!なによ、こんなだぼだぼの衣。衣の裾が足に絡まって走れないじゃない!だいだい、ヌンチャクをどこにしまえばいいの?!」
見る見るうちに男の目が皿のようにまるくなると、言葉尻をまたずにエスカデがダナエに耳打ちした。
「おい、言葉を選べ。階下の僧侶たちに聞こえたらどうするんだ」
「だって、あたしは尼僧じゃなくて僧兵——」
高ぶる感情が怒りを通り越して、悔しさがこみ上げてくる。俯いた僧兵の大きな瞳に、ひとつ、ふたつと特大の煌めきが浮かび、瞳と地面のわずかな空間をゆっくりと落ちていった。
「落ち着け!ところでなんでお前がそんな恰好する必要があるんだ」
僧兵の顔を覆う純白のベールを見つめながら、エスカデが小さな声でゆっくりと、子供に言い聞かせるように話しかけた。
「訴えてるのよ、こうして空に向かって。あたしは尼僧じゃない、どうみてもこれはいつものわたしじゃないでしょうって」
ダナエの小さくうめく声が、テラスを通る風に吹き散らされ、消えていく。エスカデがしばしその様子をなんとも言えない様子で見つめていた。
ふいに、入口の奥から杖をつく音がする。そしてすぐに、入口に鮮やかなローブに身を包んだ、聖女マチルダが姿を現した。
「あら、なんてことなの。エスカデ、今日はここのかたとでデートなの?」
「ちがう!」
マチルダが満面の笑みで問いかけると、咄嗟にエスカデが発した否定の言葉を遮るように、ダナエの槍のようなどなり声が寺院の壁に響き渡る。
「あらなんてことなの。これは驚きだわ!ダナエ、あなた尼さんになったのね。うれしいわ、フフフ」
「ちがう!!」
すみません、前置きが非常に長くなりました(汗)
あろうことか、僧兵と尼僧を混同してまして、、、、、なんでアップ前に気付かなかったんだろう。。。。。。
おかげでダナエが体を張って間違いを指摘する破目になってしまいました。本当にすみません、読者の皆様、そしてダナエ(笑)
いまは、ダナエの表現を全て「僧兵」に修正済みです。ぜひご確認ください。
そして何か致命的な間違いがありましたら、気兼ねなく知らせください。気が向いたら、またくだらないSS付けて修正しようと思います。
じゃ、また〜〜〜!!
- 聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ ( No.9 )
- 日時: 2013/02/10 22:42
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
プロローグ(2)
東の地の果てから西の地の果てまで無限に続く、平坦で荒涼とした赤茶色の大地。風にあおられ、コバルトブルーの海に優雅なドレープを飾り付ける風浪。大海を焼き尽くす炎のごとく鮮烈な紅に染まる暁の空。
目の当たりにしたもの全てが息をのまずにはいられない、現実離れした鮮やかさを放つ絶景が広がっていた。だが、どんなに素晴らしい景色であっても、世界中どこへいってもその景色が広がり続けていれば、いとも簡単に飽きられ、忘れ去られてしまう。そして、それを見届けるための瞳を持つ者がいなければ、そんな感情すら、この世界に生まれ出ずることはない。
母なる星の表面をオブラートのように頼りなさげに漂う大地の上で、マナの女神の慈愛によって生きながらえていた矮小な生き物たちが身の程を忘れて行った業の代償は、あまりにも大きかった。
ひとつの人影によって、下界の魑魅魍魎どもへの苛烈を極る断罪がなされて以来、生命が息づいている音がただの一度も聞こえることがなかった。
世界に完全な静寂がもたらされ、早くも100年の歳月が過ぎていた。
神罰の中心地から遥か離れた場所にある砂漠地帯。小高く盛り上がった黄土色の丘の斜面は、さまざまに向きと勢いを変える乾いた風によって、自然の技とは思えないほどの精緻を極める複雑な砂のアートが描かれていた。広大なアートは何者にも感銘を与えることもなく、誰にもその文様をけがされることなく、風の精を失った風がただ自然の法則に従って、淡々と様相を変え続けていた。
そうして、気の遠くなるような歳月をかけ、砂の丘は大地にはびこる癌細胞のごとく範囲を広げ、ついには乾燥しきった砂の触手が海水まで伸びていた。
招かれざる黄土色の病巣が、瑠璃色の躯を犯し始めても海は平然として振る舞いを変えることはなかった。風に煽られた水が波打ち際までたどり着けば波浪を起こし、沖合では体をうねらせる、数十億年という彼の営みのなかで絶やすことなく繰り返されてきた行為を、粛々と行い続けるばかりであった。
枯れ果てた砂のなかでポツポツと見える小さな突起は、かつてこの砂の軍勢が蔓延る前、つまり黒き人影によって神罰がくだされる前まで存在していたはずの都市に林立していた構造物残骸が地上を覆い尽くす砂から辛うじてはみ出した先端部分であった。
今でこそ流しの吟遊詩人が語る古の戦記さながらの廃墟と化してしまっているが、町が存在した頃の賑わいは、界隈の町の中でも随一であった。一部遠浅ではあるものの、ほとんどの海岸が海水に埋もれたとたんに崖のように地面が落ちる地形をしていたこの地は、貿易港と海軍の拠点として大いに栄えていたのである。
幾千もの人間、獣人、精霊、魔物たちがゴタ混ぜになり、ひしめき合い、盛り場の喧騒が夜更けまで聞こえていることもしばしばだった。
この界隈で賑わいを見せていた都市のあまねく命の営みは、神罰によって小さなアーティファクトに閉じ篭められ、他の呪われた工芸品と運命を同じくした。その時に、都市の繁栄の一役をになっていた、海中に潜む幾多の生き物たちも件の町とは別のアーティファクトとして封印され、何処かへ飛ばされてしまった。
以来、他の地域と同様に枯れ果てた砂漠には一匹の虫けらすらおらず、あまたの生命の泉であるはずの海でさえも、彼の巨大な胎内に命を身篭ることはなかった。
日が昇り、乾いた大気が温まり始めると、荒廃した砂の丘を滑り降りる風強さと頻度を増し、砂地に散在する廃墟の先端にぶつかり、あちらこちらでもの悲しげな音を響かせていた。
砂に覆われたある廃墟の先端と思われる赤と緑のツートーンに色づいた突起を風がこすると、その突起が不自然に震えた。二度三度と風がぶつかるたびに、突起物の震えが大きさを増す。
「ひゃ、くすぐったい」
100年もの間、粛々と続いていた沈黙が、あどけない子供の声にあっけなく破られた。
「んぐ、まっくら」
また違うところから似たような声がする。
「え、くすぐったいの?おもしろそう」
再び違う場所から、どれも砂の大地のそう深くはないところから声が発せられていた。
「おもしろいのぼくもやる〜」
「ぼくも」
「ぼくも」
「じゃ、ぼくも」
4回目の「ぼくも」を皮切りに、大地のしたから子供の声があちらこちらから湧いてくる。その数は10や20どころではない。声の湧き出る範囲は一気に広さを増し、砂の丘が無数の子供が同時に発する大音響に震えていた。そして。砂を押し流すように、さきの赤と緑に染まる突起が地面のしたからひょこひょこと突き出てきたのである。
熱風が砂の面を吹き抜けるたびに、赤と緑の突起が小刻みに震え、笑い声が砂漠一面に響き渡る。期待はずれで不満そうな声もちらほらと聞こえてくる。
風が吹いてはざわめき、ざわめくうちに次の風が突起を撫でさらに騒ぎ、そんな単調なことを十日十晩繰り返した。それが突如途絶えたのは、砂の中にうずもれているある声の主の何気ない一言がきっかけだった。
「ぼくたちの尻尾の葉っぱを撫でてるのは、なに?」
「……」
「……」
「見てみたい」
「ぼくも」
「ぼくも」
「んじゃ、ぼくも」
4回目の声を皮切りに、再び波紋が広がるように、ぼくも、の大合唱が始まった。甲高い声が渦巻く中、うひゃぁ、と叫び声と共に突然砂の塊が音を立てて跳ね上がる。大人の人間の頭の高さほどまで舞い上がった砂の塊からいく筋もの金糸が垂れていく。砂を吹き散らしながらくだんのかたまりが地面に落ちると、かたまりに積もっていた残りの砂のほぼすべてがこぼれおちた。
「わ、まぶしい!」緑色の巨大な葉っぱで全身を覆った人の子供程の大きさの生き物、かつてマナの女神の化身に完膚なきまでに体を切り刻まれていた彼ら、草人の姿があった。
無数の虎ばさみがバラかまれたポイントに何者かが足を踏み入れてしまったかのように、次々と地中にうずもれていた草人たちが、ばさばさと音をたてて跳び上がった。みたび、砂漠を巨大な波紋が、今度は眩しいばかりの光沢と鮮やかさをもつ緑色の円が一気に広がっていった。
- 聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ ( No.10 )
- 日時: 2013/02/10 22:03
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
ついに最後の1人が暗闇から抜けだした。一番最初に飛び出した草人から再遠方の地にいた。草人は左手にまぶしいばかりの光沢を放つブローチを持っていた。大きな薔薇の花弁を意匠化したブローチで、針金状に加工された純金と純銀で花弁の筋の一本一本まで細に入り微に入り再現されている。ブローチの中央には、草人の指先ほどのクリスタルの玉石がはめ込まれていた。
「何それ」隣にいた草人が、ブローチを持ったまま初めて見る絶景に立ち尽していた草人に声を掛けた。
「ねえ、見せてよ」
「凄いよ、ほら!空の向こうがまっ平ら〜」
「ねえ、見せて」
「向こうもまっ平ら!」
「ね〜え〜」
「な〜んにもない!」
「ねぇ!」
痺れを切らした草人が左腕をつかんで激しくゆすった。ブローチを持っている草人が驚いて相手の腕を振り払う。「なに?ぼくになんか用なの?」
腕を払われた草人が口をへの字に曲げて、正対する草人の左手を指差す。ブローチの草人が左手に何かの感触があることにいたく驚愕した。砂にうもれている間中、ずっと握り締めていたために、握り締めている感覚がなくなっていたのか、それとも草人の身も心も「天然」さゆえのとぼけさ加減なのかは、当の本人に聞いてもわからない。
二人で顔を寄せてブローチをためつ眇めつ眺めていると、ブローチの中央のクリスタルに光沢以外のなにかが光った気がした。
「ねぇ、何か見えたよね」
「うん!」
二人が同時にブローチに顔を近づけようとして、したたかに頭突きを喰らい、喰らわせた。お互いにお誤りつつ、文句を言い合う。そしてもう一度ブローチを見ようとして、同じ過ちを犯した。お互いにブローチを掴んだまま無言の睨み合いが続いた。草人の背後で日中の大気に熱せられた金色の砂塵が、吹きすさぶ風にあおられ、鮮烈な群青色の青空が薄茶色に濁った。
ややもせず騒ぎを聞きつけた草人たちが集まってきた。砂漠の砂が滑らかなために、駆け出そうとする草人達の足を大いに滑らせた。既に目的を忘れてわざとコケるものも現れ、緑色に染まった砂漠の一角はマナの木を祭るカーニバルさながらの大騒ぎとなった。何もなくても、砂漠は草人たちにとって最高のアトラクションだった。
次第に緑色の領域がブローチの持っている草人の居るほうに偏り始めたころ、ようやく件の二人の草人の睨み合いに決着がついた。
一番最初にブローチを持っていた草人の周りに、草人の人だかりがきれいな円を描いた。一番外側の草人はいいように風よけにされ、全身に黄土色のラメが散りばめられていた。
ブローチを手に持った草人が、自分をぐるりと取り囲む草人たちを自分がぐるりとまわって見回す。周りのみんなの注目を自分が一身に集めている。
草人が恭しくブローチを両手に抱え、くれないの瞳に近づける。ちいさく唸りながら目を凝らしていると、クリスタルの中に街の模型のようなものが見えた。大理石が積み上げられたお城のようなものが見える。だが、よく見ると模型ではない。小さな街の中に伸びる並木がかすかになびいた。人間や獣人、彼らの仲間たちと似たものが、緑揺らめく並木道を歩いているのが見えるのだ!
草人がそれを見て、驚かなかった。にっこりと草人らしい微笑を浮かべていた。ここに居合わせるみんなはこれをよく知っている。
—ーよどみない心を持つものだけがイメージして見ることの出来る世界。アーティファクトは見るべきものにそれが秘める世界のイメージを送るんだ。それを見た瞬間、中の世界は時間をとりもどして、みんな動き始める。それを地上のにんげんたちや獣人たちは変な名前をつけて呼んでいた。それでぼくたちもそう呼ぶことにしたんだ。
「アーティファクト!み〜っけ!」
「え?!アーティファクトなの?」
「アーティファクト見たい!」
「アーティファクト見る!」
「んじゃ、ぼくも!」
周りの草人たちが押し寄せよ酔うとするのを、ブローチの草人が、待って!、と叫んで制止する。
「解放しよっ。中に閉じ込められているみんなを」
一瞬にしてお祭り騒ぎが水を打ったように静まり返った。アーティファクトを解放すると、閉じ込められていた世界が、もとあった場所によみがえるのだ。草人の手に収まっているアーティファクトを解放すると、この広い世界のどこかに、今しがた草人が見たお城のような建物と並木のある街が突如現れることになる。
ブローチを持った草人から緑色の観衆が距離を置いた。中心に佇む草人が静かに双眸をおろし、呼吸を整える。両手に抱え込んだブローチを目の高さに持ち上げた。周りの草人たちも思い思いの姿勢で目を閉じた。
広大な砂漠をすき放題に暴れまわっていた熱風が俄かに凪いだ。中空を漂っていた金色の粒々がゆっくりと地面に舞い降り、空気が澄み渡る。
「見える?」緑色の領域の中心に佇む草人が、瞳をふさいだまま静かに話しかける。
「見える!」
「見える!」
「じゃ、ぼくもみえる!」
「えっ?」
ブローチからろうそくの炎のように揺らめく白光が漏れ出し、輪郭がおぼろになっていく。その光が徐々に明るさを増し、草人たちの影が黄土色の大地にくっきりと映し出される。なおも光は明るさと大きさを増やし続け、遂に草人の集団を呑み込むほどになった。
突如、草人達の地中深くから耳朶を打つ轟音が響いてくる。思わず草人たちが目を開ける。草人のひとりが叫んだ。
「閉じ込められてる街って!」
ほかの草人たちが我先に言葉を継いだ。「ここにあったんだね〜!」
草人の大集団が大はしゃぎでその場から逃げ出した。誰もがアーティファクトの解放を目の当たりにするのは初めてで、おびえるのもは誰一人としていなかった。
「よみがえる〜!」
「やっほー!」
街の復活の際に発生した暴風によって巻き上げられた砂によって、巨大な黄土色の壁が現れた。壁はきれいな円を描き、外側に向かって高波のように大地の砂を巻き上げながら高さと径を増していった。砂漠の砂に足をとられた草人たちは、程なく砂の壁に飲み込まれ、果てしなく上空に吹き飛ばされていった。
「みんな〜」ブローチを持っていた草人があらん限りの声を振り絞って叫ぶ。
「世界中のアーティファクト、見つけようねー!!」
「おっけー!」
「わかったー!」
「りょーかいっ!」
「ひゃぁ〜!」
そういうと、草人たちの頭の上に、本人達よりも大きなたんぽぽの綿毛のようなものが咲いた。
「じゃあねー!みんなー!」
天空のここかしこで、甲高い声が響き渡った。
草人たちが一人残らず吹き飛ばされ、大地と天空が何事もなかったように静けさを取り戻すと、砂に覆われ一寸先も見えなかった、草人たちが集まっていたあの場所が、徐々に顕になってきた。大理石が高々と積み上げられた壮麗な城が姿をあらわした。そして時間を経るにつれ、街の巨大な全容が明らかになってきた。地の果てまで続いていた砂漠は消えうせ、広大な森林とおびただしい民家と商店、貴族の邸宅を抱える都市が現世にあい見えたのである。大海に面する港では、巨大な軍艦が何隻も舳先を連ね、いつか訪れる出撃のときを静かに待っていた。
世界を統べる大樹が斃れて100年、あらゆるものが死の淵に堕ち、永久に時間と光、心と闇をを失ってしまったはずのマナの女神の創り出した世界、ファディールが気の遠くなるような時を経て、ついに胎動を始めたのである。
〜〜プロローグ(2)完〜〜
- Re: 聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ ( No.11 )
- 日時: 2013/03/09 23:26
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
ご無沙汰しております。。。。(汗)
随分と間があいてしまいました。
2つのスレを並行してアップしてくの厳しいです。。。
本当に当初の懸念どおり、スレ主がスレを放棄したかと思われるくらいに、更新間隔空いてしまいましたねぇ。。。。
とりあえず、今回もわたくしめの妄想炸裂です。
ますます時代考証がめちゃくちゃになってきました。。。。
スミマセンっ(汗)
じゃ、プロローグ完結編ですっ!
- 聖剣伝説 レジェンド・オブ・マナ〜プロローグ(3)〜 ( No.12 )
- 日時: 2013/03/09 23:00
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
「ん〜、なんとなくこれな気がするんだけどな〜」
二人の草人が強い日差しのもと、地べたに大きな茣蓙を敷いた露店が立ち並ぶ市場の目抜き通りで、一脚の古びた椅子とにらみ合いを続けていた。脚と脚の間を覗いてみたり、持ち上げて座面の裏を見てみたり、矯めつ眇めつ一分の隙もなく睨め回している。店に来た時には葉の先端まで真っ直ぐに伸びていた体を覆う葉っぱが、暑さで干からび始め、すっかり萎えてしまっている。
露店の主人である口の端にチョビ髭と豊満な顎鬚をたくわえた花人が、腕組みをしてつま先を小さく鳴らし始めた。表向きは店先の品はなんでも触ってかまわんとばかりに愛想良く振舞っていたが、内心は、全身を彩る大きな花びらが干からびそうなくらい、戦々恐々としていた。
——草人が買い物なんて聞いたことがない。だいたいあの子たちは銭を持っているんだろうか。それにしてもどうして、よりによってあの椅子に目をつけたんだ。見た目からは想像もつかないほどの値の張る品なのに。
人のよさそうなおじさんの仮面の裏で、二人の草人の一挙手一投足を一瞬たりとも見逃すまいと、瞬きは少なく、眼球はしきりに動く。店先で商品を手にしたまま、長時間じゃれつづける二人の種族は、彼にとって、おそらくこの町にすむ花人や人間、獣人、悪魔の輩たちにとっても、人畜無害な存在であった。……昨日までは。
町のいたるところで所在\なさげにうろつき、突然立ち止ったかと思うと、わけのわからないことを口走る。そして突然道行く人に話しかけ、無視されてもにやにや笑っているだけで、何かするわけでもない。
だしぬけに蝶々を追いかけ始めたりするのは、やや迷惑ではあるが、だからこそ今日も、子供たちの気まぐれだろうと思って、品物を触らせていたのである。
店の前を通り過ぎる人間やら獣人の類も、滅多に見られない光景にしばし好奇の目線を向けて去っていく。これで人が寄ってくれば、草人たちになにか適当な褒美でもやってもいいとも一時は思ったが、一向に客がつく気配がない。それどころか、前代未聞の事態に店から距離を置く者もちらほらの見受けられる。
店先で無邪気にはしゃぐ二人の草人がいよいよ勢いづいてきて、椅子を打出の小槌のごとく振り回し始めた。いつも笑顔で線のように細い花人の眼が剣呑な光を宿し、頸より上が見る見るうちに薔薇色に染まっていった。
「……く、草人ちゃんたち、それ、とっても高い商品だから丁寧につかいなね」
公衆の面前であるため、どなり散らしたい衝動を必死になって抑えようと、無意識のうちに忙しなく揉み手をしている両手が、ぶるぶると震え始める。それでも自制心を失わず、商売人然として笑顔でお客を注意できたのは、まさに今は亡き伝説のマナの樹の女神より賜りし奇跡としか言い様がなかった。
子供の姿をした緑色の子鬼の一人が、左手で椅子を振り上げたまま顔を向け、露店の主人に舞い降りた奇跡を木っ端微塵に砕く一言を放った。
「ぼくたち、アーティファクト探してるの〜」
あまりに見事に虚を突かれた花人が、息のするのも忘れ、しばし立ち尽くしていたが、我に返るなり子供に向かって喚いた。
「子供だと思って大目に見てれば…。滅多なことをいうもんじゃないよ。アーティファクトって、災いを呼ぶ呪われたアレだろ?そんなものここに置いてあるわけないだろ。もうこれ以上商売の邪魔しないでくれよ!」
花人の口の両端で垂れていたチョビ髭が怒気にあおられ海老反りになると、自身も両手を腰にあて、しゃちほこばって草人たちを見据えた。
「だいたい、アーティファクトって豪華絢爛な装飾品だって聞いたことあるぞ。よりによってなんでその椅子が——」
急に言葉を切ると、草人が疲れて下ろした右手に携えているくすんだ薄茶色の椅子を一瞥した。そして、道行く人々に聞こえるように、声を張り上げた。
「ま、アーティファクトってことはないですがね、その椅子は世界を巡る目利きの行商から仕入れた品でしてね、椅子自体は特別な素材や仕掛けがあるわけでもない。その椅子を使っていた人物があまりにも偉大なじんぶつなんですよ。何を隠そう、その椅子は遥か昔、その名を知らぬものはいない、あの人形師アニュエラがアトリエで使っていた椅子なのですよ!」
店の前を通りかかった何名かが、人形師の名前を聞いて花人のほうを向き薄暗い店内を眺めていたが、店先の草人が無造作にぶら下げている椅子を見ると、花人の口上のあまりの眉唾さ加減に苦笑を漏らして去っていった。再び草人がダメ押しの一言を放つ。
「アニュエラってだれ〜?僕聞いたことない」
花人の全身の葉っぱが逆立った。
「子供は黙ってなさい。君が椅子を持っているからみんな話を信じてくれないじゃないか」
花人が椅子をぶら下げた草人に詰め寄り、右手から椅子をとりあげようとすると、草人が腕を引いて抵抗した。そこを間髪いれず突き出された花人のもう一方の手が走り出しかけた草人の左肩を捕らえた。
今度は草人が体を捩じらせ花人の手を逃れようとする振りをして、背後に回っていた猛一人の草人に椅子を渡した。
「こら!返しなさい。それは店の品だぞ」
「やだ!これはアーティファクトなのー!」
草人は確かにこの古びた椅子から強い思念を感じ取っていた。しかし、どこを覗いてもそれが映像化されないのだ。今は考えている暇はない。余程の高値で、口上にあった「目利きの行商人」から買い取ったのか、魔王のごとき剣幕で追いかけてくる。
椅子を抱えた草人が目抜き通りを買い物客の隙間を縫って疾駆した。そのあとを花人が死に物狂いで追いかける。それを止めようともうひとりの草人が追いかける。
花人が盗人を捕まえるよう声を張り上げるが、3人の短足の種族が切迫した雰囲気の割にそれほど速く駆けられていない様子のあまりの可笑しさに、周囲の人々が驚いたふりをして草人に道を譲り、追いかけっこの顛末を見届けようとしていた。そしてつい手を差し伸べたくなるような草人の愛らしい佇まいも、人々の無言の協力を得るために一役買っていた。
「あっ」
草人の逃亡劇が目抜き通りの終端に達しようとしたとき、椅子を抱えていた腕がしびれてきて、前に腕を降り出したとたん、手が握力を失い、椅子の足が地面につっかえてしまった。手前でつっかえた椅子の背もたれを前方に向け、馬にまたがるような姿勢で椅子に飛び乗った草人が、目の前の背もたれにしがみついたまま、椅子ごと前転を3回、4回、5回と繰り返した。悲鳴とも歓声とも聞こえる叫び声を上げる。
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