二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- バハムートラグーン 〜空を駆ける、竜と人〜
- 日時: 2016/08/05 23:17
- 名前: 777m (ID: 3w9Tjbf7)
どもども。今回から書かせていただきます、777mと申します。
この小説は、バハムートラグーンというSFCのゲームの二次創作となります。…といっても、バハムートラグーンって何よ?という方のほうが多いと思うので、軽く説明をさせていただきます。
バハムートラグーンとは、さっきも書いた通り、SFCのゲームです。ジャンルはシミュレーションRPGで、スクウェア(現・スクウェアエニックス)が1996年に発売しました。このゲームの特徴として、ドラゴンの育成システムというものがあります。このゲームのドラゴンは、武器だろうが防具だろうが何でも食べ、そして、与えたエサによって姿やステータスが変わります。実際やってみると面白いですよ。あとは、何と言ってもキャラ1人1人の個性が濃く、見てて笑えたり泣けたりします。そのキャラの中でも、ヒロインは一部で有名になっていますが…(笑)。
と、こんな感じです。この小説について、ご感想やご要望などはご自由にどうぞ(^ ^)
なお、この小説については以下の要素が含まれます。
・4(オリジナル要素):6(原作要素)
・筆者の性格上、1話1話が結構長くなってしまいます。
・原作についての解説をたまにやっていきたいと思います(これからバハムートラグーンをやろうと思う人にとってはネタバレの可能性がありますが悪しからず)。
・荒らしや誹謗中傷は絶対にお控えくださいお願いします。
以上についてご理解いただける方は、この小説をお楽しみくださいませ!
- Re: バハムートラグーン 〜空を駆ける、竜と人〜 ( No.11 )
- 日時: 2016/08/08 11:30
- 名前: 777m (ID: AQILp0xC)
第四話 (中編)
ドゴオオオオン!!!!またもや爆発音が響いた。
タイチョー「マテライト殿ー!しっかりするでアリマス!!」
ビュウとルキアは、サウザーのところへ向かった。すると、先に行ったみんなが、血まみれで倒れていた。
ビュウ「ラッシュ!!トゥルース!!ビッケバッケ!!みんな、しっかりしろ!!!!」
しかし、いくら呼んでも反応が無かった。
ビュウ「…クソッ!ルキア!みんなをたのむ!!」
ルキア「ええ。ビュウこそ、サウザーのところへ!」
ビュウは再び走った。すると、当然…というにはおかしいだろうが、ボロボロになった鎧のマテライトが倒れていた。
ビュウ「マテライト!!」
マテライト「う…ビュウか…グヌヌ、ヨヨ様が人質では手が出せん…」
と、その言葉に反応したのだろうか。サウザーがこっちを向いた。
サウザー「……何といった?この私が王女を人質に?…勘違いするな。ヨヨ王女は我々にとっても大切なお方だ。それを、人質などと呼ぶとは…」
サウザーは、重々しい口調で、かつ静かに反論した。
サウザー「…ふむ。だが、その無礼な言葉は許そう。私には、諸君の相手をしている時間はないのだからな」
ビュウ「…何?」
サウザー「…ん?ほう、お前は…あの時カーナにいた戦竜隊隊長か。名は…ビュウと言ったかな?…黙って見ておくがいい。…ヨヨ王女をこちらへ」
帝国兵「はっ」
パルパレオス「ヨヨ王女、こちらです」
ヨヨ「………」
カーナ聖王国王女ヨヨ。亡国の王女は、カーナ滅亡から数年の月日が流れた今、あの頃よりも美しくなっていた。
マテライト「ヨヨさ___」
ビュウ「(…黙っておけマテライト。今声を上げたら、お前の首が飛んでしまう。ヨヨ様を悲しませないためにも、そうしておけ)」
マテライト「(…ぬう。仕方あるまい…)」
ヨヨ「(ビュウ!マテライト!)…!?」
ヨヨは嬉しさのあまりビュウ達のほうへ行こうとするが…サウザーに遮られる。
サウザー「(…駄目ですぞ王女。そちらへ行かれては)さあ、ヨヨ王女。カーナ王家に伝わるという伝説の力を見せていただきましょうか。神竜を思いのままに操るという奇跡の力を!」
ヨヨ「私は伝説なんて知りません…。それは何度もおっしゃったではありませんか…」
ヨヨが(ビュウ達の前では)初めて口を開く。それは、サウザーの強要に対する拒否の声であった。
パルパレオス「…ヨヨ王女。恐れては、なりません。約束したではありませんか。さあ、我々に神竜の心をお教えください」
ヨヨ「パルパレオス将軍…」
その時、マテライトが声を上げる。
マテライト「ヨヨ様!!いけませんぞ!カーナ王家の気高い心を忘れてはなりませんぞ!!…グウッ!」
ビュウ「(お、おいマテライト!黙ってろといっただろ!!)」
マテライト「(う、うるさい!どうしても…我慢ならなかったんじゃ…!)」
ヨヨ「マテライト………サウザー皇帝…駄目です。私は…できません」
そう言うヨヨに、サウザーは一瞬黙り…
サウザー「……成る程…出来ない、とおっしゃるか………ならば仕方ないですな。私はあなたを我が国にお迎えしてからというもの、随分我慢を重ねてきた。…しかし、それも今日まで。私は、王女のお力を借りることなく伝説の男になることができる!!」
そしてサウザーはこう言った。
サウザー「もう結構です。どうぞ、お仲間のところへ」
王女を、返す。反乱軍はこれに驚いた。
ビュウ「(何故だ?何故サウザーはヨヨ様をやすやすと返すのだ?……まさか!)」
ビュウがそう思った、次の瞬間!
サウザー「新たな時代の扉を、ともに見ることが出来ないとは…何とも残念ですな!!」
サウザーが剣を抜いた!そしてヨヨに斬りかかるが…
パルパレオス「!!待ってくれ!!」
それを見ていたパルパレオスはヨヨを突き飛ばした。
サウザー「…パルパレオス。一体、どういうつもりだ……まあ、それはいい。問題は…」
サウザーが視線を向けた方向には…
マテライト「き…貴様…ッ!ヨヨ様に…なんという卑怯な事を…!!」
センダック「ひ、姫……サウザー…許さない!」
タイチョー「用済みと分かったら処分…なんという汚い男でアリマスか!!」
サウザー「フン、負け犬どもが吠え面をかきおって…消えよ!!ラグナレック!!」
サウザーの剣から繰り出される青白い閃光!それは波のようにうねり、かつ高速でマテライト達を襲う!!
「「「ウワアアアーーーッ!!!!」」」
マテライト達はなす術もなく吹き飛んでしまった。
サウザー「さて、これで全滅したか…と、いうわけでもないようだな…」
サウザーが上を見やると…
ビュウ「サウザアァァァァ!!!」
サウザー「来たか、戦竜隊隊長ビュウよ!」
ビュウ「フレイムヒットォォーー!!」
ビュウの怒りの一撃、渾身の一撃!!炎の刃がサウザーを目がけて斬りかかる!……だが…
サウザー「フッ、残念だったな!」
ビュウ「な、何!?」
…サウザーの剣に防がれてしまった。
ビュウ「チッ …ならば、これでどうだ!アイスヒット!!サンダーヒット!!」
炎が駄目ならば、と言わんばかりに、氷と雷の刃を同時に繰り出すビュウ!!
サウザー「成る程、2回攻撃ときたか…だがッ!」
しかし、二つともサウザーには防がれた。
ビュウ「そ、そんな馬鹿な…」
サウザー「…どうした、戦竜隊隊長よ?驚いているようだな…。そうだ!お前の攻撃は最初の一撃で見切らせてもらった!ククク、それでも攻撃を仕掛けてくるか、ビュウよ」
ビュウ「…ああ、あくまでそうするつもりさ!フレイムヒット!!」
サウザー「馬鹿め、無駄だと言ったはずだ!」
サウザーは攻撃を防ぐ…しかし!
サウザー「…ぬっ!?」
ビュウ「かかったなサウザー!喰らえ、アイスヒット!!」
先程のビュウの炎刃はおとりだったのだ。敵の油断を誘い、そして本当の一撃をたたき出すのが、ビュウの本当の狙いだったのだ!放たれた氷の刃は、皇帝の懐を狙う!…だが!
サウザー「なかなかの策だな…だが、甘い!!」
それすらも、サウザーの剣は侵入を許さなかった。
ビュウ「…グッ!!これも…駄目だ…というのか…!」
サウザー「言ったはずだ!お前の攻撃など見切った、とな!さあビュウよ、悪あがきはこれまでだ…カイゼルブレイド!!」
サウザーが全ての力を乗せて放った一撃は、ビュウの剣を砕き、肉を裂く。
ビュウ「が……っ!」
ビュウは地面に叩きつけられ、起きる力を失ってしまった。
サウザー「…さて」
サウザーは剣をビュウに向ける。
サウザー「ビュウよ、今、お前のかつての君主のもとへ送ってやろうぞ!!」
サウザーが剣を振る__その刹那!
ヨヨ「やめて!!」
ヨヨが叫ぶ。
ヨヨ「サウザー皇帝!あなたがそこまで望むというのなら、やるわ!神竜と話してみる!!」
サウザー「…何?本当ですか、王女」
サウザーは剣を止め、柄に収めた。
ヨヨ「ええ。やってみます。………………………」
ヨヨが精神を集中させると、彼女の周りにオーラが出る…しかし!
ヨヨ「……!?い、嫌…やめて…私に来ないで…私を…連れていかないで……い、嫌あああアァァァァーーーーーッ!!!!」
彼女に何が起きたのか。突如、巨大な翼を広げたドラゴンがヨヨの背後に現れ、
白い衝撃波がサウザーを襲った。
サウザー「こ、これは……!?うああああーーっ!!!!!」
その衝撃波に、サウザーは耐え切れず吹き飛んだ。
パルパレオス「サ、サウザー!!」
サウザー「ぐうっ……これが、神竜の力……見たか…パルパレオス…まさしく神竜の力…そして、神竜と語る者…伝説の…力…この力が…私のものに…この娘に頼らずとも……」
サウザーは意識を失い倒れてしまった。
パルパレオス「サウザー!!大丈夫か!?…来い!!」
パルパレオスがそう命令すると、飛竜ワイバーンのような風貌をした、アイスドラゴンと同じ青い鱗をしたドラゴンが降りてきた。
パルパレオス「お前達!陛下を俺のドラゴンに乗せるのだ!」
帝国兵「はっ!!」
一方、反乱軍のほうでは…
ルキア「ビュウ!!しっかりして!!」
ビュウ「……う…」
ルキア「ビュウ!!ああ、よかった…」
ビュウ「…!ヨヨ様!!」
パルパレオス「誰だ!?…ビュウか…ヨヨ王女からいくどとなくお前のことを聞かされた…」
ビュウ「……それは…どうも…」
パルパレオス「カーナ戦竜隊隊長ビュウ。…王女を…お返しする」
そう言い残したパルパレオスは、自分のドラゴンに数人の部下と倒れたサウザーを乗せ、空へと飛び立った。
ビュウ「…ヨヨ様…今、あなたを…」
ビュウがヨヨに触れようとしたその時、またもや謎の白い光が!しかし…
ルキア「!?今のは何?みんなの傷が治ったわ!!」
何故かその場にいたものはみな、回復していたのである。
しかし、その後にヨヨが倒れてしまう。
マテライト「!!ヨヨ様ー!!しっかりしてくだされ!マテライトめがお迎えに参りましたぞ!!」
センダック「姫!センダックも一緒だよ!姫!!」
しかし、ヨヨは一向に反応しない。
マテライト「よ、ヨヨ…様…折角お会いできたのに…なんという惨い仕打ちじゃ…ッ…」
センダック「姫………………!?マテライト!!姫はちゃんと息をしている!!姫は無事だよ!!」
マテライト「な、何と!?おお…ヨヨ様…ヨヨ様はご無事!!こうしてはいられん!!ささっ、ビュウよ。足のほうをお持ちするのじゃ!!」
ビュウ「分かった!ヨヨ様……よかった…!おお、来たかアイス!」
アイスドラゴン「ピヤーッ(ご主人、あの怪物を倒して来ました)」
ビュウ「お疲れ様。さあ、ヨヨ様を乗せよう!」
- Re: バハムートラグーン 〜空を駆ける、竜と人〜 ( No.12 )
- 日時: 2016/08/07 15:24
- 名前: 777m (ID: hxRY1n6u)
第四話 (後編)
〜ヨヨの夢〜
パルパレオス「ヨヨ王女。お呼びでしょうか?」
ヨヨ「ええ…どうぞ」
パルパレオス「失礼します。ヨヨ王女…眠れないのですか?」
ヨヨ「…神竜のところへ、行くのね?」
パルパレオス「…王女。今はその話はやめておきましょう」
ヨヨ「じゃあ、何かお話を聞かせて。パルパレオス将軍の得意なお話」
パルパレオス「私の得意な話…ですか」
ヨヨ「いつかしてくれたお話は?作戦とか戦術のお話」
パルパレオス「…申し訳ありません。女性を楽しませるような話題を持ち合わせていないものですから」
ヨヨ「いいえ、違うの。…私、嬉しかったの…そういうことは、誰も教えてくれなかったから……!?将軍!パルパレオス…将軍!!」
パルパレオスが突然消えた。代わりに、そこに現れたのは…
?「娘よ……夢は終わりだ…」
緑色のドラゴン。キャンベルの森で見かけた、あのドラゴンだ。
ヨヨ「誰なの…?」
ヨヨは怪訝そうに、ドラゴンに問いかけた。
?「私は……神竜ヴァリトラ。お前が…キャンベルというところで出会った、あのドラゴンだ」
神竜。バハムートをはじめとした、6体の竜。竜の上の竜たる者が、何故に私の夢にいるのか。ヨヨの心の中では恐怖と疑問でいっぱいだった。
ヨヨ「ヴァリトラ…神竜…」
ヴァリトラ「娘よ……お前が?お前が伝説の……神竜の心を知る者…」
ヨヨ「私…何も知らない。伝説なんて知りません」
ヴァリトラは、何?と思い…
ヴァリトラ「伝説を知らぬ娘…ならば、お前は一体何者…」
こう問うと、
ヨヨ「私は…カーナの…いいえ、私は何者でもありません」
と、ヨヨは答えた。
ヴァリトラ「何者でもない娘…心弱き娘…神竜と語る娘…」
ヴァリトラは思った。聞いたことがある、人間がカーナと呼ぶところに、我ら神竜を意のままに操れる者の一族がいると。そして、この娘は『カーナ』という言葉を口にした。ならば、この娘の発言は嘘だ。きっと、己から目を背けているに違いない。ヴァリトラは続け様にこう言った。
ヴァリトラ「娘よ…我らの心を集めるがよい。…相応しき者なら我らは力を与えよう…そして、お前はドラグナーとなる…」
ヨヨ「ドラグナー?私が、ドラグナーになる…?」
カーナ王家が持つ、神竜を意のままに操れるドラグナーの力。そのドラグナーに、私はなれるの?更に不安が募る。
ヴァリトラ「それはお前次第…ドラグナーとなり、世界を手に入れる…」
それは、勧誘とも読み取れるような発言だった。確かに、ドラグナーになればそうすることも不可能では無い。しかし…
ヨヨ「…世界なんていらない……私は……お願い……夢の続きを……」
…………………………
〜ファーレンハイト〜
ビュウ達は、倒れたヨヨを運ぶために一旦ファーレンハイトへ撤退することにした。ヨヨは、艦内における最初の扉をまっすぐ進んだところにある、自分専用の部屋に運ばれた。皆は、安堵感に浸っていたのと同時に、カーナ王が亡くなった今、新たなカーナの君主であるということを強く認識させられた。
それからしばらくして、船のブリッジにて…
ラッシュ「なあなあビュウ!ヨヨ様、綺麗になったよな!」
ビュウ「そうだな。ヨヨ様は随分と美しくなられた。ところでトゥルース。あれからヨヨ様のご容態はどうなった?」
トゥルース「はい…ヨヨ様は、うなされているらしいのです…」
ビュウ「うなされている?一体何が原因なんだ」
トゥルース「それが、誰にもわからなくて…」
と、その時。ゾラが大慌てで駆けつけてきた。
ゾラ「みんな!姫様のお目覚めだよ!!」
ビュウ「何!?それは本当か!」
マテライト「おお!ヨヨ様が…ヨヨ様が!!ヨヨ様ー!このマテライトめが今すぐ参りますぞー!」
タイチョー「行くでアリマスよビュウ!」
ビュウ「おう!」
〜ヨヨの部屋〜
ヨヨ「……う、う〜ん…ここは…!!ビュウ?ビュウなのね!?」
ビュウ「ヨヨ様…!もちろんでこざいます。戦竜隊隊長のビュウにございます!」
ヨヨ「あっ!センダック!!マテライト!!」
センダック「姫…おかえりなさい」
マテライト「ヨヨ様!このマテライトが分かるのでございますか!?そうです!その通りでございます!!」
ヨヨ「あれ、でもみんながいるってことは…それじゃあ、ここは…」
センダック「ここはファーレンハイト。姫は、帰って来たのです」
ラッシュ「その通り!おかえり、ヨヨ様!」
トゥルース「ご無事でなによりです!」
ビッケバッケ「ヨヨ様、僕、太っちゃったけど分かるかな?」
ヨヨ「あっ、あなた達は確かビュウの…フフッ」
タイチョー「ヨヨ王女!自分は元マハール騎士団のタイチョーでアリマス!」
ヨヨ「え!?マハールから?…はるばる遠くから駆けつけに来てくれてありがとうございます、タイチョー殿」
タイチョー「いえいえそんな!滅相もないでアリマス!」
ヨヨ「…でも、今の状況が本当なら…夢では…ないのね…」
突然不安そうな顔をするヨヨ。
センダック「そう…姫、ここは現実の世界」
それに答えるセンダック。
マテライト「ところでヨヨ様!随分うなされていたと聞いていますぞ。悪い夢でも見ましたかな?」
ヨヨ「悪夢?………いいえ」
センダック「でも…それでは、一体どんな夢を?」
ヨヨ「……いいんです。ただの、夢ですから」
自らの問いに答えた姫には、何か隠している様子が見られる…センダックはそう思っていた。と、その時。
ゾラ「こらこら、あんた達!姫様はお疲れだよ。また、後にしたらどうだい?」
ゾラが注意を呼びかける。
ラッシュ「そうだな。これからは、いつでも俺達一緒だもんな!」
トゥルース「…そうですね。ゾラの言う通り、ヨヨ様の事を考えて、ここは退きましょう」
ビッケバッケ「それじゃあね、ヨヨ様」
ラッシュ達3人は部屋の外に出る。
センダック「ビュウ、行こう…」
マテライト「そうじゃ。ワシとしては今にでも語りたいところじゃが…ゾラの意見も正しいわい。さあ行こう、ビュウよ」
ビュウ「…そうだな。それではヨヨ様、これにて__」
ヨヨ「待って!!」
何か言いたいのだろうか、ヨヨは帰ろうとするビュウ達を引き止めた。
ヨヨ「やっぱり…みなさん、聞いてください」
マテライト「お?何ですかな?」
マテライトは興味津々だった。
ヨヨ「私が見た夢のお話……ただの夢ですけど….でもやっぱり、何か特別な意味があるような気がするのです…」
マテライト「構いませぬ!ヨヨ様のお話は、ワシの一番の楽しみなのですじゃ!」
ヨヨ「分かりました。……私が見た夢……それは、神竜の……神竜ヴァリトラの夢なのです」
神竜。その単語に、皆が釘付けになった。
センダック「なんと!神竜!?」
ヨヨの発言に一番驚いていたのはセンダックだった。
ヨヨ「ええ……夢の中で神竜ヴァリトラはこう言いました。『我ら神竜の力を集めよ。そうすれば、お前はドラグナーになれる』…と」
マテライト「な、何と、ドラグナーに!?ヨヨ様がドラグナー!!」
マテライトは非常に驚いていた。それにタイチョーは、
タイチョー「マテライト殿。ドラグナーとは何でアリマスか?」
と問いかけた。
マテライト「神竜と心を一つにし、その強大な力を自在に操る!亡きカーナ王と同じ、何とも凄い力じゃ!」
タイチョー「!確かに凄いでアリマス!」
タイチョーも驚いた。そしてマテライトは、
マテライト「…となれば、神竜はワシらの味方!これで、ヴァリトラがサウザーを倒してくれた理由が分かったわい!もはや、グランベロスなんぞ敵ではないわ!…よし!カーナ再興の日も近いぞ!さあ、皆に伝えるのじゃ!」
タイチョー「はいでアリマス!」
張り切って部屋から出てしまったマテライト達。ヨヨは…
ヨヨ「待って!今のは夢の中の話です!」
と、反論するが…
センダック「姫…それは恐らく、ただの夢ではありません。神竜ヴァリトラの心が、姫に語りかけたのです」
ヨヨ「えっ?」
センダック「…神竜と語りかけるときは、夢と現実の区別がつかない。亡きカーナ王は、かつて私にこうおっしゃいました」
と言った。するとヨヨは…
ヨヨ「…そ、それでは…ヴァリトラが言ったことは全て…これからの私に…」
ヨヨのその言葉には、不安と恐怖が混じっていた。
ヨヨ「…ならば、私は…ここでもドラグナーであることが、求められるというの…?」
ビュウ「…お言葉ですがヨヨ様、そうであると思われ___」
ビュウがそう言いかけた時、ヨヨは突如一変して…
ヨヨ「…だから私は夢から覚めたく無かった……ずっと夢の中に、いたかったのに…!あなた達が、そうやって私に重荷を、無理難題を押し付けるから!勝手に私を戦いの旗印なんかに据えようとするから!!お願い!!一人にして!!!」
途中から声を張り上げる。と、その時だった。
ベチンッ!!…王女の部屋だけに、そんな乾いた音が響いた。王女を叩いたのは___その場にいたゾラだった。
ゾラ「姫様!!さっきから聞いていれば…無理難題だの勝手に旗印に据えるからだの一人にしてだの!わたしゃ、そういう勝手な解釈が大嫌いでね!!」
ゾラの怒声に、一瞬にしてヨヨは黙った。
ゾラ「…いいかい姫様。皆がどんな苦労をして姫様を帝国から助け出したか知らないだろう?…そりゃあ、姫様だって大変だったろうさ。これからだって、きっと色々あるんだろうねぇ。でもね…夢が怖いとか神竜が怖いとか現実が怖いとか、一人で悩みを抱えてたってしょうがないよ。いいかい、姫様…しっかりして、そして強くなりなさい。もし、どうしてもダメな時や心の震えが止まらない時は、この船のみんなが助けてくれる。だから姫様、今は、前だけを見て歩きなさい」
ヨヨ「……………」
ゾラが言い終わると、ヨヨは無言で部屋を出た。
第四話・王女と神竜 完
- Re: バハムートラグーン 〜空を駆ける、竜と人〜 ( No.13 )
- 日時: 2016/08/07 16:41
- 名前: 777m (ID: hxRY1n6u)
第五話 キャンベル解放戦(前編)
ヨヨが夢での出来事について語った話は、ビュウ、センダック、マテライト、タイチョーに大きな衝撃を与えた。神竜がヨヨに力を貸した、ただそれだけだったが、インパクトとしては十分すぎるものだった。
〜ファーレンハイト・ブリッジ〜
ブリッジ内には多くのメンバーが集っていた。その中には、ヨヨの姿もあった。
ビュウ「ヨヨ様!」
ヨヨ「ビュウ!…さっきは、急に怒鳴ったりしてごめんね」
ビュウ「心配いりません。私は別にヨヨ様のことを嫌とは思ってませんから」
ビュウは淡く微笑みながらヨヨを励ました。
ヨヨ「…ありがとう。あ、ホーネットさん、お願い」
ホーネット「は、はいヨヨ様」
カーナの王女…こんなに美しい声だとは。ホーネットはヨヨに惚れ思っていた。
ヨヨ「キャンベル上空を旋回しながら、ゆっくり飛んでください。キャンベル・ラグーンの様子が知りたいの」
ホーネット「は、お任せください。ヨヨ様」
ホーネットはヨヨに言われるがままに、スローペースで旋回を始めた。
ヨヨ「ビュウ、少し話があるの。艦長室へ行きましょう。センダック、少し部屋を借りるね」
センダック「は、はい(姫…ビュウは戦竜隊の仕事で大忙しなのに、あまり振り回さないで…ああ、でも五月蝿いジジイだと思われたくないから黙ってましょ…)」
マテライト「ヨヨ様!ビ、ビュウを連れておいてワシは?ワシもお聞きしたいのですが…」
ヨヨ「ごめんね、マテライト。2人だけの秘密だから…それに、マテライトはリーダーだから、みんなとラグーンを偵察していたほうが事も順調に進むし…そうしてくれると、私もみんなも安心だからね!」
マテライト「ヨヨ様…(おお、ワシのことをそこまで気遣ってくださるとは…このマテライト、感激じゃ〜)ふふふ。お任せください!」
ビュウ「すまないなみんな。一旦ヨヨ様と話してくるよ。ラッシュ!後を頼んだぞ!」
ラッシュ「おう、任せとけ!」
〜艦長室〜
ビュウ「ヨヨ様、話とは?…もしかしてあなたの部屋での件で?」
ヨヨ「そうよ。あの時はビックリしちゃった。私、誰かに叩かれたの初めてだったから…。でも、ゾラさんの言う通りね。私、自分の事しか考えて無かった…皆が私のために戦ってくれた事と皆の思い、考えてもみなかった…」
ビュウ「ヨヨ様。あなたが気に病む必要は無いですよ。私もセンダックもゾラも、そのことはもう気にしておりませんから」
ヨヨ「ビュウ…あなたって優しいのね。ありがとう。これからも頑張るね、皆の期待に応えられるように」
ビュウ「でもヨヨ様。だからと言い、無理のし過ぎは禁物ですぞ」
ヨヨ「ええ、分かっているわ……ビュウ、私、怖いの。ドラグナーになれる事とかよく分かんないし、ヴァリトラは『神竜の心を集めてもドラグナーになれるかどうかはお前次第だ』とも言ってたわ。私がドラグナーに相応しいかどうか…相応しく無かったら私、どうなっちゃうのかな…」
ビュウ「何をおっしゃいます。ゾラが言ったように、前だけを目指すのです。その過程で、きっとドラグナーになる資格を手に入れることができるはずですから」
ヨヨ「…確かにそうね。悪い方面に考えたら、そこで終わりだもんね。分かったわビュウ」
2人の話のやりとりを、センダックは室内の入り口から静観していた。
センダック「(ビュウと姫が二人きり二人きり…でも、戦いと恋愛は両立しない…そうだ。わし、この船の艦長だから決まりを作っちゃおう…【船内恋愛禁止】と。…ああ、ダメダメ。皆に嫌われちゃう…。嫌われジジイはイヤ……あ、そうだ忘れてた。姫を呼ばないと…)」
ビュウとヨヨの話が終わると、センダックは2人のもとへ駆けつけた。
センダック「姫ー?キャンベル偵察のほうはどうしました?キャンベル・ラグーンには何があるのかな、って皆が困ってましたが…」
ヨヨ「…あ!何も言ってなかった!」
当面の目的を思い出してヨヨは焦っていた。
ビュウ「でもヨヨ様。どうして旋回を命じられたのですか?」
ヨヨ「私、伝説が知りたいの」
神竜の伝説。カーナ王家にのみ伝わるとされる伝説。とはいえ、サウザーとパルパレオスのみだが、現在では他所でも知られている。
ビュウ「神竜の伝説を?カーナ王家であるあなたなら知っているはずでは?」
ヨヨ「いえ、知らないの。父上やサウザーは教えてくれなかったら…」
センダック「何故姫に限って…姫。重ねて聞きますが、偵察に何故キャンベルを選んだのですか?」
ヨヨ「…叔母様なら知ってるかも、と思って」
センダック「叔母様……あ、そうか!」
ヨヨの言う叔母とは、キャンベル女王のこと。女王は、故・カーナ王の妹にあたる。
センダック「キャンベルの女王は亡きカーナ王の妹様。元はカーナ王家の一員だったから、伝説を知っているはず!伝説が分かれば、サウザーに対抗できる。では、皆に伝えましょう!」
ヨヨ「ええ。……ビュウ。これからも、あなたに相談してもいいかな?」
ヨヨは小声でビュウに問いかけた。
ビュウ「当然でこざいます。このビュウ、いつでもあなた様のお力になりましょう」
対するビュウも、小声で返した。
ヨヨ「ありがとう、ビュウ」
〜ブリッジ〜
センダック「あ、そうだビュウ。ちょっと耳貸して」
ビュウ「…ん?どうしたんだセンダック?」
センダック「…実は。わし、身体の中に不思議な力を感じるの。姫と同じ、神竜の力…」
ビュウ「それは本当か?ならば、ヨヨ様も含めて神竜を操れるのは2人、ということに…」
マテライト「ビュウ!!ワシの話を聞けい!」
ビュウ「あ、ああ。すまないマテライト」
マテライト「全く…。今からキャンベルの女王様に会いに行くんじゃろ?と、いうことはじゃ。キャンベル王国をグランベロスから解放する、という意味でもあるんじゃろ?だとすると…キャンベル国民の喜ぶ姿が目に浮かぶのう、ビュウ!」
ビュウ「そうだな。全てのラグーンをグランベロスの支配から解放するのが俺達反乱軍の目的だからな。それに、ヨヨ様はこうおっしゃられた。叔母であるキャンベル女王に会いにいけば神竜の伝説が分かるかもしれない、と」
マテライト「そうか、そういえばそうじゃった。女王様は、亡きカーナ王様の妹君にあたるお方だったのう」
ヨヨ「マテライト。キャンベル・ラグーンの様子は?」
マテライト「はい、ヨヨ様。それが…ラグーンはどこもかしこも帝国軍でいっぱいでしたわい」
ホーネット「俺達のことは、帝国も気づいているだろうからな。きつい戦いになりそうだな」
センダック「どうする?」
皆が悩んでいたとき、ヨヨが動き出した。
ヨヨ「私に任せてください」
ビュウ「ヨヨ様、何か策でもおありなのですか」
ヨヨ「ええ。…皆さん、聞いてください」
ヨヨの一声に、ブリッジ内は静寂になった。
ヨヨ「マテライトが言うように、今のキャンベル・ラグーンは帝国軍でいっぱいです。では、グランベロス本国から離れているあの軍勢を倒すにはどうするか。まずは、補給を絶つのです」
これに、皆はああ、そうかと相づちを打った。
マテライト「ヨヨ様、確かに!」
ビュウ「これぞ作戦の基本、といえるものですが…成る程。灯台下暗し、というやつですね」
マテライト「よーし、戦いの準備じゃ!……しかし、ヨヨ様。姫君であるあなたが、どうやって作戦の基本を覚えたのですかな?」
ヨヨ「…私が考えました」
マテライトは、ふーむ?と怪訝そうな表情だったが、これ以上の追及はしないでおくことにした。
ホーネット「よーし、そうと決まれば敵の補給基地まで向かうとするか。お前達、準備のほうはどうだ?」
皆は首を縦にふった。
ホーネット「どうやら、OKらしいな。行くぜ!ファーレンハイト発進!!」
- Re: バハムートラグーン 〜空を駆ける、竜と人〜 ( No.14 )
- 日時: 2016/08/11 19:06
- 名前: 777m (ID: AQILp0xC)
第五話 (中編)
〜帝国軍補給基地〜
帝国兵「ゾンベルド将軍!反乱軍がこちらへ向かってくる模様です!」
ゾンベルド「何?…チッ、どうやらここを嗅ぎつけて来たらしいな…だがッ!今回、俺様は完璧な作戦を用意した!ククク、奴らの絶望に歪む顔が楽しみだぜェ…!」
ゾンベルドはサディスティックな笑みを浮かべながら、攻撃の準備をしていた。
一方、ビュウ達は…
ビュウ「ここが補給基地か。中々の広さ大きさ、だな」
マテライト「よし、行くぞ__」
ビュウ「ちょっと待て」
マテライトが号令を掛けようとする途中、ビュウの声が割って入った。
マテライト「なんじゃビュウよ!早くここを攻略しようぞ!」
ビュウ「だからこそ、少し待てよ。みんな。この補給基地には、何か罠が仕掛けられている」
タイチョー「罠、でアリマスか?」
ビュウ「そうだ。補給というのは、武器防具の調達や食糧の運搬など、戦いにおいて重要な役割を果たす。だからこそ、敵は補給を絶たれまいと何らかの策を講じる。よって、罠があるという事実は避けて通れないわけだ」
ビュウの言うことは全てもっともである。戦略上、補給地をキープするのは重要なことだ。もし補給が絶たれれば、それこそ水場を失った魚の如く、不利な状況に置かれることになる。
ビュウ「しかし、見てのとおりここは広すぎる。だから、空中偵察をすることにしよう。ラッシュ!トゥルース!ビッケバッケ!俺と来い!」
ラッシュ「おう!」
トゥルース「はい、隊長」
ビッケバッケ「うん、アニキ!」
ビュウ「よし。っと、戦竜は、偵察向きの奴は……そうだ。来い!アイスドラゴン!」
青色の鱗をまとったアイスドラゴンが、自らの主人の掛け声に駆けつけた。
ビュウ「お前達。これから敵に気付かれない範囲内で、かつ短時間で偵察を済ませる。いいな?」
3人は皆、二つ返事で頷いた。
ビュウ「では、行くか!」
〜補給基地上空〜
ラッシュ「…改めて思う。こりゃあ広いな」
ビュウ「そりゃそうだろ。ここを所有するのはあのグランベロスだ。国の規模を考えれば、妥当的な広さだ。トゥルース。基地の詳細は分かったか?」
トゥルース「はい。橋が全部で9本、補給庫が11棟、本丸と思われる建物が中央に1つ、本丸の立地する島の周りには濠が張り巡らされてあります」
ビッケバッケ「ねえアニキ。アニキが言ってた罠って、どんなものなの?」
ビュウ「そうだな…あそこに、中央の島とその向こう岸を繋ぐ橋が五本あるだろ?きっと敵は、俺達が橋に侵入したら一気にそれを崩してこちらの全滅を図るつもりだ。これが、俺の考える敵の罠だ」
ラッシュ「マジか…じゃあビュウ、どうする?」
ビュウ「戦竜を使う。だが、最初から使うのではダメだ。敵が橋を壊す、その直前に戦竜で脱出だ」
ビッケバッケ「なるほど!敵の油断を誘うんだ!」
ビュウ「そのとおりだ。…っと、そろそろ戻るか!」
マテライト「おお!戻ってきたか!それで?何か分かったか!?」
ビュウ「はいはい、落ち着けオッサン。俺が今から説明するから」
ビュウは、偵察の全貌を話した。
マテライト「成る程な。ならば、戦竜達は敵に気付かれないところに潜伏したほうがいいのう」
バルクレイ「…でもビュウさん。この作戦、危険すぎやしませんかね?」
ビュウ「仕方ないだろう。敵の油断を誘うなら、この方法しかない。それに、俺の戦竜達は利口だから信じろ」
バルクレイ「…そうですね。ならば、信じてみましょう」
マテライト「よし!では、今いる5つの部隊は、今からワシが指示する場所に行くように!ビュウ率いる第1部隊(ビュウ、トゥルース、ラッシュ、ビッケバッケ)は正面の橋を、タイチョー率いる第2部隊(タイチョー、グンソー、ゾラ、マニョ)は左へ、ルキア率いる第3部隊(ルキア、バルクレイ、レーヴェ、ディアナ)とアナスタシア率いる第4部隊(アナスタシア、エカテリーナ、メロディア、モニョ)は右へ、そしてこのワシ率いる第5部隊(マテライト、ヨヨ、センダック、フレデリカ)はここに留まるのじゃ!」
ヨヨ「マテライト。何故、私達は留まるの?」
マテライト「ヨヨ様、これには二つの理由があります。一つは、神竜を召喚できるから。あの森で見た神竜の力…ワシも血の気がひくほど恐ろしかった。もう一つは、奇襲要員として最適だったから。戦いにおいて、奇襲は敵の勢力をなし崩しにできる重要な作戦です。とはいえ、ワシはこれにいけ好かないのですが…。それに、神竜の力はどの技や魔法よりも恐ろしい。敵が戦竜達に気を取られているうちに召喚すれば、敵軍の大半を確実に削ることが可能ですぞ」
ヨヨ「成る程ね、それならば分かったわマテライト」
センダック「確かに、マテライトの言うとおりだね」
マテライト「皆の者!戦竜に乗ったら至急橋を離れること!ヨヨ様とセンダック老師が神竜を召喚なされるからじゃ!巻き添えを喰らったら死ぬぞ!」
一同「ハッ!!!」
マテライト「さあ行くぞ皆の者よ!」
…それからしばらくして、敵の陣営では…
帝国兵「将軍!反乱軍の奴らが橋を渡ってきました!」
ゾンベルド「そうか。よし!今すぐ、予め橋に仕掛けておいた爆弾を起爆させろ!!」
ビュウは、何かを感じた。そう、自らが想像したあの罠を____!
ビュウ「…今だ!!」
ビュウはとっさに、腰にぶら下げてあった一本の角笛を吹き鳴らした。それは、戦竜を呼ぶ音であった。青年が鳴らした重低音が戦場に響き渡り、周辺の森に潜んでいた5色の戦竜が一斉に橋へ飛び立った。
ビュウ「行くぞ!みんな乗れ!!」
タイチョー「来たでアリマース!さあ、皆さん!手遅れにならないうちに来るでアリマース!」
ルキア「ああ、モルテン!急ぐよみんな!」
アナスタシア「よーし、ツインヘッド到来ね!みんな、しっかり捕まりなさいよ!」
そして戦竜達は反乱軍のメンバーを乗せ、その後の刹那…
無人の橋は爆発し、木屑となって濠へ落ちた。
ゾンベルド「な、何ィー!?」
ゾンベルドは、そんな月並みの言葉しか発せなかった。あまりにも予想外な事態だったからだ。
ゾンベルド「く、くそ!グランランチャー隊!あのドラゴンどもを撃ち落とせー!」
空へ乱れ撃たれた砲弾。しかし、数多の戦を駆け抜けた戦竜達に、それら全てが悉くかわされた。
ゾンベルド「ヌヌヌ、こ、こしゃくな…全軍!奴らを蹴散らせー!!」
血迷ったゾンベルドは、自軍の全軍を動員した。
アナスタシア「やってきたわね!やりなさいツインヘッド!」
ツインヘッド「グワゥー!(ヘルファイア&エレクトロン!!)」
ビュウ「サラマンダー!炎を吐け!」
サラマンダー「ピエッ!!(いくぞ!ヘルファイア!!)」
タイチョー「反撃でアリマスよ!」
アイスドラゴン「ピヤーッ!(喰らえ!アイスブレス!!)」
戦竜から繰り出されるブレスの数々が、帝国軍を翻弄する!
その頃、マテライト達は…
マテライト「むっ!あの様子だと、全員が無事のようじゃな…うむっ!さあヨヨ様!センダック老師!今こそ出番ですぞ!」
黄の戦竜サンダーホークに乗った4人のうち、金髪の王女と猫背の老人は、竜の首の上で、何かぶつぶつと呟きはじめた。そしてその呟きは、次に紡がれる言葉により終わりを迎える。
ヨヨ&センダック「参れ、緑鱗の神竜よ!そして全てを包め、無の波動よ!」
突如として現れた、巨大な有翼の竜。その竜の口より放たれた白い衝撃波は、一瞬にして戦場を白に染め上げた!
ゾンベルド「……う…」
それからしばらくして、ゾンベルドが起き上がった。これといって目立った外傷は無いものの、彼の目前に広がる光景は、彼を驚愕させた。
瓦礫の山。横たわる兵士の死体。原型を留めないほど崩れ去った全ての補給庫。
ゾンベルド「ば、馬鹿な…これは一体…何が起きたのだ…?何故このような光景に…?そうか!あの時、上空に巨大なドラゴンが現れて…そいつから謎の白い衝撃波が…」
と、ゾンベルドの心の中で何かが引っ掛かった。まさか、とは思ったが…
ゾンベルド「し、信じられん!あのドラゴンが…かつてサウザー皇帝がおっしゃられた、神竜だというのか?!だとしたら…あれを呼び寄せたのは、ヨヨとかという小娘…クソッ!許さねえ…俺様の完璧な作戦を、プライドをぶち壊しにしやがってェ…!!」
これまで邪悪な笑みを浮かべながら反乱軍を待っていたゾンベルド。しかし、それとの戦いは彼の予想をはるかに越える結果だけが残ってしまった。同時に、彼からは余裕の笑みが消えていった。
ゾンベルド「…チッ、こんな場所なんかくれてやる!!だが反乱軍…次は殺す…!!」
反乱軍がこちらまで来ないうちに濠を小船で渡り逃げるゾンベルド。敵に対する、復讐と殺意をあらわにしながら。
- Re: バハムートラグーン 〜空を駆ける、竜と人〜 ( No.15 )
- 日時: 2016/08/17 21:21
- 名前: 777m (ID: GbhM/jTP)
第五話 (後編)
補給基地を攻略した反乱軍。彼らはこのまま王都を目指…したいところだが、基地と王都までの距離があまりにも遠いため、ファーレンハイトで王都へ向かうことにした。
〜ファーレンハイト・ブリッジ〜
ビュウ「さて、キャンベル解放までもう少し、だな。ホーネット航空士、王都まではあとどれくらいかかるんだ?」
ホーネット「せいぜい数十分くらいだ」
ビュウ「そうか。ま、キャンベルは広いしな。それくらいかかって当然だな」
さてと、と言わんばかりの表情でビュウはヨヨの部屋へと向かった。
〜ヨヨの部屋〜
ビュウ「ヨヨ様。ビュウが参りました……ヨヨ様?」
ヨヨ「……ビュウ……」
ビュウ「どうしたのですかヨヨ様。体調がお優れにならなければ、私に申し上げくださいませ」
ヨヨ「…ビュウ。私…体が…変なの…思い通りに…動かない……こんなところ…ビュウに…見られたくない…ヴァリトラが…私の中の神竜が……ビュウ…助けて…手を…強く…」
ヨヨは苦しそうな、いや、苦しい表情でそう語った。
ビュウ「大丈夫です。さあ、お手を……!?」
ヨヨは突然、白いオーラに包まれた。
ビュウ「(これは…あの時、ヴァリトラのいた森でも同じようなことが…)」
ビュウは心の中でそう思った。同時に、主君の身に再び何かが起きている。だが、俺にはどうすることもできない…とも思った。
そして、ヨヨに“だけ“、ヴァリトラの声がこだました。
ヴァリトラ「心弱き娘…ヨヨ…伝説など要らぬ…考えず…心を無にせよ…」
ヨヨ「考えず…?どうやって…?」
ヴァリトラ「………」
ヨヨが問いかけると、ヴァリトラは消えた。
ヨヨ「待って!ヴァリトラ!」
ヨヨは叫んだ。この部屋にだけ聞こえる大きさで。
ビュウ「どうしましたかヨヨ様!」
ヨヨ「…あ……ビュウ…ハァ…ハァ…知られたくないみたい。神竜は、伝説を私達に知られたくないみたい。でも…ここまで来たなら私達…行かなくちゃ…」
ビュウ「ヨヨ様…」
ヨヨ「私は…もう大丈夫。皆と一緒にキャンベルに…行くから。それと、この事はみんなには内緒にしておいてね。心配かけちゃうから」
ビュウ「分かりました。さあ、どうぞブリッジへ」
…それからしばらくして…
ビュウ「どうやら、着いたみたいだな」
ホーネット「ああ…お前達の健闘を祈ってるぞ」
ビュウ「ありがとう。みんな!これより王都に向け進軍を開始する!」
蒼穹の空を、5色のドラゴン達が飛ぶ。緑あふれる大地に自由をもたらすために。
〜キャンベル王都前〜
ビュウ「いよいよだな…」
マテライト「うむ。今こそ、粗暴な帝国に蹂躙されたこのキャンベルを!解放するのじゃ!ゆくぞ皆の者よー!!」
ウオォォォ!!!
帝国兵A「は、反乱軍だー!」
帝国兵B「ゾンベルド将軍!いよいよ奴らが!」
ゾンベルド「フン、そんなことくらいは百の承知だ。俺様がサウザー皇帝より授かったこのキャンベル…奴らごとき汚れきった反乱軍などには渡さん!そして、補給基地での借りを返してくれるわ!戦闘準備だ!!」
ウオオオオオ!!!!!
双方から、大地を揺らさんばかりの叫びが鳴った。そして、雌雄を決する戦いが始まった!
ビュウ「ラッシュ!トゥルース!ビッケバッケ!俺に続け!敵の先鋒部隊を破るぞ!」
ラッシュ「おう!」
トゥルース「はっ」
ビッケバッケ「うん!」
四人の剣士と彼らが携える5本の剣。反乱軍のものであるそれと、帝国兵の鈍く光る鉄の剣の数々とが織り成す剣戟のそばで、前から設置されていたであろう砲台が、ビュウ達を標的として砲身の向きを変えた。
しかし、それに感づかないビュウではない。ビュウは3人に対してとっさに命令を出した。危ない、逃げろ!その命令が功をなしたのか、砲撃は命中しなかった。むしろ___
帝国兵達「ぐあああ!!!!」
逆に、設置した張本人である本国の軍人らの命を破壊する結果につながってしまった。
一方、他の者達はというと。マテライトやタイチョーらは前衛を破り、キャンベル城下町前の砦に侵入。群がり襲ってきた軍勢は…あっという間に全滅。またしても、神竜が全てを無へと帰した。ヨヨとセンダックの呼び出した、キャンベルのヴァリトラが。
ウィザード隊など、基本的に打たれ弱い者が集う部隊は、マテライト達と逆の進路をとった。そちらのほうが守備が手薄い、ということだからだ。
アナスタシア「全く!確かにあの金鎧オッサン(マテライト)の指示は正鵠を射てはいるけど…なーんか侮辱された気分って感じ!」
エカテリーナ「…気にしない気にしない、アナスタシア…それより敵が」
アナスタシア「あっ!?ったく、人の愚痴は最後まで漏らさせなさいよね、フレイムゲイズ!!」
年端もいかない娘が出した炎の魔法・フレイムゲイズが、帝国兵を焼き払う。その娘の親友エカテリーナも、便乗して魔法を唱える。
エカテリーナ「サンダーゲイル」
炎に混乱している兵士の隙を突き、稲妻が敵を狙う。炎に隠れていて分からないが、恐らく兵士達は今頃灰と化しているであろう。
ビュウ「ふう、やっと突破か…よし、このまま進むぞ!」
敵の先鋒部隊を撃破したビュウ達は進む。所々に兵士の死体が転がっているが、気にするものか。この屍を、クールに徹してでも越えなければ勝利は見えない。彼らは、罪悪感を押し殺す覚悟で、どこまでも進んで行った。
そして、キャンベル城の城門前。
ゾンベルド「…ヘッ。カーナの騎士が聞いて呆れるぜ。確かに反乱軍はいささか手強いがな」
鎧には所々亀裂がはしり、そして斧は砕け、額から血を流してマテライトは倒れていた。
マテライト「…う…バカな…ここまで強いとは…」
タイチョー「マテライト殿をここまで追い詰めるとは…認めたくはないでアリマスが、さすがはグランベロスの将軍でアリマス」
敵ながらも、タイチョーはゾンベルドを褒めていた。しかし、そこには過ぎた畏怖の念は無かった。
ゾンベルド「さーて、次は誰が相手かなぁ…?ククククッ」
酷くサディスティックなその笑みに、敵も味方も血の気が引いた。
「俺がやろうか?」
その時、誰かの声がした。
ゾンベルド「!誰だ!?」
ビュウ「よぉ、帝国将軍ゾンベルド」
ゾンベルド「!お前は…あの時、ヨヨ王女が囚われていた砦の前で戦った小僧か!」
ビュウ「そうだ。どうだ、今こそ決着をつけようじゃねえか」
ゾンベルド「…ごもっとも、だぜ!!」
ビュウ「喰らえ!フレイムヒット!!」
炎の刃、これが二つとなりゾンベルドに襲いかかる!が!
ゾンベルド「フッ!バカめ!」
ゾンベルドは、何食わぬ顔でそれら全てを棍棒で弾き返した。
ビュウ「なら、これはどうだ!アイスヒット!」
ゾンベルド「甘いッ!」
これも弾かれる。
ビュウ「(さすが、帝国の将軍!抜かりなし、ってか!)」
ゾンベルド「今度はこっちから攻めていくぜ!クリーンヒット!!」
巨大な棍棒の一振りが、ビュウを襲う。
ビュウ「(あれを喰らったら、今のマテライトみたいになるな…そうだ!)せいっ!」
ビュウはとっさに、敵のものと思われる大きな盾を投げつけた。
盾は棍棒の圧力に潰され、ついにはいびつな形となった。しかし、今の隙を!ビュウは見逃さなかった!
ビュウ「それっ!」
ビュウが何かを投げつけた。氷の草だ。本来はドラゴンの餌として親しまれているが、敵に投げつけるとあたかも魔法のように、不思議な力を生み出す。
そしてゾンベルドの足元は凍結し、氷は彼の膝近くまで届いた。
ゾンベルド「なっ!?な、何だこれは!クソッ、汚ねーぞクロスナイト!!」
ビュウ「汚い?おいおい、戦いってのは、裏をかいてなんぼだぜ?それを汚いだとは…それより、いいのか?俺の剣、お前のところまで来てるぜ?うらっ!」
剣の一振りは、ついにゾンベルドに命中した。ゾンベルドは、顔を苦痛に歪ませていた。
ゾンベルド「ぐうッ…お、おのれ…姑息なぁ…」
ビュウ「さて……」
ビュウは剣の先をゾンベルドに向ける。
ビュウ「どうだ、今すぐキャンベルから帰る気は無いか?帰れば、許してやるが」
それはつまり、降伏を要求するも同然だ。馬鹿な、そんなことをすれば、俺様にとっちゃいろいろと不都合が生じる。そう簡単に受け入れるものか。ゾンベルドはそう思った。そして、彼の中では、反乱軍を一網打尽にできる作戦が思い立った。そこで彼は___
ゾンベルド「…ククク、ハハハハハハ!!いいだろう!キャンベルは渡してくれる!ここから帰ってやる!」
ビュウ「…そうか。フゥ…これで無駄な血をこれ以上流さなくてもいいわけだ」
ゾンベルド「反乱軍!…これは俺からの貢物だ。大事に受け取れッ!」
ゾンベルドはニィヤリ、と笑み、指を鳴らした。すると…彼らの周りを大量の軍団が囲んだ!
ビュウ「なっ!?」
ゾンベルド「ガハハハ!アホな反乱軍どもめ!俺様は将軍だぞ!?栄えあるグランベロスの将軍が、むざむざ降伏など受け入れてたまるか!よしてめえら、やれー!!」
しかし、その刹那!
ピィヤーーッ!!!空から鳴き声が響いた!それは、ビュウ達反乱軍の戦竜達の鳴き声であった!
ビュウ「みんな!!」
センダック「おお、これぞ幸運…わしはラッキーじじい…」
そしてサラマンダーの炎、アイスドラゴンの氷、サンダーホークの雷、モルテンの震撃、ツインヘッドの雷と毒…
気が付けば、反乱軍を取り囲んでいた軍は、それら全てに滅ぼされた。ゾンベルドは、ただ絶句するばかりであった。
ゾンベルド「そ、そんな…馬鹿な…俺様が…完全に敗北…だと…?こ、こんな事は…畜生ォォォォォォ!!!!!!」
人生最大の屈辱。ゾンベルドは大いに憤慨した。その顔には、怒り。絶望。恐怖。入り混じる多くの感情で彩られていた。そして彼は我を忘れ、キャンベルから逃げる。ただ一人で。
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