二次創作小説(新・総合)
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- ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者
- 日時: 2019/06/27 09:50
- 名前: セイント (ID: Z3Nydegv)
第一話 プロローグ
藤丸立香とマシュ・キリエライト、そして彼らを支えた数多の英霊やカルデアの人類の未来を掛けた戦いが終わり人類最後のマスターであった少年藤丸立香はいつもの日常に戻りマシュと共に立香が以前通っていた高等学校に通うことになった。
立香「みんな、おはよう。」
マシュ「みなさん、おはようございます。」
俺は教室に入りクラスメイトの人たちと挨拶を交わした。中には女子と登校しているためか嫉妬の視線を向けてくるものもいたが気にせずに席についた。予鈴がなる直前一人の男子生徒が入ってきた。
男子生徒1「よぉ、キモオタ。また徹夜でゲームか。どうせエロゲーでもしてたんだろ。」
男子生徒2「うわ~、徹夜でエロゲーとかキモイじゃん。」
立香「それ酷いブーメランだと思うよ。」
入ってくるなりその生徒は罵倒を受けた。その生徒の名は南雲ハジメ。父親がゲームデザイナー母親が人気漫画家と言うまさに人生の勝ち組とも言える人だった。罵倒したのは檜山大介とその取り巻き、陰口が聞こえたのか俺の事も睨んできたけど。俺から言わせるとハジメは身だしなみが悪いわけでなくただオタクと言うだけだ。だがそういわれる原因は他にある。
女子生徒「おはよう、南雲君。今日も遅刻ギリギリだね、もう少し早く来ようよ。」
その原因である女子生徒がハジメに話掛けた。彼女の名は白崎香織。この学校では三大女神の一人として評されている。ちなみに三人目は俺のパートナーでもあるマシュである。彼女がハジメばかり構うのでクラス中が殺気と嫉妬で満ちているのである。ハジメのほうは生活態度がいいとも言えないので女子からもいいかおされてない。
立香「おはよう、ハジメ。朝から大変だね。」
マシュ「おはようございます、ハジメさん。」
ハジメ「おはよう、二人とも。自業自得とも言えるから仕方ないよ。」
立香「でも徹夜も程々しておいたほういいよ、倒れたら元も子もないだろう。そうだ、俺が栄養価の高い弁当を作ってあげようか。」
ハジメ「いくら何でもそれは悪いよ。」
立香「俺じゃダメか、なら白崎に作ってもらうよう頼んでみようか」
そう言った時クラス中の殺気と視線が酷くなった。ハジメからは余計な事をと言うような視線を向けられ白崎から南雲君さえよければと言うような感じだ。別に悪い事は言ってないんだけどな。クラスメイトも言いたい事があるならちゃんと言えって言いたくなる。
男子生徒3「香織ってば、また南雲に構って。ほんと香織は優しいな。」
男子生徒4「全くだぜ、そんなやる気のない奴放っきゃいいのによ。」
女子生徒2「おはよう、南雲君に藤丸君。それにマシュさんも。」
俺たちに話掛けたのは三人の男女だった。一人目は天之河光輝。成績優秀でスポーツ万能、さらには容姿端麗という一見完璧に見えるが唯一の欠点がある。それは正義感が強い故に思い込みが激しく自分にとって都合のいい解釈するのである。現に白崎の気持ちにも気づいておらずただ優しいという理由だけでハジメに構っていると思い込んでいるのだ。二人目の男子は坂上龍太郎、光輝の親友であり空手部に所属している細かい事を考えない脳筋タイプ。三人目は女子で名前は八重樫雫。気立てが良く凛としているため男子より女子にモテるという何とも言えない人であるが実際は乙女チックなところがあると言う。
光輝「南雲さ、いい加減香織に甘えるのはやめろ。いつだって君に構ってやれないんだから。」
香織「どうして、そんなこと言うの光輝君。私が南雲君とお話したいから構っているだけだよ。」
俺がそれを聞いたときちょっとだけ笑いかけた。何故なら天之河の言い分は白崎には通用しないのである。白崎に欠点があるとすればそれは天然すぎるところである。やがて予鈴がなり授業が始まった。そしてその日の昼休み俺はいつものようにマシュと一緒に弁当を食べる事にしている。ちなみに今日は俺が食事当番でもある。お弁当を食べようとした時白崎がまたハジメに話掛けていた。
白崎「南雲君、今日もそれだけなの。それじゃ栄養付かないでしょ。私の弁当分けてあげるから。」
立香「それなら俺の分も分けてあげるよ、自信作だ。」
マシュ「先輩が分けるなら私も分けます。」
それを聞いたときハジメはバツの悪そうな顔をした。俺とマシュがハジメに分けるのは親切心とハジメにこれ以上殺気と嫉妬を向けられたら持たないと判断したためである。これで少しは減るだろうと思い案の定周りは視線をそらしてる。
ハジメ「僕はいいから白崎さんは向こうで天之河君たちと立香君もマシュさんと一緒にゆっくり食べたらどうかな。」
光輝「香織、俺たちと一緒に食べよう。せっかくの香織の料理を寝ぼけたまま食べるのは俺が許さないよ。」
立香「あれ、俺とマシュはいいのか。それだと差別に値すると思うのだが。」
香織「え、どうして南雲君に弁当を分けるのに光輝君の許しがいるの。」
それを聞いたとき俺や八重樫を始め一部のクラスメイトが吹きだした。天之河のイケメンスマイルも白崎には通用しないのである。天然通り越してちょっと馬鹿なんじゃないかと思った。ハジメはその時異世界召喚されないかなと思ったという。それが通じてしまったのか天之河を中心に魔法陣が広がりクラス中に広がった。
マシュ「先輩。」
立香「ああ、させるか。」
俺はすぐさまカバンの中からギリシャ神話の魔女メディアの宝具ルールブレイカーを模した短刀を突き立てるも魔力が強すぎるのか魔法陣が消滅せず逆に俺の方が吹き飛ばされた。
マシュ「先輩、これは。」
立香「英霊級、いや神霊級の魔術だ。」
俺とマシュの推測をよそに魔法が発動した。畑山愛子先生が教室から出るように言ったが間に合わず俺やマシュを含むクラスメイト全員がこの世界から異世界へと転移した。これがとある学校で起きた集団神隠し失踪事件の始まりでもあった。
- Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.8 )
- 日時: 2019/07/15 23:06
- 名前: セイント (ID: ysgYTWxo)
第九話 VSベヒモス戦 後編
三人称Side
話が少し遡る、トラウムソルジャーを前にパニックってた生徒達は立香の指示とマシュの行動により落ち着きを取り戻し対処に当たった。だが戦力が足りない。宝具を使うにもここは狭すぎる。だがそんな時救いの手が差し伸べられた。
光輝「マシュさん、ここは俺に任せて君はメルド団長達の援護を頼む。」
マシュ「分かりました、ここはお願いします。」
天之河の指示を受け立香とハジメのそしてメルド団長達の援護に戻った。メルド団長達は一時立香とハジメにベヒモスを任せ今に至る。
立香「そうか、それなら行くぞ。マシュ、ハジメ。」
マシュ「はい、先輩。」
ハジメ「うん、必ず生きて帰ろう。」
三人は力を合わせベヒモスに立ち向かう。ハジメの錬成によりベヒモスは態勢を崩す。そこにマシュが追撃を加える。立香は聖剣を鞘にしまった。その行動に皆不思議そうな表情を浮かべたが
立香「使い慣れない剣よりこっちのほうがいい、召喚エクスカリバー(約束された勝利の剣)。」
かつて英雄アーサー王が選定の岩から引き抜いたとされる世界で最もその名を知られた最強の聖剣。立香はその剣を実体化させた。その行動に皆驚愕な表情を浮かべるが
立香「君達、話は後にしてほしい。今はこの場を切り抜ける事が先決だ。」
伝説の聖剣を召喚した立香に驚きながらも彼の一声に皆我に返り行動を始める。また立香はベヒモスに向かいガンドを撃つ。この技はシンプルの魔術だが割と強力な呪いの一種で耐性のない者が受けると三日三晩高熱等にうなされる。さすがにベヒモスに効果は薄いが動きを止める事は出来る。
立香「行くぞ、ストライクエア。」
聖剣から強力な剣圧が放たれベヒモスが吹き飛ぶ。立香が召喚したエクスカリバーにマシュの盾、ハジメの錬成。ずっと練習していた三人の連携により少しずつだがベヒモスにダメージが入っている。天之河やメルド団長達の活躍により脱出ルートは確保できた。後はベヒモスを退けるだけだった。
香織「皆、待って、南雲君と藤丸君、マシュちゃんを助けなきゃ、あの三人が今あの怪物を抑えてるの。」
皆、白崎の言葉に信じられない顔をする。そりゃそうだろ、ハジメは無能で通っているし立香はレベルは高いがベヒモスは倒せない、マシュだって実力は天之河に迫るが女の子だし御淑やかな性格だから前に出れるわけがない。だがメルド団長の言葉でそれがほんとだと分かり皆気を引き締める。
メルド「そうだ! 坊主達がたった三人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組!ソルジャー共を寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法準備!もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツらが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」
皆が横一列に並びベヒモスを迎え撃つ準備を始める。だがその中にはこの状況を招いてしまった男子生徒檜山大介がいた。檜山は自分の不注意とは言えこの状況を招いてしまった恐怖と罪悪感に苛まれ一刻も早くここから逃げ出したかった。
だがその時彼は迷宮に入る前日ホルアドでの事だ、緊張のせいか中々寝付けなかった彼はトイレついでに外の風を浴びに行った。だがその帰り途中でネグリジェ姿の白崎を見かけて後を付けてみた。途中で白崎はマシュと合流し見かけに寄らず勘が鋭いマシュを魔力で何とか見つからないよう息を潜め二人の後を追う。彼女達はある部屋の前で立ち止まりその扉をノックした。その中から南雲と藤丸が出てきた。二人はその部屋に入った。その瞬間檜山の頭は真っ白になった。
檜山は白崎に好意を持っている。だが自分にとっては高嶺の花であり完璧超人である天之河が相手だったら素直諦める事が出来た。だが彼女は南雲に好意を持っている。それは可笑しい、少なくとも自分より劣っている南雲の傍に白崎がいるのは可笑しい。だったら自分の傍にいてくれてもいいじゃないか。藤丸にしたってそうだ、昨年までは大した事なかったのにこの一年で急に実力をあげた成り上がりの癖に、しかもいっちょ前に外国から彼女まで連れて来てる。その彼女であるマシュでさえ見かけ寄らず度胸も実力もあり芯が強い。自分とは違って、その三人が力を合わせ今ベヒモスを抑えている。俺がこいつらより弱いって言うのかよ、それだけは認めたくない、南雲を見て心配層に祈りを捧げる白崎を見て彼は悪意を解き放った。
立香「よし、二人とも。メルド団長達の援護射撃だ、下がるぞ。」
マシュ「分かりました、ハジメさん。急いで。」
ハジメ「うん、分かったよ、二人とも。」
三人はメルド団長達の援護射撃に気づき撤退を始める。だが彼らはある生徒の悪意に気付かなかった。普通の状況なら立香やマシュは気づいただろうが今は状況が状況なだけにそっちに気を回している暇がなかった。明らかに三人を狙った誘導弾が彼らのいる場所に着弾した。バランスを崩し三人は奈落に落ちていく。
ハジメ「うわあーーーーー。」
立香「くそぉーーーーーー。」
マシュ「先輩、ハジメさん。」
マシュは立香の手を掴み彼女に掴まれた立香は空いているもう片方の手をハジメに伸ばし彼のほうも立香に手を伸ばすがその前に水に飲まれその手を掴むことが出来なかった。一方三人が落ちた後の状況はとよると
香織「離して、雫ちゃん。南雲君達が。」
雫「だめよ、香織。あの三人はもう。」
光輝「香織、君まで死ぬつもりか。南雲達はもうダメだ。」
香織「ダメって何、死んでない。あの三人は死んでない。きっと助けを求めている。」
どこにそんな力があるのか白崎に驚愕しながらも二人は懸命に彼女を抑えつける。その時メルド団長が白崎に手刀を落とし彼女を気絶させた。天之河は抗議しようとしたが八重樫に諫められ皆、急いで大迷宮から脱出した。皆、地上から帰って来れた事に安堵しその場に腰をおとしそうになるもメルド団長の指示により国に戻るまで休むなと言った。何故なら国や町の外に魔物や野盗が潜んでいることがありその場じっとしているほうが遥に危険という状況だからだ。生徒達無事国に戻ったがは大切な仲間の命を犠牲に生き残った事実に深い闇をおとすことになった。
- Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.9 )
- 日時: 2019/07/04 11:16
- 名前: セイント (ID: CTctmhDv)
第十話 お粗末な悪意
ホルアドの町に戻った一行は何をする元気もなく全員宿屋の部屋に入った。何人かは生徒同士で話したりしているがほとんどの生徒達はベッドにダイブしそのまま深い眠りについた。そんな中檜山大介は宿屋の外のある町の一角の目立たない場所で膝を抱えて座り込んでいた。傍から見れば落ち込んでるように見えるだろう。
檜山「ヒ、ヒヒヒ。ア、アイツらが悪いんだ。雑魚のくせに……ちょ、調子に乗るから……て、天罰だ。あの二人にしたってあんな奴とつるんでいるから、……俺は間違ってない……白崎のためだ……あんな雑魚に……もうかかわらなくていい……俺は間違ってない……ヒ、ヒヒ」
暗い笑みと濁った瞳で自己弁護をしているだけだった。檜山は悪魔に魂を売り渡した。あの時、軌道が逸れてハジメ達を襲った火球は彼が放ったものだ。ハジメの救出と階段への脱出、それらを天秤にかけた時、ハジメを見つめる白崎を見たとき彼の中に悪魔が囁いたのだ、今なら殺っても気づかれないと。バレないように絶妙なタイミングで誘導性をきかせた火球はハジメ達に着弾させた。誰が放ったか分からない状況で特定は不可能って言っても過言じゃない、しかも檜山の適正は風だ、バレるわけがないと思ったその時
女子生徒「へぇー、やっぱり君だったんだ。異世界最初の殺人がクラスメイトでしかも女の子一人含め三人も、中々やるね。」
檜山「っ、誰だ。」
そこにいたのは一人の女子生徒だった。彼女の名前は中村恵理。眼鏡っ子で図書委員を務めているおとなしめ女の子だ、少なくとも檜山やクラスメイト達はそう思っていた。だが目の前にいる彼女はそんな印象を感じさせない薄気味悪い笑みを浮かべていた。
檜山「お、お前、なんでここに・・・。」
中村「そんな事どうでもいいよ、それより、人殺しさん?今どんな気持ち? 恋敵やその友達をどさくさに紛れて殺すのってどんな気持ち。」
中村はクスクス笑いながら、まるで喜劇を見ているかのような表情だ。檜山がした事とは言えクラスメイトが三人も犠牲になったというのに中村は全く堪えていない。ついさっきまで他のクラスメイト同様ショックを受けていたはずなのにそれが微塵も感じられない。
檜山「それが、お前の本性なのか。」
中村「本性、そんな大層なものじゃないよ。誰だって猫の一匹や二匹被っているのが普通だよ。そんなことよりさ……このこと、皆に言いふらしたらどうなるかな? 特に……あの子が聞いたら……」
檜山「ッ!? そ、そんなこと……信じるわけ……証拠も……」
中村「ないって? でも、僕が話したら信じるんじゃないかな? あの窮地を招いた君の言葉には、既に力はないと思うけど?」
檜山は追い詰められた表情になる。あの状況を招いてしまった彼にはもはや発言力等存在しない。自分の不注意で仲間を危険晒してしまいそれによりハジメ達は奈落に落ちてしまった。例え事故だったとしても檜山のせいで窮地に陥ってしまったのだから檜山が殺ったのと変わらないのだろう。城に帰れば檜山が糾弾される事は目に見えている。
檜山「どうしろって言うんだ。」
中村「うん、心外だね。まるで僕が脅しているようじゃない、 ふふ、別に直ぐにどうこうしろってわけじゃないよ。まぁ、取り敢えず、僕の手足となって従ってくれればいいよ。」
最初は断りたかったがそれは出来ないと悟った。ここで彼女の申し出を断れば容赦なくハジメ達を殺したのは檜山ですと言いふらすだろ。もはや逃げ場がない、いっそこいつもと思ったがここで思いもよらぬ提案をされる。
中村「白崎香織、欲しくない。」
ここで白崎の名前が出てきた。聞けば自分に従えば彼女が手に入るという。ほんとなら白崎が想いを寄せる南雲ハジメにこの事を持ちかけようとしたが檜山が手にかけた事により予定を変更したという。
檜山「・・・何が目的なんだ、お前は一体何がしたいんだ。」
中村「ふふ、君には関係ない事だよ、まぁ、欲しいものがあるとだけ言っておくよ。それで返答は。」
檜山は彼女に従うしか選択肢が残されていなかった。檜山は知らない事だが中村のほしいものって言うのは天之河光輝の事である。彼女はある過去の出来事により天之河に好意を寄せる事になるのだが普通の好意よりも執着しすぎているのだ。その為いつも彼の傍にいる白崎や八重樫が邪魔でしかなかった。つまりこの二人のうちの誰かを南雲や檜山等他の奴に押し付けてしまえば恋敵を減らせると考えたのだ。従うという彼の言葉を聞いて彼女は
中村「アハハハハ、それは良かった。僕もクラスメイトの事を告発することは心苦しかったからね。仲良くやろうよ人殺しさん。」
と彼女は楽しそうな笑みを浮かべながら宿のほうに歩いて行った。その姿を見ながら檜山は畜生と小さく嘆いた。それと同時に脳裏に浮かんだのはハジメが奈落に落ちた時白崎の悲痛な姿である。彼女の姿を見てショック受け寝込んでしまっているクラスメイトもやがて彼女の気持ちを悟るだろ、白崎は善意の気持ちだけでハジメに接していたわけではないという事に。彼女が目を覚めた時その原因を造ってしまった檜山に意識を向ける事だろう。不注意な行為で自分達を危険に晒してしまった檜山の事を。
上手く立ち会わなければならない、自分の居場所を確保するために。檜山はもう一線を越えてしまった。もう後戻りは出来ないのだ。中村に従っていれば白崎香織を手に入れられる可能性があるのだ。
檜山「・・・大丈夫だ、上手くいく。俺は間違っていない。」
顔を膝に埋め再び、ブツブツと自分にそう言い聞かせる檜山。今度は誰も邪魔が入る事はなかった。
- Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.10 )
- 日時: 2019/07/14 13:13
- 名前: セイント (ID: bHOnQMX4)
第十一話 奈落
立香Side
マシュ「・・・ぱい、先輩。しっかりしてください。」
立香「・・・う~ん、マシュ。・・・マシュ、良かった、無事だったんだ。」
俺はあの後橋から奈落に落ち気を失ったようだ。先に目が覚めたであろうマシュの呼びかけに俺は気づいた。俺はマシュが生きている事が嬉しくなり思わずマシュを抱きしめた。マシュも抱きしめ返す。そこで俺はあることに気づいた。
立香「・・・そうだ、ハジメは、ハジメはどうした。」
マシュ「すみません、この辺りを調べたのですがハジメさんはいませんでした。恐らくさらに深い場所に落ちたのではないかと思います。」
立香「・・・そうか、でも俺達が生きているんだ、きっとハジメだってどこかで生きているはずだ。」
マシュ「はい、先輩。ハジメさんを探しましょう。」
俺達は魔術で服を乾かし体力を回復するのを待ってハジメを探す事にした。探す前に地上にいる人達にも無事を知らせなければならない。召喚士である俺は鳥型の使い魔を召喚し上に飛ばした。無事に上についてほしいという願いを込めながら。
立香「・・・喰らえ、ストライクエア。」
マシュ「それー。」
俺達は力を合わせながら深い部分まで進んでいく。この場所にいる魔物は割と手強い、油断しているとやられてしまいそうな奴らばっかりだった。ほんとにハジメは生きているのか、そんな不安にさえ駆られてしまう。
マシュ「先輩、ハジメさんはきっと生きてます。先輩がそう言ったのですからそれは間違いありません。」
立香「・・・マシュ、そうだな。ハジメは生きている。俺が言った事なのに俺が信じなくてどうするんだ。」
俺の不安を察したのかマシュの言葉で俺は目が覚めた。もう迷わない、ハジメは生きている。唯それだけを信じて前に進むのみだ。だが進んでいる途中、明らかに人の手により掘られた穴と大量の魔物の死骸を見つけた。ここに落ちてきた人は俺とマシュ、そしてハジメだけのはずだ。つまりハジメはここで何らかの方法で強さを手に入れ奥に進んで行ったってことだ。俺とマシュは顔を見合わせて奥に進もうとした時聞き覚えある声が聞こえた。
???「フォウ、フォフォ、フォウ。」
立香「フォウ、どうしてここに。」
マシュ「どさくさに紛れて異世界転移に巻き込まれたのでしょうか。」
フォウは俺達と共に戦ってくれた大切な仲間だ、本名はキャスリバーグというもので本来アヴァロン(遠き世界の理想郷)おりその正体は伝説の魔術師マーリンの使い魔であり人類悪の一つ。何故ここにいるのかというと俺達がこっちの世界に来る直前魔力を感知したマーリンの手引きにより教室に現れた異世界転移の際に乗じこっちに来たという。今までずっと一緒にいたため言葉が分かる。姿を見せなかったのは周りに人がいたため俺とマシュが二人きりになるのは見あからって姿を見せたという。俺達が気づけなかったのは恐らく気配を上手に消していたのだろう。
立香「それにしても、ありがとうフォウ。君がいるなら心強い。俺達は今南雲ハジメという人物を探しているんだ、大切な仲間なんだ、協力してほしい。」
マシュ「お願い致します、フォウさん。」
フォウは俺とマシュの願いのこくりと頷き奥に進み始めた。どうやらハジメの居場所が分かるようだ、フォウの力なら魔力感知が可能だ、ハジメが使った魔力の痕跡を辿れば直ぐに見つかるはずだ。ちなみに俺のステータスプレートは
藤丸立香 17歳 男 レベル47
天職 召喚士・聖剣士
筋力:850
体力:900
耐性:750
敏捷:800
魔力:1100
魔耐:1000
技能 対魔力・騎乗・陣地作成・魔力放出 全魔力適正 全魔力耐性 全属性耐性 召喚 英霊召喚 聖剣召喚 騎士王憑依 剣術 縮地 武術 直感 魔力感知 魔術 道具作成 全麻痺耐性 毒耐性 言語理解
レベルも上がったし技能も増えた。恐らく上にいる勇者のパーティーよりも強くなっていると思う。油断は禁物だがこれならどんな相手でも怖くはない。一方マシュはというと
マシュ・キリエライト 17歳 女 レベル47
天職 盾職人
筋力:900
体力:950
耐性;800
敏捷:800
魔力:1200
魔耐:1100
技能 対魔力 騎乗 全魔力適正 全魔力耐性 全属性耐性 盾創造 武術 直感 縮地 魔力感知 魔術 全麻痺耐性 毒耐性 言語理解
相変わらず敏捷は俺と一緒になったもののそれ以外は俺よりも高い数字だった。技能のほうも増えている。最強コンビだと思う。後は同じく最強に至ったと思われるハジメを見つけて最強トリオになるだけだ。俺達の迷宮探索は続く。さらに奥まで続くと突然大きな音が聞こえた。何かと思い近づいて閉じられた扉の向こうから何かが聞こえる。
立香「よし、開けるぞ、誰かが戦っているのかもしれない、気を引き締めよう。」
マシュ「もしかして、ハジメさんでしょうか。」
それはまだ分からないが今までのあの魔物の死骸を見るとハジメがここまで来た可能性は高い。扉を開けると一人の男が小さな女の子を背負って大きな怪物と戦っていたのだ。さっきの音はやはり戦闘音だ、その戦闘音が生み出している男と怪物、その男は間違いない,容姿は変わっているが間違いない。
立香「南雲ハジメ。」
マシュ「ハジメさん、無事だったのですね。」
ハジメ「お、お前らどうしてここに。」
立香「ガンド。」
俺はサソリのような形をした魔物のガンドを撃ち込む。魔物は動きを止める。
立香「話は後だ。今はこいつを倒す事を優先しよう。でないと話も出来ないみたいだしな。」
ハジメ「・・・そうだな、力を貸してくれ。」
立香「ああ、了解だ。」
マシュ「皆さん、援護します。」
ハジメもハジメが背負っている女の子も共に戦ってくれる事を選択してくれた。
ハジメ「だが、あいつ表皮が硬すぎる。」
立香「頭硬いな、ハジメ。なら、関節部を狙え。そこは脆いはずだ。」
生き物にせよロボット等の人工物にせよ関節部は脆い事が多い、つまり継ぎ目があるって事だ、体を動かすあたってどうしても関節部はある程度脆くしなければならない。何故ならそこの部分も硬くしすぎると全身動けなくなってしまうからだ。ハジメは俺の指摘通り関節部を狙い女の子も同じ個所を狙う。
立香「よし、大分弱って来た、一気に倒すぞ、ストライクエア。」
俺の剣圧でダメージを与えていく。魔物が怯んだ。
立香「よし、今だ、マシュ、ハジメ、それとえっと、そこの女の子も。」
マシュ「はい、先輩。」
ハジメ「分かった。」
女の子「・・・分かった。後私はユエ。」
マシュとハジメ、それとユエと名乗った女の子は魔物を攻撃しついにその魔物は爆散した。魔物を倒し終えた俺達は周りの安全確認し大丈夫と判断しその場に膝をついた。
立香「ハア、ハア、結構手ごわかったな、ベヒモス級はあった。初期レベルのままだったら危なかった。」
ハジメ「同感だ、こんなのは勘弁だな。」
マシュ「でも、皆さん、無事で良かったです。」
ユエ「・・・ハジメ、この二人は誰。」
立香「おっと、紹介がまだだったな。俺の名は藤丸立香。」
マシュ「私の名はマシュ・キリエライトと申します。こっちはフォウさんです。」
フォウ「フォウ。」
俺達が自己紹介し彼女も名前を名乗った。唯聞けば彼女が名乗ったユエの名は本名ではなくハジメが付けた名前だという。理由は彼女は三百年以上も生きている吸血鬼族の末裔だという。だがこの世界では吸血鬼族は大昔に滅んだと本にそう書いてあった。ユエはその吸血鬼族の女王として君臨しておりその能力は凄まじく首を落とされても死なずに時間が経てば甦るという程の強力な能力だが結局は最後は裏切られたという。ちなみにユエは今発見された当時は裸だったため今はハジメが服を貸している。
立香「それで、ハジメに新たな名前を付けてもらったのか。それにしても、ユエさんか。いい名前だと思う。」
マシュ「はい、素敵な名前だと思います。」
ユエ「・・・うん、嬉しい。凄く気に入ってる。」
立香「そうか、それじゃまず、この場所から脱出するためにもここがどこなのか情報を集めなくちゃ、後ハジメの失った左腕やユエさんの服もどうにかしなきゃな。左腕がないとさすがに不便だろうしユエさんもその格好じゃ動きづらそうだしな。」
俺の声によりこの迷宮から脱出するために情報を集める事とハジメの左腕の代わりになるものとユエさんの新しい服を探すという話になった。ちなみにユエさん曰くここは神に反逆したと言われている人達が作った迷宮だという。俺は何故神に反逆したのか、反逆者というワードが凄く気になったのは言うまでもなかった。
- Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.11 )
- 日時: 2019/07/04 12:56
- 名前: セイント (ID: CTctmhDv)
第十二話 クラスメイトSide 失意と決意
時間は少し遡る。あの日から五日は過ぎている。ハイヒリ王国に戻ったクラスメイト達は未だに落ち込んだり部屋に閉じ困ったりしている。そんな中八重樫雫は目を覚まさない親友白崎香織の事を見つめていた。
ハジメと立香、マシュの死亡が報告された時二人は兎も角ハジメに対する評価冷たいものだった。王国側の人間は死亡したのは無能のハジメだと言うことで王妃や王女のリリアーナ等を除き誰もが安堵の吐息をもらした。それは国王や教皇も同じだった。勇者一行は許されない。魔人族に対抗するために迷宮から帰還できる程の力を持ち尚且つ神の使徒である勇者一行が無敵でなければならない。国王や教皇はまだ分別のある方で貴族の中には死んだのが無能で当然だったりなど無能が足を引っ張ったせいで貴重な戦力を失ったり他にも立香やマシュしても期待外れ等好き放題にけなしていた。
それに対して天之河が抗議し国王や教皇も勇者に悪印象を持たれるわけにはいかないと三人を罵った貴族を処分し天之河の評価は上がったものの結局ハジメが勇者の手を煩わせて貴重な戦力の二人まで死なせた無能であることまで覆らなかった。あの時ベヒモスをくい止めたのはハジメ達奈落に落ちたものだというのに、彼らのお陰で他の皆が生還出来たのだ。
雫「あなた、聞いたらおこるでしょうね。」
実際雫も貴族の心ない会話に手が出そうになり何とかそれを止める事が出来た。メルド団長はあれは誤爆ではない可能性も考え生徒達から事情聴取を行うべきだと抗議したが教皇はおろか国王まで禁じられたので引き下がるしかなかった。クラスメイトも自分が人殺しなるのが嫌という事であれはハジメ達の自業自得であると現実逃避をしてしまっていた。一方白崎香織はずっと眠ったままで医者が言うには精神的ショックで時が来たら目を覚ますとのことだった。どうか、これ以上親友を傷つけないでほしいと無意識に祈ったその時白崎の手が動いた。
雫「・・・香織、聞こえる、香織。」
雫が必死に呼び掛ける。それにより香織の閉じられた瞼が動き始めた。雫は更に呼びかけそれにより香織は雫の手を握り返す。そして香織は目を覚ました。目を覚ました香織は五日も眠っていたためか体が怠いと言っていたが体調面は心配なさそうだった。唯記憶が一部曖昧になっていた。
香織「それで・・・あ・・・南雲君はそれに藤丸君やマシュちゃんは。」
香織の言葉に雫はどう真実を伝えるべきなのか悩む。そんな雫を見て自分の記憶が真実であることに香織は悟るがそれを受け入れられる程香織は強くなかった。
香織「・・・嘘だよね、雫ちゃん。私が気絶した後南雲君達も助かったんだよね。ね、そうなんでしょう、ここお城の部屋だよね。全員助かってここに戻ってきたんだよね、南雲君達は訓練かな、訓練かな、訓練所にいるよね、うん、私、ちょっと行ってくるね、南雲君達にお礼言わなきゃ、だから離して雫ちゃん。」
香織の手を掴み南雲達は死んだ事を伝えるが香織はそれを受け入れようとせず南雲達を探しに行こうとする。雫の説得によりどうにかそれを受け入れた。あの時の誤爆がもし自分が放ったものだったり誰かだったりしたらきっと一生恨むだろうと言った。
香織「雫ちゃん、私、信じないよ、南雲君達は生きている。死んだなんて信じないよ。」
香織は例え確率が低くても確認していないならゼロじゃない、彼らが生きている事を信じたい。その為に自分はもっと強くなるだから力を貸してほしいと雫に言った。だがそんな時窓を叩く音が聞こえた。雫がそれに気づき窓を開けると一羽の白い小鳥が入ってきた。
雫「こんなところでどうしたのかな。」
雫は笑顔を作り小鳥に近寄った。一見クールに見えるが雫は可愛いもの好きなのだ、その時その小鳥が小さな光を放ちその頭上で人の形を取った。その人の姿には見覚えがあった。
雫「藤丸君。」
香織「え、どうして、藤丸君。もしかして、死んで生まれかわったの。」
立香『そんなわけないだろ、白崎が目を覚ますのを待ってずっと待機していた。無事に地上までついたみたいだし、これは俺が召喚した使い魔で今それを通じて君達を見ている。』
香織「それじゃ、藤丸君は生きているの、南雲君やマシュちゃんは。」
立香『マシュは無事だ、ちょうど近くにいた、だがハジメはいなかった。恐らくさらに深い場所に落ちたと思う。』
その言葉を聞き二人は落胆な表情を見せた。
立香『俺とマシュはこのままハジメを探しにいき安否を確認してくる、大丈夫、ハジメはきっと生きている。こんな死にぞこないの俺だって生きているんだ、それにハジメはこういう時機転が利くから生きている可能性はある。後、これは俺達だけの秘密してほしい。』
香織「え、どうして。」
立香『ちょっと気になることがあるんだ、だから頼む。あ、人が来たようだ、俺達はハジメの捜索を続ける。』
彼はそう言い残し立香と使い魔は姿を消した。立香とマシュは生きていた。そしてハジメの安否は分からないが二人が生きているならまだ希望がある。二人が探してくれるとも言ってくれた。その時光輝と龍太郎が入ってきた。その時二人の態勢に何を勘違いしたのかすぐさま出て行ってしまった。二人は立香と会話の途中で互いに体を寄せ合ってしまっていたため勘違いしたようだ。
雫「さっさと戻ってきなさい、この大馬鹿共。」
雫の言葉が王城の廊下に響き渡った。
- Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.12 )
- 日時: 2019/07/13 12:24
- 名前: セイント (ID: 8I/v6BBu)
第十三話 クラスメイトSide2 悪夢再び 前編
ハジメがユエと出会い立香とマシュがハジメと再会し共にサソリモドキとの死闘を生き抜いたこのころ光輝達勇者一行もまた【オルクス大迷宮】にやってきていた。但し訪れているのは光輝達勇者のパーティーと小悪党組、永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女五人パーティーとメルド団長率いる騎士団だけの少数だった。
理由は簡単だ、口には出さなくてもハジメ達の死が多くの生徒達の心に深い影を落としているのだ。また、戦いの果ての死、つまり戦いの重さを実感してしまいまともな戦闘ができなくなってしまったのだ、即ち一種のトラウマだ。当然教会関係者はいい顔をせず時がくれば復帰できると思い毎日戦いの催促をしてくる、
それに対してこれに抗議する者がいた。畑山愛子である。愛子先生は当時、遠征には参加していなかった。理由は国や教会に頼まれ農地開拓に力を入れていた。彼女の技能は食糧問題を解決してしまう可能性が高かった。だがハジメや立香、マシュの死亡を聞いた時彼女はショックで寝込んでしまったのだ。責任感が強い愛子先生は必ず全員元の世界に連れて帰るという目標を胸に頑張っていたのにそれができなくなってしまったことにショックを受けこの世界の食糧問題を解決してしまう彼女との関係悪化を避けるために教会も彼女の抗議を受け入れた。
その為今回は希望者のみがこの迷宮に訪れていた。それはメルド団長から指示でもあった。メルド団長もまた三人の死を自分の責任と感じておりこれ以上世界がどうあれ未来ある若者達を彼らの二の舞にしたくなく苦渋の決断として希望者のみを迷宮に連れてきたのだ。そんな中光輝達は何時ぞやの悪夢を思いだし立ち往生していた。今彼らがいるのは六十層の断崖絶壁である。この断崖を渡るにはここに掛かる吊り橋を渡る必要がありそれ自体は問題はないがそう仲間達を失ったあの時と重なりその出来事がフラッシュバックしてしまうのだ。
雫「香織。」
香織「大丈夫だよ、雫ちゃん。」
雫「そう・・・無理しないでね、私に遠慮する事ないから。」
香織「えへへ、有難う雫ちゃん。」
奈落に続いているかのような暗闇の崖下を見つめていた香織を心配した雫が彼女に声を掛けたのだ。立香の頼みで皆には明かしていないが彼とマシュが生きている事は分かったがハジメの生死は未だ不明な中香織は彼の生存を信じている。立香とマシュが生きているならまだ希望があるとそんな彼女を見て雫は香織の強さに親友として誇りを感じていたのだ、だがそんな香織を見て光輝は何を勘違いしたのか
光輝「香織・・・君の優しいところは俺は好きだ、でもクラスメイトの死に何時までも囚われちゃいけない、前に進むんだ、南雲や藤丸、マシュさんもきっとそれを望んでいる。」
雫「ちょっと、光輝。」
光輝「雫は黙っていてくれ、例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ、香織、大丈夫だ。俺が傍にいる、俺は死んだりしない、もう誰も死なせはしない、香織を悲しませないと約束するよ。」
雫「また、いつもの暴走ね、香織。」
香織「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。・・・えっと、光輝君の言いたい事も分かったから。」
光輝「そうか、分かってくれたか。」
光輝の見当違いの言葉に香織は苦笑するしかなかった。例え香織の気持ちを伝えても光輝には伝わらないだろう。光輝の中では既にハジメ達は死んだ事になっている。立香とマシュについては生きてる事が分かったがそれを伝えても彼は信じようとはしないだろう。イケメンで文武両道とくれば大抵の幼馴染の女子は惚れるだろ、だが雫は厳格な父親の影響、また天性の洞察力で光輝の欠点とも言うべき正義感が強い思い込みに気が付いていたから。香織の方は生来の恋愛鈍感スキルと雫から色々と聞かされているので幼馴染として大切に思っているが恋愛感情には結びつかなかった。
恵里「香織ちゃん、私、応援してるから、出来る事があったら言ってね。」
女子生徒1「カオリン~、鈴はいつでもカオリンの味方だからね。」
香織に話掛けたのは中村恵里と谷村鈴だ、中村恵里は眼鏡を掛けたナチュラルボブの黒髪の女の子だ、性格は温和で本が好きで実際図書委員を務めている。だが檜山を除き彼女の本性に気づいている者はいない。立香とマシュでさえ気づいていたかどうかは不明だ。もう一人は谷村鈴、高校生にしては低身長の百四十二センチの元気っ子でありクラスのマスコット的な存在だ、唯ちょっと、残念な一面もあるのだが、二人もまたハジメ達が奈落落ちたあの日から香織の気持ちや目的にも賛同してくれている。
香織「うん、恵里ちゃん、鈴ちゃん、有難う。」
香織が二人にお礼を言ったが鈴が恵里の降霊術でハジメを生き返らせて侍らせるという話になり恵里にデリカシーが無いと突っ込まれていた。恵里の転職は【降霊師】だ、降霊術は闇系統魔法の中では最高難易度の術で死者の残留思念を読み取り聖教教会の中には司祭に何人かいてそれらを用いて遺族等に伝えるという聖職者らしい事も行っているという。だが実際は死者の残留思念を魔法で実体化させ能力を与えたりまた劣化するものの生前の実力や技能をそのままに傀儡化させることも生身の人間に憑依させることも可能だ、しかしある程度の会話は可能だが見た目が青白い幽霊そのものなのでまた死者の魂を使役する事に嫌悪感を覚えているので彼女自身使えていなかった。
そんな四人を正確には香織を見つめる人物がいた、檜山大介である。あの日王都に戻って暫く経ったころ案の定、あの窮地を招いた檜山には厳しい非難が待っていた。だが檜山自身その事は予想出来たのでひたすら土下座に徹しそれを光輝の前で行い許しをもらった。光輝ならこうすれば許してくれることは予想出来ていたし香織も生来の優しさから謝罪する檜山を責める事はなかった。唯雫は薄々気づいていたようだがまた檜山は例の人物の命令も黙々とこなしていた。とても恐ろしい命令だったが一線を越えてしまった彼はもう止まる事は許されなかった。
檜山(あいつは狂ってやがる、・・・だが、あいつに付いていけば香織は俺の・・・。)
言う事を聞けば香織が手に入る、その言葉に暗い喜びを感じ思わず彼は笑みを浮かべる。
近藤「おい、大介。どうかしたのか。」
檜山「い、いや何でもない、もう六十層を超えたんだと思うと嬉しくてな。」
近藤「あ~、確かにな、後五層で歴代最高だもんな。」
中野「俺等、相当強くなっているよな、全く、居残り組は根性なさすぎだろ。」
斎藤「まぁ、そう言うなって、俺等みたいなのが特別なんだからさ。」
この四人は今なおつるんでいる。戻ってきた当初は例の事もありギクチャクしたが今では前のような関係に戻っている。唯居残り組に対しては態度がでかく横暴な態度に苦情が出ている。だが実力があるのも確かなので文句は言えない。だが勇者のパーティーには及ばないので光輝達の前では大人しくしている。一行は問題なく歴代最高となる六十五層に到達した。
メルド「気を引き締めろ、ここのマップは不完全だ。何が起こるか分からんからな。」
メルド団長の言葉に光輝達は気を引き締める。暫くすると大きな広間に出た。何となく嫌な予感しそれは的中した。案の定部屋の中央から魔法陣が浮かびあがった。それは以前見た事がある赤黒い脈動をする直径十メートル程の魔法陣、その中からあの怪物、ハジメ達を奈落に落ちる原因の一つとなった怪物ベヒモスだった。
光輝「ま、まさか、・・・あいつなのか。」
龍太郎「マジかよ、あいつ死んだんじゃなかったのかよ。」
光輝と龍太郎が驚愕の声を上げる。他の皆にも緊張の色が浮かんでいた。メルド団長曰く迷宮の魔物の発生原因は分かっておらず一度倒した魔物が再び現れる事も珍しくないという。だがいつでも逃げられるように退出の確保を命じ部下はおそれに従う。
光輝「メルドさん、俺達はもうあの時の俺達とは違う。何倍も強くなったんだ、もう負けはしない、必ず勝ってみせます。」
龍太郎「へっ、その通りだぜ、何時までも負けぱっなしは性に合わねぇ、ここらでリベンジマッチだ。」
光輝の物言いに龍太郎も賛同する。メルド団長もやれやれと肩を竦め今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと不敵な笑みを浮かべた。
ベヒモスがついに姿を現し咆哮を上げる。かつての悪夢の再開だが光輝達の目にはもう恐れはない。ベヒモスの鋭い眼光に皆緊張の色を浮かべるが唯一人ベヒモスを睨む人がいた。
香織「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私は彼のもとへ行く。」
香織だった。今、過去を乗り越える戦いが始まった。だがそんな彼らを物影から誰かが見つめていた。
???「さて、お手並み拝見といきましょうか。」
実はその人はハジメ達の世界では最も有名な英雄であることはこの時誰も知らない。そしてその人がある人によって召喚されたことも。