二次創作小説(新・総合)
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- Fate/Lost Hope ~空白の聖杯戦争~
- 日時: 2019/09/26 15:13
- 名前: 餅兎ユーニアス (ID: sE.KM5jw)
叫びが聞こえる。目の前の悪夢に怯える絶望の声。
泣き声が聞こえる。失われていく物への苦しみの声。
笑い声が聞こえる。無慈悲に灯火を刈り取る嘲笑の声。
……虚ろな声が聞こえる。
「こんな筈じゃなかったのに。こんな事を望んでいなかったのに」
全てを嘆く、後悔と懺悔。
渦巻く負の闇は、止まることを忘れ全てを呑み込む。
それは、小さな願いから始まった。
今此処にて、語ろう。
誰の記憶にも残らなかった、「空白の聖杯戦争」を。
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皆さんどうもこんにちは!そうじゃなくてもこんにちは!
朝でも夜でもこんにちは!この挨拶に聞き覚えがある方は察して←
多分知ってる人は知ってます!餅兎ユーニアスです!
え?誰だコイツ?そう思った方は>>1 の茶番見れば多分分かる!
とにかく!開いてくれたのならば!楽しんで!(圧倒的投げ槍感)
【もーくじ】
設定 >>2
番外 『茶番 初盤の幕』 >>1
断章 『永遠が告げる始まり』 >>3 >>6-7 >>10
序章 『聖杯戦争』 >>11-14
- Re: Fate/Lost Hope ~空白の聖杯戦争~ ( No.7 )
- 日時: 2019/08/27 17:59
- 名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: ymYDaoPE)
「行ってきます」
公との会話から数分後。青のパーカーに紺色のジーンズ、いつもとそんなに変わらない私服に着替えた翔夜は、玄関のドアを開きながら大きめな声で言い、返事を待たずに家を出てしまう。翔夜の両親は祖父の家に行くと突然言い出した事に少し驚いていたが、その理由を聞こうとはしなかった。
気を遣ってくれた事に、感謝しないとな。そんな事を思いながら青い自転車に跨がり、少し重いペダルを漕ぐ。少しだけ鈍い金属音を鳴らして、自転車は進み出した。
鮮やかな緑の葉が少し温い風に揺られ、木漏れ日の影を掻き乱す。だが、葉が揺られる音も、夏の風物詩とも言える蝉の鳴き声も、翔夜の耳には届いていなかった。目指すべき場所へと、青い自転車は風を切って走る。周りの景色に気を向けるほどの余裕なんて、無かった。
大きな十字路に差し掛かった所で、信号が赤に変わる。そこまで急なブレーキでは無かったが、止まった時に後ろから感じた風は強かった。
いつまでも赤から変わろうとしない信号を見つめながら、心の中で焦る。別に焦る必要なんて無いのかもしれないが、翔夜は何故か急ごうとしていた。早く行かなければいけない。見えない何かに背中を押される様に。
信号が青に変わる、その直後にペダルを勢いよく踏み、漕ごうとした。
翔夜の左腕を掴む者がいなかったら、そのまま漕ぎ進んでいただろう。
突然、左腕を掴まれた事に驚いた翔夜は、足に力を入れる事を止めて横を向く。
翔夜の腕を掴んでいたのは、白と黒のコートを着た男性だった。左分けの明るい茶髪の、青い瞳を持つ男性が視界に入った直後、渡ろうとしていた道を巨大なトラックが勢いよく横切っていった。
「何を急いでいるかは聞きませんが、油断は禁物です。信号の青が必ずしも安全では無いという事を、お忘れなく」
微笑みながら男性は穏やかな声で言う。呆然としていた翔夜は我に返ると、慌てて「ありがとうございます」と言い、横断歩道を渡っていった。
「えぇ、えぇ。貴方はここで死ぬ訳にはいきません」
去り行く翔夜の背中をじっと眺めながら、男性は微笑み、そう呟く。彼の周りには誰もおらず、周りから見れば独り言を話している様に見えるだろう。しかし彼が向けた言葉を受け止める者が、一人だけいた。
「相手が参加前に死ぬのは悲しい事です。そうですよね、『アサシン』?」
彼の言葉に応える様に、小さな少女の笑い声が聞こえてきた。
果たして、その言葉を受け止めた者を、「一人」と呼んで良いのだろうか。
- Re: Fate/Lost Hope ~空白の聖杯戦争~ ( No.8 )
- 日時: 2019/08/27 18:17
- 名前: クロノスエボル (ID: OiQJLdzt)
- 参照: http://クロノスエボル
作者さん、初めまして。ヴァン活~ヴァンガード活動~作者のクロノスエボルです。Fate/Lost Hope見ました。最高です。是非、私の作品、ヴァン活~ヴァンガード活動~もよろしくお願いいたします。
- Re: Fate/Lost Hope ~空白の聖杯戦争~ ( No.9 )
- 日時: 2019/08/28 20:45
- 名前: 餅兎ユーニアス (ID: u5ppepCU)
餅兎「見て!最高だってぇ!やた!めちゃ嬉しい!」(謎の反復横飛び)
ミルラ「何気に初めて話す方ですね……あ、初めまして!」
ゼネイラ『地味に宣伝された気がするのだが』
餅兎「感想込みであいさつもくれたからセーフです。でもグレーですね……
此処で宣伝をサブメインにするのは、どうかお控え下さい……」
ミルラ「素直に、感想はありがとうございます!」
アリア(何気に初登場)「セイバーまだ?」
餅兎「まだですね!」(キッパリ)
感想ありがとうございます!
- Re: Fate/Lost Hope ~空白の聖杯戦争~ ( No.10 )
- 日時: 2019/08/29 00:18
- 名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: u5ppepCU)
同時刻。
音呼鈴市の右端に位置する、大きな洋風の屋敷。日本の街並みからは想像が付かない、海外の一部を切り取って張り付けたかの様な屋敷の中庭にて。キャンバスが広げられた大きな人工芝の上では、小さな少女が可愛らしい鳥の絵をキャンバスに描いていた。
真っ白なショートヘアーに、光を持たない空色の瞳。クリーム色のフリルに彩られた、まるでピアノの発表会にでも行くかの様な黒いドレス。静かに木々を揺らすそよ風に吹かれながら、少女は楽しそうに絵を描いていく。少し雑で歪な形の絵が出来上がった時、少女は誰もいない真横を向いて笑顔を見せた。
「お母様!見てください!小鳥さんの絵が出来ましたよ!」
楽しそうな少女の声が虚空の中を響き、広い空の中に消えていく。返事の無い会話を、一人の少年が遠くから見つめていた。
真ん中分けの白い髪は長く、肩に届きそうな程。少女と同じだが光を宿す水色の瞳。黒い執事服を見に纏い薄手袋を着けている様子は、少年執事の様だ。
「……『エゼル』。報告を頼む」
少年が言うと、柱の影から一人の侍女が出てきた。茶色の髪は背中の上で大きくカールしながらも一つに纏められ、髪よりも鮮やかな茶色の瞳が、少年を見つめていた。
「かしこまりました。朝の状態について御報告致します。
6:57分、起床。その後、着替えを行ってからは虚空に向かって会話を行いながら、この中庭へとやって参りました。以降、今の今まであの様子です」
「……幻覚の頻度は」
少年の言葉に、エゼルは黙りこむ。しかし、それは一瞬の事だった。
「以前より回数を増しています。このままでは最高回数の12回を上回る可能性があるため、出来る限りの処置を行う方針です」
「……そうか」
少年が少し悲しそうに俯いた時、だった。
少女の視線が突然切り替わった。横を見ていた少女は前を向き、遥か彼方を見つめたまま動こうとしない。何も喋らずに遠くを見つめる少女を見て不思議に思った少年は、声を掛けようと一歩踏み出した。
『■■■■■■■■■■■■■■』
ノイズが、聞こえた。
少年が咄嗟に辺りを見渡す。エゼルは突然の少年の動きに首を傾げ、少女は未だに虚空を見つめていたが、突然、少女が少年の方を向いた。白い髪が、静かに揺れる。
「……兄様。聞こえましたか?」
「……『リーゼロッテ』?」
少年が不思議そうに名前を呼ぶと、リーゼロッテと呼ばれた少女は静かに微笑んだ。
「歌が、美しい歌声が、聞こえました」
平穏な時を送る、音呼鈴市。
夢の終わりは確実に、永遠なる平穏の終わりを告げていた。
それに気付くのは、今では無いのだろう。
聖杯戦争開始まで、あと17時間。
- Re: Fate/Lost Hope ~空白の聖杯戦争~ ( No.11 )
- 日時: 2019/09/13 23:02
- 名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: gz2yfhrF)
序章 『聖杯戦争』
翔夜が祖父の家に着くまでに、たったの五分しか掛からなかった。それなのに何故だろうか、翔夜の中ではそれ以上の時間が経っていた。たったの五分で絶え絶えになった息を、自転車を停めながら整える。
翔夜が来た家は和風の屋敷に近く、広い庭が広がっていた。その家の門に邪魔にならないように停め、敷石が丁寧に並ぶ小道を歩けば、少し大きめな戸を軽くノックした。
「何があって此処に来たかは知らんが、儂はここだよ」
横から声が聞こえ、視線を向ける。紺色の袴を見に纏う白髪の老人、翔夜の祖父が、中庭に続く道から歩いてきていた。
「爺ちゃん、俺……相談したいことが」
「そんな血相を悪くして、息が絶え絶えになるほど急ぐとはなぁ……どれ、まずは家に入りなさい。落ち着いたら、ゆっくり話を聞こう」
本当は今すぐ聞いてほしかった。ゆっくりしている暇などなかったのだが、祖父にそう言われては仕方がないのだろう。翔夜は無言で頷いて、鍵の掛かっていない戸を開けた。
靴を脱いで端に揃えて置き、長い廊下を少し渡って居間へと向かう。小さい頃から思っていたが、何故一人でこんな広い家に住んでいるのだろうか。心の中で呟きながら、翔夜は居間へと続く戸を開けた。
「わざわざ家から来たのか?そりゃあ大変だったろうに、連絡の一つや二つを寄越してくれれば、儂が迎えに行ったというのに」
入口とは違う、中庭を通ってきた祖父が優しく言う。祖父は元から早起きだから、本当に迎えに来たのかもしれない。しかし、面倒をかけたくないという思いと、そこまで頭が回らなかった、という理由があった。
「……それで、何があったんだい?」
果たして、信じてくれるだろうか。不安を胸に、翔夜は口を開く。
「夢を……見たんだ」
「ほぉ、夢?どんな内容だったんだい?」
「白い……白い空間で、ノイズの後に現れた褐色の女性に言われたんだ。平和が終わるとか、聖杯戦争が始まるとか……あと、爺ちゃんの家に行けって……」
他の人から聞いてみれば、全く現実味の無いおかしな話だろう。しかし、そんな継ぎはぎな説明にも関わらず、祖父は黙って聞いていた。穏やかな顔に、深刻な様子が浮かび上がってくる。
「聖杯戦争……」
「爺ちゃん、知ってるのか?」
「いや……昔、どこかでそんな言葉を聞いた事があっての。作られた適当な言葉と思っておったが、まさか本当にあるとは」
祖父がそう言って軽く笑う。微笑ましい様子に気が緩みかけるが、今はそうしている暇なんて無い。「どうしたらいいんだ」と尋ねると、祖父は深く考える様子を見せた。
「名前からして神聖な何かであろう、教会の神父様にでも聞いてみたらどうだろうか?」
「……え」
「儂にだってちゃんと考えがあるものだよ。信じて行ってご覧なさい」
冗談だろ、と言葉が出る前に言われ、引き下がってしまう。どうやら祖父は本気らしい。穏やかに言っているが、言葉だけでもう分かる。そんなに言うのなら行くべきなのかもしれない。数分の沈黙の後、「分かった、ありがとう」とだけ言うと、翔夜は立ち上がって向かおうとした。
「あぁ、ちょっと待ちなさい」
祖父に呼び止められ、振り返る。祖父は立ち上がって何処かへ向かうと、何か小さな物を持って戻ってきた。少しだけ汚れた、小さな黒い紐を持って。
「昔の剣士が使っていた刀に、この紐が使われていてね。お守りにでもすると良いよ」
黒い紐を小さな桜色の小袋に入れて、祖父は笑顔で翔夜に手渡す。静かに受け取ると、肌触りのいい布と、少しだけ荒い紐の感触を感じた。
突然やってきたにも関わらず、こうやって気にかけるなんて。その事に感謝と少しばかりの謝罪を込めて、翔夜は「ありがとう」と言った。