二次創作小説(新・総合)
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- 夢の対決!
- 日時: 2020/02/05 11:54
- 名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)
色々なキャラを作品の垣根を超えてバトルさせようって企画です!
私の信条は「読者を興奮させまくる熱い試合を提供する!」この一点だけです!
それでは夢の対決をはじめましょう!!レッツ、ショーターイム!!
~試合一覧~
「幽霊」ドロンVS「戦闘機械」金竜飛
「μ'sの大和撫子」園田海未VS「スーパーロボット」キングジョ―
「aquasの守護神」黒澤ルビィVS「黄金の筋肉を持つ男」キントレスキー
「月夜の弓」キュアセレーネVS「鬼神」ガルオウガ
「宇宙№1根性」矢澤にこVS「心の隙間お埋めします」喪黒福造
「癒しの天使」キュアアンジュVS「カレーの伝道師」カレクック
「μ'sの大和撫子」園田海未VS「ヒットマン」ボーン・コールド
盛り上がって興奮して、日頃のストレスを大解放しちゃってください!
- Re: 夢の対決! ( No.9 )
- 日時: 2020/01/31 21:36
- 名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)
「よく逃げずに来たものだ。その度胸だけは認めてやろう」
甲子園球場に設置された特設リングにおいて、戦いがはじまろうとしていた。
会場は超満員で多くの人がこの試合に注目しているのがよくわかる。
モヒカン頭に瞳孔のない緑の瞳、逞しく鍛え上げられた黄金の肌を持つ男は、腕組をして対戦相手に言った。彼の名はキントレスキー。肉体を鍛えることを愛し、強さを求め、強敵と正々堂々の勝負をすることを何より好んでいた。そんな彼の相手は黒澤ルビィ。ツーサイドアップの桃色の髪と青緑色の瞳が特徴の小柄な少女だ。性別は勿論のこと、性格も硬派と臆病と対極に位置する2人がプロレスバトルをするというのだから、期待は高まるばかりだった。観客の割れんばかりの声援にルビィは困惑と緊張を覚えていた。
「うゅ……ルビィ、あんな怖い人と戦えないよぉ」
涙目になるルビィを優しく抱きしめるのは姉のダイヤだ。
「大丈夫ですわ。あなたならきっと立派に戦えますわよ」
「お姉ちゃん……」
「わたくしは信じてますわ。ルビィは強い子ですから」
「うん、がんばルビィ!」
姉の言葉で元気を取り戻したのか、振り返ると少女は真剣な顔つきでキントレスキーを見つめていた。その様子に黄金の男もニヤッと笑って。
「良い面構えになったな」
試合開始。鐘が鳴ると同時に飛び出したのはキントレスキーだ。ダッシュからのタックルを敢行し、その巨体でルビィをリング外まで吹き飛ばそうとする。
「怖いっ」
ルビィが咄嗟に体勢を屈めたので体当たりは不発に終わり、しかもルビィに足を取られ、転倒してしまった。素早く立ち上り、今度は拳で攻める。
遠かった拳が目の前にぐんぐん迫ってくる恐怖。ルビィにはキントレスキーの拳が岩石のように巨大に感じられた。しかし、彼女は逃げない。名前と言動で誤解されがちであるが、彼女は曲がりなりにも黒澤家の令嬢である。名家の生まれということもあり、心の中は強かった。唇を噛み締め、両腕をぴったりとくっ付け、アイドルの命である顔面を死守。
「がんばルビィ!」
後方に滑りながらも、何とか彼の一撃を防げた。
しかしまだ攻撃は終わりではない。二発目のパンチが迫る。
ルビィは正面ではなく、くるりと背を向けた。
突然の行動にキントレは一瞬の動揺が生まれるも、すぐさま鉄拳を放つ。
背中に完璧に撃ち込まれた正拳突き。だがルビィは倒れない。
「おおおおおおッ!」
渾身の12連打突きを炸裂させるが、ルビィの足はリングに根を張ったかの如く、ビクともしない。拳ではなく蹴りを打ちこんでも結果は同じだった。
小柄な少女。スクールアイドルとして運動をしていると言っても、戦うべく鍛えている自分とは比較になろうはずがない。それなのにこれだけ攻撃をしても、一向に倒れる気配が無いのは不自然だ。
「私の鋼の肉体は全てを破壊する。私に壊せぬものなど存在しないッ」
多少の防御力など恐れるに足りずとばかりにキントレスキーは筋肉を膨張させ、力を増大させる。撃ち込まれた一撃はルビィの制服の背中部分が吹き飛ばされ、白い皮膚が露わになるほどの威力を有していた。
「その制服とやらが防御の役目を果たしていたのだろうが、これでお前を守るものは何一つとして無くなった。盾ではなく、己の肉体を武器にして私と戦えッ」
再三の打撃によりルビィの背は血塗れとなり痛々しい傷もできているが、それでも彼女は踏ん張りを利かせ、耐えている。
「ふんばルビィ……」
流れる汗、全身を走る痛みと気持ち悪さで涙がボロボロと溢れ出す。
吐き気を唇を噛んで抑えている。傍目から見ても肉体は限界を超えていた。
それでも彼女が決して折れないのには秘密がある。
一つは背中は正面と比べ数倍の耐久性があること。
人間離れしたキントレスキーの剛拳を正面で受けたルビィはその威力を痛感し、二発目を真っ向からガードしては腕の骨が砕かれると考えた。そこで背後を向き、己の背に防御の全てを託したのだ。
もう一つは彼女の精神の強さだった。一度決めたことは最後までやり通す。
それこそが「がんばルビィ」であり「ふんばルビィ」でもある彼女の信念なのだ。
度重なる打撃に遂に彼女は口を開き、大量の血と吐しゃ物を吐き出した。
あまりに凄惨な妹の姿に我慢できず、リングに入ろうとするダイヤ。
しかし、ルビィが手で制した。
「お姉ちゃん、入らないで!」
「でも、このままではあなたが!」
「ありがとう。心配してくれて。でも、ルビィ、この試合、最後まで続けたい」
「ルビィ……」
肩に肘を入れられながらも、ルビィは微笑んでいた。
「お姉ちゃん、ルビィに何があってもタオルを投げないで」
「えっ……?」
「ルビィからのお願いだよ」
「わかりましたわ、ルビィ」
ダイヤは赤いタオルをぎゅっと握りしめ、リングを降りる。
血を分けた姉妹。姉は妹が好きだった。妹もまた姉を深く愛していた。
今、妹はあまりにも過酷な試練に挑んでいる。止めるのは簡単。
タオルをリング内に入れれば降参と見なされ負けが確定する。
そうなればルビィは苦痛から解放されるのだ。誰がどう見ても、今のルビィに勝算は無い。それは十分すぎるほど理解できる。だが頭と心で理解できる現実を妹は拒んだ。運命に懸命に抗っているのだ。ルビィは格闘経験の無い素人だ。そんな彼女が屈強な化け物を相手にあれほど食い下がっているではないか。目頭が熱くなり自然と透明な液体が頬を伝っていた。
「あなたはわたくしの誇りですわ」
キントレは殴り続けながらも、心の中で疑問を抱いていた。力も技術も肉体も背丈も私の方が圧倒的に上のはず。なのに、この小柄で華奢なまるで小動物のような少女は倒れない。兎が獅子に挑むほどの実力差であるにも関わらず、何故、勝負を諦めない。どれほど耐えようとも結果は見えている。努力など無意味。勝利こそ全て。だが、この私が奴を倒せない。白い肌は裂け、赤い血が滲んでいる。
彼女はプリキュアに非ず。単なる女子高生に過ぎない。しかし、その女子高生がここまで粘っているのだ。この私を相手に。
キントレスキーは殺気を全開にし、弓のように大きく腕を引いた。全身全霊の一撃を打ち込むのだ。男らしく咆哮し、決着の一手を放った。
だが、それが命中することは無かった。
肉体に着弾する寸前にルビィが首を垂らし、両膝をマットに突いたからだ。
白目を剥いているが、口元の笑みは消えない。涙で頬はびしょ濡れ、口からは血が滴り、足元は赤い血と嘔吐物が混ざり合い、水溜まりとなってる。目を覆いたくなるほどの惨敗。けれど、彼女の姿は太陽に照らされ、輝いていた。
深追いは無用と拳を下ろし、踵を返す。勝者の顔に笑顔は無い。手加減は無い。葬り去るつもりで戦った。だが、そのすべてに彼女は耐えきったのだ。自分よりもずっと小さな身体で。
しかも、単に耐えただけではない。
この試合、彼女はただの一度も自分に攻撃をしなかった。
臆病者とも取れるかもしれないが、逆に言えば相手を傷つけたくないから攻撃しなかった。最後の最後まで防御するという己の信念を貫き通したとも解釈できる。キントレスキーは背を向けたまま、断言した。
「結果的には勝者は私だが、試合内容に関しては黒澤ルビィ、お前の勝ちだ!」
- Re: 夢の対決! ( No.10 )
- 日時: 2020/02/01 21:20
- 名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)
「夜空に輝く! 神秘の、月明かり! キュアセレーネ!」
香久矢まどかはキュアセレーネに変身し、屈強な青鬼のような宇宙人を見据える。鍛え上げられた圧倒的な巨体から放たれる威圧感は幾度対峙しても戦慄を覚える。ノットレイダーの最高幹部であるガルオウガはセレーネの存在が以前から気になっていた。5人の中では頭脳明晰な部類に入り、力押しではなく卓越した技巧で必要最低限の立ち回りで敵を制する。弓術にも優れているので、遠距離攻撃においても強者である。プリキュアとノットレイダーの強者同士が、誰もいない夜の大地で決闘を行う。ガルオウガから直々の挑戦状が送られてきた際、まどかは父にも仲間にも告げず、1人で向かうと決めていた。実力を過信していたのではない。仲間に危険が及ぶことを承知で、敢えて告げなかったのだ。
「1人で来た点に関しては褒めてやる。だが、お前では決して私には勝てぬ」
「やってみなければわからないこともあります」
「ならば教えてやるとしよう。そして味わうが良い。我が圧倒的な武力をその身でなぁ!」
語気を強め、いきなり鉄拳を見舞ってくるガルオウガ。俊敏性に優れるセレーネがバックステップで回避するが、拳は二発、三発と立て続けに打たれていく。
「うおおおおおおお!」
大きく腕を引き、放たれた正拳はセレーネの顔面に命中。
直撃した彼女の口が切れ、血の雫が流れる。
「もう一発!」
再度振り下ろされた拳を掻い潜り、ガルオウガの腹に寸勁。
通常なら吹き飛ばされる威力のそれを数歩後退しただけで耐えきり、鬼は前進。
猛牛のような突進でセレーネを吹き飛ばすと、彼女の細い脚を掴んで地面に叩きつける。
「軽い。あまりにも軽すぎる」
背に激痛が走りながらも、立ち上がり、セレーネは脇腹に蹴りを炸裂。
だが彼の表情は変わらない。
「お前は防御は巧みなようだが、攻撃となると軽さが現れる」
首を掴んで軽々と持ち上げるガルオウガ。セレーネはもがくが丸太のように太い腕は微動だにしない。
「ハァハァ……」
体内の空気を吐き尽くしてしまい、酸欠気味になるが彼女は勝負を捨てない。
超至近距離からアローを構え、弓を発射。光の弓で怯ませ解放させると、大きく距離を放つ。そして弓矢の連射。連撃にもガルオウガの鋼の肉体は傷一つ付かない。
「いい加減に諦めろ。お前に勝利の二文字は無い」
巨足で力任せにセレーネを弓ごと踏みつける。
「きゃああああああッ」
絶叫。
弓は一撃で破壊されるが、踏みつけは止まらない。
何度も踏みつけられ、彼女の綺麗な紫色の髪は泥に汚れ、口元は吐き出した血や涎で濡れている。服には土埃が付着し、戦闘前の美しさは見る影もない。
だが彼女は生えている雑草を掴み、力を込める。その瞳には闘志があり、月夜でもわかるほどに輝いていた。
「しゃらくさい」
一蹴し、セレーネの腹を殴る。くの字に身体が折れ、猛烈な吐き気に襲われる。
腹など、これまでのまどかの人生で殴られたことが無い。それも相手はガルオウガだ。いくら変身していると言っても無事というわけにはいかなかった。
地面に嘔吐するが、その目はしっかりと敵を睨みつけている。
「何が……何がお前をここまで頑張らせる!?」
「仲間を――守りたいという想いですッ」
互いの肘鉄が衝突してからの、足を止めた猛烈な打撃の打ち合い。普段は静の動作が印象的なセレーネだが、この時は違った。彼女の性格とは異なる真っ向からの殴り合いをガルオウガに挑んだのだ。
「笑止」
己の武に自信があるガルオウガ。だが、次第に押されてきている。
拳の威力は自分が上のはず。なのに、どうして劣勢に陥る。
セレーネは威力不足を打撃数で補っていた。思考を停止し、殴ること以外の一切を忘れた一種の無の境地。そこから繰り出される打撃は散々痛めつけられた者とは思えぬほどの回転数を誇っていた。
「はあああああああああッ!」
全身全霊を込めた最後の一撃はガルオウガの頬を完璧に穿ち、ゆっくりとセレーネは後方に倒れ、動かなくなった。気絶からの変身解除。
彼女にはもう戦う力は残されていない。けれど、ガルオウガは追撃をしなかった。
否、できなかったのだ。彼女の最後に放った打撃は彼に多大なダメージを与えていた。頬を摩り、忌々しい顔でワープするノットレイダーの最高幹部。
泥臭いながらも彼女は勝利を得ることができた。
- Re: 夢の対決! ( No.11 )
- 日時: 2020/02/04 07:01
- 名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)
矢澤にこは体格には決して恵まれてはいない。けれど並外れた根性で数多の戦いに勝利をしてきた。卑怯な手段を総動員するジャギや圧倒的な巨体のサンシャイン。不利と言われ続けた下馬評を覆し、勝利を手にしてきた。戦闘中の参加者の中でも指折りの強豪としてその評価は高い。けれど、最近、彼女は不調だった。
「困ったにこ。どうすればいいにこ」
帰宅途中、1人ということもあってか彼女は珍しく嘆息した。理由はここ最近の戦績だった。プロ野球選手の花形満に敗北して以降、負けや確保が続いているのだ。花形は野球のプロでありその実力は天と地の差があることはにこも理解していた。従って彼との勝負は負けて当然と割り切っているのだが、問題はそれ以降である。逃走中に参加しても序盤確保ばかりで目立てていないのだ。
「宇宙№1アイドルのにこにーとしてはやっぱり1度くらいは逃走成功もしたいし、トーナメントでも優勝したいニコね」
にこは評判とは裏腹に戦闘中の優勝経験は無い。決まってねこ娘のフォローに回り、彼女に美味しいところを奪われてしまうのだ。
「たまにはにこもラスボスを撃破してビシッと優勝したいニコ!」
矢澤は不満を爆発させた。先日参加した枕投げ大会では1回戦敗退。
星野との対決では一撃も食らわせられずに人形に姿を変えられてしまった。
自分が弱くなったのか、それとも相手が強すぎるのか。
前者の原因は怠慢と慢心になるが、後者だとすると自分に足りないものは何か。
歩きながら悶々と考えるが答えは出ない。頭の中にモヤモヤを抱えていると。
「もしもし」
「はぁ? 急に何? にこは忙しいから後にして」
苛立っている時に声をかけるKYな男に素を出して対応したにこは、振り返って男を観て開いた口が塞がらなかった。
「あ、あわわわわわわわ~!」
混乱そして感動。
思わず後ずさりしてしまう。
にこの目の前に現れたのは黒のソフト帽子に垂れ目と福耳、黒いスーツの肥満体の中年男だった。
「矢澤にこさんですね」
男がよく響く低音で答えると、にこは何度も頷いた。嬉しすぎて声にならない。
「はじめまして。私はこういう者です」
差し出された名刺を受け取ると書かれていたのは。
『ココロのスキマお埋めします。喪黒福造』
名刺と男を往復し確かめる。間違いない、本人だ。
「もぐたーん!」
喜びが抑えきれず、にこは男に抱き着いた。
「もぐたんもぐたんもぐたーん!」
「ホッホッホッホッホッホ」
あだ名を連呼しながら喜びを全身であらわす。内心では凛みたいだと思いながらも。矢澤にこは喪黒福造の大ファンなのだ。アライズと同じくらい愛している。
その彼がどうして自分の元へ来たのか。ビックサプライズにも程があった。
「にこ、会えて超嬉しい!」
「私もです」
「でも、どうしてもぐたんがにこの所に」
「実はある方に頼まれたのです。あなたと戦ってほしいと」
「え?」
「お手間は取らせません。公園で一勝負しましょう」
すぐに済むというのでにこに断る道理はどこにも無かった。
公園に入り、鞄を置いて距離をとる。喪黒は構えを何もせずただ棒立ちで告げた。
「どうぞ。遠慮なさらずに全力でかかってきてください」
「わかったにこ!」
にこは突進し、勢いをつけて飛び蹴りを見舞う。けれど簡単に躱される。
足払いは跳躍で、打撃で後退でと肥満体とは思えぬ俊敏な動きで命中させない。
自分を技を悉く躱しながらも、その表情は笑顔のままだ。そしてにこのパンチを掻い潜ると彼女の目の前に指を突き出した。
「これは伝説の……」
冷や汗を掻くにこ。
次の瞬間。
「ドーン!!」
凄まじい声で呪文が放たれ、にこは気絶した。その顔には満面の笑顔が浮かんでいた。自身の鞄を拾い、左右に身体を揺らしながら去っていく喪黒。
「わずかな時間でしたが、喜んでいただけて何よりです。それでは、またいつかお会いしましょう。ホーッホッホッホッホ!」
矢澤にこ役の徳井青空さんが喪黒福造の大ファンなので、今回の戦いを思いつきました。
- Re: 夢の対決! ( No.12 )
- 日時: 2020/02/04 21:11
- 名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)
薬師寺さあやは清楚な外見に似合わず辛い食べ物を好んでいた。そんな彼女が近頃心を奪われてやまないものがあった。それは――
『カレクックのカレー 完売』
「あ~あ。今日も食べられなかったか」
下校時間。店の前を通り過ぎたさあやは軽くため息を吐いた。
インドの超人カレクックがカレー専門店を開いてから一か月になる。カレーの本場の生まれだけあり彼のカレーは激辛だが美味だと評判が高かった。けれど、その人気の高さ故にいつもさあやの下校時間前には完売してしまうのだ。
平日は勿論、休日も超満席。食べたいと願いながらも、中々口にできない現実に彼女は悶々としていた。
「いつか食べられますように……」
軽く手を合わせて祈り、店から離れようとする。その瞳には涙を溜めて。
その時、店の扉が開き、何者かとさあやはぶつかった。
「キャッ」
軽く悲鳴を上げ、尻餅を付く。すると褐色の手が差し出された。
「君、大丈夫かね」
頭にカレーライスを載せ、袈裟姿のスマートな超人がそこにはいた。
「はい。ありがとうございます。カレクックさん」
差し出された手を取り、立ち上がるさあや。
「よく見ていなかったとはいえ、申し訳ないことをしたね。何か、君に詫びがしたい」
「それなら、お言葉に甘えて、カレーを頂きたいのですが、ダメ……ですか?」
上目遣いで見つめるさあやにインドの男の頬が赤く染まる。
美少女にそんな顔で頼まれたら男なら誰でもそうなる。
カレクックは暫しの間、少女を見つめ、思案した。
この子、どこかで見たことがある。
そして手をポンと叩き、合点した。
「君はもしかして、野菜少女で有名な薬師寺さあや君ではないかね」
「は、はい」
「やはりそうか。通りでどこかで見たことがあると思った。そして、コレは秘密かもしれないが、君はキュアアンジュだね」
「!」
さあやは正体を看破され、瞳孔を縮めた。プリキュアであることは関係者以外誰も知らないはず。それを一瞥しただけで見抜くとは、超人は違う。カレクックは腰に手を当て、厚い唇で言葉を紡ぐ。
「君の願いを叶えたくば、私と戦ってからにしないかね。運動した後のカレーは格別に美味しくなる」
「カレクックさんとトレーニングできるのなら、ぜひ!」
専門店の地下はプロレスのリングが設置されていた。怪獣や悪の超人と戦い平和を守るためには日々の鍛錬を欠かさない。スパイスの香ばしさと鉄分を含んだ血の臭いが、さあやの筋の通った鼻をくすぐる。やや緊張しながらもリングに上がり、キュアアンジュに変身。白と青を基調とし、天使を思わせるコスチュームに身を纏い、カレクックに向き合う。鐘は無い。どちらかが仕掛けた時が勝負開始だ。アンジュは以前、ルールーに最弱のレッテルを押されたことがある。戦闘力が弱いのは自覚していた。だからこそこの機会に己の腕を高めたいと考えていた。
「はあああああッ!」
普段は大人しいアンジュだが、今回は激辛カレーが食べられるのも手伝い、積極的に攻める。鋭い手刀をカレクックに振り下ろすが、彼は腕を交差させて防ぐ。
脇腹がガラ空きなのに気付き、蹴りを見舞うと脇と腕で右足を挟まれてしまう。
左足一本で全体重を支えねばならない不安定さだったが、彼女はインド超人の胸に掌底を打ちこむ。しかし痩せていると言えどもそこは超人。アンジュの張り手などではビクともしない。逆に両足を捉え、ジャイアントスィング。敢えて鉄柱の方角ではなくマットに衝突させたのは、優しさか、それとも相手を格下と判断したが故の余裕か。仰向けに倒れた少女の腹に鋭い蹴りを打ちこむ。
腹を抑えて悶絶するが、彼の追撃は止まらない。ヨガで鍛えた軟体でアンジュの首と太腿を両足で固定し、ダメージを負った胴、そして背骨を攻める。技としてはロビンマスクのタワーブリッジに近い系統だが、あちらは両腕なのに対し、こちらは足で極めているのが最大の違いである。骨が軋み、コスチュームと共に腹が裂け、流れた血が純白の衣服を染めていく。激烈な痛み。彼女がこれまで戦った敵はどれも打撃が主体であり、彼のような関節技は初めてだった。
以前、彼と対決したマキリータマンは腹の傷を反らすことで隙間を作って脱出した。しかしそれはテントウムシの超人が並大抵の精神力と耐久力を持つからこそ可能な芸当であって、学生のアンジュにはとても真似できるものではない。
口紅を塗った唇を噛み締め、額に汗が滲みながらも耐え続けるアンジュ。
脱出はできずとも技に耐える時間を延ばすことはできると踏んだのだ。
カレクックは最初からアンジュの命を奪うつもりはなかった。あくまでこれは練習試合なのだから、軽く汗が流せればそれで良い。なので彼女に降参を促した。
「ギブアップするんだ、アンジュ君」
「ダメです。ここで降参したら私は強くなれないから……!」
「その意気や良し!」
カレクックはガンジスブリーカーを解除すると、彼女が立ち上がるのを待ってから風をまいたように突進し、頭のカレールーをむんずと掴んでアンジュの腹に塗りまくる。へその中までもルーまみれとなったアンジュの裂けた腹にルーのカプサイシンの効果により痛みが何倍にも増幅されていく。それでも、彼女は踏ん張って倒れない。カレクックは容赦なく胃袋破りで腹を攻める。
首投げで倒すと顔面を固め、地獄の苦しみを与えていく。
「さあ、この苦しみから逃れたくばギブアップするんだ」
「嫌です。まだ、私は戦えます!」
カレクックの額を蹴り上げ、顔面固めから逃れる。
手四つからの力比べ。
1分、2分、3分……
両者の力は拮抗していた。だが、やがてアンジュの変身が解け、さあやに戻る。
傷口は癒しの力で塞がれていたが、体力の消耗は激しく暫くは目を覚まさないだろう。カレクックはタオルで己の汗を拭きながら、口角を上げた。
「格闘技術は未熟だが精神的には中々のものがある。気が付いたら私の特製カレーをご馳走してやるとしよう」
この時の戦いが良い経験になったのか、さあやはその後メキメキと実力を伸ばし、小型のミデンの大群程度なら一蹴できる実力を備えるまでになる。
- Re: 夢の対決! ( No.13 )
- 日時: 2020/02/05 10:45
- 名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)
人気のない工事現場で、園田海未は立ち尽くしていた。袴姿の自分以外は誰もいない。
灰色の砂埃が舞い、彼女は軽く咳き込む。海未は相手が現れるのを待っていた。暫くすると、トラクターの上の方から殺気が溢れているのが分かった。鋭く睨み、言った。
「そこですね」
「ムヒョヒョヒョヒョ。流石は園田道場の跡取りだけのことはあるな」
頭にターバンを巻き、鼻に大きな傷跡、細身で腰には短剣を装備した超人がトラックの影から姿を現す。そして、葉巻に火を付け、一服すると煙を吐き出し、暗い瞳で標的を捉える。
「お前には何の怨みも無いんだが、依頼が来たのでな。お前の命を貰っていくぜ」
「誰があなたなどに渡すものですか」
「頑固な奴だ。まあ、いいだろう。ヒットマンの恐ろしさを骨の髄まで味わうかい」
「望むところです」
海未が返答すると、超人ボーン・コールドは突進し、彼女の目前で跳躍。
両肩を支えにして倒立をすると、そこから彼女の両耳に蹴りを炸裂させた。
耳から血が噴き出すが、辛うじて神経は繋がっている。
ボーンは耳削ぎを試みたのだ。相手が少女であろうとも依頼の対象であるならば、手加減はない。肩から離れると、今度は彼女の背に延髄蹴りを打ち込み、昏倒させる。
掌が砂だらけになるが、何とか立ち上がり裏拳で海未は反撃の狼煙を上げる。
けれどそれを回避され、両膝で頭を挟み込まれてしまった。
骨の超人は軟体でもって海未の足を掴むと、力を込めて反り上げる。
「お嬢さんよぉ。お前の足掻きもこれまでだ。3Dクラッシュ!」
限界まで身体を反らされたことにより、腹部が裂け、血飛沫が周囲のトラックや砂地に付着する。技を解除し、海老反りのままピクピクと痙攣している海未を一瞥し、短剣を取り出した。嘗てボーン・コールドはこの残虐技でもって正義超人のジャイロを瞬殺した経緯がある。その時のジャイロは内臓や肋骨が飛び出し、極めて悲惨な状態となっていた。だが海未は友情パワーに覚醒していたことも手伝い、出血だけで済んでいる。
けれどその状態を目視すると、止めを刺すべく愛剣、シューティングアローを構えた。
夕焼けの光に照らされ、鈍く輝く刃。幾多の超人の命を吸い、今回は単なる女子高生の命を貪り食うつもりだ。狙いは海未の心臓。スコープで標準を合わせ、目を光らせる。
「あばよ」
気障な別れの挨拶と共に放たれた最後の一撃。だが、それは海未の胸を掠るだけに留まった。命中直前に海未が軽く身体を捻って回避したのだ。
「まさか。コイツ、意識が戻ったというのか……」
「あなたの言葉が気付けになりましたよ」
シューティングアローは伸縮自在の腕と繋がっている。これで遠距離の相手でも攻撃可能なのだが、海未はその腕をガッチリと掴み、加えて、深く刺さった剣は地面から離れない。戦闘ロボが頻繁に使用するロケットパンチは分離ができるが、彼の場合は腕を伸ばすだけなので、実際は離れていない。しかも伸び切った骨は脆い。
「はああああッ」
強烈な踵落としによって骨を切断され、最強技を二度と繰り出せなくなったばかりか、戦力が大幅にダウンしてしまった。残った片腕で攻撃しようにも簡単に見切られる。
最初の耳削ぎも一度失敗した上に技を視られたことから、叩き落され不発に終わる。
勝利を確信したことが隙を作り、自分で自分を追い詰める格好となってしまった。
ヒットマンとしての自信。相手が単なる少女という慢心。そして相手の力量を読み誤った。それらが重なり、ほんの僅かな時間で形勢逆転されてしまったのだ。
「さあ、どうします」
静かな、けれども有無を言わさぬ口調にボーンは冷や汗を掻き、ヘラヘラと笑った。
「園田海未さんよぉ。俺の負けだ。オメェが覚醒してなけりゃ、そのまま真っ二つだったのによ」
「そうならないのが私達、μ'sのメンバーです。この場にはいなくても、私達9人は心で繋がり合っていますから」
「9人いれば強さ9倍ってか。チッ、いいなあ。友情って奴も」
「いつかきっと、あなたにも大切な仲間ができますよ」
海未は帰ろうとするボーンに優しく微笑む。例え戦いがどれほど熾烈で命の削り合いだったとしても、戦いが終わればノーサイドなのが海未の流儀だった。