二次創作小説(新・総合)
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- HUGっと!プリキュア ルールーちゃんシリーズ
- 日時: 2018/04/21 14:52
- 名前: モンブラン博士 (ID: zXm0/Iqr)
お久しぶりです!モンブラン博士です!
現在放送中のHUGっと!プリキュアのルールーが好きすぎて作品を投稿することにしました!タイトルが示す通り本作品はクライアス社のアルバイトである美少女
ルールーちゃんが主人公です!
基本的に1レス1話という投稿スタイルにします(文字数が多すぎた場合は2レスなど分けて投稿する場合があります)!
それでは本編スタートです!
- Re: HUGっと!プリキュア ルールーちゃんシリーズ ( No.10 )
- 日時: 2018/08/19 14:57
- 名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)
タイタンは名乗り終えると虚空から機関銃を出現させ、銃口をはな達に向ける。
「ヤバイヤバイヤバイ……!ヤバすぎるでこのオッサン!」
ハリーははぐたんを抱きかかえたまま冷や汗ダラダラで怯えている。
「変身前を狙って蜂の巣にするのが当たり前なのだが、あっさりと討ち取ってしまっては面白味に欠ける」
タイタンは機関銃を地面に置き、後ろに手を組んで仁王立ちになる。
「もしもこのオレにお前達が勝つことができたら、クライアス社はミライクリスタルの奪取を止めるだろうな」
「それは、本当なのですか?」
さあやの問いにタイタンは頷き。
「当然だ。オレは嘘や騙し討ちが大嫌いだからな」
彼らの会話をルールーは上空からUFO型の戦闘機内から聞いていた。
タイタンは新参者であり係長という役職に就いたばかりであり、ミライクリスタルの強奪をするか否かを決定する立場にある訳ではない。それにも関わらず独断でクライアス社の方針を決めるのは如何なものか。だが、この発言はあくまでプリキュア達を戦わせる為の方便であり、ミライクリスタルの奪取を取り止める気は全くないという雰囲気を見る。ルールーは彼の表情を観察、分析し確率を弾き出す。
「Mrタイタンがミライクリスタル奪取を止める確率、0%。
先ほどの発言はやはり嘘」
無表情で結論を口にした彼女は、彼らの行方を傍観することにした。
しかしそんなことは知らないはな達はタイタンの嘘に乗せられ、プリハートを構える。
「みんな、行くよ!」
はなの掛け声で3人は一斉にプリハートにミライクリスタルをセット。
「はぎゅ~!」
3人がプリハートを抱きしめると眩い光に包まれていき、プリキュアへと変身していく。
「お前達の変身は隙が多すぎる」
タイタンは機関銃を足に乗せてサッカーボールの如く真上に蹴り上げ、落下した所をタイミングよくキャッチし、無慈悲に機関銃を乱れ撃ちする。
だが弾丸はいずれもプリキュア達の足先にばら撒かれるのみで一発も命中しない。
「この銃は命中率が悪すぎる」
忌々しそうに銃を掴むと怪力でそれを飴のように捻じ曲げ、ゴミ箱へと投げ捨てる。そして腕を後ろに組んだ余裕ある仁王立ちを再びみせる。
どうやら武器に頼らず己の力のみで闘う方針に切り替えたらしい。
そうしている間にもプリキュア達の変身は完了し、各々の決め台詞を口にする。
「みんなを応援! 元気のプリキュア! キュアエール!」
「みんなを癒す! 知恵のプリキュア! キュアアンジュ!」
「みんな輝け! 力のプリキュア! キュアエトワール!」
タイタンは彼女らの名乗りを無言で見届けた後、二本目の紙煙草に火を付けた。
「お前達の変身が遅すぎるせいで、オレは二本目の煙草に入っちまった。
まあ、それはともかくだ……少し軽く遊んでやるとしよう」
組んでいた腕を前に持っていき、格闘の構えをとるタイタン。
彼に真っ先に飛び込んで行ったのはキュアエールだ。拳を突きだし、彼の顔面に殴りかかる!
「たああああッ!」
タイタンはエールの右の拳を身体を反らすことによって躱し、伸びきった彼女の腕を掴んで一本背負いで放り投げる。
地面に激突し、呻き声を上げる彼女の腹を目がけてタイタンの足が迫るが、間一髪で回避する。その隙を逃さずエトワールとアンジュが左右からパンチを見舞うが、右と左の掌で難なく受け止め、彼女らの腕を捕まえたままでフィギュアスケートのスピンのようにその場で超高速回転をする。遠心力の影響で浮き上がってきたところで彼女達を離し、空中で身動きができなくなったところに放たれた追撃の拳は容赦なくアンジュとエトワールの頬にめり込んだ。
高い悲鳴を上げながら後方に吹き飛ばされる2人だが、何とか体勢を立て直し足の力で緊急停止すると、タイタンを見据え、再び突撃。
「学習能力の無いガキ共だ」
前方から迫ってくるアンジュ&エトワール、後方からはエールの拳が接近する。
だがタイタンは少しも慌てた様子を見せることなく開脚飛びで回避。
標的を失った3人は正面衝突しダメージを受ける。
しかしすぐさま立ち上がり、タイタンに3人がかりでパンチとキックの猛ラッシュを打ち込んでいく。所謂数打てばあたるという戦法である。
だが彼は煙草を咥えたままで彼女らの拳と蹴りの雨を両腕で次々に捌いていき、一撃の命中も許さない。
「だああああああああッ!」
「はああああああッ!」
声を張り上げ無我夢中で打ち続けるプリキュア達にタイタンは冷たく笑い。
「プリキュアに手こずるという報告を聞いて期待したものだが、お前達の動きはまるでお遊戯だ。スピードはあるが一撃一撃が空気のように軽い。
あまりにもヤワな拳だ。この程度で苦戦を強いられるとは、これまでお前達と戦ってきたクライアス社の連中は余程無能揃いだったらしいな」
ここで彼はキュアエールの拳が放たれるのと同時に自らも拳を放った。
互いの腕と腕が交差し、拳が互いの顔を穿つ……かに思われたが、エールの拳はタイタンの顔前で停止し、逆に彼の拳はエールの顔面にクリーンヒットしている。タイタンは一瞬のうちにクロスカウンターを成功させたのだ。
「めちょっく!」
後方に大きく倒れるエール。その瞳からは涙があふれている。
「エール!」
地面に倒れ込む寸前にエトワールとアンジュがエールをキャッチし、事なきを得る。
「腕のリーチで勝る俺にお前の拳が当たる訳がないだろう。
猪突猛進も結構だが、お前は頭が足りないようだ」
「今の言葉、撤回してください!」
眉を吊り上げ、唇を噛みしめ珍しく怒りを露わにするアンジュにタイタンはストレートパンチを放ってくる。
「フレフレ! ハート・フェザー!」
大きなハート型のバリアが出現し、タイタンのパンチを防御するかに思えたが何とタイタンは拳がバリアに触れる直前で動きを止め、回し蹴りの一撃でハート・フェザーを粉砕してしまう。
「軽い蹴りだけで割れるとは、お前の盾はまるでガラス細工のように繊細だ。
バリアとして全く効果を発揮できていない!」
ぬっと手を伸ばしアンジュの顔面を鷲掴みにすると、片手の力だけで彼女を軽々と目よりも高く持ち上げる。
「キュアアンジュ、お前は女優の母を持つ女優の卵だそうだな。
女優は顔が命というが、オレは紳士なのでな。
お前の顔をふた目と見れぬほどに醜く潰して差し上げよう」
「放してください!」
「そのような懇願をオレが聞き入れるとでも?無駄なことは止めるんだな」
タイタンはアンジュを甚振るようにジワジワと手の力を強めていく。
先ほどは首を絞められ、今度は顔を絞められる。
本日二度目となる絞める攻撃にアンジュは言葉にできないほどの恐怖を覚えた。
「やめろ! アンジュを離せ!」
キュアエトワールがハート・スターをタイタンに打ち込み、体を拘束する。
そのおかげで彼の手元が緩み、隙を逃さずアンジュが彼の顎先にサマーソルトキックを命中させ、彼の手から抜け出すことができた。
「ありがとう、エトワール」
「どういたしまして!」
タイタンは胸ポケットから白いハンカチを取り出し顎を拭いた。
「まぐれであろうともオレに一撃を食らわせたことに関しては褒めてやる。だが――」
エトワールが渾身の力で拘束の締め付けを強めるがタイタンは意に返すことなく繋がっている光の鎖を掴んで怪力にモノを言わせて宙高くエトワールを投げ飛ばす。
そして自らも彼女を追って舞い上がり、エトワールの細い足に蹴りを連続で打ち込み撃墜させ、ゆっくり降下しながらハート・スターの拘束を簡単に破壊する。ハート・フェザーにハート・スターが破られた今、残るはエールの浄化技であるハート・フォー・ユーしかない。幾多の敵を浄化してきたこの技にすがるしかないのだ。
「フレフレ! ハート・フォー・ユー!」
3人の希望を乗せた巨大なハート形の光線は真っ直ぐタイタンに向かってくる。タイタンは避ける素振りも見せない。絶対的な自信故に彼はこの攻撃を真っ向から受け止めるつもりでいるのだ。
「全く、お前達の攻撃は全て茶番だ。オレには全く効かない」
何とタイタンは右手の人差し指一本だけでハート・フォー・ユーのスピードの乗った突進と衝撃波を止め、あっさりと相殺してしまった。
大きく目を見開き、愕然とした表情を浮かべるエール達の心を折るかのようにタイタンは衝撃的な一言を口にした。
「人間態の状態で手も足も出ないとは、弱すぎて反吐が出る」
「人間……態?」
「そうだ、キュアアンジュ。オレの今の姿は人間社会に潜伏する為の仮のもの。
本来の姿に最終形態と、オレはあと2回変身を残していると言ったところだ」
「あと、2回も……!」
悔しさと情けなさで地面を拳で叩くエトワール。
アンジュもあまりに衝撃的な言葉の前に無言になるが、エールは違った。
「あの2回の変身なんて関係ない! ここで諦めたら、私のなりたい野乃はなじゃない!」
勢いよく立ち上がり、再び向かっていくエールにタイタンは手をかざし。
「戯言を。どれほど気合があろうが、既にお前達の負けは確定している」
タイタンの手から噴き出した炎が3人のプリキュアを包み込み、炎の竜巻となって空へと舞い上がる。そして竜巻が消えた後には変身解除された3人の倒れ伏した姿があった。服はボロボロで顔は埃にまみれボロボロの状態だ。
もはや立ち上がる力も無い彼女達に悠々とした足取りで近づいたタイタンは懐から小型銃を取り出し、銃口を向ける。
「お前達を始末し、ミライクリスタルを強奪する。あばよ」
彼が銃の引き金を引くべく僅かに指先に力を込めた刹那。
何処からともなく飛んできた一枚のトランプが彼の銃を切断破壊し、サクッと地面に突き刺さった。
「何だ。何が起きた……!?」
突然のことにタイタンは困惑する。気づかないほどの速さでトランプが飛んできて自らの銃を破壊し、プリキュア達の始末を阻止した。
何故、この状況下で?
そして誰が?
突き刺さったトランプを引き抜いた時、彼の脳裏に一人の人物の姿が映る。
「トランプだと? まさか――」
嫌な予感が全身を駆け巡り、先ほどまで余裕めいた態度が一瞬にして崩れ、タイタンのこめかみに血管が浮き出る。
「あり得ぬ! これは何かの間違いだ! 偶然風で飛んできたんだ!
奴が――あの野郎が生きているはずはない! ましてや小便臭ぇ3匹のクソガキを始末する邪魔をするなど、天地がひっくり返ってもあり得ぬものか!」
これまでの態度が嘘のように動揺し喚き散らすタイタンに、またしても3枚のトランプが飛んできた。辛うじて回避する彼だったが、掠ったトランプによりサングラスが割られてしまった。
ここにきてタイタンは唇を強く噛みしめ、血が出るかと思われるほど拳を強く握り返して踵を返す。そして上空で待機してたルールーに大声で言った。
「バイト! 撤退だァー!!」
「了解しました」
UFOから降り注がれるエネルギーにより、上昇していくタイタン。
彼はいつも以上に目を血走らせ、戦闘機に吸い込まれる刹那、激しい怒りを含んだ声でこんなことを口にした。
「貴様の邪魔さえなければ、オレの勝ちは揺るがなかった。何故、貴様はいつもオレの邪魔ばかりする!? ジェネラルシャドウーッ!!」
はたして、彼の言ったジェネラルシャドウとは何者なのか。
新たな謎を残しながらもプリキュア達は九死に一生を得た。
- Re: HUGっと!プリキュア ルールーちゃんシリーズ ( No.11 )
- 日時: 2018/08/19 06:44
- 名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)
プリキュア達との闘いから数日後。
再び係長室を訪れたルールーにサングラスを新しくした(と言っても同じモノを購入しただけ)タイタンが言った。
「バイト。お前は未来もミライクリスタルも両方奪うことのできる最も簡単な方法を知っているか」
「プリキュアを倒し、トゲパワワを人々から増大させる。それが未来を無くす近道」
淡々と事務的に答える彼女にタイタンは「チチチ……」と指を振り、口から煙草の白い煙を吐き出して答えた。
「1番の近道は我ら以外の者を全て葬り去ることだ。地上を更地に変えれば輝かしい未来もクソも無い」
「!!」
過激過ぎる彼の発言にルールーは瞳孔を縮めて無言になる。
あまりに考えが極端なので返す言葉が見つからないのだ。
彼女が答えに窮しているとタイタンは椅子に足を置いて恰好を付け。
「オレから見て、お前らのやり方は甘すぎる。目的を達成したいのなら手段を一切選ぶな。何人社員を犠牲にしようがどれだけ周囲の人間を巻き添えにしようが関係ない。結果が全てだ。少なくともオレはこのやり方で現在まで生きてきた」
ルールーは彼と自分との間に深い溝を感じた。
彼が嘗て所属していたブラックサタンは大量虐殺や大規模爆破など日常茶判事で、法や経営など一切無縁な完全なる犯罪組織である。
対するルールー達クライアス社は洗脳や殺人など持っての他、曲りなりにもプリキュア達と正攻法で闘っての奪取を目指しており、ミライクリスタルの奪取も未来を無くして人々に真なる幸福を与える為である。彼のような極端な考えとは根本的に異なる。社を第一に考えるルールーにとって先ほどのタイタンの発言は決して見過ごすことのできないものであり、明らかに自分達と異なる思惑を抱いている彼をこのままの地位に居座り続けさせ野放しにする訳にはいかない。元を辿れば彼を係長に推薦したのは外ならぬ自分であり、急募だったこともあるが実力ばかりを重視して人格まで測ることができなかったのは私の落ち度。ここは社の未来を守る為に彼には何としても係長の座を降りてもらう他ない。最悪、あさばぶ支社に係長の役職は消えるかもしれないが、それでも彼を放置するよりかは遥かに得策だろう。
彼女は彼との短いやりとりでここまで考え、早速、いかにして彼を失脚できるか策を練り始めた。横暴で自分に度々暴力を振るうタイタンよりも自らの支社を守る選択をルールーは決めたのである。
自分の持ち場に帰って彼に関する情報を集めようとパソコンで検索をかけてみるが、彼のことを調べたサイトなどは既に閉鎖や削除されており、全くと言っていいほどタイタンの有力な情報を得ることはできなかった。
だが、ここで匙を投げるほどルールーはいい加減なアルバイトではなかった。
彼の情報が駄目なら彼に近しい人物の情報を集めれば良い。
思考を切り替えたルールーは、ここ数日間、タイタンが話していた言葉の数々を振り返る。すると1つのキーワードが浮かんできた。
「ジェネラルシャドウ……」
それはつい先日、タイタンがプリキュア達をあと一歩のところまで追いつめながら何故か撤退を要求した際に叫んでいた言葉である。彼の台詞の端々から人物名であることは確かだが、ブラックサタン二人目の幹部であることを除いて彼女はシャドウのことを何も知らなかった。
だが分からなければ調べればいい。
膨大な情報を持つパソコンで彼に関する様々な情報を調べては脳内にインプットしていく。それらの作業を繰り返すこと2時間、ルールーはジェネラルシャドウについてかなりの知識を得ることに成功した。
あとはジェネラルシャドウがどこにいるのか特定し足を運ぶのみだ。
直ちに特定を行った彼女の脳裏が示した場所は。
「デルザー軍団秘密基地にジェネラルシャドウがいる確率95%」
- Re: HUGっと!プリキュア ルールーちゃんシリーズ ( No.12 )
- 日時: 2018/08/19 06:46
- 名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)
Mrタイタンに大敗を喫したはな達プリキュアはハリーの経営する女性向けファッション店ビューティハリーで激戦の傷を癒していた。もちろん店は休業中にしており、中にいるのは、はな・さあや・ほまれ・ハリー・はぐたんの5人だけだ。人間態になっているハリーは椅子にもたれ掛かって天井を見て言った。
「あのオッサン、強敵やで。とても今の状態のお前達に勝ち目はあらへん」
「でも、何とかしてあいつをやっつけないと、みんなの未来が奪われちゃう!」
はなはソファからいきり立って告げるが、他の2人の顔色は暗い。
一撃しか攻撃を当てることができなかったという圧倒的な敗北の前に恐怖が勇気よりも先に来ており、行動を起こすことができないのだ。特にさあやの場合は深刻で2度も精神的・肉体的なダメージを与えられた影響からかタイタンという名を聞くだけでその時の光景がフラッシュバックし、体が微かに震えるほどの症状となって現れていた。はなとしても彼女の様子は心配であるが、かと言ってこのまま何もしないでいては遅かれ早かれ未来はクライアス社に奪われてしまう。重い空気が一同を包み込み、部屋に沈黙が訪れる。
誰も何も喋らず、俯くだけ。彼女達にどうしていいか分からずはなが困惑していると、突然扉を叩く音がした。
その音に驚き4人は顔をガバッと上げて背筋を伸ばす。あまりに突然の来客に緊張が全身を駆け抜け、一時的ではあるが恐怖の感情が緩和する。
ハリーは頭を掻きながら椅子から立ち上がり、玄関へ向かって歩き出す。
「誰かいな、こんな時に……店なら休みって書いてあるやろ」
愚痴りながらも扉の鍵を開けてドアノブを回して開けると、目の前に立っている人物に一気に顔から血の気が引いていく。
「な、何者や! アンタ!?」
皮膚が剥がれ筋肉や血管が剥き出しになった醜い顔に耳まで裂けた真っ赤で大きな口、その顔を透明なカプセルで覆い、白いタイツに白マントという奇怪な服装で身を包んでいる。細身ながらも筋肉質であり、ハリーの頭1つ分はあろうかと思われるほどの長身だ。まるでハロウィンの仮装でもしているかのような奇々怪々な男にハリーは腰が引けてしまう。男は目を細めてハリーを見るとその口から低音の含み笑いを発した。
「俺の名を知らぬとは大した奴だな。俺はジェネラルシャドウ。
お前達がタイタンに苦戦していると聞いてここに参上した」
シャドウの口からタイタンの名が出たことにハリーは目を丸くする。
「何でアンタがその名を――」
「理由は中で話してやる。俺を中へ入れろ」
「オッサン、はな達に変なことをしたら許さへんで」
シャドウは腰に携帯している黒い鞘から目にも留まらぬ速さでサーベルを引き抜くと、その切っ先をハリーの喉元に突きつける。
「早く入れろ」
地獄の底から響いてくるような渋い低音とサーベルの脅しの前では他の選択を選ぶことはできず、ハリーはシャドウをビューティーハリーの中へ通した。
シャドウはコツコツと靴音をたてはな達の座るソファの前に来ると歩みを止めるとくるりと顔をはな達の方へと向けた。いきなりグロテスク極まりない顔が自分達の方を向いたのだからたまらない。
はなは口をポカンと開け、さあやはどこか嬉しそうにしているのだが、ほまれだけは涙目になり歯をガチガチと鳴らして思いきり怯えていた。
シャドウは顎に当てを当て3人をじっと眺めていたが、やがて何を思ったのか5枚のカードを取り出し扇のようにそれを広げ、3人に見せつける。
「誰でもいい。1枚引いてみろ」
「それじゃあ私が!」
先ほどの恐怖が嘘のように目を輝かせたさあやが身を乗り出してカードを引く。するとシャドウは不敵に笑い。
「見せろ」
さあやがカードを裏返すとそこには『大吉』の文字が描かれていた。
「日本風にしてみたが、お前達は運がいい。他のすべては大凶だ」
シャドウが掌から残りのカードを落とすと、それらには全て大凶の文字が。
彼は肩をすくめて静かに笑うと指を鳴らしてさあやの持っているカードも含めて消滅させた。その奇術にはなとさあやは拍手喝采するが、ほまれは怯えたままだ。奇術を見せてもらったところではなは疑問を口にした。
「おじさんはマジシャンですか?」
「俺はジェネラルシャドウ。残念ながらマジシャンではない」
「マジシャンじゃないとすると、あなたは一体……」
「お前達にわかりやすい言い方をするならば、タイタンの元同僚だ」
タイタンの同僚という言葉に反応した3人はすぐさまプリハートを手に取り変身の構えをとるが、シャドウはそれを手で制し。
「勘違いするな。俺はお前達と闘いに来たのではない」
「じゃあ、何しにきたの!?」
「お前達はタイタンを倒したくはないのか」
「えっ」
「お前達はタイタンを倒したくはないのか」
逆質問で答えられ面食らうはなだったが、彼女の答えは既に決まっていた。
「倒したい!」
力強く真剣な眼差しで答える。タイタンを含むクライアス社は明るい未来を奪う存在であり、はぐたんやハリーの未来の為、そして自分達の未来の為にも野放しにはできない。嘘偽りのない本心をシャドウにぶつけたはなは彼の口が開くのを待った。そして5秒ほどの沈黙の後にシャドウが言った。
「タイタンを倒す方法が1つだけある。知りたいか?」
思わせぶりな言動にはなは何度も頷く。彼女の態度に手ごたえを感じたシャドウはぐっと顔を近づけ続きを口にする。
「教えてあげてもいいが、それには1つだけ条件がある」
「条件!?」
「俺と俺の弟子をお前達の仲間に入れろ。そうすれば教えてやる」
「えええええええええええッ!?」
- Re: HUGっと!プリキュア ルールーちゃんシリーズ ( No.13 )
- 日時: 2018/08/19 06:47
- 名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)
Mrタイタンが私の上司に就任して1か月が経過しました。
ですが私の彼に対する評価は下がる一方です。
報告書の未提出だけならチャラリートさんもしていたのですが、彼の場合はそれに加えて部下に対する度重なる暴言や暴行、果てには会社理念を曲解する危険な思想といい彼をこのまま上司としてのさばらせておく訳にはいきません。
下手をすればクライアス社を乗っ取られる危険性さえあるのです。
もともと面接の段階で実力はともかくとして風貌や態度から係長として相応しくないとは思っていたのですが、彼を雇うことを決定したのは上層部ですから今までは忠実に彼の指示をこなしてきました。ですが、彼の「サタン虫を使ってプリキュアの家族を洗脳する」や「機関銃で変身前のプリキュアを奇襲する」などあまりにも卑怯で過激かつ会社理念に反するやり方を目の当たりした結果、彼を係長の役職から失脚させた方が遥かにクライアス社にとって有意義だという結論が導き出されました。
そこで彼に関するあらゆる情報を調べ上げたところ、ジェネラルシャドウという人物に辿り着きました。
彼はMrタイタンと同じブラックサタンの大幹部として働いていた経験があり、正々堂々を信条とする性格故にMrタイタンとは犬猿の仲で幾度となく足の引っ張り合いをして上司を苛立たせていたそうで、自分を認めてくれないブラックサタンに反旗を翻し下剋上を成し遂げたという経歴の持ち主でした。下剋上をした後は坂道を転げ落ちるかの如くツキに見放され、最後は仮面ライダーストロンガーと激闘し、相打ちにまで持ち込んだものの戦死するという最期を迎えたと資料には書いてありました。
ここまで情報を調べたところで1つの疑問が生まれました。
戦死したのならこの世にいないはずで、常識的に考えて先の闘いでMrタイタンにトランプで横槍を入れることなどできないはずです。しかしMrタイタンの口ぶりから察するにジェネラルシャドウが邪魔をしたのは確かなようです。
姿こそ確認していませんが、あの状況下で嘘を言うメリットは何も無いのでMrタイタンの発言は真実なのでしょう。すると、2つの可能性が生まれてきます。
1 仮面ライダーストロンガーとの闘いでシャドウは戦死しておらず、今まで生き延びていた。
2 戦死したが何らかの方法で蘇った。
情報から推測するに1は考え難く、Mrタイタンが以前「地獄から蘇った」と語っていたことからも何らかの方法を使用して地獄から蘇ることは可能なようです。ジェネラルシャドウがMrタイタンと同じく蘇ったとしても不思議ではないでしょう。
と言うことは本かネットに蘇った彼の動向が書かれている可能性もある訳です。そこで更にデータを集めますと、私の推測通り彼は数年前に蘇り、病死した仮面ライダーストロンガーに代わってプリキュアを宿敵と定め、彼女達に大規模な決闘を挑んだことが書かれていました。ここでも高い実力を遺憾なく発揮してプリキュア達を追い詰めたものの彼女達の底力によって浄化され天国送りにされたとのことでした。地獄からこの世に蘇り今度は天国に送られるとは数奇な人生ではありますが、またしても彼は何らかの手段でこの世に蘇り、データに無いプリキュア達であるキュアエール、キュアアンジュ、キュアエトワールの危機を救ったというのは間違いなさそうです。そうでなければ彼の居場所を特定できるはずがないのですから。
彼がこの世にいることが判明したのですから、あとは何としても彼にMrタイタンを失脚させる為の手助けをして貰わねばなりません。基本的には地位に固執するタイプではなく強者との一騎打ちを望む武人肌の方のようですので、味方にしたからと言って裏切る心配はなさそうです。それに、犬猿の仲であるMrタイタンの足を引っ張り屈辱を味あわせるのですから彼にとっても悪い話ではないはずです。何とか交渉して彼を味方に付けることを最優先に行動をとることにしましょう。
数日後、とある島の洞窟地下深くにあるデルザー軍団の秘密基地に足を運んだ私はジェネラルシャドウさんに会うことができました。
年季の入った椅子に腰かけ、蜘蛛の巣の生えた埃だらけの、お世辞にも清潔とは言えない秘密基地でグラスに入れたワインを飲んでいた彼は、私が部屋に入るのを察知するなり、1枚のトランプをダーツのように投げてきました。
投げられたトランプは私より右に数センチ離れた箇所に縦にサクッと刺さったトランプは白い煙を発しています。万が一このトランプが私の身体に命中していたら、間違いなく身体を切断されていたことでしょう。やはりこのトランプ投げの技量、Mrタイタンの邪魔をしたのは彼で間違いないようです。
「このような辺鄙な場所に客人とは実に珍しいが……娘よ、ここへ何しに来た」
「ジェネラルシャドウさんですね? 私はクライアス社あさばぶ支社アルバイトのルールーと申します」
ジェネラルシャドウさんは皮膚の剥がれた筋肉や血管の浮き出た人体模型のような顔を透明なカプセルで覆い、筋肉質の体躯を白いタイツで覆った軍人風の男性でした。見た目は異形ですが、それ故に人間離れした強さを発揮できるのでしょう。彼は注がれた血のように赤いワインをグビリと一気飲みして、不敵な笑みを浮かべ超低音の声で言いました。
「クライアス社か。名前だけは聞いたことがある。それで、俺に何の用かね、ルールーよ」
彼は今、確かに私の名を呼んでくれました。
ここ1か月もの間、全く名前を呼んでもらえなかったのですが、ここにきてやっと名前を呼んでもらうことができたのです。Mrタイタンが「バイト」としか呼んでくれないのに対し、彼は僅かなやり取りで私の名を覚え、名前で呼んでくれたのです。それが嬉しくない訳がありません。気が付くと目から水滴が流れていました。
「ルールーよ。コレで拭くがいい」
彼がさっと私に差し出したのは1枚の白いハンカチでした。
涙を拭いて礼を言って返しますと彼はすぐに指を鳴らしてハンカチを消し。
「それで、再度訊ねるが、俺に用があるなら話して貰えないかね。時間はたっぷりあるのでな。長く話してくれても一向に構わん」
「ありがとうございます。単刀直入に申し上げますと、あなたに力を貸してほしいのです」
私は事の一部始終を彼に話して協力を依頼しました。
すると彼は再びワイングラスに赤ワインを注ぎ、それを天井の光に当てて輝きをうっとりと眺めながら答えを口にしました。
「よかろう。お前の頼みを引き受けた。タイタンは俺がこの世で最も気に入らぬ男……奴を葬り去れというのであれば願ってもない話だ。但し、1つだけ条件がある」
「条件?」
「左様。俺がお前に出す、ただ1つの条件――
それは、お前が俺の弟子になることだ」
弟子?
彼の言葉に頭に疑問符が浮かびました。
私を弟子にとったところで教えることもメリットも何も無いはず。
弟子にとるメリットがあるとはとても思えないのですが、彼はそれを交換条件に突きつけてきました。理由は定かではありませんが条件にしたぐらいですからよほど私を弟子にしたいのでしょう。形式上の師匠になって自分の優越感を満たしたいのか、あるいは別の思惑があるのかもしれません。
とにかく条件を受け入れない限り、今回の件は縁がなかったことにすると言ってきたので、訳がわからないままに彼の条件を飲むことにしました。
すると彼は満足そうにニヤリと笑って、私に手を差し出します。
どうやら握手がしたいようです。ここは素直に手を握った方がいいのでしょうか。しかし、私の身分はただのアルバイトです。そんな者と握手をしても得られるものは何も無いと思うのですが。私がいつまでも手を握らないからでしょうか、シャドウさんが言いました。
「安心しろ。俺はタイタンと違って握手をした隙に自爆するなどという姑息な手段は使わないし、この状況下でそんなことをする理由もない」
「わかりました」
言われるがままに彼の手を握ります。アンドロイドである私に彼の手の体温は伝わってきませんでしたが、彼が手を握っている感触は判別できました。
握手を終えると彼はおもむろに椅子から立ち上がると踵を返し。
「ルールーよ。今回の任務を成功させる為の第一歩を踏み出すとしよう」
「どこへ行くのですか」
「HUGっと!プリキュアの本拠地であるビューティ・ハリーという女性専門のファッション店だ。本来は男の俺に縁のない店であるが、今回はそこへ行かねばならぬ。お前もついてくるがいい」
「はい」
HUGっと!プリキュアといえば我々に敵対しているデータに無いプリキュアです。私でさえ把握できなかった彼女達の秘密基地の場所を知っているとは、どうやら彼の情報収集能力は並ではないようです。
マントを翻し、颯爽とした足取りでデルザー軍団のアジトを出る彼は背を向けたまま私に語り掛けました。
「お前は呉越同舟という言葉を知っているか?」
「申し訳ありません。データに無い言葉です」
「呉越同舟とは、仲の悪い者同士が共闘し困難を乗り越えることを意味する言葉だ。此度の闘いは一筋縄ではいかぬことはお前も分かっているはずだ。
ここはお前は素性を隠し、奴らと共同戦線を張りタイタンを撃破するのが最善の策だ」
「プリキュアと私が協力する……」
「左様。でなければ奴を倒すことはできぬ。このまま卑怯で傲慢で下らぬタイタンを係長の座にのさばらせてもいいのかね」
「彼が係長の座に長期的にいるのは社の利益を考えた場合に相応しいとは思えません」
「ならばプリキュアと手を組むのだ。分かったな」
「はい」
プリキュアと手を組む。プリキュアを好敵手として認めている彼自身としてもできれば敵のままで一騎打ちを楽しみたかったことでしょう。しかし今回、それを放棄してまでプリキュアと組むという策に打って出るようです。
私には想像もできない提案ですが、味方は大勢いるに越したことはありませんので彼の作戦に乗ることにしました。
ですが、あのプリキュア達を仲間に引き入れることができるのでしょうか。
期待と不安が入り混じりながらも、彼の案内通りにUFOでビューティー・ハリーへと向かうことになりました。
- Re: HUGっと!プリキュア ルールーちゃんシリーズ ( No.14 )
- 日時: 2018/08/19 06:51
- 名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)
クライアス社には『5回失敗を重ねた者は役職を下ろして左遷させよ』という厳しい掟が存在する。チャラリートも度重なる失敗をした責任で倉庫番へと降格、タイタンにより重傷を負わされたものの復帰した後は左遷部屋へと回された。この掟は新たに係長に就任したタイタンも例外ではなく、彼が自ら出撃する度に狙いすましたかのようにシャドウのトランプ攻撃により邪魔が入り、せっかくモノにしたチャンスを失い撤退するというパターンが既に3回も繰り替えされてきた。当初は新品だったタイタンのスーツも日々プリキュアとの激闘を繰り広げるうちにボロボロになっていた。最初に対峙した際は圧倒的な経験と実力差で彼女達を完敗に追い込んだタイタンだったが、プリキュア達は闘う度に若さと気力でどんどん強さを増していき、次第に自らを追い詰めるほどに成長を遂げていた。連戦連敗、見えないながらも確実に蓄積されていくダメージは徐々にタイタンを肉体的にも精神的にも追い詰めていく。
そして4回目の撤退を余儀なくされた時、遂にタイタンは係長室で酒を口にしてしまう。
「プリキュアの小娘共め! なぜあのような小娘共にブラックサタン大幹部のオレが撤退しなければならんのだ。シャドウの邪魔さえなければ……奴さえいなければ、この任務など朝飯前に過ぎぬと言うのに!!」
怒りでグラスを握り潰すと破片で掌に傷を負ってしまう。滴り落ちる血が床を赤く染める。首を垂れ、椅子に崩れ落ちるように腰かけたところで、ルールーが係長室へと入ってきた。
「上層部から報告書の催促と出動要請がきております」
彼女のその一言がタイタンの不安定な精神に更なる苛立ちを呼んだ。
「うるせぇ!」
叫ぶなり酒瓶を彼女に放り投げる。しかしルールーは必要最小限度の動きでそれを避ける。するとタイタンはこめかみに青筋を浮かび上がらせ。
「いつもいつも報告書の催促催促と煩いんだよ! このポンコツが!
オレの苛立ちも分からねぇような空気の読めん鉄クズなど、スクラップにしてくれる!」
机を怒りに任せて机を踵落としで叩き割ると、超高速で彼女との間合いを詰めて胸倉を掴むとそのまま壁に叩き付ける。矢次早に首を怪力でギリギリと締め上げる。タイタンは左手で彼女の首を絞め、空いた右手で胸ポケットから白いハンカチを取り出し、サッと顔を隠す。そしてハンカチを顔から離し、黒一色につるりとした頭部、巨大な1つ目の怪人態へと変身する。
そして目を光らせ、強い口調で言った。
「お前は愚か過ぎて反吐が出る。もっとも、無表情な面もこれで見納めだがな。
あばよ、バイト。お前の代わりは幾らでもいるんだ」
タイタンが瞳から超高温の熱線を放とうとした瞬間。彼の身体が思いきり後方に吹き飛ばされたのだ。
「ぐ……オオオオオオオッ!」
身体がくの字に曲がりながらもそのまま壁を破壊し、彼はクライアス社の構想ビルから真っ逆さまに落下していく。しかしビルの壁に両手の爪と足先をかけて必死でスピードを落とそうと試みる。摩擦熱が上がるものの熱に耐性のある彼はその程度の熱は問題ではなく、地面への激突を防ぐことができた。
何が起きたのか分からずに彼が真上を見上げた直後、上空から何かが接近してくるのが見えた。間一髪で転がって回避するタイタン。
白い煙を濛々と上げ落下してきた何か。その正体を確かめるべく、タイタンが歩みを進める。すると次第に煙が晴れ、姿形がくっきりと浮かび上がってきた。
紫色の後ろで纏めた髪に整った顔、黒を基調とした服に身を包んだ華奢な体躯――それは紛れもなく、先ほどまで彼が顎でこき使ってきたバイトのルールーであった。彼女は感情の読み取れない虚ろな目でタイタンを見つめ、口を動かす。
「Mrタイタン、あなたを排除します」
「オレを排除だと? バイトの分際で大きく出たな。やれるものならやってみろ!」
タイタンが告げるなりルールーは急接近し、彼の顎に鋭い蹴りを見舞う。
上体を反らして避けるタイタンだが、地面に亀裂が走っていることに気づいてトンボ返りで彼女から距離を置く。彼が避けた後には大きくコンクリのめくれあがった地面ができていた。それはルールーの蹴りが1撃でコンクリに亀裂を入れただけではなくめくれ上げるほどの威力を持つことを嫌でも伝えていた。
「筆法も筆の誤りと言う。今のはただ、地盤が緩んでいただけに過ぎん。お前の細い足でこんな威力が出せるはずがない」
タイタンの繰り出す拳を屈んで躱すと、起き上がり様に彼の顎に掌底を打つ。
黒一色の顔から血が噴き出し、大きく弧を描いて地面に倒れ伏す。だが、タイタンは立ち上がり、今度は機関銃を装備してくる。
「お前を蜂の巣にしてやる」
彼が引き金を引くと無数の弾丸が彼女目がけて飛び出してくる。
ルールーはそれらの起動を見切って軽々と躱し続けながらも距離を詰め、タイタンの腹に超高速の拳を打ち込んでいく。
彼が腹を抑えたところで顔面を掴んで身体ごと深々と地面へとめり込ませていく。タイタンと比べるとあまりにも細く折れそうな手でありながら、彼がどれほど力を加えようともビクともしない。
ならばと空いている両手から炎を噴き出す。一瞬の隙と腕力の緩みを見逃さず、タイタンは彼女を蹴り上げ、電柱に叩き付ける。衝撃で電柱は根元からポキリと折れてしまった。怪人は少女を見下ろし、傍に落ちている電柱を鷲掴みにして、まるで鉛筆でも回すかのように頭上で軽々と振り回した。
彼は巨大な電柱を振り下ろすとスピードで勝る彼女はジャンプで逃げる。だが彼の電柱攻撃は2の矢、3の矢となって彼女を狙う。
大きく振り上げられた電柱を腕を交差させて受け止めるルールーだったが、その破壊力に腕からバチバチと青い火花が飛び散る。
「ほう。腕を負傷したようだな。ならばもう1発!」
再度振り下ろしたそれは彼女の鉄拳により粉砕される。
数歩後退する彼にルールーは無表情で訊ねた。
「何故、あなたは現世に蘇ったのです」
彼女の問いに一瞬タイタンは黙ったものの、すぐに手を前に掲げて炎を発射。
辺りの草木を燃やしながら彼女に答えた。
「ジェネラルシャドウを超える為だ」