”絶望”と”希望”交わる世界で。
作者/ 藍蝶

第14話 「舞冥土回路、戻りし」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
その場が、一気に激しく揺れた。
「うわぁぁっ!」
「く……!?」
「きゃあぁぁ!!」
「うわっ!?」
勿論、今光流達がいる場所だけではない。
「きゃぁっ!何ですかこの揺れ!?」
「僕に聞かれてもしらないっ!」
「うぐっ!?空野、大丈夫か!?」
「は、はい!にしても、凄い揺れですよコレッッ!」
「ん……!?ここ数十年、余震など感知されなかった筈なのに……っ!」
舞冥土回路全体の激しい揺れ。
春奈やリン、蘭丸に空野、更には刹那の所まで揺れていた。
仮にもここは海の世界。水の中にいると揺れで起きた荒波でもみくちゃにされる。
小さく残っていた廃屋などは、もうとっくに荒波に破壊されていた。
モンスター達にも被害が出ていない訳ではない。驚き、混乱してでたらめに攻撃を放つ。
おかげでモンスター消滅の泡が絶えない。
「!水晶が……!?」
春奈、リンがいる地点に突き刺さっている毒々しい紫の水晶が、透き通った蒼に変化していく。
やがて、揺れは収まった。
「……あ~、すっげぇ数の更新。『光ノ世界カラ来タ使者ニヨリ、舞冥土回路解放ナリ。長ハ泡ヘト戻リ、新タナ者ガ……』めんどくさぁ……」
リンが手に取って一部を読み上げた本は、以前も読んだ”幻想の海”。
ここ舞冥土回路の異変がこの本に長々と記録されるという事は、それ程大事なのだろう。
「てか光ノ世界の使者?……知ってる限りではあいつ等だけなんだけど」
「それよりも早くお仲間のところへ行きましょう!きっと待ってますよ」
春奈が急かすも、リンは動こうとせず腕組しているだけだ。
その時、遠くから誰かがコチラへ向かってきているのが見えた。
「リンさん!お仲間ってあの人たちですか!?こっちに凄いスピードで来てるんですけど!」
「ん……え、あ!ホントだ!優乃、由梨菜、光流、拓人ぉ~!」
近づいてくる護衛に対し気付いたリンは、手を大きく振る。
「王女様!……御無事、でしたか!?先程の揺れ……」
「あ~もう、拓人はホント硬いな。僕は大丈夫だよ」
「にしても」
光流がふっと顔を少し上げた。別に笑っている訳ではない。
その先には、目と鼻の先如く近い蒼と白で構成された大きな城。そう、海ノ世界を全て見渡せる程の。
セイザンヒュアの、”本当”の王宮。
「嘘……!?さっきまでずっと、向こうに、ボッロボロで建ってた筈……あッ!」
気づけば遠くの腐敗した王宮は無かった。そう、無である。
第14話 終わり

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