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ポケモンストーリー ブラック編
作者: たくと七星  (総ページ数: 30ページ)
関連タグ: ゲーム 
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10~ 20~

*2*

「第3話謎の少年N現る」
 アララギ博士からトレーナーの基礎を学び、ムツミは元気よくポケモンセンターを後にした。すると向こうに人だかりがあることに気づく。
 「何だろう?何がおきてるんだろうね?」
 ムツミがツタージャに言うと、ツタージャは首をかしげた。一方、ヨーテリーとミネズミは遠くを見ようと背伸びをした。ムツミはヨーテリーを抱っこしツタージャとミネズミを肩に乗せて、人だかりの中に入っていった。見てみると、何かしらの集会が行われていた。
 草地の公園には雷を彷彿させるPの字の旗が掲げられていて、宗教団体のような異形な集団の中心に、一人の男が妖しい演説を振るっていた。キレイな言葉の裏にある狡猾さを隠して男は演説をした。
 「どうも皆さん、始めまして。ワタクシの名はゲーチス、プラズマ団のゲーチスです。今日、皆さんに話すのはポケモン解放についてです」
 解放、一体何のことなのか?訝しがる人々にゲーチスは人間とポケモンの関係について話をした。
 「ワタクシ達は、常にポケモンと共に共存して参りました。共に協力し、助け合うパートナー・・と言われていますが本当にそうと言えるのでしょうか?」
 続けてゲーチスは、ポケモンとの助け合いは人間たちが勝手にそう思い込んでいるだけでは、と人々の心を揺さぶるかのような言葉を使い、バトルで無理な命令をしたり仕事でこき使っていることが本当に助け合っていると言えるだろうか、と語り、話を続けた。
 「いいですか皆さん、ポケモンは秘めたる力を持った学ぶべき所が多い生き物なのです。そんな彼らに我々がすべきこと、それは・・・」
 人々が固唾を飲んで見守ると、ゲーチスは衝撃的な発言をした。
 「そうです、ポケモンを解放することです!そうしてこそポケモンと人間は完璧な存在になれるのです!」
 ゲーチスはそう言うと、よくよくポケモンのことを考えてくださいと、不吉な言葉を残し、謎の集団に守られるように去っていった。怪しげな男、ゲーチスの言葉にカラクサタウンの人々は戸惑った。
 「今の演説、わしらはどうすればいいんだ?」
 「そんな、ポケモンと人間をバラバラにするなんてありえないよ!」
 一方、この演説を聞いていたムツミは顔を真っ赤にして怒っていた。
 「何なのあれ、ポケモンと人間を引き離すなんて、そんなのダメ、絶対ダメ!」
 ムツミは胸に手を当てて自分の思っていることを口にした。
 「ポケモンがいるから、嬉しさと優しさが生まれて、ポケモンがいるから一緒にいたい、ていう気持ちが生まれるのに・・。私、この気持ちを変えたりしないよ!」
 ムツミは改めてポケモンへの思いを固く誓った。
 「君のポケモン、今、声がしたね」
 そこへ、一人の少年が早口でムツミに声をかけてきた。黒い帽子に緑の長髪、腰には紐のついたルービックキューブを付けていた。そして何より目をひくのは帽子の影に隠れた暗い瞳。その暗さにある何かしらの強さが、その少年にあった。
 「なあに、聞こえるって?」
 少年の唐突な言葉にムツミはキョトンとした。少年は少し暗い表情をした。
 「そうか、君には聞こえないのか。まあいい、僕の名はN」
 「N?くすっ、変わった名前だね。それにかっこいいね君」
 Nという少年に、ムツミは邪気のない笑顔でニコリと笑った。
 「私はムツミ。ポケモンが大好きな女の子なの。ねえ、今の演説、聞いた?」
 ムツミが言うと、Nは聞いたよ、と発言した。ムツミはゲーチスの演説に憤りを語った。
 「あの演説、ひどいと思わない?だってポケモンを切り離せなんて言うんだよ。あんまりだよ、ポケモンと人間は一緒にいてハッピーになれるのに・・・」
 そう言うとムツミは悲しげな顔をして両手を握り締めた。
 「君は、優しいんだね。ポケモンへの思いも本物だ」
 「本物?いや、そんなたいそれたものじゃないよ。私はただ、ポケモンが大好きなだけで・・」
 ムツミはそう言って顔を赤くした。これを見てNはモンスターボールを構えた。
 「え、何?」
 「君に興味が湧いてきたよ。もっと君のポケモンの声を聞かせてくれ!」
 「ポケモンバトルだね、よーし、負けないよ!頑張っちゃうんだから!それ、ヨーテリー!」
 「テリー!」
 ムツミは張り切ってヨーテリーをバトルに出した。バトルを前にムツミは俄然とやる気になった。これを見てNは何かを考えた後、モンスターボールからチョロネコを繰り出した。
 「ニャウ!」
 唐突に始まったポケモンバトル。先に動いたのはムツミだった。
 「ヨーテリー、たいあたり!」
 ムツミが指示を出すと、ヨーテリーはたいあたりでチョロネコを攻撃しようとした。
 「チョロネコ、ねこだまし!」
 Nが言うとチョロネコはねこだましでヨーテリーを奇襲、ひるんだ所をひっかくで攻撃した。ムツミはヨーテリーを応援する。
 「ヨーテリー、頑張って、にらみつける!」
 ヨーテリーはチョロネコをにらみつけた。チョロネコは怯えてひるんだ。
 「もう一度、たいあたり!」
 ヨーテリーは二度目のたいあたりでチョロネコを攻撃、チョロネコは大ダメージを受けた。そして、とどめのかみつくで見事チョロネコを倒した。
 「やった、勝ったよーっ!」
 Nとの初めての勝利に湧き立つムツミ。一方、Nはそんな声を言うポケモンがいるのかと、驚くばかりだった。
 「君も中々やるね。初めての勝負で私たち、友達になれたよね?」
 満面の笑顔でムツミはNに握手の手を差し出した。だが、Nは
 「モンスターボールに閉じ込められている限り、ポケモンは完全な存在にはなれない。僕はトモダチのために世界を変えなければならない」
 意味深な顔をしてカラクサタウンを後にした。ムツミに対して笑顔を一つも見せずに。
 「・・・・・・」
 そっけなく去っていったN。ムツミは悲しい顔をした。彼の気を損ねるようなことをしてしまったのだろうか。涙をこらえて、そっと胸に手を当てた。ミネズミは、変な奴ね、と首をかしげていた。
 「キュウウン・・・」
 「テリー?」
 ツタージャとヨーテリーはムツミを心配そうに見つめた。ムツミはハッとすると、微笑んで二匹の頭を優しく撫でた。
 「ありがとう・・・。うん、大丈夫、大丈夫だよ。ポケモンと人間は助け合ってる。皆とポケモンがいるからステキになれる・・」
 ムツミは元気を取り戻すと、次の街へ向けて仲間たちと共に走っていった・・・。

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