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ポケモンストーリー ブラック編
作者: たくと七星 (総ページ数: 30ページ)
関連タグ: ゲーム
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*紹介文/目次*
「第1話 始めてのポケモン」
信じあうことって・・・なんだろう・・・。
助け合うって・・・なんだろう・・・。
解り合えることは出来るんだろう・・・。
ポケモンの真実と理想が交差し、二人の英雄がぶつかろうとしていた。
これは、ポケモンの真実を求めるひとりの少女の物語である・・・。
ここは、カノコタウン。海に近く、潮風が吹く小さな町。風を伝って
コロモリとマメパトが空を飛んでいた。
そしてここ、とある家。目の前にある大きなプレゼントボックスを前にウキウキしている少女がいた。
「まだかな〜、早く開けたいな〜」
少女はそう言って開けるのを心待ちにしていた。白い帽子にポケットが突き出た可愛いショートパンツがよく似合う彼女の名は、ムツミ。ポケモンをこよなく愛する純粋な心を持った少女である。
「ムツミ、アララギ博士からポケモンが届いたって?」
ムツミがワクワクしている最中、メガネをかけた水色のコートを着た少年がやってきた。彼の名はチェレン。生真面目で真っ直ぐな少年である。 「あ、チェレン」
ムツミは満面の笑顔でチェレンを迎えた。そしてワクワクして言った。
「チェレン、私もう待ちきれないよ。早く開けて可愛いポケモンちゃんを抱きしめたいの」
「ムツミ、君のポケモン好きは小さい頃から変わらないね。そう、あの頃・・・」
ムツミは、彼女は小さい頃からポケモンが大好きな少女だった。一人で1番道路へ行ってはポケモンたちと親しみ心を通わせていたのだ。また、ポケモンたちも自分たちを恐がらないムツミを心から信頼し、深い絆を育んでいった。カノコタウンの人々も、そんな彼女を
「ポケモンと心を通わせる少女」と呼んだ。
さて、ムツミの家にやってきたチェレンは足踏みをしてもうひとりの友達が来るのを待った。実はもうひとり、ここへポケモンをもらいに来る子がいるのである。
「それにしても、ベルはまだかな?相変わらずの・・・」
チェレンが不満を言っていたその時、
「ごめんごめん、遅くなっちゃった!」
緑色の丸いキノコ帽子を被ったどこか天然な女の子がようやく来た。
彼女の名はベル。おっとりした女の子だが、そこが魅力的の少女である。
「ふう、君のマイペースぶりは10年も知ってるけど・・・それはさておき」
「ポケモンだよね。開けるのはムツミからでいいよ」
先でいいよ、と言うベルにムツミはいいの、と目を輝かせた。
「いいの、ベル?!」
「いいのいいの、ポケモンが一番大好きなムツミの方が最初がいいってあたしは思うから」
「さあムツミ、早く開けよう。中のポケモンに会いたいんだ」
「皆、よーし待っててね」
ムツミはプレゼントボックスを開けると、三つのモンスターボールからどれを選ぶか考えた。ボールには可愛くて個性的なポケモンたちが入っている。
「私は、この子に決ーめた!」
ムツミは一つのボールを手に取ってそれを高く投げた。中から出てきたのは、くさへびポケモンのツタージャ。それを見たムツミは、
「きゃーっ、可愛いーっ!」
目をキラキラ輝かせてツタージャを目一杯、抱きしめた。
「こんにちは、ポケモンちゃん♡私があなたのトレーナーだよ」
「きゅううん」
自分を優しく受け止めてくれるムツミに、ツタージャはすっかり懐いてしまった。それをベルとチェレンは微笑ましく見た。
「あのポケモン、幸せそう。じゃあ、あたしはこの子。チェレンはこの子ね」
ベルはミジュマルを手に取ると、残りのポカブをチェレンにあげた。
「おいおい、なんで君が僕のポケモンを選ぶんだよ・・・。まあいいさ、僕はポカブが欲しかったからね」
チェレンは苦笑いしながらも、喜んでポカブを受け取った。ミジュマルを手に取ったベルは、俄然やる気を出すと、ムツミにある言葉を言った。
「よーし、ムツミ!ポケモンと言ったらこれ、ポケモン勝負だよね」
「ポケモン勝負?」
「ほら、ポケモン同士を戦わせるあれだよ」
「あー、あれね。よーし、負けないんだから」
ムツミはツタージャをだし、ベルはミジュマルをバトルに出した。するとチェレンは慌ててこう言った。
「ちょっと待った二人共。小さいといってもポケモンだ。部屋が散らかったりしたら」
心配するチェレンにベルは心配ないといった。
「大丈夫だって、この子達、まだそんなに強くないんでしょ。だったら今のうちに育てておかなきゃ。さ、行くよミジュマル!」
「ミジューッ!」
早速ベルとミジュマルは戦闘の構えを取った。一方のムツミも準備万端だった。ツタージャはすでに戦う気満々である。
「ベル、この勝負、私がもらっちゃうよ!ツタージャ、行けーっ!」
ムツミの指示でツタージャは行動を開始した。
「ツタージャ、たいあたり!」
ツタージャはたいあたりに出たがミジュマルはこれをさっと避けた。
「ミジュマル、みずでっぽうだよ!」
ベルが指示するとミジュマルはみずでっぽうを飛ばした。そして見事、ツタージャに見事命中した。
「ツタージャ!」
ムツミは駆け寄ったが、ツタージャはなんともない表情をした。
「あれ?効いてない」
「それもそのはず、ツタージャは草タイプ。水タイプには強いんだ」
ポケモンの知識を言うチェレン。これにベルは、あわあわと慌て始めた。
「え、え、もしかして、これってピンチ?」
「よーし、こうなればこっちのものよ!」
この勝負、もらった。ムツミはツタージャに指示を出す。
「ツタージャ、つるのムチ!」
ツタージャはクルンと回転すると、つるのムチでミジュマルを攻撃した。
「ミジュー・・」
ミジュマルへの効果は抜群だった。つるのムチの一撃を食らったミジュマルは、力尽きてしまった。
「あう〜、ミジュマル・・・」
「やった〜っ!」
ムツミは始めての勝利にピョンピョンとジャンプして喜んだ。ツタージャもムツミと一緒にジャンプする。一方、ベルはミジュマルを抱きかかえると、よく頑張ったよとミジュマルを褒めた。
「ほえ〜、ムツミすごいよ。ひょっとしたらすごいトレーナーになるんじゃない?」
「そう〜、でも・・、ベルがそう言ってくれるなら間違いないよね!」
ベルとムツミは楽しそうに話していると、チェレンは深刻な顔をして、二人に廻りを見るよう言った。二人が廻りを見ると、見るも無残に散らかりまくったムツミの部屋があった。
「わ〜っ!こんなに散らかってる〜っ!すごいすごい、この子達、まだ小さいのにすごいパワーがあるんだね!」
ポケモンの秘めた能力にベルはすごいと驚いた。ムツミも同じようにビックリしたいた。
「わ〜、あなたこんなにすごい力を持っているんだね〜」
そう言うとムツミはツタージャの頭を優しく撫でた。
「そんなところに驚くとはね・・・、この二人もしかして天然?」
「ねえ、チェレン。今度はチェレンが戦ってみなよ。あたしみたいに部屋を散らかすこともないし」
「そうだね。僕だったら大雑把に戦うことはしない。それに君たちだけでバトルを楽しむのは不公平だからね」
チェレンは涼しく笑うと、ポカブを出してムツミに勝負を挑んだ。
「さあムツミ、初めての勝負、勝たせてもらうよ!」
「OK!頑張っちゃうよ!」
ムツミはバッチコーイなポーズをとり、ツタージャにつるのムチでポカブを攻撃させた。しかしポカブは何ともない
「え・・、何で?」
ムツミが首をかしげるとチェレンのメガネがキラリと光った。
「甘いね、ムツミ。ポカブは炎タイプ。草タイプには強いんだ!」
「え、じゃあ大変!」
ムツミが大慌てしているあいだにチェレンが反撃に出た。
「この勝負、もらったよ。ポカブ、ひのこ!」
チェレンの指示を受けたポカブはひのこでツタージャを攻撃、熱がるツタージャに、ニトロチャージで追撃してこれを倒した。
「よし、勝った!これが、始めてのポケモン勝負・・・!」
初勝利にチェレンはバトルで勝ったことで高揚感を感じた。一方、負けたツタージャは、しゅん、と落ち込んでいた。それを見たムツミは、優しく抱きかかえて、ツタージャに優しい笑みを浮かべて励ました。
「よしよし、あなたは頑張ったわ。次は勝てるように頑張ろうね」
ムツミの優しさに、ツタージャは涙を流してムツミにギュッと抱きついた。
「さて、取り敢えず、部屋のことをムツミのお母さんに謝らないと・・・」
バトルの後、チェレンとベルはムツミのママに部屋のことを謝った。
「部屋のこと?気にしなくていいのよ。それよりもアララギ博士にお礼に行かないの?」
ムツミのママは部屋のことを怒らず大らかに笑って博士にお礼に行きなさいと二人に言った。
「あ、ありがとうございます!」
「じゃあ、あたしたち、行きますね」二人が家を出たあと、ムツミのママはムツミに明るい声で2階でのバトルのことを話した。
「ムツミ、始めてのポケモン勝負どうだった?ポケモンってすごいのね。ここから声が聞こえちゃうんだもの、思い出すなー、始めての勝負・・・ううん、なんてね。さ、ムツミ。あなたも博士にお礼に行きなさい」
「はーい、じゃあ行ってくるね」
ムツミは早速、家を出てアララギ博士の研究所へと向かった。外に出ると、マメパトやコロモリが、驚いて空へと羽ばたいていった。ムツミの冒険が、今始まる・・・!
10~ 20~
*2*
「第3話謎の少年N現る」
アララギ博士からトレーナーの基礎を学び、ムツミは元気よくポケモンセンターを後にした。すると向こうに人だかりがあることに気づく。
「何だろう?何がおきてるんだろうね?」
ムツミがツタージャに言うと、ツタージャは首をかしげた。一方、ヨーテリーとミネズミは遠くを見ようと背伸びをした。ムツミはヨーテリーを抱っこしツタージャとミネズミを肩に乗せて、人だかりの中に入っていった。見てみると、何かしらの集会が行われていた。
草地の公園には雷を彷彿させるPの字の旗が掲げられていて、宗教団体のような異形な集団の中心に、一人の男が妖しい演説を振るっていた。キレイな言葉の裏にある狡猾さを隠して男は演説をした。
「どうも皆さん、始めまして。ワタクシの名はゲーチス、プラズマ団のゲーチスです。今日、皆さんに話すのはポケモン解放についてです」
解放、一体何のことなのか?訝しがる人々にゲーチスは人間とポケモンの関係について話をした。
「ワタクシ達は、常にポケモンと共に共存して参りました。共に協力し、助け合うパートナー・・と言われていますが本当にそうと言えるのでしょうか?」
続けてゲーチスは、ポケモンとの助け合いは人間たちが勝手にそう思い込んでいるだけでは、と人々の心を揺さぶるかのような言葉を使い、バトルで無理な命令をしたり仕事でこき使っていることが本当に助け合っていると言えるだろうか、と語り、話を続けた。
「いいですか皆さん、ポケモンは秘めたる力を持った学ぶべき所が多い生き物なのです。そんな彼らに我々がすべきこと、それは・・・」
人々が固唾を飲んで見守ると、ゲーチスは衝撃的な発言をした。
「そうです、ポケモンを解放することです!そうしてこそポケモンと人間は完璧な存在になれるのです!」
ゲーチスはそう言うと、よくよくポケモンのことを考えてくださいと、不吉な言葉を残し、謎の集団に守られるように去っていった。怪しげな男、ゲーチスの言葉にカラクサタウンの人々は戸惑った。
「今の演説、わしらはどうすればいいんだ?」
「そんな、ポケモンと人間をバラバラにするなんてありえないよ!」
一方、この演説を聞いていたムツミは顔を真っ赤にして怒っていた。
「何なのあれ、ポケモンと人間を引き離すなんて、そんなのダメ、絶対ダメ!」
ムツミは胸に手を当てて自分の思っていることを口にした。
「ポケモンがいるから、嬉しさと優しさが生まれて、ポケモンがいるから一緒にいたい、ていう気持ちが生まれるのに・・。私、この気持ちを変えたりしないよ!」
ムツミは改めてポケモンへの思いを固く誓った。
「君のポケモン、今、声がしたね」
そこへ、一人の少年が早口でムツミに声をかけてきた。黒い帽子に緑の長髪、腰には紐のついたルービックキューブを付けていた。そして何より目をひくのは帽子の影に隠れた暗い瞳。その暗さにある何かしらの強さが、その少年にあった。
「なあに、聞こえるって?」
少年の唐突な言葉にムツミはキョトンとした。少年は少し暗い表情をした。
「そうか、君には聞こえないのか。まあいい、僕の名はN」
「N?くすっ、変わった名前だね。それにかっこいいね君」
Nという少年に、ムツミは邪気のない笑顔でニコリと笑った。
「私はムツミ。ポケモンが大好きな女の子なの。ねえ、今の演説、聞いた?」
ムツミが言うと、Nは聞いたよ、と発言した。ムツミはゲーチスの演説に憤りを語った。
「あの演説、ひどいと思わない?だってポケモンを切り離せなんて言うんだよ。あんまりだよ、ポケモンと人間は一緒にいてハッピーになれるのに・・・」
そう言うとムツミは悲しげな顔をして両手を握り締めた。
「君は、優しいんだね。ポケモンへの思いも本物だ」
「本物?いや、そんなたいそれたものじゃないよ。私はただ、ポケモンが大好きなだけで・・」
ムツミはそう言って顔を赤くした。これを見てNはモンスターボールを構えた。
「え、何?」
「君に興味が湧いてきたよ。もっと君のポケモンの声を聞かせてくれ!」
「ポケモンバトルだね、よーし、負けないよ!頑張っちゃうんだから!それ、ヨーテリー!」
「テリー!」
ムツミは張り切ってヨーテリーをバトルに出した。バトルを前にムツミは俄然とやる気になった。これを見てNは何かを考えた後、モンスターボールからチョロネコを繰り出した。
「ニャウ!」
唐突に始まったポケモンバトル。先に動いたのはムツミだった。
「ヨーテリー、たいあたり!」
ムツミが指示を出すと、ヨーテリーはたいあたりでチョロネコを攻撃しようとした。
「チョロネコ、ねこだまし!」
Nが言うとチョロネコはねこだましでヨーテリーを奇襲、ひるんだ所をひっかくで攻撃した。ムツミはヨーテリーを応援する。
「ヨーテリー、頑張って、にらみつける!」
ヨーテリーはチョロネコをにらみつけた。チョロネコは怯えてひるんだ。
「もう一度、たいあたり!」
ヨーテリーは二度目のたいあたりでチョロネコを攻撃、チョロネコは大ダメージを受けた。そして、とどめのかみつくで見事チョロネコを倒した。
「やった、勝ったよーっ!」
Nとの初めての勝利に湧き立つムツミ。一方、Nはそんな声を言うポケモンがいるのかと、驚くばかりだった。
「君も中々やるね。初めての勝負で私たち、友達になれたよね?」
満面の笑顔でムツミはNに握手の手を差し出した。だが、Nは
「モンスターボールに閉じ込められている限り、ポケモンは完全な存在にはなれない。僕はトモダチのために世界を変えなければならない」
意味深な顔をしてカラクサタウンを後にした。ムツミに対して笑顔を一つも見せずに。
「・・・・・・」
そっけなく去っていったN。ムツミは悲しい顔をした。彼の気を損ねるようなことをしてしまったのだろうか。涙をこらえて、そっと胸に手を当てた。ミネズミは、変な奴ね、と首をかしげていた。
「キュウウン・・・」
「テリー?」
ツタージャとヨーテリーはムツミを心配そうに見つめた。ムツミはハッとすると、微笑んで二匹の頭を優しく撫でた。
「ありがとう・・・。うん、大丈夫、大丈夫だよ。ポケモンと人間は助け合ってる。皆とポケモンがいるからステキになれる・・」
ムツミは元気を取り戻すと、次の街へ向けて仲間たちと共に走っていった・・・。