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ポケモンストーリー ブラック編
作者: たくと七星  (総ページ数: 30ページ)
関連タグ: ゲーム 
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10~ 20~

*7*

「第7話シッポウシティ、アロエとダゲキ」
 プラズマ団を撃退し、4番道路を抜け、ムツミはシッポウシティに到着した。元は倉庫街だったが今は様々な交流が盛んな活気あふれる街となっている。
 「あ、チェレン」
 ムツミがヨーテリー達と仲良く街中を歩いていると、街の真ん中で仏頂面な顔をしているチェレンを見つけた。
 「ついてきなよ」
 出会うやいなや、ついてくるよう言われしばらく歩くとシッポウジムの前に来た。するとチェレンは、ねむりを治すカゴの実を渡してアドバイスをした。
 「ムツミ、シッポウのジムリーダーはノーマルタイプの使い手。かくとうタイプを用意しておくといいよ」
 「ふーん、ありがとう。今日のチェレン、なんか親切だね」
 感謝するとムツミは可愛い笑顔を作った。助言してくれたことへの感謝の気持ちだった。チェレンは思わず顔を赤くする。
 「な、いやいや、友達として当然のことをしただけだよ!じゃ、じゃあ僕はこれで!」
 チェレンは赤面になったままシッポウシティを見て回ることにした。
 「う〜ん、私はどうしようかな・・。ジムにすぐ挑むのもあれだし、皆はどうする?」
 先にジムに挑戦か、それとも色んなところを見て回るか、迷ったムツミはひとまずしゃがんでツタージャ達に聞いてみた。その時、何か騒がしい声が聞こえてきた。大変だ、あいつが暴れているぞ、と何かが街を荒らしているような感じだった。胸騒ぎを感じたムツミはツタージャ達と共に、その騒ぎのする方へと走っていった。
 シッポウシティの中央の広場。街の人たちは倉庫で暴れている一体のポケモンに騒然としていた。止めたくてもその圧倒的なパワーに動けずじまいでいた。青い顔に柔道着姿。かくとうポケモンのダゲキである。
 腕のあるトレーナーはダゲキを止めようと手持ちのポケモンを向けたが、逆に返り討ちにされるだけだった。
 「ああ、やられた!」
 「早く、あいつを何とか!」
 ムツミはこの一部始終を見ていた。自分が止めに行かねば、そう思った時、
 「皆、アロエさんが来てくれたぞ!」
 一人のトレーナーの掛け声と同時に一人の女性がダゲキの前に立った。日焼けしたような黒い肌にふっくらしたエプロン。体格は大柄でどっしりとしていて、いかにも肝っ玉ある母ちゃんパワーに溢れていた。彼女、シッポウジムリーダーのアロエはダゲキに話しかけた。
 「またあんたかい、こんなことをしたって何の解決にもなりゃしないよ。あんたの気持ちは解らないまでもないさ。でも、暴力はいけない。人間に心を開いてくれるかい?」
 アロエは落ち着いた態度でダゲキを説得した。どうやらこのポケモン、過去に何かあったようだ。懸命に説得するも、ダゲキはアロエに襲いかかってきた。
 「危ない!」
 ムツミは叫んだが、アロエはさっとよけて手持ちのミルホッグを繰り出した。
 「許しておくれ。あたしにも、守らないといけない人たちがいるんでね」
 アロエは重い表情をしながらも、シッポウの人達を守るため、戦闘に入った。弱点を突かれる技を持つダゲキにアロエは短期決戦に出ることにした。ローキックやにどげりを振るうダゲキの攻撃をかわし、ミルホッグにいかりのまえばでダゲキを攻撃させた。体力を半分にした所でひっさつまえばでダゲキを倒した。
 倒されたダゲキは傷だらけの体を起こして、暗い顔をして、トボトボとヤグルマの森へと帰っていった。
 「やった!」
 「さすがはアロエさん!」
 ダゲキの撃退に歓声を上げる人々。しかしアロエは複雑な表情をしていた。守り抜いた喜びよりも、救えなかったことへの無力感を感じていた。
 「あの・・・」
 「ん、お嬢ちゃん見てたのかい、あいつのことを」
 「はい、なんだか可哀想で・・」
 「その通りさ。思えば、可哀想な奴でね、心のない奴に捨てられたばっかりに・・」
 アロエはあのダゲキのことを話した。彼女が言うには、もともとダゲキはトレーナーのポケモンだった。しかし心のない人間に道具のように扱われた末に捨てられたというのだ。そのために人間を憎むようになり、以来、ヤグルマの森に隣接するシッポウシティの人達を襲うようになったのだ。それ以降、ヤグルマの森に入ったものはいないと言う。
 「ひどい・・、可愛そう・・!」
 ダゲキと言うポケモンの過去を聞かされたムツミ。瞳に涙が溢れ出した。とても堪えられず大泣きに泣いた。ツタージャ達が、心配そうな顔をする。これを見たアロエはそっと彼女にハンカチを渡した。
 「その涙は本物だね。あんたはポケモンの心の痛みがわかるいいトレーナーだよ」
 「え?」
 「あんたなら、きっと・・」
 アロエはムツミの肩を叩いて、自分のジムへと戻っていった。
 「私、彼を助けに行かなきゃ!」
 アロエの台詞にムツミは何かを決意した。ダゲキの心を開いてみせるという覚悟である。そして、導かれるように、ヤグルマの森へと入っていった・・・。

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