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無表情な美人転入生と僕の話
作者: aya ◆jn0pAfc8mM  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*1*

1話 噂の美人転入生

「お前って、やっぱり……イケメンだよな」

おはようも久しぶりもなしに、信は僕の顔をまじまじと見て、

おもむろにそう言った。

「大丈夫? 精神病院に行った方がいいんじゃないかな」

「おう、心配ありがとう。でも変な意味じゃねえから、誤解するなよ」

「もちろん冗談だよ。

僕は君と委員長くらいしか、親友と呼べる人間はいないけれど、

その代わり付き合いも長いから。

変な誤解はしないさ」

表情を変えず、僕はそう言い切る。

よかった噛まなくて。

「……で、どうして信はそんな、頭がおかしいと思われる発言を

した訳だい?」

「いや……あまり意味はないんだが、転入生が来るらしいんだよな」

転入生。

学校が極端に少ない今日この頃、国に1つあるかないかくらいの

学校をわざわざ転校するのだから、国を越えて来ると言う事だ。

多分、よっぽどの事情がある人だろう。

確かに、僕の隣の席が違っていたのは気付いていたんだ。

小学校の頃に席は発表されてるから、多分急な事なのだろう。

「で、その人がどうした」

「美人で、優等生だと言う噂が立ってるんだが、

多分そんな人を前にしても、亮二は何も思わないだろうなと思って」

そうかもしれない、と僕は思う。

他人に恋愛感情を抱いた事は、今まで一切なかった。

「それが不満なの?」

「もちろんだ。もったいなさ過ぎて、涙が出るぞ。えぐっ」

「それは大変だな。生憎ティッシュを切らしているんだ。

ハンカチいるか?」

「冗談だ」

「嘘泣き止めてよ。下手くそで、見てるこっちが泣けてくるから」

「涙って、あくびと同じでうつるものなのか?」

「知らない。調べれば分かるんじゃないかな」

僕はそれで、もうこの話は終わりだと言うように伸びをした。


……僕があまり感情を出さなくなったのは、7年前からだと思う。

両親が、僕の目の前で文字通り『消えた』時、

僕が何を思ったのか記憶はない。

でも、そこから僕は、親戚の間をしばらく転々としていた。

兄はいたが、アメリカの親戚と住んでいたので、

僕だけは親戚に気に入られようと、嘘の表情が得意になったんだと思う。

すると、皆が騒ぎだした。

「お、噂の人がお出ましだぞ」

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