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作者: aya ◆jn0pAfc8mM (総ページ数: 23ページ)
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*20*
地図が示す地点を目指す。
久しぶりにこんな運動したなあ、と苦笑いの僕。
後ろには、
「魔術封じもかかってない……結構不用心だな」
と呟く、疲れを見せない信。
さっき森さんに調べてもらったところ、目的地は林に囲まれた建物の中。
そこは廃墟で、悪魔達の巣窟になってるとか。
そんなところじゃさすがに、結界があってもいい。
しかし、そんなのが全くなかった。
そんな情報をくれた森さんは、
「S級魔術……かあ、きら、きら、見たい、です……」
息を切らしながらうっとりしていた。
そう言えば、きれいな魔術大好きだったな、森さん。
僕はやれやれと肩をすくめてみたが、信はその表情に気づかない。
「おい、無理に喋らなくてもいいからな?」
「さすが男前じゃないか。ひゅーひゅー」
ダメだ、棒読みになってしまった。
が、効果てきめん!
「や、や、やめろよっ!」
「危ないよ信。君に石を投げられたら、僕死んじゃうよ」
後ろの殺気立つ人達に声をかけ、笑って走る。
……あ。
「なんか魔術が来たけど」
「うおっ!? 突然爆発魔術とか、気が効いてるじゃねえか!」
「意外と信好みなやつじゃん。敵もやるなあ」
「はあ、はあ、2人、絶対、おかしいです!」
僕には、それがどう言う意味で言われたのか把握出来ず。
けれど信は分かったようだ。
「それは委員長が運動不足なだけギャッ!」
僕間違えてました。
森さんは素手でも信を死なせられます。
でも今のは自業自得だな。ざまあ。
地味に敬語になりながら思っていると、信を蹴飛ばして来た森さんが
並んでくる(ならなぜその蹴る力を走りに使わない)。
「凛ちゃん、大丈夫、ですかね?」
「今のところ、はね」
「……何で、そんなところに行ったんでしょう」
確かに。まあ、動機がない訳ではない。
凛は悪魔に、身近な人を奪われたのだから。
けれど、それだけなら、今までなぜ何もしなかったのだろう?
何かしら、きっかけがあるはずなのだ。
「本人に聞けば分かるよ」
「です、ね。頑張ります!」
「息切れすぎだよ委員ちグハッ」
今までありがとう信。
君の事、忘れるまで忘れない。
あと、飛び乗る暇があるなら走ろうか、森さん。
建物に一歩踏み込む。
するとそのすぐ後、凛の魔術が途絶えた。
「少し暗いな」
「慎重に行きまし、きゃ!」
謎の黒い何かが、森さんを一度包み込む。
「お、おい由衣奈!」
「イヤ、止めて、助けて、信……!」
「おう、今助け」
「……信っ!」
黒い塊を前にわたわたする信。
僕は信をどうしてやろうか悩むが、結局その黒い塊を一瞥し、走った。
悪魔と凛が、その部屋にいた。
「そんな攻撃、効かないっ……!」
なかなか見れない、涙目の凛。
そして、余裕そうな悪魔。
「そりゃ残念だ」
僕は、この部屋に広がる魔術を解析した。
精神攻撃……過去のトラウマをほじくり返すその魔術。
多分、森さんを襲ったのもそれだ。
森さんはそれで心を弱らせ、もしかしたら、悪魔達に乗り移られるかもしれない。
けれど、信が必死に声をかけていれば、まあ大丈夫、のようだが。
凛は結構、トラウマあるからな……
「まったく、趣味が良すぎて嫉妬するよ!」
僕はとりあえず、その苛立ちを悪魔にぶつけた。
正確には後ろから、頭を蹴飛ばした。