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*19*
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「全員!集まったか!」
「いえ、まだ、リュウの隊が到着しておりません!」
隊員がアイさんに向かって、現状を報告する。
リュウの隊が到着していないのも、めずらしい。あれだけ足が速い隊だ。一番乗りで到着しててもおかしくないはず。
「なにもなければいいが」
アイサンがそういうと、全員のポップアップメニューにメールが入る。
「to:all ジェイソンと遭遇 きをts」
そこで、メールは切られていた。
「くっ!」
アイさんが苦い顔をして、周りを見渡す。
どこだ。近くにはいるはずだ。どこだ。どこにいる。
森の中のため、大樹の根っこの蠢く音にかき消されているが、
確かに、ジェイソンは近くにいるはずだ。リュウたちの隊も近くにはいるはず。
全員で周りを見渡していると、
「ごっめ―――――ん!!!!!!みんな!連れてきちゃったーーーーーーーー!」
頭上から、リュウと思われる声が聞こえた。
僕が真上を向くと、そこには、一直線に森のてっぺんから落下してくるリュウを含む10人のローグ隊と、
「おーーーーマー―――エ――――ラァーーーーー!!!!!!!!💛」
4mはあろうかという大男が空から降ってきたのだった。
そのままリュウたちローグ隊は、着地と同時にその場で飛散する。
さすが、元盗人率いるローグ隊。逃げ足の速さは一級品だ。
しかし、同時に、ドスン!!!!!という大きな音を立てて、あいつも下に落下してきた。
ジェイソン・ボーヒーズ。JBのAIであり、この世界のラスボス。僕たちをこの世界に閉じ込めている元凶だ。
「お前らぁ、何に勘付いたぁあああ?もしや、貴様らのなかに、プレイヤーがいるのかああ?💛」
「プレイヤー?何だそれは。お前は何を言っているんだ?」
アイさんがとぼけるが、しかし、ジェイソンは聞く耳を持たない。
「わかってんだぞ。お前らの中に、コンティニューをしているやつがいることくらい!この広大な森の中で、この扉を見つけることができるのは、何度もリトライをしている奴だけだ!!!tell me なあ、おしえてくれよぉ。だれなんだぁ?おしえてくっれたら、ほかのやつらの命はとらねぇええええと誓おう(笑)💛」
「はあ?しらねーよ、そんなの!俺らは一回きりの命で戦ってんだ!なめんな!でかいの!」
リュウがジェイソンに向かって叫ぶ、僕は少し居心地が悪くなりながら、小声で「・・・そうだー・・・」といった。
「左様、貴様の舐めた態度、私が叩き直してやろう」
「もぉーサユリちゃんは、出番が少なかったから怒だぞ!じゃなくて、リトライなんてできる子いないよぉ、あなたと違って死んだら終わりなの、わたしたち、死に物狂いなのよぉ」
「そうかい、なら、お前ら覚悟はできてんな💛bukkkorosu」
「やれるもんならやってみろよい!」
「ああ、我らレジスタンスの力、見せてやる!」
リュウとアイさんがそう叫ぶと、戦いの火ぶたが落とされた。
「フン!っ」
バゴンという音を立てて、ゴウの大楯と、ジェイソンのチェーンソーがぶつかり合う。
「あああああああ邪魔!!!!!💛」
ジェイソンはさも迷惑そうに、ゴウの盾を切り刻もうとするが、防御力トップクラスのゴウの盾は切り裂けずにいた。これで、NPC・・・人間ではないのだから。おそるべしだ。
「よそ見禁物だって!八卦手裏剣!」
リュウが、大技を繰り出し、リュウ自慢の大手裏剣が八個に分かれて、ジェイソンの胸元に刺さっていく。
「ああああああああ、それも邪魔!」
「こっちもあるわよー、聖霊砲」
先ほどまで詠唱していた魔術の詠唱が終わり、巨大な白い球体をジェイソンに向かて放った。その白い球はジェイソンの胸元にあたると、巨大な白い爆発を呼び、あたり一面がフラッシュで包まれる。
よし、いまだ!
作戦では、サユリさんが聖霊砲という聖属性の攻撃を撃つフリをして、実は目くらましの呪文を撃って、ジェイソンの視界を見えなくする。その瞬間に、僕が扉を開けて、14層をクリアするという戦法だ。
この戦法は、アイさんが自分で考えて、そして、レジスタンスのメンバーに言って了承をもらっている。
これがチャンスだ!一気に決める!
僕は全力疾走で、扉に向かって駆けた。あと、10m。あと、5m。あと、3m。
そして、あと1mのところで。
「おい、なに出ようとしてんだ」
ジェイソンの声と同時に、右腕から大鉈が繰り出された。
なに!まだ、ジェイソンの目くらましは効いているはずなのに!
まだ、サユリさんが放った目くらましは効いている。のに、なんで!
これが、JBの権限ってやつなのか?
この世界を出ようとしたものを、完膚なきまでに破壊しつくす。それがJBが作った理想郷の正体だ。
でも、まだ僕の速さの方が速い!
このまま加速すれば、扉に追いつく!
もっと速く!もっと前へ!届け!
しかし、ジェイソンの大鉈は容赦なく振り下ろされ、
「花鳥風月!」
がイギゴイギギギン!という音を立てて、アイさんの2本の黒刀とぶつかった。
「アイさん!」
アイさんは、大鉈を受け止めるのだけで精いっぱいの様子で、アイさんが土台にしている木の根っこが、大鉈の重力に負けて、メリメリと音を立てている。
「私のことはいい!行くんだ!ユウキ君!」
「でも!一緒に行くって言ったじゃないですか!」
一緒にアイさんとこの世界を出るって決めたんだ。それで、あの作戦にも乗ったんだ。だから、出るときはアイさんと一緒じゃないと意味がないんだ!
「あとで追いつく!必ず!だから先に行け!」
「でも!」
「でも!じゃない!君は、大丈夫だ!この世界で、君は強くなった!」
「!」
「人を憎しむことも!人をすきになることも!頑張りぬくことも!あきらめないことも!沢山学んで、強くなった!だから、そんな君なら、大丈夫だ!いけ!」
「アイさん・・・・・・」
「後から私は追いつく!心配するな!顔をあげて、下を向くな!」
「くっ、」
「まあああああああててぇててええれええええええええ、くっぅうううううそおおおおおがきぃいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ジェイソンの怒鳴り声が聞こえてくる。
「ふん、ジェイソン。お前の相手は、私だ!」
「このアマああああああ!!!!!!!」
「アイさん!」
「いけっ!ユウキ君!前だけを見るんだ!」
くっ!僕は決死の覚悟で、木に設置されている扉を開けて、その中に飛び込んだ。
途中、アイさんがくすっと笑った気がした。
と同時に、まるでアリスの世界のように、木の中の洞窟を滑り降りて、
ドサ!っ
「ぐわ!」
薄暗い洞窟に降り立った。
🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊
薄暗い洞窟だった。
もう、すでに5分は歩いたろうか。
細い洞窟の道がずっと続いていた。一本道で。
やはり、アイさんの読み通り、99層迷宮は全くのデマ。正確には14層までしかなかったのだ。サーバー上の問題なのか、それとも創作者の趣味なのか。僕にはどちらが理由なのかは見当がつかない。
ただ、ゴールまできたということだけは分かった。
ここがゴールだと分かったのには、理由があった。5分くらい狭くて暗い洞窟の道を歩いたその先に、何やら扉があるのが見えた。そしてその扉の上の立て札には、次のように書かれていた。
:CONGRATURATIONS! WELCOME BACK TO YOUR REAL WORLD:
「・・・・・・・・・これは」
アイさんが、一番最初に見せてくれた。99層にあるといわれていた立て札のある扉。
14層にあったのか。
この扉を開ければ、多分、新しい世界が広がるだろう。
僕がいた世界よりも、ずっとつらい世界が待っているのかもしれない。
それでも。
それでも。
それでも、僕は前に進なきゃいけない。
この世界のアイさんのためにも、
これから行く本当の世界のアイさんのためにも。
そして、なにより、ずっと臆病で弱虫だった、僕のためにも。
僕がこの扉をくぐったら、もっとつらい出来事が待っているだろう。
でも、それを甘んじて受け入れよう。
だって、それが、レジスタンスがつないでくれた、道だから。
隊員たちが、隊長たちが、そして、アイさんがつないでくれた道だから。
後ろから、誰かが来るようすはなかった。
それでも、僕は扉に手をかけ、力強く推した。
「待っててください。もう一人のアイさん」
この先の、不安も入り混じる新しい世界に、飛び込むために。