完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

憑きもん!~こんな日常疲れます~【更新停止】
作者: むう  (総ページ数: 78ページ)
関連タグ: コメディ ラブコメ 妖怪幽霊 学園 未完結作品 現代ファンタジー 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~

*28*

 閲覧数400突破ありがとうございます!
 これからもよろしくお願いします!
 第7話「側にいれたら」開始です。
 ーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 〈宇月side〉
「桃根ちゃん。頼まれとったやつ調べてみたで」
 マンションの十六階、フロアの突き当りの部屋のドアを軽くノックする。
 腕に抱えた数冊の分厚い本は、先日図書館で借りた重要な資料だ。
 薄い紙を貼り合わせただけなのに、本は不思議や。悪霊退治で鍛えられたこの腕でも上手く持ち上げられない。

「あ、お疲れさまです。すみません~。無理言っちゃって」
「大丈夫やで。ボクも用事あったし。手間が省けて良かったわ」
「そ、そうですか? あ、でも、言ってくれたら荷物持ったのに……」

 気持ちは嬉しいけれど、きみは幽霊やからな。
 ボクは霊感があるから認識できるけど、一般人にとってはいないのと同じ。
 きみが図書館で本を持ってみぃ。「本が空に浮いた!?」って、みんな騒ぐやろ。

「図書館では静かにってよく言うしな。気持ちだけ受け取っておく」
「んーでも、それけっこうお高かったんでしょ?」
「あのな桃根ちゃん。本屋じゃのうて図書館! 値段とかないんよ。あーまあ、貴重品だから色んな書類書かされたけど、お金は払ってへんって」

「……あ、そっか」
 現在のパートナーである幽霊の女の子が、部屋の扉から顔だけをのぞかせる。
 相変わらず服装は紺色のセーラー服に白のパーカー。
 だたし今日はいつもと雰囲気が違う。低い位置でお下げにしていた髪が下がっているからか?

 幼さが強調された髪型に慣れとったボクは、肩口で揺れる茶色の髪に不覚にもどぎまぎしてしまった。

「めっ、珍しいな、髪結んでへんのは」
 ロボットみたいな変な声が出た。

 ベッドに腰かけている桃根ちゃんが含み笑い。
 ボクが柄にもなく挙動不審なのを察したのか、値踏みするような目でこちらを見る。

「えっ、もしかして宇月サン。かわいいとか思ってくれてるの!?」
「え、いやその違っ、いや違わんけど……、に、似合うと思うで! 大人っぽくてええね」
「うっそー、ほんとーっ? うわ意外なんですけどーっ!! あはは、なんか照れるー」
 
 口ごもりそうになったボクだったけど、なんとかテンションを持ち直した。
 あかんあかん。ボクは夜芽宇月・心を操る霊能力者! 
 この肩書がある限り絶対に言えない! 友だちが一人もいないこととか、恋愛経験が一度もないこととか!
 
「ほぉーん。うちのパートナーはツインよりロング派かぁ」
「も、もうその話はやめとこや。腕疲れて来たわ」
「ほぉーん」
 ほぉーんて。なんでそんな勝ち誇った感出しとるんや、きみは。

 ボクはそのままぎこちない足取りで部屋の中央に足を進める。木の床にドスンと荷物を降ろし、はあと一息。

(あー、重い。なんでこんな重いんや)

 図書館で借りた本はたった二冊。『古事記』と『日本書紀』。今じゃ好んで読む人も少ないマイナーな書物だ。

 古事記は日本で一番古い歴史の本で、全三巻。
 歌謡、神話・伝説など多数のネタを含みながら、天皇さんを中心とする日本の出来事が細かく記されている。
 日本書紀は全三十巻。奈良時代に完成した、同じく神話や伝説を漢文で記した史書だ。
 
 流石に合計三十三巻を一気に借りることは難しかった(腕が壊れそうだった)ので、今日は両方の本の第一巻を借りてみたんよね。

 司書さんに貸し出しを頼んだとき、不思議そうな顔をされたっけ。
「お好きなんですか?」とも尋ねられた。
 
 ボクは歴史オタクでもなんでもない、ただの一般人。好きな科目は文系だけど、社会は苦手だ。学生時代は、その時間だけ寝とったし。
 そんな奴が、なんで急に小難しい本を読もうと思ったのかというと。

「幽霊の身体を乗っ取る神様、ねえ。きみは友人であるユイくんを助けようとして、運悪く命を落としてしまった。がしかし、『大国主命』と名乗る神様に見初められて力を与えられた——」

 ボクは桃根ちゃんの頭から爪先を改めて観察する。
 霊が他の生物の身体に憑くことは珍しくない。霊能力者の中にも、〈憑依系〉といって、霊をとり憑かせて戦う人もおらはる。
 
 だけど……。幽霊と神様がくっつくなんて事象は滅多にない。
 そもそも神様って霊と同じくくりなんか? それすらも曖昧だ。

「にわかには信じられんけど、現にきみがその一例ってわけやしなぁ」


 
 


 

27 < 28 > 29