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ナイトメア・サバイバル
作者: Kuruha ◆qDCEemq7BQ  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ:  学園 殺人 
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10~ 20~ 30~

*21*

Episode20 『もう一回 -Second fighT-』
 9月12日(水)13:30/藤貴 杁夜


「あ、おい――」

「いやっ! ごめんなさいごめんなさい! お願いだから蹴らないでっ!!」

 さらに身を縮こませ、懇願する少女。僕はどうすることも出来ずに、見下し続けた。

『一時間が経過いたしました。強制退場システムが作動します』

 もうこんな時間か……。人間味を感じない合成音声が、スピーカーから聞こえてきた。

『これで残り26名となりました。これからも神を退屈させぬよう、よろしくお願い致します』




 彼女が落ち着きを取り戻し、会話が出来るまで回復したのは、それから約30分後のことだった。本当ならこの内に殺しても良かったけれど、なんとなくその気にはなれず、その様子をずっと観察していたのだ。暇で暇で、何度も殺そうかと思ったけれど。

「すみません、取り乱しちゃって……。私は2年C組の安城璃子です。……先輩は?」

「藤貴杁夜。3年C組」

 スカートについた埃を払いながら立ち上がる安城。近くでみるとかなりの長身だ。

「どうして、あたしを殺さなかったんですか? 隙なんていっぱいあったのに」

「いや、殺そうとは思ったんだけどさあ。まあ、なんとなく、ってことで」

 それで、お父さんがどうしたって? と僕は話を繋げた。

「お父さんねー……。すごく怖いんだ。すぐ怒るし、暴力振るうし」

 遠い目をしながら、安城は言った。

「成績だって運動だって、平均を裕に超えるレベルじゃないといけないし。だからあたし、願いが叶うなら、お父さんいらないなーっていうのを願おうと思うんだ」

 笑いながら言うけれど、その大きな瞳は真剣なものだった。そして僕を見据えて、凛とした声で言葉を放つ。

「そんなわけであたし、先輩を殺してお父さん消さなきゃならないんです。……殺さないでくれてありがとうございました。でもあたしは、あなたを殺します」

「あー、それは困るな。僕だって叶えたい望みくらいはあるしね。――あぁそうだ。僕はあんたとちゃんと殺し合って決着をつけたかったんだ」

 だから、殺さなかった。

「またお父さんを思い出さないよう、一撃で殺ってやんよ」

 そう言って、僕はナイフを構えた。

 さあ、もう一回。条件はさっきと同じ、僕の方が断然不利な状況だ。

「はぁあぁぁああぁっ!!」

 今度は最初から気合を入れて、撃たせる間もないほどに速く、ナイフを振りかざした。

 その不意打ちにも似た攻撃を、安城は怯みつつもなんとか回避した。しかしそれでも、肩の下――鎖骨のあたりに浅い切り傷を作ることは出来た。

「っ!!」

 痛みに顔を歪め、傷口を押さえる安城。その一瞬の隙を僕は見逃さない。

「もらったぁああッ!」

 ここぞとばかりに、首筋に向けてナイフの切っ先を振り下ろした。



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