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Episode21 『怨み -GrudgE-』
9月12日(水)13:40/我妻 叶葉
「っ!! おいっ! どうしたんだよ、いきなりっ。一緒に生き延びるんじゃなかったのかよ!?」
態度を一変させ、自分を攻撃してきた奴に向けて、言葉を放つ。右の二の腕をやられ、左腕で押さえても血はどんどん溢れてきた。
「もうお前は用済みだ。どうせあと一時間程度でこの≪ゲーム≫は終わる。26人の内、二人以上殺す奴が出れば、もっと短くなる。俺はお前を殺してあとは隠れてようかなぁ、とね?」
だからさぁ、もう死ねッ! そう叫んだ金髪の男子生徒が、折りたたみ式のナイフで、眼鏡をかけた男子生徒の首を傷つけた。それはうまいこと頸動脈に当たったらしく、赤い血を勢い良く噴出して、眼鏡くんは倒れた。
金髪くんは、もう興味がないと言いたげな顔で、ナイフに付いた血を払っている。
「くる…め…」
「あァ? んだよ。テメェなんざ、もう用はねぇんだ。おら、さっさと死ねよッ!!」
苦しそうなうめき声を上げて金髪くんにすがろうとする眼鏡くんの腹を、容赦なく蹴り飛ばす金髪くん。「かは……っ」と、眼鏡くんの口から血が吐き出された。
「チッ……」
舌打ちをしながら、眼鏡くんの元から動きだす様子を、私たちは陰から黙って窺っていた。綿原さんが勝った、と言いたげな表情で藍の腕を離さず組んでいるのだけど、気にはしない。
この娘は私たちを本当の恋人だと勘違いしたままだけど、所詮仮初めのものだ。私には侑馬がいるし、藍にも誰かいたっていいでしょう。
それにしても、あの金髪くん、どこかで見たことがある。……さっき眼鏡くんは『くるめ』と言っていたっけ。
くるめ……。くるめ……。――久留米?
ああ、そうだ。
久留米銀。
侑馬の遺体の――第一発見者。
髪の色が変わってて気付かなかった。まさか、彼もここに進学してたなんて。
彼にうらみはないけれど、やっぱり侑馬を思い出してしまって、好きにはなれない。
それに、今の態度。
見た感じ、二人は協力していて、あの久留米が裏切った、という構図だろうか。
だんだんと、久留米は私たちの方に近づいてくる。逃げる、のもどこか惜しい。この際、あいつを殺せば侑馬の敵討ちになる気さえしてくる。……違うのに。
まあでも、私たち合わせてあと三人は殺さなくちゃならないわけだし、見つけたからには、殺したほうがいいと思う。
私は、二人はここにいるように、とジェスチャーで指示して、単身、久留米の前に立った。
「お久しぶりね、久留米銀」
「……お前、誰? ……? ……あぁ、名前は覚えてねーけど、あん時の」
「我妻叶葉よ。すっかり外見変えちゃってまあ。これじゃ本当に犯人だって言われても仕方ないんじゃない?」
「あれがきっかけでこうなったんだよ。ああ、思い出しただけでムカつく」
しかめっ面で悪態をつく久留米。私はそれを笑みをもって迎える。
「俺さぁ、ずぅっとあの事件の犯人探してんだよねぇ。見つかりゃしねーけどよ。あいつのせいでこうなっっちまったわけだし、“お礼”しないわけにはいかないだろ?」
私は知っていても、世間で東郷が犯人だという認識はない。私だって、殺したいくらいに憎いけれど、あの後、ケータイは壊されたらしく、繋がることはなかった。
「あとは、俺を信じてくれなかった教師共と警察が、今の俺の敵だ」
確かに、殺人犯と疑われ、証拠が出るまで信じてもらえなかったわけだし、仕方ないのかもしれない。
「それと、――お前だ。忘れねぇよ? あん時の俺に対するひっでぇ目。怨みがましく睨んできた泣きはらしてあかーいその目はさ」
「そのときは私も貴方が犯人だと思っていたから。でももうそうは思ってないわ」
「だとしても、だ。そんなわけで、俺はお前を殺す! 今まで死なずにいてくれてサンキューなぁ。おかげで、俺が殺せる」
「あら、やめてよ? そんなこと。私は最後まで生き残って犯人を殺さなくちゃいけないんだから。――誰かもわからないのにね」
あくまで、私も知らないことにしないといけない。
それに、東郷は私が殺す。そうじゃないと、怨みなんて晴らせない。