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ナイトメア・サバイバル
作者: Kuruha ◆qDCEemq7BQ  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ:  学園 殺人 
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Episode27 『東郷 -KilleR-』
 9月12日(水)14:44/秋笠 藍

「東……郷……?」

「え……?」

「間違えない。絶対そうだ。だって、あの時と、まったく変わってない……」

 あのローブの男には見覚えがあった。俺と言音を誘拐した男に間違えない。

 でも、どうしてだ……? あいつは、ただの人間じゃ……。

 はっきり言って、すごく混乱している。整理がつかなくて、いろいろな引き出しを全部一気にひっくり返したような心地だ。

「……本当に?」

 最初は心配そうに俺の顔を覗き込んでいた叶葉だったが、俺の『東郷』の言葉を聞いて、表情は真剣なものに一変した。

 俺は狼狽しながらも、こくんとうなずいた。

 それを見るやいなや、叶葉は飛び降りそうな勢いで階段を下っていった。

 残った二人は、ただそれを見送るばかりだった。




 9月12日(水)14:45/我妻 叶葉


 あいつが東郷? 本当に?

 でも、考えてる暇はない。

 目の前にいる奴が、最大の敵だと信じて――



「――あれ?」

 いない。確かに階段を下りたはずだ。それに、ここは一階。 そこまで目を離していたわけでもないから、いないなんておかしい……。

『ねっ。捕まえられないでしょ?』

「っ!?」

 頭に響いてくる声。それは神のものだった。

『だって、あいつはボクが創った、ボクの傀儡、ボクの一部だからね』

 普通は捕まえられないよ。と笑う神。

『それじゃあ、せいぜいボクらの手のひらで踊ってよ。君がもしボクのもとへ来れたら、まあ、殺させてあげてもいいけど』

 それ以降、もう声が聞こえてくることはなかった。

 ……たとえ神のもとへ行けなくても、私は“ゲームマスター”を――東郷を殺す。

 必ず、捕まえてやる。



 9月12日(水)14:45/秋笠 藍


「……東郷って誰?」

 “ゲームマスター”と叶葉がいなくなって、俺たち二人の間には沈黙が訪れていた。

 その静寂をやぶったのは、藤貴先輩のそんな問いだった。

「え、あ……」

 ぼつりぽつりと、叶葉にしたような、俺と言音という下級生が誘拐されたこと、その犯人が東郷だということを掻い摘んで説明した。

「ふぅん。で、なんで我妻ちゃんがこんなに必死になったの? 関係ないじゃん」

「それは……。そういえば、二人が話してた『侑馬』って……?」

 俺にもわからない。それをはぐらかすように、今度は俺からたずねた。

「侑馬は僕の親友で、我妻ちゃんの彼氏。……まあ過去形なんだけど」

「過去形?」

「二年前に死んだ。誰かに殺されたんだ。多分我妻ちゃんはその敵が討ちたくてこの≪ゲーム≫を戦ってるんじゃないのかな?」

 寂しそうな表情で、先輩は言った。

「もう諦めたほうがいいのにね。犯人は見つからないし、敵を討ったって侑馬は帰ってこない。それに――」



 “現実でも死ぬんなら、そいつといっしょで、人殺しになっちゃうじゃないか……”



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