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ナイトメア・サバイバル
作者: Kuruha ◆qDCEemq7BQ  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ:  学園 殺人 
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Epilogue『おわりのおわり -True enD-』
 9月12日(水)08:25/秋笠 藍


 ホームルームまでの貴重な時間。その時間を有効活用して、俺は眠りについていた。

 そしてその間、俺はとても不可解な夢を見ていた。

 こうやって目覚めても、そこは≪夢の世界≫で、そして俺たちは“殺し合い”をさせられるのだ。

「おはよう。随分と眠そうだな」

「あ、ああ……」

 起きた俺に気付いたクラスメイトの国吉が、近くに寄ってくる。……そういえば、こいつには入院している妹がいたって。

「そういえば、お前って妹いたよな?」

「は? 何言ってんだよ。まだ寝ぼけてんのか?」

 ……え?

「いやいや、今日の放課後見舞いに行くって、昨日いってたじゃないか」

「言ってねぇよ、んなこと。お前ホントに大丈夫か? 一時間目サボって保健室で寝ててもいいぞ?」

 あれ、確かにそんなこと言ってた、ような。

 本当に?

 そう聞かれると自信がない。おぼろげに、ふと思っただけだ。

「じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっと寝てくるわ。二時間目には帰ってくるから」

 国吉の「おう」という声に見送られて、俺は教室を出た。

 廊下は登校して来たばっかりでまだ鞄をしょっている奴や、他クラスの友人に会おうと教室をでた奴らで溢れていた。じつににぎやかだ。――なのに、俺の中には赤黒く変色した静かな廊下のイメージが思い起こされている。

 まるで学校内で誰かが死んで、血が流れた後のような。




「失礼しまーす……」

 保健室には誰も居なかった。そしてふと、普段はケガ人が座るスツールと、応急手当用の救急箱が目に入った。

 そういえば、ここで誰かの手当てをした……?

 おぼろげながらに、俺が誰かの腕に包帯を巻いている図が浮かんできた。それが誰かは覚えていないが。

 まあいいか。

 そう思って、俺は保健室特有の硬いベッドに身を預けた。



 また夢を見た。今度は、小さいころの俺が、衰弱して死にそうになっている夢だった。

 一緒にいた女の子。名前も顔もわからないけど、この俺はその娘のことが好きだった。

 本当に、誰なんだろう……。

 多分、夢の話だから実在するわけじゃないだろうけど。



 教室に戻る最中、落し物を見つけてそれを拾おうとしたとき、何か聞こえた気がして、動きを止めてしまう。もうあと少しでそれに届きそうだったのに。

 そして、本当は何も聞こえてなんかいないのに。

 落ちている注射器型のシャープペンシルを拾って、あたりを見回してみる。

 授業中なので当然、誰もいない。

 もちろん、殺されそうになってなんか――

 あれ?



 どうして、殺されそう、なんて考えが?





 教室に戻って、授業に参加しても、全く身に入らない。上の空な心地で、今日の不思議な体験について考えていた。

 二つの夢。保健室。落し物。

 ……ダメだ。思い出せない。

 あれ?

 どうして“思い出す”んだ?

 何かを忘れているのか? 俺は。





 俺は一体何を忘れたんだ――――?




        -THE END-

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