完結小説図書館
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*24*
渋谷デパート前についたときから、嫌な空気を感じた。
ピンクのヒールが描かれた看板の横に、ギャル風ファッションの女の子がいた。うつろな目で空を見つめ、ため息ばかりしている。
「くそ、ねえな、鏡……。俺の計算によりゃ……」
「なあ、あの人、なんか変じゃないか」
「ああ? ああ、あれか。目が4んでるな。つーか、8んでるんじゃねーか?」
そうか、ショウは死神バッジがないから人の思考が読めないのか。
あのギャル子の思考のまわりを、無数のノイズが飛び回っている。死神バッジを手に取ったときだけわかるイメージでしかないが、彼女に負のオーラが漂っているのはノイズと関係しているのだろうか。
そういえば、昨日羽狛さんが言っていたな。
『ノイズには二種類ある。死神のペットノイズと、野生ノイズ。野生ノイズは人にまとわりつくことで負の心を生み出す』
「なあ、ショウ、あのノイズ追っ払ってやれないかな」
「ノイズがまとわりついてんのか!? 時間はねえが……何かの手がかりかもしれねえな。ラジアンにしちゃ、頭最高速ギアで回転してるじゃねえか」
いや、ただ単にあの人がいたたまれないだけだったんだけど、まあいいか。
「あんな見るからに脳も尻も軽い女、助ける価値があんのか甚だ疑問だがな……」
「それは違うと思う」
「なに……?」
「人を助けるのに、価値なんて関係ない」
「あるね。あんなのはゴミに等しい。価値ゼロのヘクトパスカルだ!」
「人の価値は数字じゃ決まらない!」
ショウの迫力に負けじと、私はにらみ返す。ショウは舌打ちをして、背中を向けた。例によって。これは「勝手にしろ」という合図だ。
ギャル子のノイズを払うと、彼女の表情が明るくなるのと共に、思考が鮮明になってきた。
なにがあったかまで鮮明に読み取れる。
立ち並ぶ洋服ブランド店はナチュラルパピィ、ムースラットゥス、グランド。
渋谷に住んでた癖にあまり詳しくはないけど、カドイの中、だろうか。次にトイレのイメージが流れ込んでくる。トイレの鏡? 鏡に向かって写真をギャル子が撮ったところで、記憶は途切れている。
この女の人は偶然写真を撮ったようだ。洗面台で自画撮りすると綺麗に盛れる、と聞いたことは私もあるが、それだったんだろう。
これで場所がわかった。