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*25*
気づいたはいいが、あと30分しか時間が無い。とにかく佳澄さんと光ちゃんに教えなきゃ。
「あ、もしもし、佳澄さん? 情報を掴んだんです。カドイの女子トイレの鏡が都市伝説になっていて、そこで写真を撮った人にはノイズがまとわりついていました。俺たちは先にカドイに向かってます」
「わかったわ。私達も後から追う。あ、それと死神が教えてくれたんだけど」
「なにかあるんですか? あっ」
ひょいとショウの手が伸びて、私のケータイを奪った。そして、私を平然として見下した顔のまま親指で電源ボタンをぽちっと押した。
「なにしてるんだよ!」
「もう的確な情報は掴んだんだ。ままごとは終わりにして、さっさとカドイに向かうぞ」
「でもなにか教えてくれそうだったのに……」
「他人なんかゴミだ! クラッシュ! お前はパートナーの俺さえ信じてくれてればいいんだ、このラジアンが!」
パートナーを信頼しろ、って羽狛さんはたしかに言ってたけど……本当にいいんだろうか。
でも、信じるしかない。
走ってカドイに着く。ドアーに、真っ赤で目立つステッカーが張ってある。これがあるところは参加者でも実体化できるんだっけか。これも羽狛さんが教えてくれたことだ。
ドアを踏み込んで聞こえた、かわいい服装の女性店員のいらっしゃいませという声を新鮮に感じた。このところ、生きてる人間とは話してないせいだ。道行く人々に私達は見えてない。
そのせいで少しどきっとしてしまって、この格好だから女性に慣れてない男の子だと思われたのだろう、店員さんは笑っていた。
トイレの前に来る。が、このまま女子トイレに入るのはまずい。
女子トイレの前をうろうろする私とショウをあきらかに店員が警戒している。はたから見たら変態だ。
「おい、ここにあるんだろ? なんで入らない」
「俺たちは男だぞ? 入れる訳ないだろ……」
「ちっ。ゼタ面倒だぜ。ルールなんかゴミだ! クラッシュ! 俺がまとめてゴミ箱に捨ててやる!」
「……いや、いい考えがある」
「アイディアだと? ラジアンの脳みそでか、笑わせるな!」
いや、確かに頭は悪いけど、本当の私は女なんだ。女だからこそ思いつくアイディアがある。
「まあ、とりあえず聞くだけ聞いてくれ」
「聞くに堪えないほどひどかったら、命は虚数の海に消えると思えよ」
それを承知のうえで、声をひそめ、ショウに考えを伝えた。