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*7*
「ねえ、ふさ子さん。」
「はい、何ですか?」
「最近、何か変わったことなかった?」
「ないです。」
「本当に?」
「本当です。」
「なんかさ、先生に国語の時何か言ったんだって?」
「ああ、はいそうでしたね。」
「その発想ってどこからくるの?」
「いや、普通に客観的に読んでみるとそう感じたのでそうやって発言しただけです。」
一年生で客観的って私言葉を知っていたかな?
「あのね、もっと子供らしい感じでいいんだよ。」
「子供らしい感じ?」
「だから、もしも絵をかけって言われるでしょ。そしたら、子供が書きそうな絵をかくの。」
「子供が書きそうな絵?」
「そう。例えば、カラフルな色を使ったり木の幹をピンクにしたり。」
「お姉さんは、子供っぽい絵を描いていたんですか?」
「ううん。そんなに気にして書かなかった。けれど、自然にそんな絵になってたんだよね。」
「そうですか・・・。」
私、なんで一年生にこんな話をしているのだろう。
「けれど。」
「何?」
「でも、人には個性があるんです。お姉さんは、人の個性より周りからの印象のほうが大切といいたいのですか?」
「・・・。」
そうだ、私はなんてバカなんだろう。どうして、周りの印象をこんなに気にしているのだろう。あろうことか、一年生にその考え方を勧めてる。バカだ。
「そうだよね。私が間違ってた。」
「いえ、そうじゃなくて。ただ、確認しただけです。」
「へっ!」
「前に読んだ『上司に気に入られる方法。』にそのことが書いてあったんです。『人の目を一番に気にしろ。人からの印象こそが、明るい未来の鍵だ。』って。」
ごめん。お姉さん、さっきまで目に溜まっていた涙が一気に渇いたわ。
「けど、お姉さんは人の目以外にも大切なことがあると思うなー。」
「それはなんですか?出世するカギになりますか?ためになるなら教えてください。」
「あのね。ふさ子さんは、出世がゴールなの?」
「はい。そうです。出世こそが人生の幸せです。地位とお金が人生を左右させるのですから。」
「お姉さん、ちょっと引くわ。」
「顔にしっかり書いてあります。」
私は、その場から逃げるように去った。