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自由無き者に対する力と大いなる渇望に伴う希望
作者: 多寡ユウ  (総ページ数: 16ページ)
関連タグ: 虐め 
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10~

*7*

うまかねー。







図書室のドアを静かに閉めると同時に、完全下校時刻を過ぎたのか学校中のスピーカーから下校を知らせるアナウンスが鳴り響く。


「えぇー、午後5時半となりました。部活動を続ける際は遅延書類を各部提出し、それ以外は速やかに下校しなさい。繰り返します。午後・・・・」


彼は制服の胸ポケットにしまってあった黒光りするスマートフォンを右手で取り出し、電源ボタンのみをつけ時間を確かめた。

「やべっ、もう五時半か。早く帰って宿題やんねぇと」


彼はそう独り言のように呟くと、急いで廊下を走り抜ける。
午後5時30分現在、今はうるさく言う風紀委員も居なければ、校則という盾を持ってか弱い罪無き(有る?)生徒達に反省文を書かせに回る生徒会もいない。なぜなら奴等悪魔の僕とも言うべき生徒一同は、変に優等生ぶって5時にはもう既に帰路についているはずだからだ。
要するに今、この学校は無法地帯である。
うるさく言うのは巡回しているであろう頭を丸めた体育教師ぐらいなもので、それ以外は警戒する必要も無くただ時を無為に過ごすことができる。
所々の教室にはゲーム通信をしているのか様々な絶叫が聞こえてくる。

「おら!おぉぉラオラオラオラオラオラオラオラぁぁ!!」

「お前後ろ回れよ!!俺が弓でデガレックスの頭部をヤるからっ」

「オッケー!じゃ俺、尻尾切り落とすわ!」


いい歳こいた高校生がチャラチャラと腰パンにシャツ丸出しで、怪獣を倒すゲームを3人ほどでやっている。3人しか居ない教室にはゲームのカチャカチャというアイコンの音が響いて何とも着心地良くないことこの上ない。


「見つかんないようにな」


彼は口の中でそうつぶやいて、自分の自転車が置いてある駐輪場に早足で向かった。



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