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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*49*
「ぐ……」
みしみし、と骨のきしむ音がまどかの腕から聞こえる。
だが、まどかは鬼柳の大砲を腕で受け止めていたが、力の差は歴然。
力に耐えきれずに吹っ飛ばされ、壁に打ち付けてしまった。
「…俺は…っ家とかそういうの関係なしにお前と仲良くたいんだ…っ!」
「……来ないで…」
じり、と鬼柳はゆっくりとまどかに重い足取りで近寄る。
鬼柳もまどかが打ち出した攻撃で大きなダメージを追っているため、息苦しそうな声だった。
「家なんて関係ないんだ……。お前は家ごと丸ごとオレのことが憎いかもしれねえけど…」
「…私、は」
まどかは複雑な目で鬼柳を目で追う。
立ち上がる力はあった。だが、どうしても立ち上がれなかった。
このまま立ち上がったら、筧鬼柳という人間“鬼”という存在を汚してしまうそんな気がして。
「鬼柳……っ」
クリスは今にも泣きだしそうに小さな声で彼の名前を呼んだ。
博と安蘭は何も言わずに見守っているだけだった。
(……そっか。コイツは何も汚れていないのか。私があんなひどいこと言っても話しかけて友達になろうって言ってくれた。…このまま素通りして言ったら私は軽蔑対象になる!)
まどかは一瞬目をつむると、何かを決意したかのように、ギン!と、目を見開いた。
そして、規律正しく立ち上がると、ザッザッザ、と審判に歩み寄った。
「……審判」
染み透すように、静かに、ゆっくりと手を挙げた。
「私、華道部代表、鬼角まどかはこの試合棄権します」
まどかは清々しく、凛!と、言い放った。
「そ、それでは!左サイドの棄権により、第二開戦勝者、筧鬼柳!!」
審判が言い放つと、またまた体育館は歓声であふれかえった。
盛り上がればそれでいいようだ。
そして、踵を返してその場を去ろうとするまどかを鬼柳は呼び止めた。
「なんでお前、あんなこと…。まだ戦えただろうに」
「…あのまま戦ってもこっちに利益がないと思っただけよ。……それに、借りは返したからね」
「…は?借り?」
「!!うっさいわね!わかったらとっとと優勝しちゃいなさい!何のために私が棄権したのってことになるんだから!」
ドン!と、鬼柳を押しのけるとまどかはそのまま走って行った。
状況がつかめない鬼柳に対して、まどかの顔は少し嬉しそうだった。
+++
「つつつつ次、私の番だよ…!!どうしよーーーーーーッ!!」
「落ち着いてクリス!」
「そうだよ!気楽に行って!」
安蘭と博は元気づけるようにクリスの背中を思い切り押した。
「修行の成果を見せるんだ!」
「ファイトなのだ!!」
「……うん!頑張る!!」
空悟とパンにゃの後押しで試合場に駆けだした。
「右サイド!一二三花!」
「はーい!」
慣れたように花は一歩足を踏み出す。
「左サイド!神宮クリス!」
「は、はい!」
木刀を構え、クリスはまっすぐ花を見た。
「フン・・・。さて、お前の正体をあぶり出してやろう……」
ステージの椅子に座りながら海馬はクリスを見た。
「それでは!バトル開始!!」