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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*55*
「……おいおい、もう決着ついたんじゃねえの!?」
「つーかまだ2分しかたってねえの!?時間長く感じたぜ!?」
観客席にいる生徒たちは騒ぎ出した。
その声は楽しげではなく、クリスに対する憐みのような声だった。
「クリスちゃん…!」
「もう無理だよ……ッ!」
ギュッと博と安蘭は拳を握りながらクリスを見た。
みんながこんな反応を取っているのも当たり前だった。
なぜなら、クリスは死にかけているようなものだから。
「クリスちゃん…。降参したほうがいいよ?」
「まだ……戦える…ッ!」
あれから、姿が見えないくらいの速さで動いた花の切りつける攻撃でクリスは傷だらけだった。
花は諭すように言うが、クリスの目は強い闘志でいっぱいだった。
クリスの頭からは血があふれ、なんといってもひどいのは横一線に花の武器「チャクラム」によって切られた傷がひどかった。
「クリス!死んじまうぞ!!」
「やめなさい。降参するか否かは彼女が決めること」
がたっと思い切り立ち上がる鬼柳をまどかは手で制す。
ステージでは海馬は飽きたように視界を外した。
「……所詮この程度か。神宮クリス。どうやら俺の目がこの時だけおかしかったようだ。…とっとと消えてしまえ」
海馬は冷たく言い放つ。
「あきらめないッ!はああああああああああッ!!」
「…すごいよ、クリスちゃん。その精神力。だけど、私も手加減するわけにはいかないの!」
最後の力を振り絞ってクリスは花の死角から木刀で突こうとした。
だが、その攻撃ごと花のチャクラムによって一刀両断された。
そして、クリスは吹き飛び、壁に激突した。木刀も真っ二つに折れていた。
「……ここまでか…ッ!」
悔しそうに空悟は歯を食いしばる。
そんな時だった。
もう、力尽き気絶したかと思われるクリスの体がゆっくりと立ち上がっていた。
だが、その姿はどこか異常だった。
それに気づいた花がクリスに話しかける。
「クリス、ちゃん………?」
「………」
だが、クリスは何も答えない。
その代わりに、右手を上にあげた。
次の瞬間、クリスの右腕は人間の物ではない赤く、鋭い爪の炎をまとった腕に変わっていた。
「クリスちゃん!?しっかりして!!」
「あれは……ッ!」
戸惑う花はその場を動けなかった。
一方海馬は目を見開いて素早くステージから降りた。
「………リリア……」
クリスより少し離れたところでパンにゃはつぶやいた。しかし、その声はいつものパンにゃの声ではなかった。