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作者: 鳩麦白夜 (総ページ数: 101ページ)
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*59*
――――……お前はオレとともに世界を見守っていてくれ……―――――
――――……私はずっとあなた様の御傍にいます……――――
『だ、れ……?』
決して入ることのできない王の雰囲気を滲み出す美男に、その妃と思われし絶世の美女が寄り添うようにして座っていた。
クリスはふわふわとした空間でその2人を見ることしかできない。
だが、決定的な2人とクリスの違い。
それは、生きる時代も服も違うということ。
クリスは美女に疑問を抱いていた。
『……私……?』
美女の顔立ちはクリスにそっくりだった。
+++
「……ん……」
「クリス!!」
パチ…。と、クリスは静かに目を開けた。開いた眼に入ってきたものは白い天井だった。
それはまさしく、学園の治療室を表していた。
自分を読んだ声の主のほうをクリスは振り向く。そこには安堵したような安蘭、博、鬼柳、まどかが覗き込むようにしてみていた。
「あれ!?私、なんで治療室に!?」
「おま…!覚えてねえのかよ!?お前が正体を現してから会場が大騒ぎ!」
「そうそう!すっごく強かったんだから!炎も出して!!」
問い詰めるように鬼柳と安蘭はクリスとの距離を縮める。
何かに気が付いたようにまどかは目を見開いた。
「…クリス、あなた、胸の怪我治ってるわ…!」
「あ、本当だ…!でもなんで…!?」
まどかに言われたとおり、花に攻撃された腹の深々とした切り傷が跡形もなく消えていた。
そして、花、という言葉でクリスは思い切り立ち上がった。
「そうだ!花!花との戦い、どっちが勝ったの!?」
「その戦いならクリスちゃんが勝ったよ。一部分だけとはいえ、クリスちゃんは自分の正体を出したんだ」
「え…!?それって……!」
博の言葉にクリスの顔がサアッと青くなった。今までずっと自分を人間と思ってきたせいか、その言葉を信じられなかったからだ。
「…覚えて、ないの?」
まどかが気遣うように目を伏せる。
静かにクリスは首を横に振った。
「……半分正解で半分違うよ。私、自分の腕が赤いのになったときまでしか覚えてないの。それ以降はもう…」
「そっか。…もう、いわなくていいよ。ゆっくり休んでね!あ、ちなみにここまでクリスちゃんを運んだの、海馬君だから!」
「ええ!?嘘!?」
博の言葉にクリスは目を丸くする。
軽く、トン、と博はクリスをベッドに押しなおした。
少し元気をなくした彼女を励ますように安蘭と鬼柳は前に躍り出た。
「ほら!ちょうどここにテレビもあるし、次の試合でも見よう!」
「次の対戦相手はお前をビビらした更科憲章先輩とフェニミストの初野茨先輩だぜ!」
「あ…!」
クリスはテレビを覗き込む。
そこには確かに憲章と茨が映っていた。
お互い、静かに牽制し合っていた。
そしてクリスは1つ気になることがあった。
「……パンにゃどこいったんだろう…?」
治療室にパンにゃの姿がないことだった。