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*20*
「……あ〜、ワリ。遅れたわ」
「ユウラ!君は今まで何をしていたというんだ!僕たちはずっと待っていたというのに!」
「…あなたはただぼけていただけでしょう」
だるそうにこちらに歩み寄ってくるのは、肩にかかるほどの褪せた金髪に、アクアマリンの瞳の青年、ユウラ・バナニーだった。
彼も七神官の1人であった。過去に母親と妹が自殺したからか、何事にも生きる意味を見いだせないでいるようだった。そんな彼だが、瞬間移動できる千年秘宝「千年十字架」を所持していた。
どこか読めない男であった。
そんなユウラにホルスは諭すように声を張るが、カイザーの鋭い一言によってさすがの彼も口を閉ざす。
「別にいいじゃねーか。どうせこのエジプトに脅威になる存在はねーんだからよ」
「けど、町の人たちが困ってることとか、要望とか…」
めんどくさそうに手を振るユウラにユールは思わず立ち上がる。
そんな彼女を見て、彼はますますため息をついていた。
「…七神官にもいろんな種類がいるんだな。……アイシス?」
「………」
思わずギルバートはアイシスに耳打ちする。
だが、彼女は口を開こうとしない。
「そいつ寝てるよ。まったく、オレよりマイペースなんてどういう神経だよアイシス」
「ん〜?…って、ユウラ!お前いつの間に!?」
「アイシスねてたの!?」
ギルバートの問いに答えるようにユウラは呆れたように顎でアイシスを示す。
その言葉に跳ね上がるようにアイシスは起床し、彼の登場に驚いた。
驚いたのはユールをはじめ、ほかの七神官であるのだが。
「はっはっは!さすがアイシスだよ!」
「つーか一番癖がある七神官って…」
「ええ。まぎれもなくアイシスでしょう。彼女の野生ぶりには誰もついて来れませんから」
「なんだよ、邂逅一発失礼な奴らだな〜!」
豪快に笑うホルス、口をぽかんと開けるギルバート、もはや慣れたようにコーヒーを飲むカイザーにアイシスは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「はあ。かなわねえぜアンタには。…で?なんだ?今回の会議って?」
雰囲気が安定したのを察知したユウラは全体を見渡した。
***
「…お師匠様。皆さんに伝えなくていいのですか?」
「まだ駄目だ。私たちだけでできることを探すんだ。まだ盗賊の足跡が残されているかもしれないからな」
「…はい!」
場所はピラミッドの最深部。
イリアとウェザーズは先代国王の遺体と宝石を盗んだ犯人を追跡していた。
普段なら魔術で捜索できるのだが、何もなかったため、魔術は使えない。
「…下がるんだ。イリア」
「…お師匠様…?」
バッと腕を伸ばしてイリアを制すウェザーズにイリアは思わず体を強張らせる。
「何かありましたか…?…!!」
思わず彼女は目を見開いた。
そこには、粘土のような、いや、だが死体のようなものが30人ぐらい蠢いていた。
「……これは!?」
「…おそらく魔術の中でも禁断と言われる死者兵だ。誰がこんなことを…!」
イリアとウェザーズは背中合わせで状況を把握した。
そして、イリアは冷静に武器を構えた。
「…私たちならやれますよ。お師匠様」
「…行くぞ」