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*30*
「…窃盗王ってのは、本当にこの洞窟にいんのかよ!?イリア、ウェザーズ!」
「間違いない。魔術で調べたら奴の気配は間違いなくここにあった」
「……それに、御妃様の千年秘宝の反応もあった……。間違いありません…」
アイシスたちは薄暗い洞窟に到着した。
確かに大きいが、こんなところにいるのかと不審に思ったアイシスは魔術師師弟に問う。
ウェザーズもイリアも同時に首を縦に振ってこたえる。
「…二人がこういっているのです。行きますよ」
「ああ。速くリリアを助けないと…!」
先陣切って歩くカイザーとアギト。
二人はどこか焦っているようだった。
「……お師匠様…。気配が…」
「ああ。私も感じている」
「!!アイツは……!!」
イリアとウェザーズの言葉にアイシスは前を向く。
そこには、窃盗王が不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「よお…。良くここまで来たなあ…!褒めてやるよ!」
「リリアはどこだ!」
「ここにはいねえなあ…」
「貫け!“千年槍”!!」
アギトは窃盗王に叫ぶが、窃盗王は嘲笑するだけだった。
そんな彼にアイシスは有無を言わせずに千年秘宝を使用した。
その槍は目にも見えないぐらい早く、窃盗王を貫いた。
「……っが…ッ!」
「!?そんなあっさり…!?」
血を吐きながら窃盗王は前のめりに倒れこむ。
そんな彼にカイザーは思わず目を見開いた。
「…死んでる……」
動かなくなった窃盗王の首筋をイリアは触れる。だが、どこも動いていなかったことから死亡と推測された。
アイシスは冷や汗を流しながら槍をしまう。
「…何でこんな簡単に…。自殺するつもりだったのかよ!?」
「つべこべ言っている暇はありません!それより早く御妃様を…!」
再びカイザーは走り出そうとした。
カイザーはさっき拾った首飾りの欠片と自分の首飾りをぎゅっと握りしめて言った。
「…そうだな!窃盗王はいなくなったんだ、もうちょっとだ!」
「行くぞ、イリア!」
「はい、お師匠様!」
5人は再び走り出した。
***
「……来ては……いけません……。アギト……ッ!」
とある一室にて、リリアはぶら下がるように手首を拘束されていた。
そして、腹には赤黒い血があった。
「………逃げて……ッ!」
リリアはそうつぶやくと、宝石のような美しい目から一筋の涙を流した。