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「ねぇ、いいでしょ? 絶対秘密にするから!!」
そこにあったものは――床に座りながらウサギの置物に向かって話しているギャリーの姿だった。
「……ギャリー?」
「えー!? そんな事があったの!? 落ち込んじゃダメよ! そんなヤツは一発殴ってやるといいわ!」
私が話かけてもギャリーはまだウサギと話していた。
「……ねぇ、イヴ。これギャリーじゃないよ。本物だったらこんな所にいないと思うし……ってイヴ?」
私は無言でギャリーの前に立ち、もう一度名前を呼ぶ。
「ギャリー」
「そうよ! 今度連れて来なさい! アタシがぶっ飛ばしてあげる!!」
「イヴ、どうしたの?」
メアリーの質問には答えず、私は右手を握り、大きく振り上げ――
ベシィ!!
良い音を響かせながら、ギャリーの顔面に右ストレートをお見舞いした。
「ちょ、ちょっとイヴ!?」
メアリーが何事かと近づいて来たが、そんな事はお構い無しだ。
ギャリーは何が起きたか分からないような表情でこちらを見上げ、首をかしげた。
「ギャリー!!」
私はギャリーの目を見ながら必死に名前を呼んだ。すると――
「イ……ヴ?」
目の焦点を私に合わせ、ギャリーは私の名前を呼んだ。
その瞬間、私の中に張り詰めていた緊張の糸が切れて、気がついたらギャリーに泣きついていた。
「うぇ……ギャ、リー……うぅ」
「……何だかよく分からないけど、心配かけちゃったみたいね……ごめん」
「……うん!!」
この時の私はギャリーが元に戻った喜びと安心で気付かなかった。
「何で戻ったの?」
と、メアリーが一人つぶやいていたことを――
*
「アタシ、色々と混乱してて記憶が曖昧なのよね……」
「無理に思い出さなくても良いんじゃない? そんなに重要な事じゃないんだよ、きっと」
「そう……かしら?」
無事ギャリーと合流し先に進んでいる最中、私は二人で話している後ろ姿を見ながら、一人考えていた。
(ギャリーが元に戻って本当によかった。このまま三人でここを出られるといいなぁ……)
だが、この直後、私は知ることになる。
どれだけ願っても私の願いが叶わないことを。