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Ib ―『さよなら』の先に―
作者: 緑茶  (総ページ数: 53ページ)
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*28*

*16

「ねぇ、いいでしょ? 絶対秘密にするから!!」
 そこにあったものは――床に座りながらウサギの置物に向かって話しているギャリーの姿だった。
「……ギャリー?」
「えー!? そんな事があったの!? 落ち込んじゃダメよ! そんなヤツは一発殴ってやるといいわ!」

 私が話かけてもギャリーはまだウサギと話していた。
「……ねぇ、イヴ。これギャリーじゃないよ。本物だったらこんな所にいないと思うし……ってイヴ?」
 私は無言でギャリーの前に立ち、もう一度名前を呼ぶ。
「ギャリー」
「そうよ! 今度連れて来なさい! アタシがぶっ飛ばしてあげる!!」
「イヴ、どうしたの?」
 メアリーの質問には答えず、私は右手を握り、大きく振り上げ――

 ベシィ!!

 良い音を響かせながら、ギャリーの顔面に右ストレートをお見舞いした。
「ちょ、ちょっとイヴ!?」
 メアリーが何事かと近づいて来たが、そんな事はお構い無しだ。
 ギャリーは何が起きたか分からないような表情でこちらを見上げ、首をかしげた。
「ギャリー!!」
 私はギャリーの目を見ながら必死に名前を呼んだ。すると――

「イ……ヴ?」

 目の焦点を私に合わせ、ギャリーは私の名前を呼んだ。
 その瞬間、私の中に張り詰めていた緊張の糸が切れて、気がついたらギャリーに泣きついていた。
「うぇ……ギャ、リー……うぅ」
「……何だかよく分からないけど、心配かけちゃったみたいね……ごめん」
「……うん!!」

 この時の私はギャリーが元に戻った喜びと安心で気付かなかった。

「何で戻ったの?」
 と、メアリーが一人つぶやいていたことを――

          *
「アタシ、色々と混乱してて記憶が曖昧なのよね……」
「無理に思い出さなくても良いんじゃない? そんなに重要な事じゃないんだよ、きっと」
「そう……かしら?」
 無事ギャリーと合流し先に進んでいる最中、私は二人で話している後ろ姿を見ながら、一人考えていた。
 (ギャリーが元に戻って本当によかった。このまま三人でここを出られるといいなぁ……)
 だが、この直後、私は知ることになる。

 どれだけ願っても私の願いが叶わないことを。

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