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Ib ―『さよなら』の先に―
作者: 緑茶  (総ページ数: 53ページ)
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 色々探した結果、私とメアリーが探検していたフロアに先に続く道があったので、そこに進むことにした。

 その途中でそれは起こった。

「あら? メアリー、薔薇落としたわよ……って、え!?」
 メアリーが落とした薔薇をギャリーが拾った瞬間――
「さわらないで!!」
 メアリーは大声を出して、殺気のこもった目でギャリーを睨み付けながら、パレットナイフを握っていた。
 そのパレットナイフには見覚えがあった。ギャリーと別れた直後、物置のような部屋で手に入れたものだ。『念のため持っていく』と言っていたが、まさかまだ持っていたとは思わなかった。

「ちょっとメアリー!! 危ないわよ!? 早くそれをしまって!!」
「うるさい!!」
 パレットナイフを取り上げようとするギャリーと、抵抗するメアリーが揉み合いになり、結果――
「あっ…!」
 メアリーが倒れ、動かなくなった。
「メアリー!!」
 慌てて駆け寄ろうとする私をギャリーは手を出して止めた。
「……ギャリー……?」
 私は意味が分からなかった。なぜ、メアリーの側へ行くのを止められる必要があるのか。
 そんな私にギャリーは驚きの言葉を放った。

「イヴ、落ち着いて聞いて。……メアリーは人間じゃないの」
「…………え?」
 頭が真っ白になった。だって今の今まで一緒に探検していたのに?

 ギャリーは続けて言った。
「思い出したの。曖昧だった記憶を――」

      *

 アタシは絵の具玉を集めるために、たくさんの部屋を巡っていた。
 その時、本棚がたくさんある部屋にたどりついた。
 たまたま近くにあった本――ゲルテナ作品集 下 ――にその真実はあった。

「メアリー」
 ゲルテナが手掛けた生涯最後の作品。
 まるでそこに存在するかのようにたたずむ少女だか、
 もちろんのこと彼女も実在しない人物である。

      *

「これが真実よ。普通の人みたいに接してきたから分からなかったわ」
「ウソ……ウソだよね、ギャリー?」
 私はすがるような気持ちでギャリーを見つめる。
 だが、ギャリーは無言で首を横に振り、そこに落ちていたメアリーの薔薇を指差して言った。
「触ってみれば分かると思うけど、その薔薇、本物そっくりに作られた造花だわ」
 確かにメアリーの薔薇は、私の薔薇と質感が違った。
「イヴ、仕方ないけど、受け入れるしかないのよ」
「……うん」
 受け入れなくてはならない。これが真実なのだから。

 私は泣きそうなのを我慢して、ギャリーの手を強く握りながらゆっくりと前に進んだ。

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