完結小説図書館
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色々探した結果、私とメアリーが探検していたフロアに先に続く道があったので、そこに進むことにした。
その途中でそれは起こった。
「あら? メアリー、薔薇落としたわよ……って、え!?」
メアリーが落とした薔薇をギャリーが拾った瞬間――
「さわらないで!!」
メアリーは大声を出して、殺気のこもった目でギャリーを睨み付けながら、パレットナイフを握っていた。
そのパレットナイフには見覚えがあった。ギャリーと別れた直後、物置のような部屋で手に入れたものだ。『念のため持っていく』と言っていたが、まさかまだ持っていたとは思わなかった。
「ちょっとメアリー!! 危ないわよ!? 早くそれをしまって!!」
「うるさい!!」
パレットナイフを取り上げようとするギャリーと、抵抗するメアリーが揉み合いになり、結果――
「あっ…!」
メアリーが倒れ、動かなくなった。
「メアリー!!」
慌てて駆け寄ろうとする私をギャリーは手を出して止めた。
「……ギャリー……?」
私は意味が分からなかった。なぜ、メアリーの側へ行くのを止められる必要があるのか。
そんな私にギャリーは驚きの言葉を放った。
「イヴ、落ち着いて聞いて。……メアリーは人間じゃないの」
「…………え?」
頭が真っ白になった。だって今の今まで一緒に探検していたのに?
ギャリーは続けて言った。
「思い出したの。曖昧だった記憶を――」
*
アタシは絵の具玉を集めるために、たくさんの部屋を巡っていた。
その時、本棚がたくさんある部屋にたどりついた。
たまたま近くにあった本――ゲルテナ作品集 下 ――にその真実はあった。
「メアリー」
ゲルテナが手掛けた生涯最後の作品。
まるでそこに存在するかのようにたたずむ少女だか、
もちろんのこと彼女も実在しない人物である。
*
「これが真実よ。普通の人みたいに接してきたから分からなかったわ」
「ウソ……ウソだよね、ギャリー?」
私はすがるような気持ちでギャリーを見つめる。
だが、ギャリーは無言で首を横に振り、そこに落ちていたメアリーの薔薇を指差して言った。
「触ってみれば分かると思うけど、その薔薇、本物そっくりに作られた造花だわ」
確かにメアリーの薔薇は、私の薔薇と質感が違った。
「イヴ、仕方ないけど、受け入れるしかないのよ」
「……うん」
受け入れなくてはならない。これが真実なのだから。
私は泣きそうなのを我慢して、ギャリーの手を強く握りながらゆっくりと前に進んだ。