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「なんか変な雰囲気の所に入ったわね」
「…………」
ギャリーの言葉は聞こえていたが、私の頭は動いていなかった。
あのメアリーが……ずっと一緒にいたメアリーがゲルテナの作品――あの動く絵やマネキンと同じだったなんて……。
「イヴ」
隣を歩いていたギャリーが足を止め、私と目線を合わせるようにしゃがんだ。
「メアリーのことはショックだったでしょうし、すぐに気持ちを切り替えるのも難しいでしょうけど、」
一度言葉を区切って、うつむいていた私の顔に手を置いて少し上に向かせて続けた。
「下を向かないで、前を見て。少しづつでいい。一歩づつでいいから、前を見て歩きましょ」
ね! と優しくギャリーは笑った。
ギャリーだって辛いはずなのに……。
「……うん。ありがとう、ギャリー」
ギャリーのおかげでやっと笑うことができた。
*
さっきギャリーが言っていたように、改めて回りを見回すと、確かに雰囲気が違う場所へ来た。
今までは美術館のような場所だったのに、ここはまるでスケッチブックにクレヨンで描かれたラクガキの中に入ったようだった。
「さて、これからどうしましょう……ん?」
壁を見つめるギャリーにつられて見ると、そこには子供が書いたような字で『ぴんくのかぎは、おもちゃばこにしまうこと』と書いてあった。
「おもちゃ箱? そこに行けば鍵が手に入るのかしら? 行ってみましょ!」
「うん!」
ここは、今まで見てきた中では道は簡単な方で、すぐにおもちゃ箱がある部屋にたどり着いた。
その部屋はおもちゃ箱らしき大きな箱がポツンとあるだけの、殺風景な部屋だった。
「これがおもちゃ箱? ずいぶんと大きいのね……それに底が深くて真っ暗だわ。この中に鍵があるのかしら?」
「そうみたい……どうする、ギャリー?」
「う〜ん……」
「行ってみたら?」
それはとても馴染みのある声。
私達が振り返ろうとした瞬間、背中に衝撃が走り、おもちゃ箱に突き落とされた。
視界が黒で塗り潰される直前に見えたのは、
揺れる金色だった。