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Ib ―『さよなら』の先に―
作者: 緑茶  (総ページ数: 53ページ)
関連タグ: 二次小説 Ib 
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 アタシがそれを知ったのは、二人と別行動をしている時だった。

 石でできた茨のツルによって別行動を余儀なくされて、アタシは一人でなんとか出来ないか、色々調べていたんだ。
 抜け道を見つけ、絵の具玉を集めることになった時、アタシは見た。見てしまった。本棚の中にあった一冊の本――ゲルテナ作品集 下――の、あのページを。

『メアリー』

 そこには、途中で仲間になったメアリーの名前と、メアリーそっくりの絵があったんだ。
 キレイな金髪に青い目、高級そうなワンピース。絵に描いたような美少女だと思ったけど、まさか本当に絵から出てきたとは思わなかったわ。

 そして――これは最期まで君に話さなかった事だけど――その本棚の中には、この世界のことを書いた本があったの。

 そこには――、
 ここはアタシ達が来た元々の美術館の裏の世界――ゲルテナによって作られた作品達の世界であること。
 ゲルテナが作り出した作品は、ゲルテナの魂が込められていて、生きている人のように動くこと。
 作品達は自分を壊されることを恐れて、ここに入って来た人を襲うこと。
 入口は多々あるが、出口は一つであること。
 作品は外に出ることが出来たら、実在する人として外で生きていけること。
 ここに迷い込んだ人数だけ出ることが許されること。
 その他色々と書いてあった。

 つまり、ここで出会った仲間のうち一人はここに残らなくてはならない。そしてもしメアリーが外に出られたら、メアリーは本物の人になれるの。

 メアリーがもしこの事を知っているなら、君と一緒に居るのは危ない。

 アタシは一刻も早く合流するために急いで絵の具玉を探した。
 そして、アタシの意識はとある部屋の中でプツンと途切れた。


 意識が戻ったアタシに訪れたのは、涙目でアタシに抱き付いてくる君の姿と、左の頬の痛みだった。
 あの時は心配かけちゃったよね。ごめんね。

 混乱していたらしく、アタシは二人と別れてからの記憶があまり無かった。
 メアリーは無理して思い出さなくてもいいって言った。アタシもそれでいいって思った。

 でも、アタシの記憶は、あることがきっかけですぐに戻ったの。
 拾ったメアリーの薔薇が造花だって分かったとたん、忘れていた記憶が一気によみがえってきたの。
 アタシは薔薇を取り返そうとしたメアリーを突飛ばして、メアリーを気絶させた。そして君にメアリーの真実を伝えた。
 メアリーととても仲の良かった君は、ひどくショックを受けていたね。でも、きちんと伝えなくちゃいけなかったんだ。君を悲しませるようなことはしたくなかったんだけど……ごめん。

 落ち込んでいる君を慰めながら、アタシ達は先に進んだ。

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