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アタシがそれを知ったのは、二人と別行動をしている時だった。
石でできた茨のツルによって別行動を余儀なくされて、アタシは一人でなんとか出来ないか、色々調べていたんだ。
抜け道を見つけ、絵の具玉を集めることになった時、アタシは見た。見てしまった。本棚の中にあった一冊の本――ゲルテナ作品集 下――の、あのページを。
『メアリー』
そこには、途中で仲間になったメアリーの名前と、メアリーそっくりの絵があったんだ。
キレイな金髪に青い目、高級そうなワンピース。絵に描いたような美少女だと思ったけど、まさか本当に絵から出てきたとは思わなかったわ。
そして――これは最期まで君に話さなかった事だけど――その本棚の中には、この世界のことを書いた本があったの。
そこには――、
ここはアタシ達が来た元々の美術館の裏の世界――ゲルテナによって作られた作品達の世界であること。
ゲルテナが作り出した作品は、ゲルテナの魂が込められていて、生きている人のように動くこと。
作品達は自分を壊されることを恐れて、ここに入って来た人を襲うこと。
入口は多々あるが、出口は一つであること。
作品は外に出ることが出来たら、実在する人として外で生きていけること。
ここに迷い込んだ人数だけ出ることが許されること。
その他色々と書いてあった。
つまり、ここで出会った仲間のうち一人はここに残らなくてはならない。そしてもしメアリーが外に出られたら、メアリーは本物の人になれるの。
メアリーがもしこの事を知っているなら、君と一緒に居るのは危ない。
アタシは一刻も早く合流するために急いで絵の具玉を探した。
そして、アタシの意識はとある部屋の中でプツンと途切れた。
意識が戻ったアタシに訪れたのは、涙目でアタシに抱き付いてくる君の姿と、左の頬の痛みだった。
あの時は心配かけちゃったよね。ごめんね。
混乱していたらしく、アタシは二人と別れてからの記憶があまり無かった。
メアリーは無理して思い出さなくてもいいって言った。アタシもそれでいいって思った。
でも、アタシの記憶は、あることがきっかけですぐに戻ったの。
拾ったメアリーの薔薇が造花だって分かったとたん、忘れていた記憶が一気によみがえってきたの。
アタシは薔薇を取り返そうとしたメアリーを突飛ばして、メアリーを気絶させた。そして君にメアリーの真実を伝えた。
メアリーととても仲の良かった君は、ひどくショックを受けていたね。でも、きちんと伝えなくちゃいけなかったんだ。君を悲しませるようなことはしたくなかったんだけど……ごめん。
落ち込んでいる君を慰めながら、アタシ達は先に進んだ。