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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*15*
翌日。
ここはスターレスリングジムの1階にある特訓場。
中央にあるリングに俺とスターが立っている。
俺は弟子の奴らと戦うためにたっているが、スターは俺と戦うためではなく、弟子を選ばせるために立っている。
彼は懐から数枚のカードを取り出し、俺の前に差し出した。
カードにはなにやら文字が書かれている。
「この7枚のカードにはそれぞれ、私の弟子たちの異名が書いてある。この中から一枚だけ引きたまえ」
彼は俺にまじまじとカードを近づけた。
1枚目は『太陽神』、2枚目は『死神』、3枚目は『明王』、4枚目は『破壊神』、5枚目は『荒馬』、6枚目は『天使』、7枚目は『白兎』。
そしてリングの観客席に座っている彼の弟子たちを見る。
カイザー副会長、ロディ、カーネルさん、不動、ジャドウ、星野・・・・どれもこれも当たったらヤバイ奴らばかりじゃねぇか!!
だが、そのとき俺は一番端に座っていた少年に気づいた。
青いマッシュルームカットの髪にうるんだ赤い瞳、白い肌が特徴で、今にも泣き出しそうな表情を見る限り、コイツに当たれば勝てると判断する。
俺はコイツを対戦相手だと決めたが、問題がひとつ。
それはどのカードを選べばこいつに当たるのかわからないということだ。
俺は勘で一番端にあるカードを引き抜いた。
「ハハハハハハ!『白兎』のカードを引いたか!!
軽井沢くん、キミが彼の対戦相手に決まったよ!!」
スターは高らかに笑いながらそう告げる。
「は、はい・・・・よ、よろしくおねがいしますう・・・・」
ビクビク怯えながらも、リングに上がり、アニメ声で丁寧にお辞儀をする軽井沢と呼ばれた少年。
「まあ、そうビクつくなよ」
「は、はぅ・・でもぉ・・・・こ、怖いですぅ・・・・」
クソッ、そのもじもじした態度がイライラしてくる!
「時間無制限、反則自由、それでは試合開始!」
カーン!
スターの合図でゴングが鳴らされる。
俺は相手の実力を探るためグルグルとリングを走り回る。
奴はどうしかけてくるのか。
ところが軽井沢は動こうとしない。
棒立ちになったまま微動だにしない。
「そっちがうごかねぇんならこっちから行くぜ!!」
俺はプロレス技など使ったことはないが、とりあえず蹴ってみることにした。
蹴りはまともに当たり、のけ反る軽井沢。
俺は拳を固め、軽井沢の幼い顔に何発もパンチを撃つ。
「ほう。あの軽井沢にパンチを何発もクリーンヒットさせるとは・・・大したものだ」
ジャドウがぼそりとつぶやくのを俺は聞き逃しはしなかった。
俺は軽井沢を殴りつつも、顔を奴のほうに向け、
「だろ?」
「だが・・・・その後が油断大敵ですなあ」
「何ッ!?」
その瞬間、軽井沢がいないことに気がついた。
「井吹さん、僕はここです」
なんと奴は後ろにいて、俺に微笑みかけているのだ。
「・・・・フフフフ。お前の実力はその程度か。どうやら、不動の御眼鏡違いだったようだな」
「・・・黙りやがれ!俺がこんな奴に負けてたまるか・・・・!!」
「井吹さん、残念ですが、キミの攻撃は最初の一撃以外僕には当たっていません。全部紙一重で避けていました」
「嘘をつくなよ」
俺は再び軽井沢を殴りぬこうとするが、まるで奴を殴りぬいた感覚がない。
「今度はよく見えるように、ゆっくり避けてあげますので、安心してください」
その宣言どおり、奴は俺のパンチを全て上半身をくねらせることによって避けるという、無駄のない動きで避けていった。
「当たらないでしょう。そろそろ戦法を切り替えたほうがいいと思いますよ」
確かにコイツの言うとおりだ。こいつには打撃技が一切通用しない。
ならば投げ技・・・あるいは関節技にいったほうがいいのだろうが、あいにく技を知らないため、かけることができない。
「今度はこちらからいかせてもらいますね」
ニコッと笑ったかと思うと、コーナーポストにジャンプで降り立ち、そこから立て続けにドロップキックの連射砲を俺に浴びせる。
「『白兎の舞』!」