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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*2*
昼休み、俺は特にすることもなく、ただぼんやりと窓の外を眺めていた。
どこまでも続く青い空。悪い景色ではないだろう。
「井吹くん、僕と一緒にプロレスしない?」
・・・・・・・コイツが隣で話しかけさえしなければ。
第一なんだよプロレスって。
俺は元サッカー部。それにGKだった男だ。その噂は俺の聞いた情報によると日本全国に知れ渡っているはずだ。
「じゃ、始めようか」
待て!なんで話が勝手に進んでいるんだ!
「ダイジョーブだよ、井吹宗一郎くん。サッカーもプロレスも似たようなもんだから」
全然違うぞ!?そして何気にフルネームで呼ぶな。
「・・・・井吹くん、もしかして弱いの?」
「フン。お前みたいな奴と俺が勝負になるかよ」
大形はどっからどうみても160センチぐらいしかない。対する俺は177センチ。身長差は歴然だ。
「キミもバカだね。プロレスは伸長差より体重が重視されるんだよ」
もしそうだったとしても俺はこいつに十分勝てる自信があった。
☆
俺たちの通う学園はスポーツの名門だけあって、設備が万全だ。
グラウンドも他の学校の5倍の広さはあるだろう。体育館は10倍ぐらいありそうだ。
その広い体育館の隅にプロレスのリングがある。
しかし、噂には聞いていたが、まさか本当にリングがあるとは思っても見なかった。今まではあまりにも隅にあったため気づかなかったのだ。
「さ、始めようか」
そう言って、ひょいとロープを軽々と飛び越えリングに着地する大形。
今の身軽さには一瞬驚いたが大したことはないだろう。
俺も奴に続いてリングに入った。
「じゃあルールを説明するね。反則自由。制限時間10分。先に相手の両肩をマットにつけて3秒間フォールしたほうの勝ちだよ」
「反則?例えばどんなのが反則なんだ?」
正直な話、俺はプロレスを知らない。だからどんな行為が反則と呼ばれるのか分からなかった。
「目潰し、金的攻撃、凶器攻撃。大きく分けるとこんな感じかな。
細かいルールは気にせずに今は思いっきり楽しもうよ!」
「お・・・おう!」
カーン!
どこから取り出したのか、奴がゴングを鳴らす。
「来い!」
「行くよ」
大形の目は先ほどまでの優しげな目つきとは打って変わって氷のように冷たく、真剣だ。その目を垣間見た瞬間、俺は一瞬怯んでしまった。
その隙をつかれ腕を掴まれロープに放り投げられてしまう。
このチビ、こんな華奢な体躯でなんてバカ力だ・・・・!
ロープを握って反動を防ぐことも出来ず、そのまま跳ね返る。
そこを待っていましたかといわんばかりに奴は俺の体を捕らえ、そのまま後方に反り返ったかと思うと俺の頭部を思いっきりマットに叩き付けた。
「ワン・・・・・ツー・・・・スリー・・・!僕の勝ちだね」
頭部の痛みと呆気にとられるあまり呆然とし、ただマットに大の字になっている俺を見て、奴は満面の笑みを浮かべた。
な、なんなんだコイツは・・・・一体!?
「言ったでしょ。僕は愛の天使、大形愛だよ」