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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*21*
「自業自得です」
担架で運ばれるシカを見て、星野はため息を吐きながらつぶやいた。
これは星野が試合が終わると必ず言う決め台詞だ。
「次の対戦相手は誰ですか」
「次は我輩、カバが行こう」
次の対戦相手はかなりの大柄なレスラー、カバだ。
「シカはこの中では実力的に一番最低。だが、王李を破り、そなたを少々苦戦させたのだから、まあ、合格点。だが、この我輩はそのような不覚は取らぬ。確実にそなたを倒してごらんにいれようぞ」
「楽しみにしています」
相変わらず無表情な顔で告げる星野。
試合のゴングが鳴り、3試合目が始まった。
星野は連戦の疲れをまったく見せていないようで息ひとつ乱していない。
「我輩の力、見せてあげよう」
とたんにカバはその馬鹿でかい口を開け、星野の右肩に噛み付いた。
「『ビックマウス』!」
星野の肩からはおびただしい量の血が滴るが、星野は動じない。
「やはりそなたは噂どおり、相当な実力を持っている。
この大会7連覇を狙う強豪集団、スターレスリングジムの猛者たちは侮れませんのう」
7連覇!!ってことはこれまでに6度優勝したことがあるってことか。
すると今まで無言を貫いていたカイザーさんが口を開いた。
「・・・・過去6年間、我々は一度もダウンせず、かつ30分以内で敵を倒し、全試合圧勝。圧倒的実力で優勝した。
今年も優勝しようと意気込んでいたが、ここまでくるとさすがに敵も我らのことを研究しているらしいな・・・・星野は去年、始めて参戦し、ひとりで決勝まで闘い、平均5分で敵を葬っている」
やっぱこいつら人間じゃねえよ。
「そなたの得意はボクシング。プロレス技もそこそこできるそうだが、実力は二流並み。そういう情報のはず」
カバは星野の肩から離れ、その巨大な足でキックを放つ。
1発のキックで星野は吹き飛び、思い切り顔面をぶつける。
額が割れ、血が噴出すが星野はまだ戦うらしい。
試合開始8分が経過している。体力的に星野はもう限界のはずだ。
「僕は負けるわけにはいきません。それに新必殺技もまだ披露していないのですから、ここで負けてしまえば披露することができなくなる・・・・・」
「そなたは必殺技を披露する前に我輩に倒されるのである」
カバは星野におがみ打ちを連発し、徐々に後退させる。だが、星野はどこにそんな力が残っていたのかと思うほど、パンチを連射し、敵を追い詰める。
星野が優勢になってきたかと思ったが、そうではなかった。
「そなたのパンチは我輩のボディに衝撃を吸収され、無効化されているのである」
言われてみると確かにその通りだった。
星野のジャブの連打はまったく通用していない。
それならばとストレートを放つが、脂肪だらけの腹に軽く弾かれてしまう。
「ここは・・・・新必殺技を披露するしかありませんね」
ジャブ、ストレート、そして一撃必殺のアッパーに続く星野の必殺技とは一体・・・・・
「本邦初公開。これが僕の新必殺技です」
星野は少し空中で浮遊しつつ、カバの巨体に羽交い絞めをかけ、そのままジャイアントスィングのようにグルグルと回転し始める。
回転は回数速度ともにどんどん上昇していき、リング上は竜巻が舞い上がっているように見えた。
ふたりの姿は回転が速すぎて見ることができない。
「これが必殺技の序盤・・・・ここからが本番です」
星野が羽交い絞めを解くと遠心力でカバの体は急上昇していく。
もう、豆粒のような大きさになったかと思うと、いきなり落下しはじめた。
それを確認して飛び上がる星野。
「ま、まさか・・・・この体勢は・・・・!!」
何かに気がついたのか、カイザーがイスから立ち上がる。
メープルもどんな技を繰り出すのか予想がついたようで、星野に向かって叫ぶ。
「星野くん、やめてください!その技は禁断の超必殺技じゃないですか!」
だが、星野に彼らの声は届かない。
「・・・・星野!やめろ!敵を殺したいのか!?」
「星野くん!!」
星野はカバの首元に自分の肘を当てそのまま落下していく。
この技・・・昔、アニメで見た必殺技のような・・・・?
「『ヘブン=ザ=ギロチン』!」