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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*23*
星野はピクリとも動かない。目を閉じ、がっくりと頭を垂らしていた。口からは少し血を流している。
「し、死んだのか・・・・」
「フン。半殺しにしただけだ。失せろ、生ゴミ」
ウルフは星野を蹴飛ばし、リング下に落とした。
「星野くん・・・・!!」
メープルは星野を抱き起こそうとする。だが、医療班がそれをやめさせ担架に乗せる。
メープルは彼を救急車に乗せようとする医療班を少し静止させ、力尽きた彼の手を握り、
「星野くん・・・私のために・・・こんなにボロボロになるまで・・・ありがとうございます」
彼女は星野の唇にそっと優しくキスをした。
「星野くん、私、あなたのがんばり、絶対無駄にしません!
マロン君やラグ君には悪いかもしれませんが、私、星野くんの敵を撃って、星野くん、あなたと付き合います!!」
!!!!!!
この発言は俺だけでなく、さすがのカイザーさんも驚いたようで、口を開けたものの声が出なくなっていた。
「・・・・メープルさん・・・・今の・・・話・・・・本当・・・・で・・・す・・・か?」
うっすらと目を開き、か細い声で星野が言う。
「本当です!!私、あなたのことが好きでした。
星野くん、あなたを愛しています」
「・・・僕、世界一幸せな天使ですね・・・・」
彼は弱々しく笑えみ、それだけ言うと、星野はゆっくりと目を閉じた。
星野は救急車に運ばれ試合会場を去った。
☆
「くだらねぇ臭い芝居だぜ、お嬢さんよ」
ウルフは先ほどのメープルの取った態度を不快だと言わんばかりの表情で言った。
「臭くなんかありません。あれは私の本音です」
メープルが反論するが、ウルフは聞いていない。
「さっさとリングを降りろ。お前に俺が倒せるわけがない」
「いえ、倒せます」
「何・・・・?」
「私はあなたを倒して、チームに勝利を導きます」
「おもしれぇやれるもんなら、やってみるんだな。お嬢さん」
試合開始のゴングがなった。
「悪いが俺は女だからといって容赦しないぜ」
ウルフは例の鉄の爪を装着。
そのまま彼女を串刺しにしようと接近するが、彼女はすばしっこくなかなか命中しない。
業を煮やしたウルフはコーナーポストへ彼女を追い詰め、刺し貫こうと鉄の爪を振り上げる。
だが、突き刺さる直前、彼女は素早く飛び上がり、攻撃を避けた。
爪は見事にコーナーポストの鉄柱に刺さり、引き抜けなくなった。
しかたなく、片方をはずしてもう片方の鉄の爪で攻撃を仕掛けるが、先ほどと同じ手に引っ掛かり、両方の爪を失った。
「これで凶器攻撃はできませんね」
ニコッと微笑む彼女にウルフは怒り心頭。鉄拳を見舞うも全て避けられてしまう。
「あ・・・・あたらん・・・・!!この小娘・・・・!!」
「今度は私の攻撃ですね。行きますよ」
その瞬間、メープルの速攻が炸裂した。
延髄蹴りを2発、ジャンプしてからのパンチを顔面に左右それぞれ1発、ふらついたところを足払いで倒し、ボストンクラブをかけ、足を痛めさせた後、敵が立ち上がったところにコーナーポスト最上段からのヘッドパットを叩き込む!
思わぬ速攻に翻弄され、敵は怯む。
「この俺が苦戦するとは・・・この小娘、なかなか侮れないな」
そう言っている間にも肘うちをみぞおちに食らい、ロープに投げられ跳ね返ってきたところにキッチンシンクを受け、両膝をマットにつけた瞬間、素早く波乗り固めをかけられ、背骨を攻められる。
逃げる間もない連続攻撃。打撃、関節技と交互に繰り出す技の豊富さ。
俺はメープルがここまで強かったのかと自分の目を疑った。
あれほど身長差のある敵に物怖じもせず果敢に向かっていくその姿は惚れ惚れするものがある。
「かなりやるなお嬢さん。だが、俺の必殺技を食らっても、戦えるかな?」
「はい」
「そうかい。なら破ってみろ!!」
可憐な笑みを浮かべる彼女を容赦なく放り投げ、必殺技『アルプス大山脈落とし』の体勢に入る。
「ハハハハハ、お前はよく戦った。だが、そのがんばりもここまでだ。俺の必殺技でお前も敗れるのだ。あの天使野郎と同じようにな!」
「そうは・・・・いきません!」
「何!?」
今の言葉で注意が散漫になり、ほんのわずかだけ技をかかりが甘くなったのをメープルは逃さなかった。
その隙を利用し、足をはずし、力任せにロックしている腕をはずし自由になると、受身を取り、素早く立ち上がった。
「俺の必殺技が簡単に破られるだなんて・・・」
呆気にとられているウルフに彼女は自らの必殺技を掛ける。
まず馬乗りになり、チキンウィング(羽交い絞め)を敵にかけ、敵の両太ももを足で完全にロックし脱出できないようにして、そのままチキンウィングの威力を増していき、腕、腰、足を痛めつける必殺技・・・・その名は・・・
「パロスペシャル!!」
カイザーさん曰く、メープルのKO率100%の技らしい。
だが、自身の必殺技を破られ、敵の必殺技を食らっても、ウルフは不敵に笑う。どうやらまだ勝算があるようだ。
「お嬢さん、今、試合開始が始まって、何分かわかるか?」
「わかりません。何分ですか?」
「18分30秒さ」
「!!」
ウルフの発言になぜか動揺するメープル。
「このまま一気に勝負をつけます!!」
「それは無理だな小娘。技のかかりが甘くなっている。さっきは不覚を取っちまったが、もう破られはしねぇ。残り1分30秒で勝負を決めてやる」
1分30秒・・・・これが一体何を示すのか・・・・
すると、カイザーさんが口を開いた
「・・・・・彼女の戦闘限界時間だよ。彼女は体があまり丈夫ではない。それ故、20分を過ぎると体力が限界に達し、力尽きる」
「じゃあ、メープルは・・・」
「・・・・・20分を過ぎた瞬間、敵の必殺技を食らい、9割9分9厘、間違いなく、奴に敗北する」